Mar. 05, 2003

読書めも 2003年1月・2月

◇10月の読書◇
「パルムの樹」みづきゆう著 なかむらたかし原作 富士見書房2000
地底の国タマスへ、タマゴを届けるため旅をする奇跡の人形パルムと少年少女たち。アニメ作品の小説化らしい。
親に認められたいと本来の自分を歪めて育ってしまった子供達が殻を破るための冒険ファンタジー。

「あるようなないような」川上弘美 中央公論新社1800
(エッセイ)
川上さんの印象は小説でもエッセイでもあまり変わらない。
ゆるい感じの本の話が好き。トーベ・ヤンソンの「ムーミン」を読みたくなる。

「それでも、警察官は微笑う」日明恩(たちもりめぐみ) 講談社1900
この面白さで驚いたことにデビュー作!出所不明の銃を追う池袋署、鬼畜と恐れられる武本巡査長と良家のお坊ちゃま
潮崎警部補のはみ出しコンビ。同じ銃を追う麻薬取締官宮田を巻き込み、裏で進行する中国の極秘計画が浮かび上がる。
二人の刑事の対比+男達の友情(^_^;)。中国の工作員(林)の転落していくさまが壮絶で哀れをさそう。シリーズ化期待。

「マンション買って部屋づくり」岸本葉子 文春文庫495 
独身女性の今後の生活設計の参考に(笑)フツー感覚の岸本さんの体験談がインテリア本や
プロの住宅設計よりもうなずける。書籍等の収納について、一部耳に痛く、一部は心強い。
 
「お散歩ブック」杉浦さやか 角川文庫552
おしゃれでカワイイ、イラスト満載のお散歩奨励本。こういう風に絵を描けるヒトは日常が数倍楽しそう。

「ボランティア・スピリット」永井するみ 光文社1600
日本語教室が舞台。外国人との対比でちょっと皮肉にボランティア日本人教師らを描く連作ミステリ。
”問題は彼らではなく、こちら側の心にある”とな。女性作家さんのピリっと辛い短編は外れなく読める気がする。

「西の善き魔女 第4巻 星の詩の巻」荻原規子 中央公論新社2300

全部読んだところで、まとめメモを書こうと思っていたけど、壮大なストーリーでまとまりそうにない(^_^;)
”西の善き魔女”と呼ばれる女王制の国グラールの辺境の天文台で育ったフィリエルと研究助手のルーン。
幼馴染として育ちながら対極の立場にある2人を中心に、シンデレラストーリー的に始まりながらも単なる
少女小説にとどまらす、悪の組織が暗躍し、謎の吟遊詩人が活躍、竜退治の騎士物語あり、権力欲にかられる
大人たちの陰謀あり、少年少女(^_^;)の淡い恋物語やあこがれあり、そして実はSF設定の種明かしありと、
何でもあり盛りだくさんのエンターテイメントファンタジーに。幼く直情的な見かけの裏には著者の思想と、
登場人物それぞれが魅力的で想像の余地を残し、シリーズは終了。もうすこし・・と惜しませる。(そこがいい)

「ツール&ストール」大倉崇裕 双葉社1800 
落語界を舞台にしたしみじみミステリーで世に出た大倉さんの新連作。お人よしでちょっと不器用な学生
白戸修くんが色んな陰謀、犯罪に巻き込まれる。彼の人柄でしみじみとした読後感。標題作はスリと元刑事のお話。
「海辺のカフカ」話でも触れた「神様がくれた指」(佐藤多佳子さん新潮社)を彷彿。再読するぞ!

「アプルアプリケ」末永直海 角川書店1500
半端な主婦生活を送る主婦が小学校のジオラマ作りに挑戦。思い出の日々を追体験し、現実の生活にも変化が。
物語とは関係ないけど、以前、通勤途中の半地下の事務所にプラント模型の会社があったのを思い出した。
小さいものを愛でてしまう人間の性癖をしみじみ思う。あーぁ私もドールハウスほしいなぁ(笑)

「じーさん武勇伝」竹内真 講談社1700
勝手気まま、自由で豪気、喧嘩は負け無し、思い込んだらどこまでも!じーさんに振り回され一家で沈没船引き上げ。
海賊との切った張った、誘拐騒ぎ果ては国際紛争の大騒ぎ。元気が出てくるファミリードタバタ冒険談。

今月のイチオシ◎
「触身仏 蓮丈那智フィールドファイルU」北森鴻 新潮社1400
異端の民俗学者蓮丈那智と助手の内藤三國コンビが、斬新な発想により隠された過去、現在を明らかにするシリーズの2。
今回のテーマは、山人伝説に隠された悲劇、塞の神と即身仏、三種の神器の一つ曲玉の意味、神々の変貌と新興宗教、
わらしべ長者伝説と神仏との契約、ギブ・アンド・テイクなど。これらのテーマが民俗学上の学説を実際どの程度
踏まえているのかは知らないけど、色んな伝承、神話が有機的に絡み合う世界に、パズル推理好きならハマるはず。

「アブラムスの夜 警視庁鑑識課」北林優 徳間書店1900
初めは読みにくく、とっつきにくい。監察課の面々も寡黙で一見取っ付きにくく、しかし淡々と地味な作業を積み重ねる
有能な専門家たち。彼らを描くにはこういう語りが必要なのかも。都内で発生した少年焼殺事件。現場検証から複数の
未成年者がうかびあがるが、次なる殺人が起こる。担当の若手女性監察係長、悪に対する憎悪を持ちながら同時に暴力的で
組織からはみだす刑事を中心に犯罪捜査と、捜査員たちそれぞれが抱える問題が交錯。犯罪への憤り、無力感、苦悩を描き出す。

◇11月の読書◇
最近ホント読書量が少ない・・(コメントが長いので冊数の割にボリュームが、笑)
発売日を待って購入した「ハリポタ4」さえ玄関に置いたまま。
床に平積みの本は4山(文庫)+手芸本2山(いいのか自分!) 

「若葉のころ」長野まゆみ 集英社1100
茶道家元の後継ぎ原岡(はるおか)凛一とアメフト部の先輩氷川の物語、「白昼堂々」シリーズ4にして完結編。
ばかばかしくも華麗な設定(病弱で繊細な少年に、個性豊かで大いに訳有りの一族、スポーツマンでありながら
凛一を拒まず且つ健全な先輩、など)ではあるが、特にシリーズ初期、揺れ、秘め、かつ抑えきれず溢れ出す断片が
美しかった。しかしこの登場人物は一人残らず男色家で、かつ大変いいヤツで、女にもモテて、ちゃんと子供まで
いたりする、女性の登場人物は影が薄いいい人が、間抜けに嫉妬深いか。全く女性に厳しいのは同性である(笑)

「散歩道から」庄野潤三 講談社1553
殺伐とした気分の時にふと読みたくなる、貴重な作家さん。連載とは別にあちこちに載せられた短いコメントや紹介文、
結婚式や葬儀の挨拶までをまとめた本。1995年の出版作品ゆえ、長く続く生田の物語で慣れ親しんだ人達の話は、
よく知る人の昔話を聞くような感じ。井伏鱒二さんに対する敬愛の情をまとめた最終章に、庄野氏の人柄がうかがえる。

「陰の季節」横山秀夫 文芸春秋1429 (新横浜→新大阪までに読了)
NHKの「大地の子」以来大活躍の俳優、上川隆也さんを主人公に、2時間ドラマでシリーズ化されている連作。
上川さんのまじめさを前面にした硬派なドラマだけど、小説もかなり評判になったもの。ドラマの再放送を見たので。
本作は警察ものとはいえ、犯罪捜査の表に立つ刑事たちでなく管理部門の人間にスポットが当てられている。
一般的な犯罪解決ミステリではなく、警察という固有の組織で働く人々の心理を掘り下げる傑作。
ドラマの二渡は 本作で登場する管理側の警察官達の総合的キャラクターで、より作り込まれた理想の管理官といえる。
彼らに共通するのは組織への忠実とは一味違う、職務に対するまじめさと信念か。

「おおきくなりません」白倉由美 講談社1700 
不思議な味わいの小説。「メフィスト」連載作。あえて分類すればファンタジーか。 読書障害のミステリ作家
平野月哉42歳と同棲する元漫画家で実年齢35歳、精神的には18歳の女子大生、篠野麻巳美(ささのまみみ)。
半分夢の世界に住んでいる彼女を愛し、そのまま自分のものであることを望む一方で、大人になることを期待する月哉。
けれど、彼自身大人になれず、何か大きな欠落を抱えている。大人になることの意味を考えさせられる。

「金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲」角川書店1900
先ごろのテレ東「芸術に恋して」によると、日本で最初の探偵推理小説(純粋に推理することを楽しむ小説)は
岡山・真備町を舞台にした横溝正史の「本陣殺人事件」とのこと。なるほど、と感じ入ったので思わず借りた本。
京極夏彦、有栖川有栖、小川勝己、北森鴻、栗本薫、柴田よしみ、菅浩江、服部まゆみ、赤川次郎という垂涎の執筆陣。
自身の探偵キャラと金田一の競演、金田一に憧れる探偵ものなど。京の情緒あふれる菅さんの作品のほか
金田一耕助への思い入れたっぷり楽しめるアンソロジー。今横溝正史作品再読への誘惑と戦っています(^_^;)

「エコノミカル・パレス」角田光代 講談社1400
角田さんが朝日新聞に書いてる青少年向き?本の紹介コーナー「光の中をあるくのだ」が好き。
(11/24の同コーナーでは前出の「黄色い目の魚」が取り上げられていた)
で、この方の小説が好きか?というとちょっと返答に困る。ごく読み易い小説が多いので、よく読むけど、小説の方は
現代の若者(たとえ30歳であろうと)の抱える鬱屈というか苛立ち、閉塞感が描かれて入れ、苦しい話ばかりだから。
でも確かにこれも”今”の一面なんだろうなぁ。

◎今月のイチオシ
「黄色い目の魚」佐藤多佳子 新潮社1500
川島誠さんの「800」と並んで今年の「J'sベスト」 本の帯には”高校生の恋愛グラフィティ”と
謳われているらしいけど、そんな枠にハメるのはもったいない。絵を描くことが特別な意味を持つ生い立ちの
サッカー少年、木島悟。家庭に居場所が無くイライラと周囲から孤立する少女村田みのり。同級生の2人は
不器用に惹かれあい、少しずつ絵を描くことの意味を探し、そこに共にいることを切望する自分に気付く。
それは同時に自分の場所、好きなこと、これからしたいことを模索する物語、と書くとまさに青春小説か(^_^;)
とにかく佐藤さんの手にかかると、絵を描く作業も、サッカーの試合のシーンも、
孤立してくじけそうになる、絵に感動する様も、鮮やかに迫ってくる。
主人公2人だけでなく登場人物一人一人が際立った設定で、幾重にも物語が浮き上がる。
好きなものがどんどん増えていく高揚、同じ位失うことが怖くなる不安、揺れる感情を二人と共有して翻弄される。
トゲトゲしていた自分があるべき姿を見出す瞬間の幸せ、大人に変わりつつあるひと時の煌きを凝縮した物語。
言葉にすると逃げてしまいそうな繊細ででも力のある物語、とにかく読んで欲しいです。

「グッドラックららばい」平安寿子 講談社1800
私が信頼するブックアドバイザーの一人、筑摩書房の松田氏(「王様のブランチ」出演)が紹介してた。
信用金庫に長年勤め、節約だけが趣味、都合の悪いことはなかったことにして生きる父、
突然旅芸人になると家を出たまま、身軽気ままに放浪する母、ダメな男とのセックスだけが生きがいで
およそ向上心のない姉、上を目指しがむしゃらに生きる妹。爽快にばらばらな家族の物語。みんな
自分のことに一生懸命である。常識と体裁に囚われた周囲の人々の滑稽なこと。元気に勝手に生きよう!

「桜姫」近藤史恵 角川書店1700
近藤さんは独特の雰囲気をもった作家さん。本作は歌舞伎の世界を舞台にしたシリーズ。破滅の予感が漂う物語の
展開だけど、伝統としきたりの中でもがき懸命な人々と、そして思いがけないエンディングに救われる。
語り手の一人、小菊さん(女形)がいい。歌舞伎という魅力的魔物にとりつかれた男でも女でもない不思議な存在。

「トキオ」東野圭吾 講談社1800 
東野さんは実は理系のヒトらしいのだけど、理論的な縛りから自由な、ロマンチックな
ミステリ?SF?が印象的な作家さん。(もちろんロジカルな作品もあります)
死に瀕した息子を見守る父親の、不思議な昔語り。身の不遇を嘆き、情けない暮らしの拓美。
突然恋人が失踪し・・・。身元不明の少年(未来から来た自分の息子)の助力によって人生が変わる、という
やや都合のいい物語。トキオの時代とのズレぶりや、ユニークな登場人物とテンポのいい活劇も楽しめる。

◇12月の読書◇
12月はちょっと読書量が少なかったのだけど、面白い本に当たって良かったなぁ。満足(^-^)
(どうも思い入れの強い本に関して短くコメントできなくて、多そうに見えるんだけど、笑)

「セシオネ」森福都 小学館1700 
中国伝奇モノフィールドの方らしい。この本は超能力バトルもののSF(^_^;)。
ドラックストアの冴えないバイト学生、梅原司に分子、細胞を自由に操作できるサイコキネシスが目覚める。
増大する能力に対し免疫システムが作動、彼を抹殺しようとする勢力と彼の遺伝子を受けつぐ子供達の戦いに。
なるほど今の時代、派手なサイコキネスよりもミクロの力を制御する方がお金になるのだ、との発想に感心。

◎今月のイチオシ
「ファキング・ブルー・フィルム」藤森直子 ヒヨコ舎1800
ウェブ上で公開された現役SM嬢、私生活ではレズピアンである著者の日記をまとめたもの。
フトドキにも図書館でリクエストしました(^_^;)ゞ お客さまのS男、S女達は滑稽でキュート(笑)。
リクエストに忠実に答える女王様は、肉体労働を伴う心理セラピストで、彼らに聖母のごとき慈愛を注ぐ。
一方、本当に愛する相手には、試すようにひどい仕打ち繰り返す彼女。何一つ禁忌はなく、何にも束縛されず、
影響されない。そんな彼女の強さは、むしろそれを恐れる故のとてもさみしい強さかも。ともあれ傑作。
  藤森直子さんのHP:http://member.nifty.ne.jp/kannoudog/

「ファースト・プライオリティ」山本文緒 幻冬舎1600
31歳の男、女をめぐる様々な人生の断面を切り取る短編集。大阪への新幹線でほぼ読み終わる。
誰にも違った生活があるんだと言うこと、そしてどうも自分のそれは、どうころんでもドラマにも小説にも
ならないんだということ。そんな感じ。やっぱり山本さんのもっとヘビーな世界にどっぷり浸りたい。

「スタア」清水義範 幻冬舎1500
元アイドル歌手で30歳バラドルの高杉今日子。微妙な年齢、立場ならではの心の揺れ、空虚な偶像に踊らされる業界の滑稽、
些細な出来事によってバッシングもされ、また浮かびもする運命の皮肉。業界での格、ランクに縛られもがきながらも、
自分の才覚で波を乗りこなし、感動を共有する一瞬の喜びなどがクールな視線で語られている。

「ロミオとロミオは永遠に」恩田陸 早川書房1800 ハヤカワSFシリーズJコレクション
21世紀、廃棄物と汚染物質に溢れた地球に残された日本人。唯一将来を保証される大東京学園の総代。
厳しい選抜を経て入ったそこは、狂気の管理者に支配され恐怖政治さながらの肉体労働、競争、階級の社会。
主人公は伝説の脱走犯を兄に持つオサムと美貌の少年シゲル。クレージーな試験、無意味な競争、
20世紀の狂気の縮図でもある狂おしくも愛しい地下世界、そして命がけの脱出・・・これだけハチャメチャで
荒唐無稽な設定を軽やかに描ききってなお、爽やかな余韻を残す、筆力恐るべし。 恩田ワールド炸裂である。

「神たちの誤算」渡辺由佳里 新潮社1700
ボストン、ピルグリム総合病院で産婦人科医として働く久保田春生(はるみ)。医師たちの激しい自己主張と上昇志向に
対し、自分の立場、医療姿勢に自信が持てない春生。彼女を中心に不妊治療、妊娠中絶をめぐる治療方法についての対立、
日本人妊婦の薬品摂取による連続不明死事件、妹の死、医療訴訟などが次々に起こる。
ミステリだけど、同時に治療者としての自信喪失から自分の道を模索する一人の医師の物語として重みもあり、
不妊治療や妊娠中絶、インフォームドコンセントなど日米の差の中、生命の尊厳について考えさせられる。今後も期待大。 

「骨音 池袋ウエストゲートパークV」石田衣良 文芸春秋1619
「西口ミッドサマー狂乱(レイブ)」(書き下ろし)が圧巻。音楽踊り薬に熱狂するレイヴの裏で凶悪なドラッグによる殺傷
事件が多発。ドラッグを売るウロボロスの狙いは? マコトは義足の歌姫トワコと恋するが彼女の強さゆえの別れが切ない。
マコトはストリートを悠々と泳ぎ、どの集団にも染まらない。池袋への愛着と、自分たちの掟で、混沌を解きほぐす。
やっぱり石田さんはすごい!シャープに若者の街を描き、リズミカルにパンチを繰り出し、熱いリズムで読み手を酔わす。
ドラマは、クドカンの脚本で話題になったけど、妥協してストーリーを甘くしてる部分もあった。原作が断然クール。

「裸の桜」桐生典子 講談社1700
カウンセラーを訪れた3人の男女が地下空間に閉じ込められる。愛人の自殺を目前に逃げた元ボクシング
チャンピオン、会社で孤立し果てはネットで中傷されている傲慢な女、無邪気さの裏で婚約者とは別の
男の子を妊娠し半年育てた挙句に殺した女。闇の中での告白、感情の爆発、そして開放・・・
桐生さんは女の肉体にスポットを当てた小説を書く人。「やわらかな針」(集英社)が特に印象に残る。 


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