Mar. 05, 2003

読書めも 2002年7月〜9月

◇7月の印象に残った本◇  2002,8,2
こう暑いと、集中力が皆無、ムツかしいお話は読めません。
例の「ローマ人の物語II」の3冊も買っているのに、棚上げ状態です。
けれど、夏らしいすっごく楽しい作品にもであったので、お勧め本が沢山あります。

今月のイチ押し◎
 「800」川島誠 角川文庫590
いやーこんな面白い本を今まで知らなかったなんて、損した! 94年、映画にもなってるらしい。
タイトルは陸上競技の800m走から。対照的なTWO LAP RUNNERの高校生2人、練習と恋とセックス、
そしてなんと言っても”800”の緊張と興奮! 暑い夏も元気に乗り切るために最高の一冊。
江國香織さんの解説がまたいい。曰く、”詩的で官能的で奇跡的で機能的”

「月の砂漠をさばさばと」北村薫著 おーなり由子絵 新潮文庫514
北村さんはミステリー作家で元国語の先生、おーなりさんは元「りぼん」のマンガ家で今は癒し系イラストレーター、絵本作家。
小学生のユキちゃんとおかあさんの生活、ちょっと楽しいかったり切なかったりのお話12。
ちいさくて清らかなものに触れ、心の汚れを少し落とし、明日もガンバロ・・そんな大人のためのお話。

「残響」柴田よしき 新潮社1500
死んだ人の最期の言葉を聞き、再現する不思議な力を持つ、ジャズシンガーの鳥飼杏子。
彼女の力を巡る事件の顛末と、自身の再生の物語。REKOシリーズなどが人気の柴田さんだけど
ちょっと筋に懲りすぎの感があり。私はシンプルな筋立てで心情をこまやかに描く短編作品に好感が持てる。 

「発火点」真保裕一 講談社1900
ご本人コメントでは“胸が痛くなるような作品を書きたい”とか。
父を殺人で失い罪悪感を抱えて成長した敦也青年が、真相を見つめなおすことで、ようやく事件を乗り越えようとする物語。
主人公の苛立ちが伝染してやや辛い物語だった。真保さんはずいぶん”上手い”作家になったと思う。
初期の作品に漂う不器用さと有り余る情熱、そして人柄を映した地道に事実を積み上げる作風も懐かしい。

「花伽藍」中山可穂 新潮社1400
直木賞の候補にもなってた短編作品集。借金に終われ突然転がり込んできた元夫。彼と暮らした日々、
奔放にさすらう姉ら彼の家族、一人必死に暮らす公子の過去を鮮やかに彩る出来事、と人達の記憶。
著者は長編スランプだとか。こんなにいい味の短編がつまった作品集ができるんだから、こっちが持ち味だったりして。

「涙堂琴女癸酉日記」宇江佐真理 講談社1600
物語はともかく、こんな風に暮らせたらどんなにいかと思う。”よき子供達とまじめな伴侶達”は私には望むべくもないけど、
年を重ねても新しい環境に飛び込む柔軟さを持ち、誰かに必要とされ、数は少なくても気の置けない友人がいて、
裕福ではなくてもにぎやかで人のいい隣人のいる界隈に住む、そんな風に年取っていけたら・・・。
 
「世界の終わり、あるいは始まり」歌野昌午 朝日新聞社1400

なんともやり切れない、恐ろしい物語。小学6年生の息子の部屋で、連続男児殺害事件の証拠品を見つけてしまう父親。
問いただすこともできず、自分と家族の将来を何通りも想定する・・・彼を小心者とか卑怯と非難することは難しい。
実際子供が犯罪を犯したら親に何ができるか、「なぜ人を殺してはいけないの?」そんな問いに対する答えは誰も持ってない。

「貴婦人Aの蘇生」小川洋子 朝日新聞社1400
小川さんは私にとっても肌のあう感じがする作家さん。
叔父の残した剥製が溢れ返る屋敷で、ロマノフ王朝最後のアナスタシア皇女の言動をとる叔母と
強迫観念を患う恋人ニコとの穏やかな生活。小川さんの小説は奇妙な人々がつむぐ、心安らぐ物語です。  

「ツインズ 続・世界の終わりという名の雑貨点」嶽本野ばら 小学館1400 
特定業界(ヲトメ界?)で超人気、異彩の作家嶽本さん。
前作で大切な人を失ってしまった「僕」の、その後。無為な日々の中、出会った少女は、神の声を聞き、奇行を繰り返す。
常軌を逸した言動に恐れを感じ一旦逃げ出すものの、やぱり大切なヒトの隣で一緒に落ちて行く決意をする、哀しくも幸せな物語。
HPの方はロリータ精神(または乙女心)に満ちたピンクピンク。

「鳶がクルリと」ヒキタクニオ 新潮社1700
「ベリィ・タルト」以来気になる作家。”青春小説”が好き。
樋口有介さんとか、最近だと竹内真さん、金城一紀さん。本作では鳶の棟梁(かしら)の事務所経理を
するハメになったバリバリのキャリアウーマンだった女性の目から見た、初めての職人さん達の世界。
意地と粋の爽やかで元気がでる大人の青春小説(矛盾してるか?)。

◇8月の読書 ◇ 2002,9,19
今月もますます、軽い読み物に集中してます(^_^;) 
ちょっぴりの夏休みにハマったのは荻原規子さん。少女小説の精神にあふれ、魔法ファンタジー、学園ミステリ、
王宮ロマンチック・ファンタジーにSF冒険ファンタジーと多彩な設定で、枠組みを飛び越えて楽しませてくれる作家さん。
物語に浸る至福の時間をありがとう♪ 読みやすいので興味のある方は図書館へどうぞ。

「とらわれびと」浦賀和宏 講談社ノベルス940
毎回コメントしてますが、ヒトには薦めない。混沌の浦賀ワールド炸裂、不条理ミステリ。
でも私はこの物語がどこに行き着くのか、つきあいたいと願う。(終結するのか?!)

「西の善き魔女 第1巻 旅立ちの巻」荻原規子 中央公論新社2300
続きの第2、3巻を今読んでるので、来月にまとめてコメントします。面白いです♪  

「樹上(じゅじょう)のゆりかご」荻原規子 理論社1500 
都内某高校に通う上田ひろみ。親友に誘われ、生徒会のメンバーに。音楽祭、体育祭、文化祭と続く学校行事に対する悪意、
伝統の中でそれぞれの役割を演じる高校生たち。誰もが通過した思い切りムダで、エネルギーに満ち、同時に様々な矛盾と
疑問をはらんだあの季節を繊細に、鮮やかに描いた学園ミステリ。

「これは王国のかぎ」荻原規子 理論社1700
失恋し自己嫌悪に陥ったひろみ。目覚めると砂漠の真中!魔神族ジャニとして、快活で豪気な青年ハールーン
(実は王国の後継ぎ)と旅する。次にもう一人の後継ぎ、ラシードと出会い・・・砂漠、街、王宮を股にかけた剣と魔法と恋の冒険。
アラビアン・ナイトやマザーグスのモチーフがちりばめられた、今風なファンタジー。

今月のイチオシ◎
「狐闇」北森鴻 講談社1900
せり落とした葡萄鏡と間違って手にした神獣鏡をきっかけに罠にかかった古物商宇佐見陶子(冬狐堂)
北森ワールドのキャスト総出で青銅鏡の謎にいどむ。三種の神器の模造を企てた明治時代の
骨董コレクター。幻のコレクション、その背後には壮大な大陸進出構想が見え隠れする。
骨董品をめぐる暗い熱狂と大胆な民俗学の仮説が絡んで、謎解きの魅力たっぷり読み応え十分。

「フィオリモンド姫の首かざり」メアリ・ド・モーガン 岩波少年文庫600
お友達の推薦本。著者はあのアーツ&クラフツ運動で有名なウイリアム・モリス一家とも親交の
あった方だとか。ちょっと残酷だったり美しくも哀しい物語りにウォルター・クレーンの挿絵がぴったり。 

「本格ミステリ02 2002年本格短編ベストセレクション」本格ミステリ作家クラブ・編 講談社ノベルス1600
未だに”本格ミステリ”の定義は不明。しかし副題通り2002年のセレクションなので、
お気に入り作家さん探しには格好。私の場合はシリーズ好きで更に身動きできなくなること必須(笑)
今回好感が持てたのは柄刀一さん、西澤保彦さん、倉知淳さん、菅浩江さん、大倉崇裕さん、加納朋子さんら。

「象のダンス」魚住直子 講談社1400
ヤング・アドルトっていかがわしくて、不思議な分類だ。(私の行く図書館にはそういう書架がある)
満たされずになんとなく生きてる女の子ミスミとタイから来た少女の友情のゆくえ。

「迷宮」清水義範 集英社文庫571 記憶のない男に殺人事件の資料を読ませる”治療”の真意は?事件の真相は?

「晩秋」赤川次郎 新潮文庫552 避暑地の旅館お手伝いさんと俳優の恋、ライトタッチ・ロマンチック・ミステリ

「おじゃまかしら。」S・ハースラー 新潮文庫667 ”ブリジット・ジョーンズ”+赤ちゃんって感じのドタバタ・ロマンス。

「ビタミンF」重松清 新潮社1500 いろんな問題を抱えるすべてのおじさんの応援歌。

◇9月の読書◇
昔から秋の夜長は読書と相場が決まっています。が私の場合、最近毎週行くお医者さんの待ち時間が
まとまった読書時間になってます。(とにかく待たされるので)そして、あっという間の診察の後、
図書館に行き、ユザワヤさん経由で、川べりを散歩しながら家に帰る・・・そんな何もない週末が続いています。

「だれかのいとしいひと」角田光代 白泉社1300
いろんな子の大切な瞬間の気分や情景を描いた短編集。酒井駒子さんの装画がぴったり。

今月のイチオシ◎
「事故係生稲昇太の多感」首藤瓜於(しゅどううりお) 講談社1700 
首藤さんは江戸川乱歩賞「脳男」で評判になったので、勝手にもっとエグイ作家さんと思い込んでた。
新米の交通事故を処理する警官、昇太。直情的で一本気、まだまだ”青い”彼が仕事を重ねて、
一癖もふたクセもある先輩諸氏や関係者の様々な顔を知り、また助けられる。仕事のしがらみや
限界に突き当たりながらも、警官として成長していく物語。

「コンビニ・ララバイ」池永陽 集英社1600 
新聞広告で、いろんな人の”良かった”推薦文にのせられ読んでみた。妻子を亡くした男が経営する寂れた
コンビニに集まる、ちょっと世間からはみ出した人々の物語。しょぼくれた登場人物らに同情を誘う設定、お涙頂戴
うーん、印象としてはどうしても上手く作りすぎの感有り。(そう感じる私って、スレてるかも?!)
第2話に登場する一途なヤクザと哀れな顛末が好き。哀川翔にやらせてみたいなぁ。

「夢見の家」倉阪鬼一郎 集英社1800 女性が主人公の幻想小説

「悪霊」中上紀 バリ舞踊の名手ルバに魅せられ、郊外の村で舞踏を習った主人公、琴子。
日本でダンス教室を開いた琴子の元に、祭りの夜外出禁止のタブーを破った娘ヌマがやってくる。
観光の踊りとは別の宗教的色合いが強く、島民の生活に深く根ざした舞踏のもつ魅力と魔力。
それに翻弄される琴子とルバ、マヌの一家。日本講演での最高の踊りと、終焉(救済若しくは破滅)が。

「海辺のカフカ(上・下)」村上春樹 新潮社 各1600円
いつも楽しみにしてる「講談社BOOK倶楽部メール」の編集後記で、営業の方が作中のベートーヴェンのCDを聞きながら
村上さんの初期の作品を読んでる、と書いてたのが印象的でした。全国的に、ベート−ヴェンを聞いたり、
体力トレーニングしたり、図書館で千夜一夜物語を読んだり、ネコに話し掛けたりする、そういう方が大勢出現してるはず(笑)
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「西の善き魔女 第2巻 戦いの巻」荻原規子 中央公論新社 2300
「西の善き魔女 第3巻 世界の扉の巻」荻原規子 中央公論新社 2300
今最終巻(第4巻)を読んでいるところなので、それが終わったら、コメントするつもり。がんばれ少女小説! 

「ロッカーズ」川島誠 マガジンハウス1800 「800」でハマった寡作な川島さんの小説。
悪魔的でさえある魅力のある男、セージに出会いギターリストとしてバンドNEXUSの
メンバーとなるリン。・・ロンドンでのブレークを機に、あっという間に伝説のバンドとなるNEXUS
は同時に音楽とギグを愛し、愛された環境を失い、終焉に向かい、疾走する。
最年少メンバーとしてリンが感じた不安、非現実感、熱狂と閉塞感が生々しく、ヒリヒリと痛い。


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