イアン・リビングストンのインタビューから(その1)


 Eidos社の会長、イアン・リビングストンは、火吹き山の魔法使いをはじめとするFF(ファイティング・ファンタジー)シリーズを執筆していた。いわば、ゲームブックの親である。先日彼のインタビューがこちらに掲載された。
 なかなか興味深いインタビューであった。話の要旨を順番に挙げてみる。

FFについて
・FFはいくつか復活させる。
・FFの新作を書くかもしれない。
・FFシリーズのヒット(300万部)について。FFシリーズは自分が主人公になって自由に物語を展開することができる。そういうものが今まで日本にはなかったからヒットしたのだろう(と分析している)。

コンピュータゲームについて
・双方向性に惹かれて、コンピュータゲームに転身した。
・(新作の)Beach Lifeは楽園を舞台にしたシミュレーションゲームである。
・イギリスはナローバンドであり、オンラインゲームは難しい状況である。
・オンライン版死のワナの地下迷宮の需要があれば考える(冗談っぽい)。
・日本の市場参入は難しい。

ヨーロッパのファンタジー
・ヨーロッパには神話と歴史がある。それがファンタジーの素材となっている。

 FFシリーズだけで300万部売れていたとは初耳である。「ドラゴンランス」は100万部、映画化される前の「指輪物語」でさえ、年月を重ねて150万部である。そこまで売れていたのかと、正直いって驚いた。ゲームブックは、思ったより多くの日本人に影響を与えているのかもしれない。
 ゲームブックはホームページの普及に先駆けて広まったハイパーテキストである。ハイパーテキスト自体は、十分に人々に受け入れられる形態なのであろう。

 FFのリバイバル作品は、ファンタジーものに限られるそうだ。これは以前、FFの公式ページに書いてあったものを見たことがある。
 イアン・リビングストンの新作はぜひ実現して欲しいと思っている。

 コンピュータゲームに転身した理由というものが、双方向性に惹かれたというのがいかにも彼らしい。彼の新作Beach Lifeについて私は何も知らないが、このインタビューの情報を元にして推測すると、シムシティにみられる箱庭ゲームに近いようだ。双方向性を表現するのにシミュレーションは向いており、とりわけ箱庭ゲームは理論上永遠の双方向性を表現できる。
 D&Dを紹介し、ゲームブックを作り出した。そしてコンピュータゲームの世界に飛び込み、箱庭ゲームを作った。情報の受け手が意思決定を行うという、双方向性がこれら全てにつながるキーワードである。彼は本当に双方向性が好きなのであろう。

 ヨーロッパはアメリカと比べて歴史と神話が豊富であり、ファンタジーの素材をそこから持ってくる、というのはなかなか興味深い話だ。
 アメリカの話だけでなく、日本のファンタジー世界を扱った物語のなかにはそういった素材を名前だけ借りてくるだけの事例が少なくない。そしてそれにエンターテイメント・ソースをぶっかけてかき混ぜる。乱暴な表現だが、結構これで間に合う作品は多い。
 それに比べてヨーロッパの作品は、素材ひとつに歴史を取り入れ、物語の奥行きの広さを感じさせるところがある。ゾンビは肉がついている分、骸骨より扱いやすい。だがゾンビはブードゥ教がベースであり、ギリシャ神話でおなじみの骸骨戦士はヨーロッパをベースとしたファンタジー世界に溶け込みやすいのだ。FFの中においても、ゾンビより骸骨、骸骨戦士などが圧倒的に多い。
 もちろんヨーロッパをベースとしていないファンタジーも存在することはいうまでもない。先に述べたエンターテイメントごちゃまぜ作品にもいいものがある。これらについては話が膨らみすぎてしまうので言及は避ける。
 独特の世界観の中に、新しいもの・エキゾチックなものの侵入を適度に許す。過剰な表現がなくても、これはこれで十分に刺激的だ。エンターテイメントごちゃまぜ作品には、この種の節度と刺激のバランスが難しいところである。

 次回は私がこのインタビューを読んで、連想したことを書こうと思う。

(2002年4月14日)


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