マジック・ザ・ギャザリングから、売れるゲームの条件を考える


 このコラムは、あびきゃすというホームページで公開したコラムです。

 今回はマジック・ザ・ギャザリング(以下マジックと略す)の話を書こうと思う。このゲームは、全世界に累計数十億枚売れたカードゲームである。本もカードもそうなのだが、ある一定の数を印刷すると、それ以降の利益が莫大である。わかりやすく例えると、「お金を印刷している」という状態だ。このゲームがなぜこれほど売れたのか考えてみたい。

 マジックというゲームは、トレーディングカードゲームと呼ばれている。書店やコンビニ、玩具店などで売られている15枚入りのカードパックをいくつか買い求める。カードパックの中身はバラバラで、確かめることができない(よって購入する者の射幸心を刺激する)。時には他人とカードを交換し、それらを元にオリジナルのデッキを作る。デッキとは、勝負する時に使用される60枚程度のカードの束である。
 ゲームは基本的に二人の対戦で行われる。プレイヤーはゲーム中、20点のライフと、自分が作ったデッキを使用する。ライフはデッキと全く関係のない、ただの点数である。ライフが0点になってしまったら、そのプレイヤーは負けになってしまう。

 誰もが勝利すると嬉しいものだ。だが常に勝てるとは限らない。強くなろうとするには、ある程度強いカードが必要になってくる。強いカードを手に入れる最も手っ取り早い方法は、カードのパックを買うことである。そしてこのことが累計数十億枚という、空前の売り上げの要因となった。マジックのブームの原因は、カードのパックを購入することが強さに直結していることである、と私は思う。
 だがこれでは、新規参入者が経験者に勝てなくなってくる。そこで約2年に1回、カードの見直しが行われ、新しいカードが発行される。そのカードのリストの中に入っているカードしか、使えなくなるのだ。
 以前はマジックの中に賭けが存在していた。勝負の前にデッキの中から一枚取り出す。そのカードはゲームの中では使えない。そして負けると、そのカードが取られてしまう。これは賭博性を取り込んだ面白いルールだが、現在は存在しない。カードの購入促進に直結していなかったので、無くくなったのだろうと思われる。

 「このゲームは面白い。でもなぜ売れないんだろう」
 ゲームが好きな人が、こういう疑問を持つことがある。否定的な意見はいくらでも思いつく。そこで私は別の考え方をすることにした。
 「このゲームは売れている。なぜ売れるんだろう」
 私はマジック・ザ・ギャザリングが売れた理由を、買うことが強さに直結するから、と推理した。マジックは面白いゲームだが、ゲームの面白さと売上は必ずしも比例関係にない。売り方に工夫があったのだと私は思っている。
 ゲームに限ったことではない。何かが売れるには、消費者に購買意欲をそそらせる必要がある。購入と強さを直結させたマジックのシステムは大成功を収めた。

 良いところを書いたので、悪いところも書いておこう。
 マジックを続けるにはお金がかかる。私はかなり散財したと自覚している。
 またカードパックを1つ買ったとしても、それだけでゲームを始めることができない。
 さらに新しいカードが出るたびに、最新のカードのテキストの解釈が発表される。オリンピックのルール変更なんてかわいいものだ。最悪な場合、ゲームのバランスを崩すカードは使用禁止にされてしまう。それでもカードパックに紛れて売られているのだからタチが悪い。
 こういった理由から、マジックの販売方針には非難も多い。しかし実績は残っている。このやり方は是非にかかわらず、研究に値すると私は思っている。

 購入する時のわくわくする気持ち、これが大切だ。ゲームなどの嗜好品を提供する側の者は、消費者をわくわくさせることに重点を置くべきだ。そして購入するときにわくわくする要素を結びつけることができたら(特に賭博性、射幸心は結びつきやすい)、予想以上の成果を得ることができるかもしれない。

(2002年4月21日)


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