日本語を読むための漢字辞典 タイトルロゴ 『和製漢字の小辞典』


『和製漢字の辞典』は、和製漢字に関する最大の辞典です。辞典として引いていただくには便利ですが、通読していただける分量ではありません。
 そこで、親字数を減らし、読む辞典の性格を強めた『和製漢字の小辞典』を作りました。文字数は少なくなりましたが、『和製漢字の辞典』にも入れていない解説もあります。

  1. 【々】
    同じ漢字が続くときに使われる記号。苗字や地名にも使われるが、特定の読みはなく、和製漢字(国字)とはいえないであろう。『大漢和辭典』に「同一文字疊用の記號」、『中華字海』に「音義待考。字出《北大方正漢字内碼字典》」とある。北大とは、北京大学のこと。日本向けの書籍に使われるのであろうか。「々」は、中国で同じ文字を繰り返すことを意味する「二の字点」が、日本で変化したものといわれている。「二の字点」は、日本で「青々」と書く例なら、「青」の右下に、小さく「二」と書いて、「青」をもう一度繰り返すことを意味するという使い方をする。『JIS X 0208:1997』の46頁に日本語通用名称「繰り返し記号」、名前「IDEOGRAPHIC ITERATION MARK」とある。日本語通用名称は、「参考であって規格の一部ではない」とある。名前は「図形文字の名前(本体5.3参照)」とあり、「名前 この規格では規定する全ての文字に対して名前を割り当てる」とあるから、「IDEOGRAPHIC ITERATION MARK」がJIS規格上の正式な名前といえる。しかし通常は、通称名の「繰り返し記号」で差し支えないであろう。『JIS漢字字典』本文2頁には、「(繰り返し記号)おなじ くりかえし のま」と読みがつけてある。部首については規格書では「仮名または漢字に準ずるもの」として漢字とはしていないので部首の考え方は出てこない。漢和辞典では『現代漢語例解辞典』(小学館)がこの考えを引き継ぎ「非漢字部」として、1400頁の親字番号9701にあるが、次の9702(初版では、1380頁の親字番号9640にあるが、次の9641)とも漢和辞典としては、この字に対する最も詳しい解説がある。この辞典の解説に付け加えるとすれば、「々」自体、「二の字点」から9702の字形を経てできたという説があるということぐらいである。『漢語林』(大修館)などでは「ノ部」になっており、『和製漢字の辞典』でも「ノ部」にした(大修館によると漢字として扱っているわけではないとのことであった)。福井大学教育学部国語科の岡島昭浩氏のページで、おどり字に関する文部省の通知(21年3月とあるが案で施行されなかったようである)の中に「同(どう)の字點」とある。(どう)は現物ではルビである。他に「ゝ」を「一ツ點」、「〃」を「ノノ點」、「く」を縦にのばしたような形で二文字以上繰り返すことをあらわす記号を「くノ字點」、「〃」を左右逆転して続けて書いた字形を「二ノ字點」としている。「くノ字點」・「二ノ字點」の「ノ」は、「の」とも書かれている。『解説字体辞典』は、「くり返し符号などと字体」の項で、「楷書の中でのくり返し符号の用い方と、1字の中にくり返し符号が組み込まれている漢字について説明する」として実例を示して詳しい説明をしている。「々の符号はいつ頃から使われたものか、はっきりわからない。明治以降、現在の活字印刷とともに生まれたのではないかと思われる」とある。(このことは、後に示した節用集からの引用により誤りであることがわかる)また「楷書には、くり返し符号を混ぜていない」として多くの実例を示し、例外として「東大寺献物帳」をあげ、このような例は、「中国にも、我が国の江戸時代以前にも例を見ない。」とするが、「行書では、くり返し符号を使ってもよい」とする。なお多くの実例を挙げた後に、「々は、伝統を重んずるものや、行書の中には書かない方がよく(下略)」とし、行書の場合に書くべきくり返し符号の形を実例によって示す。『解説字体辞典』の著者は、文部省において書写書道を指導してきた立場の人であり、退官後もその中心的な立場にある。そのためか、常用漢字表の字体は、ある程度尊重しているが、『康煕字典』の流れを汲む漢和辞典の字体には反対の立場であり、『康煕字典』において俗字とされているものも、伝統的な楷書の形、書写体として尊重していることが多い。このことを理解のうえ使用するのであれば、実例も多く参考になると考えられる。『臺語大字典』は、記号と考えているためか、親字としては、立項していないが、音が同じことをあらわすために本文のほとんど全てのページに用いられている。手書きの字典であるため、「〃」、「々」、その中間的な形のものとがあるが、いずれにしても、「々」が、相当数使われていることには間違いない。著者は、1946年生まれで、日本の植民地教育の影響も受けていないと考えられるため、「二の字点」が、日本で変化したものでない可能性もある。『大谷大学本節用集』に「佐々嶋磯 サヽシマノサキ」また「和布耳 メミ々」、『合類節用集』に「寸々 ズンズン」とある。くり返し符号は、現在普通には、ひらがなの場合「ゝ」、カタカナの場合「ヽ」、漢字の場合「々」と使い分けられているが、『大谷大学本節用集』の後の例では、カタカナに「々」が使われており、未分化であったのだろう。

  2. 【丼】
    『説文』の「井」の隷書体と同形であり、「どんぶり」は国訓と考えられる。『学研漢和大字典』は「容器の中に食べ物のはいった姿を描いた象形文字。中国固有の丼(セイ)とは関係がない。」として国字とする。このような考え方にたてば、同形であっても意味的に中国のものと完全に異なる場合は、国字とされる可能性が高くなる。「椿(つばき)」など国訓とされる多くの文字について見直しが必要となるが、見直しが行われているようには見られない。「丼(どんぶり)」の字のみのようである。同書のハンディ版『漢字源』の最新版は同様の解説をしながら、国字とはせず、「日本語特有の意味」をあらわすマークをつけている。

  3. 【〆】
    普通には「シメ」と読む国字だが、苗字に〆渡(ぬきと ぬくと)がある。地名でも「シメ」と読むことが多いが、宮城県桃生郡桃生町に十〆西(じゅっかんにし)がある。これは「貫目」のことを「〆(かんめ)」とも書くことによるのだろうか。『大漢和辭典』・『大漢語林』などは、補助漢字にあるものと同様な字形で、「シテ」の場合も同字とし、「卜」の字の崩れたものとする。「卜」の和製異体字に、意味的にも近い訓がつけられたものが、その意味範囲を広げて国字とされるようになったものか。この説に従うと、最も狭義に取れば、国字とはいえなくなる。『以呂波考』にも補助漢字にあるものと同様な字形で、「為」とある。あるいは「為」の第1・第2画を基とした省画字からできたものであろうか。

  4. 【会】
    『漢語大字典』・『中華字海』に「會的簡化字」とあるが、『中華大字典』にはない。

  5. 【伝】
    『中華字海』は『白虎通』から引用するが「音義未詳」とする。日本の文字とは関係ないと考えられる。「傳」の和製異体字か。『漢韓最新理想玉篇』に「傳略字」とあるのは、日本の用法が伝わったものか。

  6. 【価】
    『国字の字典』が『文教温故』を引き「西仏」の意の国字とする。『名義抄(観智院本)』に「ユク」、『字鏡鈔』に「火季反 ユク」、『篇目次第』に「サ反 ユク」とある。『漢語大字典』が『改併四聲篇海』を典拠に「音似。像」、『中華字海』が『字彙補』を典拠に「同似」とする。『名義抄(観智院本)』などの「ユク」の訓があるものは、「価」の「にんべん」を「ぎょうにんべん」にした文字の異体字、常用漢字の「価」は「價」の異体字から採用されたものといずれも意味的にも字源的にも異なると考えられるが、国字とするのは問題がある。

  7. 【俤】
    『和爾雅』に、「倭俗ノ制字」として「ヲモカゲ 面影ノ字佳シ」、『異體字辨』に「オモカゲ」、『和漢三才圖會』に「ヲモカケ 爲面影之訓」、『同文通考』に「ヲモカゲ」、『書言字考節用集』に「ヲモカケ 本朝俗字」、『和字正俗通』に「ヲモカケ」、『國字考』に「オモカケ 万葉集には面影と出り(中略)いと近き代に造(下略)」、『倭字攷』に「オモカケ 和爾雅」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「オモカゲ」とある。中国の漢字規格にあり、『漢語大字典』は梁啓超の『中国歴史研究法』を引くが、日本字とする。『中華字海』は、同じく梁啓超の『中国歴史研究法』を引き、「音帝。相似」とするが、日本字とはしない。『古壮字字典』に「同伴」の意であるが、典拠もなく、詳しいことはわからない。国字としていいだろう。『国語大辞典』(小学館)に「おもかげ【面影・俤】(中略)7 香の名。質は伽羅(きゃら)。においは蘭奢待に似て火末(ほずえ)は薄い(名香目録)。(下略)」とある。国字とは考えられるが、『講談社中日辞典』等に「弟の異体字で、人名に使われる」とある。中国の漢字規格にある。

  8. 【俥】
    明治5年11月14日付け東京日々新聞に「[馬+車]と俥の文字」の見出しで「方今文明の際凡そ事簡易にして、明解なるを尊ぶ、因って爾後馬車を[馬+車]と書し、人力車を俥と書し、文書往復し、文路の諸君それ之を記せよ。大簡堂主人誌。」とある。これによって人力車の意味で使われ始めたのは、人力車が発明された明治2年からこの記事の明治5年の間であることがわかる。中国で使われる船上動力機器の簡称としての用法は、『漢語大詞典』が引く1975年10月14日の『解放軍報』が初出もしくはそれに近いもので、それを使う機関士の尊称としての用法はなお新しいと考えられる。始期が明らかでないが仏教で(儀軌)の略字としても用いられており、誤字とはされるが『令集解』にも使われている(新訂増補國史大系『令集解』第二286ページ頭注に「俥[孫−系+亥]、印本作陳訴」とある)ことも考慮しなければならない。中国象棋の駒の名称の一つとしての用法は、増川宏一著『将棋の起源』に「13世紀頃以後は敵味方の駒の表記が異なり、一方は相、師、仕、俥、[休−木+馬]、炮、兵で、他方は象、将、士、車、馬、砲、卒になっている。」とある。そうすると国字とはいえなくなる。国訓とするのが適切であろう。なお、尾崎紅葉が作ったとする俗説があるが、明治5年でも紅葉は6歳であり、まともな検討の余地がないのは当然のことである。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ジンリキ」、『大字典』に「國字 クルマ 人力車 會意 最近の國字にして人力車のこと。」、『新修漢和大字典』(國字)に「くるま」、『新大字典』に「国字 〔会意〕 くるま。人力車。明治時代にできた国字で、人力車のこと。」、『大漢和辭典』に「國字 くるま。人力車。」、『広漢和辞典』・『大漢語林』に「国字 くるま。人力車。」、『漢語林』・『旺文社漢字典』に「国字 くるま」など、いずれも同様な解説で、仏教略字や中国象棋の駒としての用法を知らないが如く取り扱っていない。現代中国での新しい用法は別として、位相的に使用範囲が限定されるといってもこの2つの用法は、無視すべきではない。中国・台湾の漢字規格にもある。

  9. 【俣】
    丹羽基二著『日本姓氏大辞典』などに多くの苗字があげられているが、「俣東(のなみ)」以外は「また」と読む。『倭字攷』に『古事記』などを典拠に「マタ 股」とあり、『国字の字典』が「又」の意の国字とする。笹原宏之著『異体字・崩し字に字源俗解を介した漢字の国字化』に「国字は元来、日本で作られた漢字をさす。しかし、漢字の異体字や行書体・草書体が日本で楷書として固定化したため国字とよばれるようになったにすぎないものがある。各氏が説く「俟」>「俣」「[俣−天+矢]」などの説が知られる」とある。『原本玉篇』を簡略化して作られたといわれる『篆隷万象名義』もこの字形であり、書写の影響も否定はできないが、中国から入ってきた当初からこの字形であった可能性もある。「俟」の隷書体にもあり国字とするのは問題がある。『名義抄(観智院本)』に「疑輔反 太 マタ マツ」、『運歩色葉集』に「マタ」、『篇目次第』に「牛矩切 キュ反 ク反 ヲホキナリ」、『音訓篇立』に「ク音 マタ イタム マツ」、『合類節用集』に「二俣 ふたまた」とある。[俣−天+矢]参照。『漢語大字典』にあるが、[休−木+呉(旧字体)]の新字体である。この変化も日中ともに見られ、『篇目次第』の注文・『音訓篇立』の音注は、この字をあらわしているといえる。笹原宏之氏の言われる変化のみならず、この変化も考えられることから、和製異体字とも言い難いことになる。中国・台湾・韓国の漢字にもある。

  10. 【倹】
    『中華字海』に「同儉。見日本《常用漢字表》」とある。また「剣 同劍。字見《宋元以来俗字譜》」とある。このことから和製異体字ではないことが類推できる。

  11. 【俣−天+矢】 230801
    『大漢和辭典』に「國字 また。俣に同じ。」、『広漢和辞典』に「国字 また。=俣。」とあるが、いずれにも典拠はない。『中華字海』が『宋元以来俗字譜』を典拠に「同侯」とする。『異体字・崩し字に字源俗解を介した漢字の国字化』に「国字は元来、日本で作られた漢字をさす。しかし、漢字の異体字や行書体・草書体が日本で楷書として固定化したため国字とよばれるようになったにすぎないものがある。各氏が説く「俟」>「俣」「[俣−天+矢]」などの説が知られる」とある。中国では「侯」、日本では「俟」の異体字ということで、別字衝突であろう。『大漢語林』には「また。俣と同字。」、解字に「国訓で、中国のまつの意味の俟の字形を変え、またの意味を表す。」とある。『大漢語林』の「俟」には、国訓の表示はない。「俟」の字形を[俣−天+矢]に変え、「また」の訓をつけたということであろう。異体字に新しい訓を付け加えたものを国字とするという『大漢語林』の立場をあらわしているといえる。当辞典では、日本での「俟」から[俣−天+矢]への変化の方が、中国での「侯」からの変化より先であるということがわかれば、和製異体字とするが、後ということになれば、別字衝突であっても、国訓とする。[俣−天+矢]の中国の例より古い例をご存知の方は、ご教示いただきたい。『大字源』は、巻末の『国字一覧』にも「俣」のみで[俣−天+矢]を載せない。『新大字典』にもない。「俣」を参照。

  12. 【休−木+耶】 230901
    国字とされることもあるが、韓国南部の旧国名「伽[休−木+耶]」に関係する事物(伽[休−木+耶]琴・伽[休−木+耶]山など)に用いられる韓国国字である。『漢語大字典』に「〔伽[休−木+耶]琴〕朝鮮樂器名」、『大漢語林』・『大漢和辭典』(補巻)に「ヤ 伽[休−木+耶](カヤ)は、任那(ミマナ)の古い呼び名。古代、朝鮮半島南部にあった国の名。伽羅」とある。

  13. 【働】
    働(かせぎ)は、岡山県和気郡和気町の地名。『文明本節用集』・『饅頭屋本節用集』・『黒本本節用集』・『増刊下学集』・『弘治二年本節用集』・『早大本節用集』・『天正十七年本節用集』・『天正十八年本節用集』・『合類節用集』・『書言字考節用集』・『異體字辨』・『和字正俗通』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ハタラク」、『明応五年版節用集』・『大谷大学本節用集』・『運歩色葉集』に「ハタラキ」、『伊京集』に「ハタラク トウ」、『黒本本節用集』に「ハタラク 人―」、『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』に「[巷−己+土] ハタラク 動 働 訛」、『運歩色葉集』に「ハタラキ 動 同」、『合類節用集』に「ハタラク 又[持−寺+養]同」、『同文通考』に「ハタラキ 活也動也」、『國字考』に「ハタラキ 古本節用集に見え(中略)人動乃意にて作れるものにてこれ又近き代の文字なるへし」、『倭字攷』に「ハタラキ 運動 和爾雅 続和漢名数 从人从動、会意也」とある。『和爾雅』には、「倭俗ノ制字」として「ハタラキ 動ノ字或運ノ字ヲ用宜」とある。『名義抄(観智院本)』で「ハタラク」の訓があるのは「跳・[鮎−占+各]」のみで「働」の字はない。このごろには「働」の字はまだなかったのであろうか。『中華大字典』・『中文大辭典』などに「日本字」とある。『字鏡抄』に「リョウ リャク 掠 俗 トフ ハコ ノリ コハシ カスム ウハウ カタム アツム ウツ」とあるのは別字を書写時に誤ったものか。『辞書にない「あて字」の辞典』が、梶井基次郎『書翰』・永井荷風『荷風随筆』から「自働車」と引用し「=自動車」、長谷川四郎『張徳義』から「自働的」と引用し「=自動的」とする。『運歩色葉集』に「ハタラキ 動 同」とある用法が、かなり近い時代まで残っていたことがわかる。このような事例に対して『大系漢字明解』に、「ドウ ハタラク 動の俗字なり。勞働、自働は勞動、自動なり。」とある。これらからすると、国字として作られたものではなく、「動」の和製異体字としてできたものが、「労働・働く」などの場合にのみ用法が残り、国字と考えられるようになったものとも考えられる。中国・台湾の漢字規格にもある。

  14. 【円】
    『中華字海』が『清稗類鈔』を典拠に「同圓」とする。国字でないと考えられるが、「圓」から「円」に変化する途中の形といわれる[同−(一*口)+(丿*一)]の字形が中国の字典に発見できない。民間俗字として載らなかっただけとも考えられるが、あるいは、日本から逆輸入されたものが、『清稗類鈔』に載ったものか。『解説字体辞典』にも詳しい。[同−(一*口)+(丿*一)]は、『有坂本和名集』に「ヱン」とある。

  15. 【冷−令+土】 290301
    【冷−令+土】 高知県高岡郡窪川町に[冷−令+土]の川(ぬたのかわ)がある。窪川町税務課及び町民課で聴取により調査した結果によると、辞書などにある「汢ノ川」はこの地名の誤りであることがわかった。この情報は、『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』にも反映していただいたが、漢和辞典等でこのこと書いているのは『漢字源』のみである。『漢字源』は、この文字を掲出したことは評価できるが、「汢」の異体字と扱っており、地名は「汢ノ川」のままで、[冷−令+土]の川(ぬたのかわ)に訂正されていないのは残念である。

  16. 【冴】
    『中華字海』に「同訝。見《日文漢字対照表》」とある。

  17. 【凧】
    凧の峰(たこのみね)は、長野県佐々市の地名。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「タコ」とあり、『国字の字典』が「紙鳶(たこ)」の意の国字とする。『日本人の作った漢字』は山田俊雄氏の『近世常用の漢字−雑俳『新木賊』の用字について−』から「いか」と引いて国字とする。『書言字考節用集』に「鳳巾 イカノボリ」とある。この字の省画合字か。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  18. 【凪】
    『同文通考』に「ナギ 風止也」、『正楷録』(倭楷)に「奈気」、『國字考』に「ナキ 風止乃意」とある。名古屋市港区潮凪町など地名にも多く使われる。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  19. 【凩】
    苗字に凩(こがらし)がある。『文教温故』に「こがらし 連歌の懐紙の爲メに造れる文字なるよしこれを新在家文字といふ」、『書言字考節用集』に「コガラシ 本朝俗字」・『異體字辨』に「コガラシ」、『同文通考』に「コガラシ 風木ヲ落ス也」、『和字正俗通』・『倭字攷』に「コカラシ」、『國字考』に「コカラシ 風木越吹乃意にて作る」とある。韓国でも日本の用法を輸入して漢字規格にも含まれている。『女真語言文字研究』を見ると女真文字にも似た形の文字があるが偶然類似したものであろう。国字であることに間違いはないと思われる。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  20. 【克/力】 2d0701
    『国字の字典』が『大字典』から「@かつAつとむBけやけし」と引き、国字とする。『朝鮮本龍龕手鑑』に「苦勒切自強也」とある。『新撰字鏡天治本』・『篇目次第』・『音訓篇立』にも反切があり、『拾篇目集』に「コク」、『弘治二年本倭玉篇』に「コク カツ」とある。国字ではない。

  21. 【匂】
    『中華字海』が『龍龕手鑑』を典拠に「同丐」とするほか典拠を示さず「同匈」とする。『篆隷万象名義』・『名義抄(観智院本)』などの日本の古字書にもこれらの解説がある。『名義抄(観智院本)』は、下に解説する字形で、「匂」を正(字)とし、「匈」のやや崩れた字形を今(字)とするが、逆ではないだろうか。『中華字海』で「同丐」・「同匈」とされる文字も、日本の国字とされる「匂」も元ととなった文字が崩れてできたほぼ同形の別字であると考えられるが、この辞典では国字とする処理をしない。同形別字であるか、国訓であるか明確な根拠を持って判断することができない文字がほとんどであるため、この辞典では、それらを全て国訓とする処理を行っているためである。韓国の漢字にもあるが、『漢韓最新理想玉篇』は日本字とする。『名義抄(観智院本)』に「カヽル アナクル カホル ニホフ マカル」、『玉篇略』に「ニホウ」、『異體字辨』に「ニホフ」とあるが、字形は、[句−口+ヒ]に近い形で、「ヒ」の第一画は、「一」の様に左から右に書かれた形なっている。『中華字海』が『龍龕手鑑』を典拠にする字形も最終画は、撥ねるものの、そのほかは、『名義抄(観智院本)』・『異體字辨』の字形と同じである。「同匈」とする文字は、国字とされる「匂」と全く同形である。『中華字海』は、日本の地名用字や、「常用漢字表」の字形を多く取り上げるが、この文字については、日本での用法を示さない。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ニホヒ」、[句−口+ヒ]の字形で、『拾篇目集』に「カク反 ニホヒ カタヒ コフ」、『音訓引古文書大字叢』(異体字一覧)に近世文書に頻出する「句」の異体字ととある。

  22. 【匁】
    『日本人の作った漢字』が『近世常用の漢字−雑俳『新木賊』の用字について−』から「もんめ」と引いて国字とする。韓国の漢字規格にもあり、『漢韓最新理想玉篇』は日本字とする。「文メ」の合字とされることもあるが、実際には「錢」の異体字として同様な字体が、中国・日本ともに存在しており、その一つと考えられ、国字ではない。その実例を示すと『正楷録』・『倭楷正訛』に[匁−(匁−勹)+人]が、『天正十七年本節用集』などに[狩−守++ヽ]がある。『中華字海』は『篇海』を典拠に[狩−守++ヽ]に似た字形を示し「同錢」とする。『書言字考節用集』にも『中華字海』に近い字形である。『中華字海』・『書言字考節用集』は、第2画が第1画を貫かず、第3画・第4画で「从」の字の旁に近い字形をとる点では似た字形である。『中華字海』の字形は第3画が構えの内外を貫き、第4画が構えの外にあり、『書言字考節用集』の字形は第3画が構えの中にあり、第4画が構えの内外を貫く点がやや異なる。『書言字考節用集』は、「イチモンメ」の「モンメ」の外、「イッカンメ」の「メ」にもあてられている。「錢」の旁が崩れて、『中華字海』が典拠とする『篇海』の字形となり、それが『書言字考節用集』の字形・『正楷録』などの字形を経て現在の「匁」になったものと考えられる。以上から「匁」は「錢」正確にはその旁からできた文字で、「文メ」の合字説・「泉(せん)」の字が崩れてできたとする説・国字説は誤りであることがわかる。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「モンメ」とある。

  23. 【句−口+タ】 2e0301
    NEC拡張文字にあるほか台湾の漢字規格にあるが、『中華字海』に は「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。『中華大字典』・『中文大辭典』・『臺語大字典』・『漢語大字典』などになく、台湾での意味用法等は未詳である。『世尊寺本字鏡』に「モチ音 ナシ」とあり、『古辞書音義集成』の索引では、「勿」とされている。『字鏡集寛元本』にも「モチ ソ 竈後穿 クトシ ナシ」とある。『「7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合(案)」の公開レビュー』が『第3・第4水準公開レビュー漢字用例集(案)』で久米正雄『学生時代』から「[句−口+タ]忙(そうぼう)」と引用している。前者(古辞書)は「勿」、後者は「怱」の異体字か。後者の用例として『日本大辭典言泉』から「[句−口+タ]遽(そうきょ)」・「[句−口+タ]劇(そうげき)」・「[句−口+タ]忙(そうばう)」が追加できる。これらの用字は、3語とも[句−口+タ]の部分が、[總−糸]・[怱]で始まる用字の後に最後の3番目にでてくる。『大辭典』は、「[句−口+タ]遽」のみ『日本大辭典言泉』と同じ用字であるが、他の語の用字は、「怱劇・[總−糸]劇」・「怱忙・[總−糸]忙・躁忙」となっている。『日本国語大辞典』は、「怱遽」はこの用字のみ示し、他の2語は、「怱劇・[総−糸]劇」・「[総−糸]忙」と用字を示す。このことから、[句−口+タ]の字は、大正ないし、昭和初期までは、「怱」などのかわりに使われたことがあるが、昭和10年代から遅くとも戦後には一般的な用字ではなくなってきたことがわかる。『日本大辭典言泉』においても、[句−口+タ]で始まる語は、この3例のみで、「怱」などのかわりにこの字が常に使えるというのでもないようだ。この3語は、「忙しい・せわしい」の意を表す語で、この場合に限定して用いられた特殊な用字法であったともいえる。『JIS X 0213:2000附属書6(規定)漢字の分類及び配列』(第3水準漢字集合)の「用例及び用例音訓(参考)」に「ソウ「[句−口+タ]忙」(そうぼう)/久米正雄『学生時代』・文芸◇芥川龍之介『秋』・文芸 →匆(1-50-18)」とあり、上で『「7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合(案)」の公開レビュー』の『第3・第4水準公開レビュー漢字用例集(案)』に基づき示した「怱」の異体字説は、正しくなかったかのように見えるが、『大修館漢語新辞典』には「「怱」の同字」とあり、誤りではなさそうである。

  24. 【区】
    『漢語大字典』・『中華字海』に「區的簡化字」とあるが、『中華大字典』にはない。『宋元以来俗字譜』所収の『古今雜劇三十種』に似た字形として[区−メ+ヌ]がみられるが「区」はなく、偏などにある場合も同様である。『簡化字源』に「1935年制訂的《手頭字第一期字彙》首次提出與現行簡化字完全相同的“区”字」とあり、中国においては、ごく新しい字形であることが推量される。

  25. 【叺】
    『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「カマス」とあり、『国字の字典』が「蒲簀」の意の国字とする。『字彙補』に「音尺」とあるほか、『漢語大字典』などが『篇海』などを典拠に反切を示している。国字ではない。『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』では未詳となっており、『運歩色葉集』に「ドット」、『音訓篇立』に「ハツ反」とある。『運歩色葉集』の注文は、鬨(とき)の声を一度にあげたりする意であろうか。『音訓篇立』の音注は、「叭」との関係も考えられる。「かます」の意で作られた文字でないことは確かであろう。中国で義が失われ、音のみ残る文字であるので、国訓といえるか否か不明である。苗字に叺田(かますだ)・叺村(うねむら)がある。後者は「畝」の異体字[田+人]に関係があるのだろうか。

  26. 【吋】
    「インチ」の意の音訳字。『漢語大字典』は、『篇海類編』などから「叱也」などと引用するほか、英寸的旧称とする。外来語に口偏をつけてその音を表すことは台湾・香港を含め中国南部の地域でよく行われることであり、国訓なのか中国で使われ始めたものなのかはっきりとしない。

  27. 【听】
    「ポンド」の意の音訳字。『漢語大字典』は、『説文解字』を典拠に「笑貌」、『廣韻』を典拠に「口大貌」、『玉篇』を典拠に「仰鼻」、『正字通』を典拠に「同聽」とするが、ポンドの意の解説はない。『大漢語林』は、「ポンド(封度)。イギリスの貨幣、又重さの単位Poundのあて字。」として日本での用法とする。『音訓篇立』に「コン音 ヨロコフ ワラフ」とある。『国語大辞典』(小学館)に、「きん【听】きん(「听」は「ポンド」の当て字)もと、洋紙一連が五〇〇枚を単位としていた時、その重量を表示する単位。ポンド。」とある。この場合は一定した重さではないのであろうか。「吋」を参照。

  28. 【呎】
    英米の尺度の単位「feet(フィート)」の意の訳字。『角川漢和中辞典』に「国字 フィート(下略)」、『旺文社漢和中辞典』に「国字 シャク フート フィート(中略)国字であるが中国でも用いる。」、『大漢語林』に「セキ フィート(下略)」とある。『漢語大字典』に「英尺的旧称」、『中華字海』に「英制長度単位之一,今写作英尺」とある。[叺−入+升]とともに単位をあらわすためにのみ使われる文字か。「吋」を参照。

  29. 【叺−入+升】 310401
    英米の容積の単位「gallon(ガロン)」の意の訳字。『角川漢和中辞典』に「国字 ガロン(下略)」、『旺文社漢和中辞典』に「国字 ショウ ガロン(中略)国字であるが中国でも用いる。」、『大漢語林』に「ショウ ガロン(下略)」とある。『漢語大字典』に「英、美容量単位加侖(Gaiion)的旧訳名。」とあり、『中華字海』も同様である。「呎」とともに単位をあらわすためにのみ使われる文字か。『文字ノいろいろ』(國字)に「グラム」とあるのは、誤りであろう。「吋」を参照。

  30. 【咄】
    「はなし」の意の国字とされることがあるが、『説文』にもあり、咄嗟などの熟語を作る漢字であり、「はなし」は国訓である。『名義抄(観智院本)』に「アヤニク ヤ」とある。なお「噺」は国字である。

  31. 【叺−入+打】 310501
    「ダース」の意の音訳字。『字彙補』に「飛[叺−入+頼(旧字体)][叺−入+打]倭地名音闕」とあり、日本の地名用字として諸書に引用されるが、読みは不明である。長崎の平田のことであろうか。「吋」を参照。

  32. 【叺−入+它】 310502
    『国字の字典』が『広辞苑』から「叱―(しった)。怒気をあらわして大声でしかること。叱―激励。」と引き国字とする。『龍龕手鑑』に「[叺−入+它][施−方+口]二俗音[施−方+(阿−可)]」とある。国字ではない。『広漢和辞典』・『大漢語林』には「タ 咤の俗字。」とあるが、『大漢和辭典』にはない。

  33. 【哘】
    苗字に哘(こうなら・さけび・さそう)、哘崎(こうさき・さそざき・ゆきざき)がある。哘(さそう)は青森県上北郡天間林村の地名。丹羽基二編著『姓氏の由来事典』(県別姓氏青森県)に哘(さけび)がある。青森地方の方言字のようにも見えるが、『名義抄(観智院本)』に「サソウ」、『字鏡鈔』に「カタシ」とあり、地域的な文字ではない。国字であることに間違いないと思われるが、古壮字にも「欺侮・欺負」の意である。

  34. 【哩】
    『漢字要覧』を典拠に『国字の字典』が「マイル」の意の国字とする。『龍龕手鑑(朝鮮本)』に「力忌切出陀羅尼経」とある。国字ではない。『名義抄(観智院本)』に「[哩−田+日] 哩 俗 ヒソカニ」、『字鏡鈔』に「力忌反 ヒソカニ」、『法華三大部難字記』に「月ノクルマ」とある。(解説途中)

  35. 【喰】
    『龍龕手鑑』に「[殊−朱+食]音孫以飲澆[飯−反+卞]也 喰同」とあり、国字ではない。『漢語大詞典』などに『敦煌変文集』からの引用もあり、『中華字海』は「音餐同餐」とする。音のみ伝わっている文字とは異なる。なお意味的にも近く、国訓ともいえないであろう。『名義抄(観智院本)』に「俗[喰−口+タ]字 孫音 クラフ ハム」、『名義抄(蓮成院本)』に「俗[喰−口+タ]字 孫字 クラフ」とあり、そのことを裏付けているとも言える。『音訓篇立』に「サン音 ナメ ハム クラフ」とある。新しい漢和辞典においても『旺文社漢字典』・『岩波新漢語辞典』(第2版)・『現代漢語例解辞典』(第2版)は、旧態依然と国字とするが、『全訳漢辞海』は国訓ともせず、「餐」に通じるとし、優れている。やや例示字形が違うが、韓国の漢字規格にもある。

  36. 【百*合】 310901
    苗字に[百*合]野(ゆりの)がある(『JIS X 0213:2000附属書6(規定)漢字の分類及び配列』(第4水準漢字集合))。『岩波新漢語辞典』(第二版)・『大修館漢語新辞典』に「国字 ゆり」とある。

  37. 【叺−入+留】 311001
    『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「けいせい咬[叺−入+留][叺−入+巴]恋文(けいせい じゃがたらぶみ)明和7年2月初演」とあるなど、歌舞伎の外題に[叺−入+交][叺−入+留][叺−入+巴](じゃがたら)と読ませているものがあるが、『和漢三才圖會』にもあり、当時一般の用法であったと思われる。『大谷大学本節用集』に「[叺−入+即][叺−入+留] シツリウ」とある。『国字の字典』が歌舞伎の例を引き国字とするが、『玄應一切經音義』に「力求反又力救反」とあり、国字ではない。『国語大辞典』(小学館)に「ジャガタラ【咬[叺−入+留][叺−入+巴]】1(オランダJacatraから)インドネシア、ジャワ島のジャカルタの古称。また、ジャワ島の日本近世以来の呼称。バタビア。2(中略)じゃがたらいも【ジャガタラ芋】 ジャガいも。(下略)」とある。『岩波新漢語辞典』(第二版)には漢音「リュウ(リウ)」、意味として「音が澄んでひびく。(下略)」とある。用例は、『JIS X 0213:2000附属書6(規定)漢字の分類及び配列』(第4水準漢字集合)の「用例及び用例音訓(参考)」にも詳しい。

  38. 【噸】
    1トン(屯)の意。笹原宏之著『メートル法単位を表す国字の製作と展開』に「国字でないようで、ロンドン・レキシングトンなどの音訳に使われ、かつヤード・ポンド法の重量・容量・積載能力にも使う」とある。高松政雄著『倭字小考』に「近代の「働」や「噸」はこちらから輸出したことが明らかである」とある。国字であるにしてもそうでないにしても地名のあて字の用例は、明治元年までは遡ることができる。

  39. 【噺】
    苗字に噺(はなし)がある。『正楷録』(倭楷)に「法奈矢」、『和字正俗通』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ハナシ」、『倭字攷』に「ハナシ 燕石雑志」、『大系漢字明解』に「ハナシ 亦邦字なるべし 新話の義か。」とある。韓国の規格にもあるが、『漢韓最新理想玉篇』に「日本字 古談」とある。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  40. 【囎】
    苗字に囎唹(そう そお)・囎田(しょうだ)がある。囎唹(そお)郡は鹿児島県曽於郡の旧表記。

  41. 【囲】
    『中華字海』が『篇海類編』を典拠に「音通。策」、日本の『同文通考』を典拠に「音圍。同圍」とする。後者の意味に対する典拠がたまたま見つからなかったのであろうか。日本からわたった用法とも考えられる。

  42. 【国】
    『国字の字典』が「國」の意の国字とする。『同文通考』の省文にある字形は、『簡化字源』が南北朝碑刻からとする字形とほとんど同じである。常用漢字と同じ字形も『簡化字源』が敦煌の変文から引用している。「國」の異体字に関する詳しい研究論文に笹原宏之著『字源説、字源意識、文字に対する意識が字体に与えた影響−「國」の異体字に関して−』がある。この論文でふれられる「國」の異体字は、中国典拠のものが25種類、日本典拠のものが25種類、重なりを省けば35種類で、「國」を含めれば36種類が考察の対象とされている。重複するものの一部は、日本典拠のものの方が中国より古いが、ほとんどは中国からもたらされたもので、「国」もそのひとつである。中国では、六朝時代頃までさかのぼれるが、日本では平安時代までということである。全くの漢字であると考えられる。

  43. 【国−玉+書】 321001
    図書館の意味で1925年頃作られた漢字で、中国人杜定友の作であることが昭和初期の雑誌『[国−玉+書]研究』に出ており、同書によると『[国−玉+書]』という雑誌名に使われ、日本で普及したため、中国でも日本字と思われていたことがあるようだ。JIS補助漢字にあるほか、台湾の漢字規格にもある。

  44. 【圦】
    苗字に圦(いり ふけい ふせ ふせい ゆり)がある。『書言字考節用集』に「イリ 本朝ノ俗字。音義未詳」、『和字正俗通』(妄制)に「イリ」、『倭字攷』に「カマス イリ」とある。

  45. 【圷】
    苗字に圷(あくつ)がある。圷(あくつ)は、地名としても茨城県多賀郡東海村ほか茨城県内各地に多く点在し、栃木県でも見られる。上圷(かみあくつ)は、茨城県東茨城郡桂村の地名。

  46. 【圸】
    山形県長井市大字小出に字圸の上(ままのうえ)があるとされるが、現在は、「ままの上」になっている。

  47. 【圦−入+丸】 330301
    苗字に[圦−入+丸](くろ)がある。三ツ[圦−入+丸](みつぐろ)は、倉敷市の地名。国字ではあろうが、「塊」の意で字喃にある。

  48. 【垉】
    『龍龕手鑑』に「歩交反」とあるが義未詳であり、『漢韓最新理想玉篇』には「掘也」とあるが典拠が示されていない。『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』など日本の古字書にも「歩交反」と反切を示すものがあり、中国の影響と考えられるが、『漢韓最新理想玉篇』の意味と一致するものはない。『音訓篇立』に「ツカル カフル」とある。愛知県豊田市東保見町に字垉六(ほうろく)がある。笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に、「従来知られていなかったが、この地名から1978JISに採用されたものである。『国土行政区画総覧』は1979.04に「[圦−入+包]六」に1993.10に「抱六」にかえられたが、役所のオンラインでは「[圦−入+包]六」となっているという」とある。

  49. 【垈】
    『音訓篇立』に「ヌク」とある。「ヌタ」の誤りか。『広漢和辞典』に「国字 ぬた 沼田。湿田」とある。地名として『広漢和辞典』に「山梨県北巨摩郡の大垈(おおぬた)」、『国字の字典』に「山梨県八代郡境川村の藤垈(ふじぬた)」がある。『中華字海』が『元史』を典拠に「音代。地名用字[落垈村]」とする。韓国では敷地の意味で使われる。日本では地名として使われるほか古字書で名詞的に用いられている例もある。国字とするか否か微妙な文字である。『大漢和辞典』(補巻)も『広漢和辞典』と同様の解説であり、中国や韓国の用例をとりあげないのは、最大の漢和辞典の補巻としては、片手落ちといわざるを得ない。『岩波新漢語辞典』に「国字 タイ ぬた」とある。音タイの典拠はあるのであろうか。中国・韓国の漢字規格にもある。

  50. 【垳】
    苗字に垳(がけ)・垳田(いけた いけだ いげた がけ)がある。埼玉県八潮市に大字垳(がけ)がある。埼玉県に「1級河川利根川水系垳川(がけがわ)」がある。『日本人の作った漢字』が、東京に垳(がけ)の地名があるというが、発見できない。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「土行 ツチクレ」とある。土塊(つちくれ)や岩がむき出しになった急傾斜地が崖(がけ)であるから、「土行」を合字して「垳」をつくり、「がけ」の意にしたものか。『伊呂波字類抄(大東急記念文庫本)』(十巻)に[圦−入+片]と「垳」の中間的な字形で、「ヒハレタリ ヒハル」とある。

  51. 【垪】
    苗字に垪和(かきわ はが へいわ)・垪和垪(はかい はがい)・垪賀(はが)がある。垪和(はが)は岡山県久米郡旭町の地名。国字とされることも多いが、『龍龕手鑑』に「音[圦−入+冗]」とある。国字ではない。『名義抄(観智院本)』に「俗瓶字 ヒトシ」、『字鏡鈔』に「ヒャウ ヘイ 瓶ほか三字に同じ ヒトシ カメ ツタヘ カイ」、『字鏡集寛元本』に「音ヘイ ヒャウ 瓶ほか三字に同じ ヒトシ カメ ツルヘ カイ」、『拾篇目集』に「ヒトシ チリ」とある。

  52. 【垰】
    丹羽基二著『日本姓氏大辞典』に垰(あくつ たお たわとう とおげ)・垰田(くわだ たおだ たかだ たわだ)などの苗字があり、地名にも多く使われる使われる国字。『文明本節用集』に「タウ」とある。意味的に「峠」に近いが、地域によっては使い分けがあるなど、同義の異体字というわけではない。また『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「姓で、垰から峠へ職権訂正された戸籍が、再び垰に戻された事例がある」とある。『文明本節用集研究並びに索引』の索引篇の表記が、「峠」となっているのは問題である。西村寿行『垰(たわ)』に「垰(たわ)がある。垰と峠は同義語である。ほかにも乢、[岬−甲+乙]、屹、嵶、[遖−南+山]などがある。たお、たわ、とう、だわ、などと読んでいる。いずれも山の鞍部(コル)のことをさしているといわれている」とある。小説内の文章ではあるが、「同義語」とあるのを「類義語」と直すのみで、かなり適切な解説になると思われるので、引用した。

  53. 【圦−入+共】 330601
    『国字の字典』が、福島県白川郡矢祭町大字大[圦−入+共](おおぬかり)を地名典拠として国字とする。『類篇』・『集韻』・『朝鮮本龍龕手鑑』などが、「[圦−入+隶]也」とする。国字ではない。『大漢語林』は、「国字 ぬかり。」として、上の地名を典拠にするが、『大漢和辞典』(補巻)は、『集韻』を典拠に「コウ グ せき。堤防。土手。」とし、「ぬかり」は、国訓とし、上の地名もその中で解説する。やっと『大漢和辞典』(補巻)において正しい解説がなされたことになる。『大修館漢語新辞典』は、「コウ 土で作ったせき(堰)。」とある点はよいが、大[圦−入+共](おおぬかり)を難読に入れ、地名であること、国訓であることの解説がないのは残念である。台湾の規格にもある。

  54. 【圦−入+会】 330602
    苗字に[圦−入+会](こぐれ)がある。

  55. 【圦−入+赤】 330701
    [圦−入+赤]下(はけした)は埼玉県狭山市の地名、大[圦−入+赤](おおはけ)は埼玉県川越市の地名。苗字に[圦−入+赤]下(はけした)がある。古壮字の[圦−入+赤]は[凶−メ+赤]の異体字。

  56. 【圦−入+谷】 330702
    苗字に[圦−入+谷](えき さこ はざま)・[圦−入+谷]口(さこぐち)・[圦−入+谷]田(さこた)・尾[圦−入+谷](おさこ)がある。『中華字海』に「日本地名用字〔登[圦−入+谷]〕在岡山県」とある。国字であることは間違いないであろうが、字喃に「酒杯」の意の熟語を作る文字としてある。

  57. 【埖】
    青森県三戸郡福地村字埖渡(ごみわたし)などの地名に用いられている。『増補改訂JIS漢字字典』に岩手県の地名「埖溜(ゴミタマリ)」がある。[圦−入+危]などの崩れた字形を楷書化してできた文字とも考えられる。

  58. 【塀】
    『名義抄(観智院本)』に「俗屏字 必郢反」、『字鏡鈔』に「ヘイ 屏同カクル カキ サク カラス カハヤ マカキ サヘル ニカウ ヘタツ オサヘ シリソクノソム」、『運歩色葉集』・『大谷大学本節用集』・『伊京集』・『永禄二年本節用集』・『和字正俗通』(借字一)に「ヘイ」、『弘治二年本節用集』に「壁 ヘイ カベ 塀 同」、『新刊節用集大全』に「へい」とある。『龍龕手鑑』に「必郢反」とあるほか、『漢語大詞典』に「人名用字。明代有朱邃塀。《明史》」とある。『漢語大詞典』の人名例は影響が考えられないが、『龍龕手鑑』は日本の音「ヘイ」と反切が一致しており、影響が考えられる。国字ではない。『字通』に「字は『龍龕手鑑』にみえ、人名に用い、明史に「朱邃[塀(旧字体)]」という名がある。」とある。『大字源』に「遼代の韻書「竜龕手鑑」に見え、反切「必郢反」と記すも、字義に触れない。中国での使用及び字義については不明。」とある。

  59. 【塰】
    苗字に片塰(かたあみ かたうみ かたおか)、塰泊(あまどまり)などがある。塰泊(あまどまり)は鹿児島県西之表市の地名。

  60. 【墸】
    「躇」の異体字とされるが典拠を示してあるものはなかったが、『集韻』の一本に「墸」があることを笹原宏之氏からご教示された。ただ止偏の誤刻と考えられ、別本にはないそうである。『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に詳しい。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  61. 【墹】
    苗字に墹仲(ままなか)がある。静岡県田方郡伊豆長岡町墹の上(ままのうえ)など静岡県では数十カ所の地名にも用いられている。『難訓辭典』に伊豆國君澤郡墹上(マノウヘ)村とある。『明朝体活字字形一覧』の「博文四号1914年」にこの文字がある。

  62. 【圦−入+塞】 331301
    『音訓篇立』に「サイ音」とある。『国字の字典』が『広辞苑』から「そく 奈良時代に唐から伝来した漆工技術の名称。(略)俗に乾漆という」と引用して国字とする。『日本考古学用語辞典』の「乾漆」の項に「中国で[圦−入+塞](そく)ともいわれ、夾紵ともいわれている」とある。『中華字海』などにはみられないが、漢字ではないかと考えられる。『JIS X 0213:2000附属書6(規定)漢字の分類及び配列』(第3水準漢字集合)「用例及び用例音訓(参考)」に「国宝「宝相華迦陵頻伽蒔絵[圦−入+塞]冊子箱」」とある。

  63.  【圦−入+會】 331302
    苗字に[圦−入+會](こぐれ)がある。

  64. 【壗】
    神奈川県南足柄市に字壗下(まました)がある。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。[圦−入+尽]参照。

  65. 【壥】
    「廛」の異体字とされることが多いが、典拠が示してあるものはなかった。『米沢文庫本倭玉篇』に「[圦−入+(壥−黒〈旧字体〉+黒)] テン イル イチクラ」とあり、初めて典拠が発見できた。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。日中ともに「纒」が「纏」の異体字であることからしても、和製異体字とは考えられない。『米沢文庫本倭玉篇』の例は、『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』にも採用されたが、完全には同じ字形ではない。『明朝体活字字形一覧』の「博文四号1914年」に「壥」の活字がある。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  66. 【塰−土+士】 341001
    苗字に[塰−土+士]泊(あまどまり)がある。『温故知新書』・『易林本小山板節用集』に「アマ」とある。後者は二字にも見え、前者は、「母」ではなく「毋」になっている。『運歩色葉集』にあるが、完全に二字であり、これも「母」が「毋」になっている。『両足院本節用集』の索引に「アマ」とあるが、影印では読みの「アマ」が読めるのみで、字形はわからない。「塰」参照。

  67. 【妛】
    苗字に妛芸凡(あきおうし)がある(丹羽基二著『苗字 この不思議な符牒』(丹羽基二編『日本苗字大辞典』は[山*女]芸凡とする)。[山*女]の字は、『中華字海』が魏時代の墓誌に見られる文字として「同安」とする。苗字の例も「安」の異体字と考えられる。笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に、「従来[妛−山+屮]の異体字とされていたが、原典とした『国土行政区画総覧』で滋賀県犬上郡河内通称[山*女]原(あけんばら)の[山*女]の字の作字をした際に紙の影が写り、JIS選定時に「妛」と誤認され転写されたのである」とある。「妛」の字で、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「シ 之 アサムク」、『字鏡集白河本』に「シ アサムク」とあり、この場合は[妛−山+屮]の異体字であろうか。また[山*女]の字で、『名義抄(観智院本)』などに「アサムク」、『温故知新書』に「アケヒ」とある。その他実例は笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に詳しい。

  68. 【姉】
    『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。『康煕字典』など女偏の4画に掲出されながら「姉」の字形をとるものがある。和製異体字というわけではない。

  69. 【好−子+花】 340701
    『運歩色葉集』に「ユヽシ」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ハデ」とある。『大漢和辭典』が『和漢三才圖會』を典拠に、『国字の字典』は『和字正俗通』を典拠に「伊達(だて)」の意の国字とする。韓国の規格にあるが、『漢韓最新理想玉篇』は、日本字とする。『中華字海』には「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  70. 【好−子+采】 340801
    『国字の字典』が『異体字解読辞典』を引き「采(うね)女(め)」の意の国字とする。『国字の字典』は、「康煕字典に同字がある」としながら、国字としている。これは、国字を考えるうえでの基本的な部分に問題がある。

  71. 【好−子+感】 381302
    『万葉集』などで「おとめ」の意に使われる国字である。『漢語大字典』などが「同[好−子+今]」とするが、典拠は新しく清代の『河南府志』である。国字といえる。『倭字攷』に「萬葉一(中略)[好−子+感]嬬(中略)萬葉巻一ナル歌、巻十五ニ重出シテ、假字に乎止女(オトメ)トカケリ、コレニテ[好−子+感]嬬ノ読ミヲシレリ、字書ニ[好−子+感]ノ字ナシ(中略)感嬬トカキケンヲ、感ノ字嬬字ニアヤマリテ、女ニ从ヒ[好−子+感]トカケル(下略)」とある。

  72. 【嬶】
    『国字の字典』が『大字典』から「かか 国字 卑しき人が妻を呼びて言う語。(略)夫に対して鼻息の荒き女房の義か」と引く。『新撰字鏡天治本』に「[嚊+(謁−言)−口] 信割反入波奈久支又波奈弥祢 嬶 上字同」とあり、国字だとしても鼻息の荒い女の意で近代作られたとする俗説はしりぞけられなければならない。『大漢語林』に「国字 かかあ。かか。妻の俗称=嚊」、『旺文社漢字典』に「国字 かかあ」とあるのは妥当なところであろうが、解字で、『大漢語林』が「会意。女+鼻。鼻に女をつけて、鼻についた女、かかあの意味を表す。」、『旺文社漢字典』が「会意。女と鼻とを合わせて、鼻息のあらい女性の意という。」とするのは、正確ではないし、妥当でもない。『学研現代新国語辞典』に「かかあ【嚊・嬶】
    〔俗〕庶民社会で、妻を親しんで呼ぶ語。かか。(下略)」とあるほか、国語辞典では、「親しんで呼ぶ」とするものなど、「かかあ」ということばに好意的な解説が多いが、漢和辞典では、字面に引かれたのか、そうではない解説が多い。『新撰字鏡天治本』にあることを知らずに、同形別字でそのような意味で造られた可能性があるにしても、『新撰字鏡天治本』にあることや、国語辞典の好意的な解説などを排除して、「鼻についた女」・「鼻息のあらい女性」といった解説をすることは好ましいこととは考えられない。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  73. 【宝】
    『中華大字典』に「俗寶字」、『漢語大字典』・『中華字海』に「寶的簡化字」とある。これらには典拠がないが、『宋元以来俗字譜』が調査対象とした12種の文献全てに「寶」の意で現れてくるポピュラーな俗字といえる。漢字そのものであり、『宋元以来俗字譜』も入手困難な書籍ではないが、漢和辞典等には典拠が添えられていないので、引用しておく。

  74. 【宝−玉+(畄−田+ホ)】 3a0701
    『國字考』に「ウツホ」とあり、『国字の字典』が「羽壺」の意の国字とする。

  75. 【鼡】
    『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「田鼡 ノラ子」また「天鼡矢 クス子」とある。『大漢語林』・『大漢和辭典』(補巻)に「ソ 鼠の俗字」とあり、「鼠」の一異体字にすぎないと考えられるが、『中華字海』には、「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。あるいは、和製異体字かとも考えられるが、[蝗−皇+鼡]が『中華字海』にあることからするとそうではないと考えられる。当辞典では部首は、『大漢語林』に準じているので、『大漢和辭典』(補巻)の「几部」、『増補改訂JIS漢字字典』の「鼠部」とは異なる。

  76. 【乢】
    苗字に乢(たわ)がある。『国字の字典』は、「鳥取県岩美郡岩美町高住字乢(たわ)」などの地名を国字としてあげるが、同書には、『康煕字典』にあることも書かれている。『大修館現代漢和辞典』国字索引や『新字源(改訂版)』(国字・国訓一覧)・『漢語林』(国字・国訓一覧)も国字とする。『漢語大字典』が『龍龕手鑑』を引いて「音盖」とし、『中華字海』が『朝鮮本龍龕手鑑』を典拠に「同丐」とする。国字ではなく、国訓であると考えられる。「『漢語大字典』を幾度となく引き直して定稿とした。」とする『全訳漢辞海』が国字とするのは、それが国字説のある文字の検証にまでは至っていないということであり、残念である。台湾の漢字規格にもある。

  77. 【岬−甲+乙】 3h0101
    『難読難解日本語実用辞典』が、「(たわ)国字。峠のこと。山と参道のカーブを文字化して峠の意を表している。」とするが、『字彙』に「山曲也」とあり、国訓でもないと考えられる。

  78. 【屶】
    山刀(なた)の合字で、なたの意を表し、苗字や地名に用いられる。『龍龕手鑑』に「音会」、『中華字海』に「同会」とあり、国訓である。笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に、JISの典拠として『国土行政区画総覧』から山形県長井市九野本通称屶柄(なたづか)が引かれている。ただ原典の『国土行政区画総覧』は「屶」の「刀」を「力」に誤植しているとのことである。『大漢和辞典』(補巻)に国字とあるが、『大漢和辭典』には『龍龕手鑑』が多く引かれていることを考えると、『大漢和辞典』(補巻)編者は、国字との思いこみから『龍龕手鑑』の調査を怠ったものと考えられる。『学研全訳漢和辞典』には音「カイ」意味の項目に日本での意味として「なた。薪などを割る刃物」とあり、国字とはしない。『増補改訂JIS漢字字典』に「人名 タカシ 姓 屶網(なたあみ) 地名 ナタ 屶振山(ナタブリヤマ・福島) ナダ 上屶振 (カミナダブリ・福島)」とある。

  79. 【岼】
    苗字岼(ゆり)や京都府天田郡三和町の地名岼(ゆり)に使われる。国字とされることが多く、『中華字海』にも日本地名用字とある。『新撰字鏡小学篇』・『世尊寺本字鏡』に「彼萠反豆也」とある。この「豆」は「たかつき」のことと考えられる。山腹にある「たかつき」の様な上の平らな地形という意味で、この字が当てられたのかもしれない。反切もあることから、佚存文字に対する国訓ということも考えられる。

  80. 【峅】
    苗字に岩峅(いわくら)がある(丹羽基二著『苗字の謎(珍姓富山県)』)。岩峅寺(いわくらじ)・岩峅野(いわくらの)・芦峅寺(あしくらじ)は、富山県新川郡立山町の地名。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「クラ」とある。

  81. 【岾】
    大岾(おおはけ)・岾野(はけの)は埼玉県所沢市大字南永井の小字、岾(はけ)は同市大字坂ノ下の小字(所沢市役所にて調査)。JISの原典典拠の京都市左京区浄土寺広岾町(じょうどじひろやまちょう)は『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「現在では広帖町(こうちょうちょう)に改められている」とある。これより後に出た『大漢和辭典』(補巻)が、京都のこの地名のみ扱い、「やま」の読みで国字としているのは残念である。『世尊寺本字鏡』に「コ音 古都反 [岬−甲+己]也 无草山」、『篇目次第』に「テウ反 ヤマ」、『法華三大部難字記』に「タカシ」とある。[岬−甲+古]などの異体字であろうか。『角川日本地名大辞典(埼玉県)』の「小字一覧」に大[岬−甲+古](おおはげ)・[岬−甲+古]野(はげの)とある。『角川日本地名大辞典(埼玉県)』に誤りがないのであれば、JIS漢字制定以後にコンピュータ化する際に[岬−甲+古]を「岾」に誤った可能性もある。国字といわれることもあるが、嶺の意の地名用字として永郎岾・楡岾寺が韓国にあり、即断はできない。音をセンとつける字書があるが、典拠はあるのだろうか。

  82. 【峠】
    中峠(なかびょう)は千葉県我孫子市の地名。『運歩色葉集』・『異體字辨』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「タウゲ」、『合類節用集』に「タウゲ 字未詳或ハ倒下ト曰」、『同文通考』に「トウゲ 嶺也嶺ハ高山之踰テ而過ク可キ者也」、『和字正俗通』に「トウケ」また対応する漢字として「嶺」、『倭字攷』に「タウケ 嶺 ○和爾雅 和漢名数 音訓國字格(中略)从山从上下、皇國會意之字」とある。『和爾雅』には、「倭俗ノ制字」として「タウゲ 嶺ノ字ヲ用宜」とある。韓国の漢字規格にもあるが、『漢韓最新理想玉篇』は日本字とする。『中華字海』にもあるが典拠がなく、新しい文字か日本の国字を輸入したものか。国字であると考えられる。

  83. 【炭−灰+足】 3h0702
    『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「フモト」、『世尊寺本字鏡』に「ヤマノフモト」、『篇目次第』に「フモト 无」とある。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「麓 フモト ロク 山足」、『篇目次第』に「麓 力木切 ロク反 フモト 山足也」とある。「山足」を「ふもと」と読むことから合字してできた「梺」とは別系統の国字か。炭−灰+脚]・「梺」参照。

  84. 【嵶】
    『地名レッドデータブック』に岡山県荘内村迫間嵶(はざまだお)・同県可知村鳥打嵶(とりうちとうげ)・同県鶴山村嵶山(たおやま)などがある。

  85. 【炭−灰+都】 3h1101
    『JIS X 0213:2000附属書6(規定)漢字の分類及び配列』(第4水準漢字集合)の「用例及び用例音訓(参考)」に「地名 セイ 徳島県[炭−灰+投][炭−灰+都](とせい)」とあり、『大修館漢語新辞典』・『漢字源』に「国字」とある。

  86. 【炭−灰+脚】 3h1102
    『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「山ノフモト」、『世尊寺本字鏡』に「ヤマノフモト」、『字鏡集白河本』に「キャク 山ノフモト」とある。[炭−灰+足]と同様の考えで作られた国字か。[炭−灰+足]・「梺」参照。

  87. 【広】
    『中華字海』に「同廣。見日本《常用字表》」とある。『中文大辭典』に「廣之簡字」とある。和製異体字か否か難しいところである。

  88. 【応】
    『中華字海』に「同應。見日本《常用漢字表》」とある。和製異体字か。

  89. 【弖】
    『大漢語林』などが国字とする。『龍龕手鑑』に「互戸二音」とある。「低・砥など」の旁が「弖」になることは、日中ともにあることで、「弖・[休−木+弖]・[石+弖]」はそれぞれ「[砥−石]・低・砥」の異体字で、国字ではない。[休−木+弖]を参照。『名義抄(観智院本)』に「丁計反 都礼反 トク イサヽカニ 天根− エラフ アヤカル アヤマル ヲカス」、『名義抄(蓮成院本)』に「丁計都礼二反 イサヽカニ アヤマル 天根− トク エラフ アヤカル ヲカル」、『篇目次第』に「テイ反 [砥−石]同歟 タル ム子 无」とある。

  90. 【彁】
    謌の草書体を介してできた異体字とするなどして「音カ」とするものがあるが、それ以上の根拠があるわけではない。「JIS X 0208-1997」で典拠・暗合及び何らかの文字の誤記であることがわからなかった唯一の文字である。『中華字海』には、「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  91. 【往−主+建】 3v0901
    『最新JIS漢字辞典』が「健」の意の国字とする。『正字通』に「健 俗作[往−主+建]」とある。『漢語大字典』は、『正字通』の他、『疊雅』・『天工開物』などを典拠に「同“健”」とする。『同文通考』にもやや崩れた字形で、「タケシ 俗ノ健ノ字」とある。漢字そのものである。

  92. 【恷】
    多くの漢和辞典で音義未詳とされたり、類推音が付けられたりしている文字である。『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「JISの原典典拠は日本生命人名表。ただし、用例は不明。NTT固有名に恷志(ヤスシ・ヨシユキ)など19件の用例がある」とある。このことから「烋」の異体字と考えられる。『新刊節用集大全』に行書体で「烋 さいハひ」、楷書体で「恷」とある。それぞれ「述」の字のように右肩に点がつくが、手書き時にはよくおこることで、「烋・恷」と同字と考えられる。「烋」の字の[烋−休]を「心」の崩れたものと考え、楷書化する際に「恷」の字を作ってしまったという歴史は、1600年代まで300年も遡る可能性が大きくなったといえよう。10世紀の中国の書籍を元に作られた『楷法辨體』に「煎」の俗字として[恷−休+前]があることを考慮すれば、中国でもこのような変化が起きる可能性は否定できないが、中国の辞書などに発見できないので、現時点では「烋」の和製異体字としておく。『大漢語林』に「音義未詳。烋の誤字か。」とあるのは、誤った類推ではなかったことがわかったといえる。漢和辞典などで「キュウ」という音や「もとる」という訓がつけられたりすることがあるが根拠があるのだろうか。

  93. 【恷−休+邪】 410801
    『音訓國字格』を典拠に『倭字攷』に「ナマシヒ」とある。『広漢和辞典』が「憖」などの誤字として国字とする。[恷−休+(牙+攵)]の異体字と考えられ、国字ではない。

  94. 【恷−休+(牙+攵)】 410901
    『國字考』に「ナマシイ 此字[圦−入+蓋]嚢抄下學集 古本節用集に見え(下略)」とあり、『国字の字典』が国字とする。『広漢和辞典』も「憖」などの誤字として国字とする。『中華字海』が唐の『宗[球−求+景]碑』から引用しており、意味も同じであるので国訓でもない。『名義抄(観智院本)』に「コワシ ナマシヒ トヽノフ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「シ ナマシヒ トヽノフ コハシ」、『篇目次第』に「ナマシヒ トヽノフ 无」、『拾篇目集』に「ナマシイ コハシ トヽノフ」、『明応五年版節用集』・『増刊下学集』に「ナマシイニ」とある。『世尊寺本字鏡』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』・『天正十七年本節用集』には異体字の記述もある。漢字そのものである。『新字源(旧版)』(国字・国訓一覧)に「なまじひ」とあるが、『新字源(改訂版)』(国字・国訓一覧)では削除された。[恷−休+邪]参照。

  95. 【恷−休+静】 411401
    『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』・『米沢文庫本倭玉篇』に「アチキナシ」、『玉篇略』に「シヤウ アチキナシ」とある。

  96. 【(恷*静)−休】 411401a
    『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「アチキナシ 心シツカ」とある。

  97. 【忰】
    『和字正俗通』・『倭字攷』に「セカレ」とある。『漢語大字典』が『字彙』を典拠に「同悴」とする。「悴」の異体字であることは、日中ともに同じであるが、中国には「セガレ」の意味はない。国訓といえる。

  98. 【怺】
    『大谷大学本節用集』に「コラユル 又 ダマル」、『天正十七年本節用集』に「コラウ 詠」、『異體字辨』に「コラユル」、『國字考』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「コラヘル」とある。

  99. 【情−青+可】 410501
    『万葉集』にも見られる古い文字。『名義抄(観智院本)』に「オモシロシ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『篇目次第』に「ヲモシロシ アハレフ」、『和字正俗通』に「[情−青+令][情−青+可] ヲモシロシ [情−青+可][情−青+令] アハレ アハレケニ」とある。『唐宋俗字譜祖堂集之部』にも「[情−青+可]憐」と同様な用法があり、漢字と考えられる。

  100. 【情−青+送】 410902
    『世尊寺本字鏡』に「タヽカフ ヲソル タシカ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「タヽカフ」、『字鏡集寛元本』に「タヽカフ タシカ」、『玉篇要略集』に「タシカ ソウ」とある。『倭字攷』に「タシカ 慥」とあり、「慥」の異体字の一つにすぎないものであり、国字ではないものと考えられる。『広漢和辞典』は、「[情−青+送(旧字体) たしか 慥の誤字]」としながら、国字とする。

  101. 【情−青+盍】 411001
    『世尊寺本字鏡』に「サカツキ」とある。『五音篇海(大阪府立中之島図書館本)』に『龍龕手鑑』を典拠に「音盍正作[燈−登+盍]吹火[燈−登+盍]也」とあり、『大漢和辭典』も『龍龕手鑑』を「同[燈−登+盍]」とする。『漢語大字典』・『中華字海』には『字彙補』を典拠に「同[燈−登+盍]」とある。『宋本龍龕手鑑』・『朝鮮本龍龕手鑑』ともに「正作[帖−占+盍]」とある。『大漢和辭典』などは引用を誤ったものか、他本によったものであろうか。いずれにしても[情−青+盍]・[燈−登+盍]・[帖−占+盍]ともに火を吹く道具「ふいご」のことで、「サカツキ」の意はない。国訓といえる。

  102. 【児/手】 440702
    [兒/手]」参照。

  103. 【兒/手】 440803
    『国字の字典』が『歌舞伎評判記集成』から「俊徳丸[兒/手]柏(しゅんとくまるこのてかしわ)」と引き国字とする。『歌舞伎台帳集成』の影印には前項の文字が使われているものがある。前項の文字を正字意識からこのように翻刻したものであれば、資料としては好ましくない。

  104. 【扨】
    『異體字辨』・『和字正俗通』に「サテ」とある。『和爾雅』には、「倭俗ノ制字」として「サテ 然ノ字ヲ用宜」とある。中国の漢字規格にもあるが、『漢韓最新理想玉篇』は「日本字」とする。

  105. 【持−寺+山】 440301
    苗字に[持−寺+山]友(そまとも)がある。国字「杣」の異体字か。

  106.  【持−寺+生】 440501
    『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』・『音訓篇立』に「イノル」とある。「村−寸+生」の異体字か。国字と考えられる。『字鏡集白河本』は、「手部」にあるが、「牲」のようにも見える字形である。

  107. 【挧】
    『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「『日本地名大辞典』の福井県には「挧谷」があるが、現地の役所によれば「栩谷」(トチダニ・トッタニ)」とある。『中華字海』に「音羽、苗字」とあるが、JIS漢字との関係はないだろう。

  108. 【持−寺+劣】 440601
    『伊呂波字類抄(早川流石写)』に「ヲサフ」とある。『国字の字典』が『大字典』を引き「毟(むし)る」意の国字とする。『新字源(改訂版)』にも「国字 むしる」とあるが、『異体字研究資料集成』所収の江戸期の異体字資料などにもなく、「むしる」意で使うのは新しい用法か。『漢韓最新理想玉篇』に「日字 裂也」、『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。「毟」・[持−寺+毟]・[毟−少+小]参照。

  109.  【持−寺+(峠−山)】 440602
    苗字に[持−寺+(峠−山)]田(かせだ)がある。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「テウツ」、『黒川本色葉字類抄』に「テウツ テスル」、『音訓篇立』に「ロン音 ロ音 ヘン音 アサケテ テフチ フサクル カヒテラス モテアソフ ワラフ ヨロコフ カセヒ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「セン テスル テウツ カセク ヨロコフ モテアソフ」、『玉篇要略集』に「テウツ ノホリ クタル ヘン」とある。「働く・稼(かせ)ぐ」意の国訓といわれることが多いが、歴史的には意味の広がりが、もっと広いものであることがわかる。

  110. 【持−寺+弄】 440701
    『現代漢和辞典』は「漢音呉音ロウ。原義は、もてあそぶ。」としながら、「せせる。つつく。ほじくる。」の意の国字とする。国訓とするところを国字と表示した編集上の錯誤か。『龍龕手鑑』に「[持−寺+弄] [持−寺+(峠−山)] 同上」とあり、『中華字海』には『集韻』を典拠に「同弄」とある。国字でないのは、いうまでもない。

  111. 【掵】
    苗字に掵(はば)がある。『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「JISの原典典拠は『国土行政区画総覧』にある秋田県の掵上(はばうえ)」とある。芝野耕司編著『JIS漢字字典』には秋田県の地名「上掵(かみはば)」がある。

  112. 【持−寺+茂】 440801
    苗字に[持−寺+茂]木(もぎ もてぎ)がある。

  113. 【持−寺+肯】 440802
    『線音雙引漢和大辭典』(国字)に「オサフル」とある。『漢語大字典』が宋元時代の文献から引く。国字ではない。

  114. 【搾】
    『大字典』に「〔慣〕サク サ 國字 シボル」とあり、『国字の字典』が国字とする。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)にも「シボル」とある。『漢語大詞典』が宋代の文献を典拠に「同[村−寸+窄]」としており、国字ではない。最近出版されたものは、『全訳漢辞海』が『漢語大詞典』を参照し、「本来は、「[村−寸+窄]」であったが、少なくとも宋代に異体字として搾が作られた。」とするなど、国字としないものが増えているが、『岩波新漢語辞典』(第二版)など国字とするものも残っている。中国での研究成果を積極的に吸収しようとしていないものが少なからずあることは、残念である。『大漢語林』は、参考として「この字は一般に国字とされているが、中国でも使われており、国字と判定する根拠はうすい。」とする。一見、適切な説明にみえるが、国字「鱈」は中国で簡化字までつくられ、使用されているが、この解説を当てはめると国字ではなくなるというおかしなことになる。その他の国字とされる文字や日本で生まれた用法も中国で使われていることは多い。中国で使われていると、国字や国訓でなくなるというおかしなことにならないために、日本で作られたものが中国でも使われるのか、中国本来の漢字が日本でも使われているに過ぎないのに誤って国字や国訓といわれているのかをはっきり解説する必要がある。この字の例でいえば、日本での使用よりも、中国での使用の方が古く、意味も同じであると解説する必要がある。台湾・韓国の漢字規格にもある。

  115. 【持−寺+菊】 441101
    苗字に[持−寺+菊]水(きくすい)が、屋号に[持−寺+菊]代がある。「掬」にも「キク」の音があることから、音にひかれて旁が「菊」になったものであろうか。『中華字海』などになく、国字であろう。

  116. 【持−寺+間】 441201
    『異體字辨』に「クツログ」とあり、『広漢和辞典』が「国字 くつろぐ」とする。漢字に[持−寺+(間−日+月)]があるが、この字の異体字に対する国訓ではないであろうか。『中華字海』は、字形を[持−寺+間]とし、[持−寺+(間−日+月)]の方を、「同[持−寺+間]見《直音篇》」と異体字扱いしている。いずれにしても国字でないことには間違いない。『音訓篇立』に「テウ音 持也 摸也」とある。

  117. 【持−寺+喜】 441202
    苗字に[持−寺+喜]久(きく)がある。

  118. 【文*二】 470201
    苗字に[文*二]藤(さいとう)がある。

  119. 【正*文】 470501
    人名で「まさ」と読む。苗字に[正*文](つかさ)がある(『日本苗字大辞典』)。「政」の異体字か。

  120. 【日*下】 4c0301
    苗字に[日*下]部(くさかべ)がある。[日*下]部の歴史は古く、杉本つとむ編『異体字研究資料集成』に「大宝戸籍帳に用いられている」とあり、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「クサカ」、『運歩色葉集』に「[日*下]部(クサカベ)」、『倭字攷』に「クサカ 日下二合字、細井氏説也詳於霊異記巻中第三條攷証」とある。

  121. 【暗−音+玉】 4c0501
    「曜」の和製異体字。笹原宏之著『国字と位相』に「中国に本来ない日本独自とみられる意味用法を持つ異体字・略体字・改造字」の例としてあげられている。

  122. 【昇−升+舛】 4c0601
    「昇」の異体字のひとつであるが、『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。 

  123. 【暃】
    音義未詳とされることが多い文字である。『法華三大部難字記』に「罪」の意味で使われているところがあるが、個人的な書き癖であろう。[暗−音+非]の異体字とする説もあるが根拠はない。「恷」と同様に国字といえるほどの文字ではない。『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「NTT固有名に6件の用例がある」とあり、芝野耕司編著『JIS漢字字典』にその一例「一暃(かずあき)」がある。旺文社漢和辞典は「音ヒ、日の色・(一説に腓の誤り)避ける」などと解説するが、典拠が明らかにできなければ第六版では音義未詳とする旨の回答が編者からあった。その後、第六版ではないものの編者の内二名が編集の中心となった『旺文社漢字典』では、「(一説に腓の誤り)避ける」の部分は削除されたが、「音ヒ、日の色」は残され、「(罪の俗字)つみ」という解説が加えられた。『五十音引き講談社漢和辞典』には、「音ヒ。意味未詳。解字未詳。一説に罪の異体字とする。」とある。「罪」の意で用いるのは、『法華三大部難字記』のみで、俗字とか異体字というレベルにはなく、誤字または、誤用とすべきである。なお、類推音をつけたり、動用字であろうと類推して根拠のない解説を付けることは、正しい知識を漢和辞典に求める読者に対する冒涜であり、厳に謹むべき事である。「晁」の誤字とする説もあるが、『頓要集』において、「胡桃」の「桃」の「兆」が「非」となっており、可能性のないことでもないといえる。『音訓引古文書大字叢』(異体字一覧)には、「逃」の異体字として[逃−兆+非]があり、この説をなお補強する用例といえる。『JIS漢字字典』があげる人名での使用例「一暃(かずあき)」もこの説を補強するように見えるが、JIS漢字制定以降の用例であり、誤って印刷されたものの引用ではないことを明らかにしなければならない。常用漢字でも人名用漢字でもなく、法的には人名として使用できる文字が制限されて既に50年以上たっており、それ以前の命名であることを明らかにする必要があるからである。『全訳漢辞海』に「音義未詳 注 「罪」の異体字とする見方がある。」とするのは、大多数の漢和辞典が「音義未詳」とのみすることと比べれば、より良い取扱と言える。

  124. 【暃−非+(青+青)】 4c1601
    『運歩色葉集』に「ソヽロ」とある。

  125. 【峠−山+月】 4e0601
     苗字に[峠−山+月](みずかき)がある(『日本苗字大辞典』)。

  126. 【腺】
    笹原宏之著『国字と位相』(國語學163所収)に「江戸時代後期に蘭医の宇田川榛齋(玄眞。1769−1834年)が訳に用いた造字・造語で自ら使用した文字(著者のいう個人文字)である(中略)1805年『西[説(旧字体)]醫範提綱釋義』「題言」には次のように記してある。(中略)腎腺(中略)腺新製字。音泉(下略)」とある。造字者、造字時期が明らかになっている数少ない国字である。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「セン」とある。

  127. 【膵】
    笹原宏之著『国字と位相』(國語學163所収)に「江戸時代後期に蘭医の宇田川榛齋(玄眞。1769−1834年)が訳に用いた造字・造語で自ら使用した文字(著者のいう個人文字)である(中略)1805年『西[説(旧字体)]醫範提綱釋義』「題言」には次のように記してある。(中略)膵新製字。音萃(中略)膵管(中略)膵液(下略)」とある。造字者、造字時期が明らかになっている数少ない国字である。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「スイ」とある。

  128. 【膤】
    笹原宏之著『JIS漢字と位相』に「熊本県水俣市の地名に膤割(ゆきわり)がある」とある。のち同氏によって、これがJISの典拠であったことが確認され、『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「JISの典拠は『国土行政区画総覧』にある熊本県膤割(ゆきわり)。膤割(ゆきわり)の読みは現地の役所に確認済。」と書かれた。

  129. 【杁】
    苗字に杁山(いりやま)・杁江(いりえ)がある。名古屋市昭和区の杁中(いりなか)・愛知県犬山市杁下(いりした)・愛知県津島市杁前(いりまえ)町・愛知県春日井市杁ケ島(いりがしま)町・愛知県江南市小杁(おいり)町・岐阜県安八郡墨俣町杁ノ戸(いりのと)などの地名がある。『新撰字鏡天治本』(農業調度)に「江夫利」、『名古屋市立博物館本和名抄』に「エフリ」、『名義抄(観智院本)』に「[村−寸+旦]正(中略)杁俗」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「エフリ ハツ」、『玉篇要略集』に「ヱフリ シウ」、『弘治二年本倭玉篇』に「ハツ エフリ [村−寸+(豚−月)]同」、『増刊下学集』・『永禄二年本節用集』・『易林本小山板節用集』などに「エブリ」、『堯空本節用集』に「エブリ [村−寸+八]歟」、『天正十七年本節用集』に「杁入(こみいる)」、『和字正俗通』(妄制)に「イリ」、『和字正俗通』(誤態)に「エフリ [杁−入+八]」とある。『音訓篇立』にもあるが、注文がない。[村−寸+八]の異体字として発生した文字が「圦」・「込」の影響を受け、訓義・用法を広げていったものか。国字とするのは疑問がある。

  130. 【村−寸+力】 4f0201
    「オウコ」の意の国字とされることがあるが、『説文解字』に「木之理也从木力聲平原有[村−寸+力]縣」とあるほか、『玉篇』・『龍龕手鑑』・『廣韻』・『集韻』・『五音集韻』・『康煕字典』・『中文大辭典』・『漢語大字典』などにある。『黒川本色葉字類抄』に「ロク リョク アフコ 杖也」、『字鏡抄』に「リョク ロク アフコ」、『音訓篇立』に「リキ音 アフコ タコシ」、『篇目次第』に「旅得反 力音 ロク反 アフコ」、『玉篇要略集』に「アウコ リヨク」など多くの古字書に音注・反切があり、国字ではない。『温故知新書』には「[村−寸+刄] アフコ」とある。

  131. 【杢】
    『倭字攷』に「モク 木工二合ナリ」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「モク」とある。『中華字海』が『普通話[門#虫]南方言詞典』を典拠に「木釘」の意の方言とする。国字か国訓か微妙な文字である。『古語林』に「もく【木工】
    大工。」とある。『動植物名よみかた辞典』に「杢麒麟 モクキリン サボテン科の園芸植物」とある。

  132. 【杣】
    『倭名類聚抄(元和古活字那波道圓本)』に「功程式云甲賀杣田上杣杣讀曽萬所出未詳但功程式者(中略)山田福吉等弘仁十四年所撰上也」、『名義抄(観智院本)』に「未詳 ソマ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「ソマ」また「棺 ヒツキ(中略)杣 同」、『黒川本色葉字類抄』に「ソマ 弘仁十四年(中略)山田[福−(幅−巾)+冨]吉所作進之字也」、『合類節用集』・『異體字辨』・『法華三大部難字記』・『和字正俗通』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ソマ」、『同文通考』に「ソマ 木山ニ在ルナリ」、『倭字攷』に「ソマ 和漢名數 倭名抄山石類、杣、功程式云甲賀杣田上杣、杣讀曽万、所出未詳、但功程式者(中略)山田福吉等弘仁十四年所撰上也、狩谷氏攷証(中略)杣字皇國所造、見寳亀十一年西大寺資材帳及延暦二十三年大神宮儀式帳按江談抄以為山田福吉造是字者蓋誤読本書也」とある。『倭字攷』が狩谷氏攷証とするのは、『箋注倭名類聚抄』(巻1六十四)の解説のことで、『諸本集成倭名類聚抄本文篇』には活字化されたものがある。『倭字攷』で省略された『箋注倭名類聚抄』の注文に「功程式、今傳本無」とある。『皇朝造字攷』にも『倭字攷』と同様の注文がある。『箋注倭名類聚抄』の注文、またそれを引用した『倭字攷』・『皇朝造字攷』の注文により、『倭名抄』が引く『功程式』の「山田福吉造」の説が誤りであることは明白である。今なお、この解説抜きで、『倭名抄』の注文が引用されることがあるのは、問題である。「そま」の意の国字とは考えられるが、『中華字海』に「同“[村−寸+{邊−(遖−南)}]”《農政全書・製造・營室》」とあるほか、『新部首大字典』に「[村−寸+志]木山」から変化した「[村−寸+志]杣」がある。『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「ヘン ソマ 木名」、『字鏡集白河本』に「ヘン ソマ 正 木名」、『玉篇略』に「セツ ソマ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「セン ソマ」と音注が見られるものもある。『新修漢和大字典』(國字)には、「ソマ」のほか「キコリ」とある。「杣木(そまき)」を取る山のことを「杣山(そまやま)」という。

  133. 【杤】
    「栃(とち)の木」の意の国字。『名義抄(観智院本)』に「朽 トチ 十千義歟」とある古い字である。ただ書写の関係か、字形が「杤」でなく「朽(くちる)」の様な形になっている。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『黒川本色葉字類抄』・『頓要集』に「トチ」、『字鏡鈔』に「トチ 十千義也」、『音訓篇立』に「トチノキ トモ トチ」、『國字考』に「トチ 此字東鑑に見え(下略)」、『倭字攷』に「トチ トハ十也、チハ千也、千・十ナレハ万ナリ、字鏡鈔ミルヘシ」とある。『大修館新漢和辞典』(国字・国訓一覧)・『漢語林』(国字・国訓一覧)に「とち 栃の別体」とあるが、古くは「栃」が見られず、「杤」の方が、「栃」より古い字形と考えられることから、別体というのは、適切な表現とは、いえない。「栃」参照。

  134. 【瘁z
    『大修館新漢和辞典』(国字・国訓一覧)・『漢語林』(国字・国訓一覧)に「すぎ 杉の別体」、『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とあるが、「杉」の崩し字を楷書化した異体字にすぎない。『運歩色葉集』に「[瘁n原 スギハラ」、『頓要集』に「スキ」、『玉篇要略集』に「スキ サン」、『音訓篇立』に「サン音 キウ音 スヽシ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「サン スキ」とある。この文字を国字とすると、「形・影・彩」などの旁が「久」になった文字を国字としなければならなくなる。この字形変化は手書き文字、特に毛筆においてはごく一般的なことであり、これをもとの漢字と別字として、国字とできないのは、当然である。

  135. 【村−寸+刄】 4f0301
    『國字考』に「サテ」とある。『日本人の作った漢字』・『漢字百科大事典』などが「扨の誤りか」とする。『温故知新書』に「アフコ」、『運歩色葉集』に「マタフリ [村−寸+叉]同」、『米沢文庫本倭玉篇』に「シン」とある。[村−寸+力]の国訓も「アフコ」であり、『温故知新書』の場合は、[村−寸+力]の異体字か。[村−寸+刃]・[村−寸+力]参照。

  136. 【村−寸+刃】 4f0302
    『有坂本和名集』に「サス」とある。[村−寸+叉]の異体字か。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「カシノキ」また「テカシ チウ」とある。[村−寸+刄]参照。

  137. 【村−寸+丸】 4f0303
    『JIS X 0213:2000附属書6(規定)漢字の分類及び配列』(第4水準漢字集合)の「用例及び用例音訓(参考)」に「地名 クルミ 福島県[村−寸+丸]田(クルミダ)」とあり、『大修館漢語新辞典』に「国字 くるみ。」、『漢字源』に「国字 くるみ。地名などに用いる字。」とある。

  138. 【枠】
    『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ワク」とあり、『国字の字典』が国字とする。『漢韓最新理想玉偏』に「滑車心棒」と日本とはやや異なる用法が示されている。ただこの字は親字二万六千字を載せる『漢韓大辞典』などにもなく、一般的用法とは思われない。今のところ国字としておく。

  139. 【枦】
    「櫨」の異体字で、「ハゼ・ハジ」などと読んで人名や地名に用いられる。国字といわれたこともあるが、『中華字海』が、『直音篇』を典拠に「同櫨」とする。地名の「枦谷(かたらがい)」などを除き、国訓でもない。『JIS漢字字典』・『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に詳しい。

  140. 【枡】
    『大漢和辭典』には、親字には典拠がなく、熟語では、『甲陽軍鑑』等を引く。『中華字海』が『宋史』を引いて人名用字とするが、日本の文字とは関係がないであろう。日本の典拠により古いものが見つからないとはっきりしたことは言えないが、国字としてもよいと考えられる。

  141. 【枩】
    『大漢語林』に「国字 ショウ まつ」、『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とあるが、国字ではなく、「松」の動用字であり、「[公+木]・[公*木]」などと同じく異体字のひとつにすぎないものと考えられる。『同文通考』に「マツ 譌字 松也」とある。『大漢和辭典』(補巻)は、「ショウ 松と同じ」とし、『同文通考』を引き、国字とはしない。『ことばの手帳 楷行草・隷書』に「枩・[公*木]」ともに「松」の書写体とある。

  142. 【枌】
    『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ソギ」とあり、『国字の字典』が国字とする。『国字の字典』が『康煕字典』に同字があるとしながら、国訓であるとの解説をつけないのは、疑問である。(解説途中)

  143. 【村−寸+丹】 4f0401
    『異體字辨』に「モミヂ」とあり、『国字の字典』が「紅葉(もみじ)」の意の国字とする。『中華字海』が『敦煌変文集』を引いて「同栴」とする。苗字に[村−寸+丹]檀(せんだん)があるが、この用字法は、『中華字海』と同じである。苗字の例は国訓でもない。台湾の漢字規格にもある。

  144. 【村−寸+父】 4f0402
    苗字に[村−寸+父]栂木(とがのき)がある。『JIS X0213:2000附属書6(規定)漢字の分類及び配列』(第4水準漢字集合)の「用例及び用例音訓(参考)」に「人名 トガ [村−寸+父]栂木(トガノキ・姓)」とあり、『大修館漢語新辞典』に「国字 [村−寸+父]栂木(とがのき)は、姓氏」とある。

  145. 【井#木】 4f0403
    『新字源(旧版)』に「ざんぶと」とあり、『国字の字典』が国字とする。『倭字小考』に「江談抄には、「[井#木][井#石]」という渤海国使二人の姓名の字を、「異国作字也」としている。延喜の時の紀家はこれを「木ノツフリ丸 石ノマフリ丸」と読んだのであるが、後世では「ザンブト(リ) ドンブト(リ)」(大塔物語・黒本本節用集)という擬音語に右の字を宛てている。」とある(『大塔物語』(大阪中之島図書館蔵本)を見ると、「[井#木]切漬[井#石]突(異体字)入」とあり、[井#木]に「サンブト」とフリガナされている以外は、『倭字小考』にいうとおりである。これが新編信濃資料叢書第二巻所収の翻刻本となると、[井#木]が、[井#水]になっている。同巻にある『信州大塔軍記』では、本文で「井」、傍注では「丼」となっている。いずれも[井#石]はそのままである。)。朝鮮国字あるいは、漢字[井#水]及びその異体字[井#米]にも関係があるか。ただ『江談抄』は、「杣」の山田福吉作字説など信を置きがたい記事もあり、国字でないとも言い難いところである。[井#石]参照。

  146. 【栂】
    木の名「つが・とが」の意の国字とされる。馬王堆漢墓ほかで「梅」の字の異体字として使われていることが知られている。『國字考』にも「梅」の同字として使われていると思われる例が載っている。国字ではなく、国訓とすべきであろう。『学研全訳用例漢和辞典』は、音として「バイ」をあげるが、意味としては、「とが。つが。マツ科の常緑高木」とし、「梅」の意はふれられていない。中途半端な解説と言えよう。『運歩色葉集』・『増刊下学集』・『大谷大学本節用集』・『天正十七年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』・『易林本小山板節用集』・『和字正俗通』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「トガ」、『撮壌集』・『温故知新書』・『明応五年版節用集』『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』に「トカ」、『玉篇要略集』に「トカ ホ」、『拾篇目集』に「ヲホシイ」、『同文通考』に「トガ 木ノ名」、『正楷録』(倭楷)に「多革」、『國字考』に「トガ(中略)三才圖會云栂倭字関東曰豆賀関西曰止賀(下略)」とある。地名「栂尾」は、『天正十七年本節用集』・『弘治二年本節用集』・『両足院本節用集』に「トガノヲ」、『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』に「トカノヲ」、『大谷大学本節用集』に「トガノヲ(中略)茶ノ名所」とある。『撮壌集』・『運歩色葉集』・『増刊下学集』・『天正十七年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『正楷録』(倭楷)・『和字正俗通』など、[栂−母+毋]のような字形になるものが多い。

  147. 【栃】
    『大系漢字明解』に「栃 俗 レイ トチ [栃−万+萬]正 集韻に[栃−万+萬]は木の名なり。實は栗の如しと。是れトチなり。(中略)萬俗に万に作る。故に[栃−万+萬]も亦栃に作るなり。」とある。この説によれば、栃木県の「とち」が太政官報により、「栃」に定められた明治初期以前に、存在した可能性が大きい。『中華字海』にも「[栃−万+萬]的類推簡化字」とあり、字書に載ることの無かった民間俗字として存在した可能性が十分考えられ、国字でない可能性もある。ただ、日中共に古い典拠を発見できず、『大系漢字明解』の説が正しいか否かは判断できない。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「トチ」とある。「杤」参照。

  148. 【柾】
    『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『運歩色葉集』・『増刊下学集』・『大谷大学本節用集』・『天正十七年本節用集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『易林本小山板節用集』・『國字考』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「マサ」、『同文通考』に「マサ 木ノ理(スヂ)ナリ」、『和字正俗通』(妄制)に「マサキ」とある。『国字の字典』・『字通』・『岩波新漢語辞典』など「木の正目」の意の国字とされることが多いが、『龍龕手鑑』・『字彙補』・『異體字辨』に「柩」の異体字としてあり、国訓である。『国字の字典』は、「康煕字典に同字がある。」とし、『字通』は、「柾は本音キュウで柩と声義が同じ。」としながら国字とする。両書の国字の定義は、国訓を含んでいるようである。

  149. 【蛛z
    『広漢和辞典』・『日本人の作った漢字』が国字とする。『中華字海』が唐代の『辺真墓誌』を引き「同柳」とし、『龍龕手鑑』は親字にはないが、注文にはこの字形が見られる。国訓でもなく、漢字そのものである。『玉篇要略集』に「スタレヤナキ リウ」、『玉篇略』に「リウ ヤナキ」とある。

  150. 【桜】
    『中華字海』に「同櫻。字見日本《常用漢字表》」とある。「櫻」の和製異体字か。

  151. 【梺】
    『異體字辨』に「フモト」とあり、『国字の字典』が「麓(ふもと)」の意の国字とする。『弘治二年本節用集』に「麓 フモト 山下」、『堯空本節用集』に「麓 フモト 山ノ下」、『正楷録』(倭楷)に「勿末多盖麓省文」、『倭字攷』に「フモト 麓之俗也會意」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「フモト」とある。『永禄二年本節用集』にもやや崩れた字形で、「麓 フモト 山ノ下」とある。『正楷録』(倭楷)・『倭字攷』にあるように、「梺」は「麓」からできたとされているが、その過程は、よくわからない。あるいは、「麓」が「山ノ下」の意であることから、「麓」と「下」を省画合字したものか。『日本人の作った漢字』に「漢字の麓と国字の梺の一致点は上部の漢字素、「林」である。このことから、国字の梺は、漢字の麓を基にして作字したのではないかという疑問が起る。仮に漢字の麓が全く影響していないのであれば、ふもとは、山の下であるから、[山*下]という文字を作っても良いはずであるが、そのようになっていない。麓が梺になったとして、なぜ下部の鹿が下になるのかが次の疑問である。(中略)異体字からは鹿が下になる証明は難しい。(中略)麓は形声文字で、鹿は発音の漢字素であり、その音の意味は、「つづき」を意味する。(中略)ところが日本人には、鹿の音は「つづく」の意味をもたらすわけではないから、鹿があることが特に「ふもと」概念に重要なわけではない。むしろ、別の漢字素で意味が明確になるものがある方が有難い。こうして山の下を表すために下が下部について、梺が生まれたと考えられる。」とある。「ふもと」を表す国字が梺のみであれば、『日本人の作った漢字』のいうこともまんざらでもないが、当辞典に載せたものだけで、「梺」のほか、[圦−入+失]・[炭−灰+足]・[炭−灰+足]・[距−巨+辻]・[射−寸+(都−者+吉)]・[射−寸+(都−者+告)]がある。各種作られた「ふもと」を意味する国字の内現在に生き残った唯一のものとはいえる。[圦−入+失]・[炭−灰+足]・[炭−灰+足]・[距−巨+辻]・[射−寸+(都−者+吉)]・[射−寸+(都−者+告)]・[山*下]参照。

  152. 【桝】
    『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「マス」とある。『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「三升桝勝鬨帳貫(さんじょうます みいりのちょうじめ)弘化3年11月初演」とある。(解説途中)

  153. 【椛】
    苗字に椛(かば かんば こうじ たぶ)・椛山(かばやま)・椛木(かばき)・椛本(かばもと)・椛沢(かばさわ かばざわ はなさわ はなざわ もみじさわ)・椛谷(かばたに)・椛島(かばしま かばじま)などがある。『運歩色葉集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』に「ナギ」、『玉篇略』に「[村−寸+毀]椛 キクワ シキミ」、『天正十七年本節用集』に「ナキ カハサクラ」、『新刊節用集大全』に「かバ」(ただし、楷書は「樺」)、『同文通考』に「モミヂ 紅葉也」、『正楷録』(倭楷)に「末密矢」、『國字考』に「モミチ」とある。

  154. 【椙】
    『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「トシカミ」また「トカミ」また「瘁i中略)杉 椙 同」、『拾篇目集』に「トカミ スキノキ [村−寸+(日*皿)]イ」、『玉篇要略集』・『玉篇略』に「シヤウ スキ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「杉 サン スギ 椙同」、『同文通考』に「杉也倭名鈔ニ杉俗ニ[村−寸+(日*皿)]ノ字ヲ用非ナリ[村−寸+(日*皿)]ハ音於粉ノ反柱也按ニ[村−寸+(日*皿)]亦訛テ椙ニ作」、『和字正俗通』に「スキ」、『倭字攷』に「古事記傳九、椙ハ[村−寸+(日*皿)]ヨリ誤れるナラン(下略)」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「スギ」とある。『拾篇目集』・『同文通考』の注文にあるように、国字ではなく、[村−寸+(日*皿)]の異体字にすぎない。『和爾雅』には、「倭俗ノ制字」として「スギ 杉字佳」とあるが、「和俗訓義ヲ誤所」とする方へ入れるべきではないだろうか。

  155. 【椦】
    『玄應一切經音義』に「[村−寸+卷]律文作椦非體」とある。『字鏡鈔』に「ちきり」とある。この場合は漢字と同義である。『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「群馬県前橋市[村−寸+勝]島(ぬでじま)町が『国土行政区画総覧』に現れながら未採録であり、おそらくこの“ヌデ”字の誤写であろう」とある。『玄應一切經音義』の典拠は、私が発見し、通産省に送ったことから『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に暗合としてのったものであるが、これ以前にも「ちきり」と解説したものはあった。『玄應一切經音義』・『字鏡鈔』以外の典拠をご存知の方はご教示をお願いします。

  156. 【椥】
    京都の地名「椥辻」は天文元年(1532年)には使われていたことが明らかになっている。椥辻・椥原などが苗字としてある。『名義抄(観智院本)』に「俗匙字」とあるが中国などの佚書の影響を受けているのであろうか。『字鏡集寛元本』にもあるが注文がない。『漢語大字典』に越南の地名で使われるとあり、台湾の漢字規格にもあるので無視できないが、典拠がなく詳しいことはわからない。『中文大辭典』・『臺語大字典』にはない。

  157. 【椨】
    たぶの木の意の国字であり、『森林家必携』には「タマグス」とある。地名としては長崎県世知原町に椨ノ木、鹿児島県金峰町に大椨がある。苗字に椨(たふ たぶ とう)椨木(たぶき)大椨(おおたぶ)がある。『音訓篇立』に「芳主反」と反切がつけられているが、日本人がつけたものか、『中華字海』にも日本地名用字としかない。

  158. 【椪】
    笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に、JISの典拠として『国土行政区画総覧』から「宮崎県東臼杵郡北方町 三椪(みはえ)小学校・中学校」が引かれている。苗字に椪田(はいだ・はえだ)がある。『国字の字典』にある「椪柑(ぽんかん)」は中国でも同じ表記である。国字ではない。

  159. 【椚】
    『音訓篇立』に「モム音 スル トル」、『拾篇目集』に「タラヒ」、『慶長十五年本倭玉篇』に「モン クヌギ」、『早大本節用集』に「クギヌキ」、『合類節用集』に「クギヌキモン 釘貫門也 字未詳」、『新刊節用集大全』に「くぎぬき」、『書言字考節用集』に「クヌギ クノキ」、『和字正俗通』(妄制)に「クキヌキモン」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「クヌギ」とある。「クギヌキ」は『旺文社古語辞典』などに「【釘貫】
    門・柵の一種。柱を立てならべて横に貫を通した簡単なもの。町の入り口にたてた木戸」とある。

  160. 【椣】
    椣原(しではら)は、奈良県生駒郡平群町の地名。

  161. 【椡】
    三ツ椡(みつくぬぎ)は、新潟県北蒲原郡豊浦町の地名。

  162. 【椿】
    『国字の字典』が『皇朝造字攷』を典拠に「我国で作られた「つばき」の字」とする。確かに『皇朝造字攷』には「(上略)皇國所製會意字蓋是木以初春開華(下略)」とあるが、「椿」の傍らに○を附けており、これは「字傍ニ圏ヲ附ル者ハ西土既ニ其字有リ(下略)」とあるもので、典拠とすべきものではない。

  163. 【楾】
    苗字に楾(はんぞう・はんどう・ばんどう)がある(芝野耕司編著『JIS漢字字典』など)。『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「財団法人地方自治情報センター“全国町・字ファイル”に愛知県楾ヶ角(はれがすみ)があるが、現地の役所では確認できない」とある。『倭名類聚抄(元和古活字那波道圓本)』に「[医−矢+也] 説文云[医−矢+也] 移爾反一音移和名波迩布 柄中有道以注水之器也俗用楾字所出未詳但和名之義或説云有柄半挿其内故呼為半挿也」、『名義抄(観智院本)』に「未詳 ハンザフ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「ハムサウ」、『字鏡集寛元本』に「ハムソウ」、『明応五年版節用集』・『大谷大学本節用集』・『元和三年板下学集』・『異體字辨』などに「ハンザウ」、『増刊下学集』・『國字考』などに「ハンサウ」、『拾篇目集』に「ハンソヲ」、『篇目次第』に「ハムサウ 无」、『米沢文庫本倭玉篇』に「セン ハンザフ ハンザウ」、『玉篇要略集』に「ハンソウ セン」、『弘治二年本節用集』に「楾盥 ハンサウタライ」、『永禄二年本節用集』に「楾盥 ハンザウダライ」、『堯空本節用集』・『両足院本節用集』に「楾盥 ハンザウタライ」、『易林本小山板節用集』に「楾手洗 ハンザウダラヒ」、『新刊節用集大全』に「楾手洗 はんぞうだらひ」、『書言字考節用集』に「ハンザ 本朝俗字出順和名」、『同文通考』に「[医−矢+也]也説文[医−矢+也]ハ柄ノ中ニ道有リ以水ヲ注ク之器也倭名鈔ニ柄有半ハ其内ニ挿故呼ンテ半挿(下略)」、『和字正俗通』に「ハンソ」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ハンザフ」とある。[瓦/泉][瓦/樂]参照。

  164. 【榁】
    苗字に榁井(むろい)・榁木(むろき)・榁田(むろた)がある。『運歩色葉集』・『増刊下学集』・『大谷大学本節用集』・『和字正俗通』(妄制)などに「ムロ」、『元和三年板下学集』に「ムロ 倭字歟」とある。『国字の字典』は『國字考』・『広辞苑』を典拠に「杜松(ねず)」の意の国字とする。

  165. 【榊】
    『新撰字鏡小学篇』に「佐加木」、『名義抄(観智院本)』に「龍眼木 サカキ 榊 賢木 坂木 並未詳」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「サカキ 龍眼木 坂樹 日本記用也 賢木 本朝式用也」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「[村−寸+申] 同也 サカキ」、『音訓篇立』・『和字正俗通』に「サカキ」、『篇目次第』に「サカキ 无」、『玉篇略』・『米沢文庫本倭玉篇』に「シン サカキ」、『玉篇要略集』に「サカキ サカシハ シン」、大谷大学本節用集』に「サカキ 倭字也或作坂木也」、『弘治二年本節用集』に「サカキ 倭字歟或垣木作」、『永禄二年本節用集』に「サカキ 日本字歟或作坂木」、『堯空本節用集』に「サカキ 日本字歟又云坂木」、『新刊節用集大全』に「龍眼木 さかき 榊 同 神木也 賢木 同」、『同文通考』に「サカキ 神ヲ祭ル之木也」、『國字考』に「此字日本後紀に見え(中略)神木乃二字を合せて一字に(中略)日本紀に真坂木(下略)」、『倭字攷』に「サカキ 龍眼木 和爾雅八 神木二合、所謂會意 日本後紀十六有此字(中略)新撰字鏡 榊 [村−寸+{(神−申)+巳}][村−寸+定] 三字 佐加木 倭名抄木類 坂樹、日本紀私記云、天香具山之真坂樹(下略)」とある。『合類節用集』に「クヽノキ」とある。

  166. 【村−寸+品】 4f0901
    [村−寸+品]ノ木川原(しなのきがわら)は青森県下北郡大畑町の地名、[村−寸+品]谷(こまいだに)は新潟県西頸城郡青海町の地名。『漢語大字典』などが量詞とするが典拠がなく新しい文字か。『漢韓最新理想玉篇』は日本字とする。国字としてもいいだろうか。『元和三年本下学集』・『増刊下学集』・『法華三大部難字記』などが[村−寸+(呂−ノ)]で「コマイ」と読み、『和字正俗通』が[村−寸+品]は[村−寸+(呂−ノ)]の誤態とすることから見ると、[村−寸+品]は[村−寸+(呂−ノ)]の異体字にすぎないともいえるかもしれない。『拾篇目集』に「カラタチ」、『同文通考』・『國字考』に「コマイ」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「コロヒ」、『文字ノいろいろ』(國字)に「こまひ。壁ノ骨トスルモノ。壁下地。」とある。『漢字の研究』は、「コマヒ」の誤りか。

  167. 【村−寸+香】 4f0902
    『新撰字鏡小学篇』に「牟呂乃木又加豆良」、『倭字攷』に「カツラ 文教温故 字鏡」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「カツラ」とある。『倭字攷』にある「字鏡」とは、『新撰字鏡』のこと。

  168. 【槝】
    鹿児島県阿久根市大字脇本に字槝之浦(かしのうら)がある。

  169. 【樮】
    樮川(ほくそがわ)は和歌山県日高郡印南町の地名。『国字の字典』に「山火事が大木の西で消火されたことにより、木の西の火と書き、「ほくそ」と読ませて以来樮川(ほくそがわ)と称した」とある。「樮」の旁は「票」の異体字であり、『中華字海』にも「馬偏」に異体字関係にある文字がある。『国字の字典』の字源説は後の字源俗解によるものと考えられる。「樮」の文字自体も「標」の異体字として国字とすべきではないかもしれない。

  170. 【槇】
    槙とも書いて木の名「マキ」の意の国字とされることがある。『説文』に「木頂也」、『玉篇』などに「木密也」、『漢語大字典』に「木名。土杉。竹柏科。」とある。『音訓篇立』に「シン音 コスエ」、『玉篇要略集』に「マキ シン」、『運歩色葉集』・『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』に「槙 マキ」、『弘治二年本節用集』に「真木 マキ 槙 同」、『國字考』に「槙 マキ 真木乃二字を合わせて一字とせしなり(下略)」とある。「まき」は国訓といえる。『黒川本色葉字類抄』には「[炭−灰+(真+真)] テン イタヽキ 山頂也 槙同」と漢字本来の意味が出ている。

  171. 【】
    木の名「たら」。苗字に沢(たらさわ たらざわ ゆきさわ)がある。

  172. 【樫】
    『万葉集』で「夏樫(なつかし)」とあてられている古い国字である。『名義抄(観智院本)』・『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「カシノキ」、『字鏡集白河本』に「ケン カシノキ」、『運歩色葉集』に「クヌギ」又「ケヤキ」、『易林本小山板節用集』に「ケヤキ」、『篇目次第』に「タヒチ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「トカ シキノキ」、『異體字辨』に「カタギ」、『同文通考』に「カシ 木ノ名」、『大谷大学本節用集』・『和字正俗通』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「カシ」、『國字考』に「カシ 万葉集第七麻衣着者夏樫木之国(下略)」とある。『玉篇略』に「ケン トカ」、『音訓篇立』に「ケン音 カシ タヒ」と音注が含まれる。旁に引かれて日本でつけられたものか。『和爾雅』は、「中華之字書ニ出不」とする「倭俗ノ制字」ではなく、「和俗訓義ヲ誤所」として「カタギ [村−寸+諸]ノ字用宜」とするが、『中華字海』などにもない。現在は、佚書となった当時存在した中国の字書に存在したものであろうか。「倭俗ノ制字」に入れるべきところを誤ったものである可能性の方が大きいように思われる。それとも「カタギ」の訓には、「樫」でなく、[村−寸+諸]を用いるべきであるといっているのみであろうか。

  173. 【橸】
    『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「原典典拠の『国土行政区画総覧』には発見できないが、『日本地名大辞典』にある静岡市石橸(いしだる)は市役所の大字・小字名集成でも確認できる」とある。

  174. 【橲】
    苗字に橲礼(きれ)・橲須美(きすみ)がある。福島県相馬郡鹿島町に大字橲原(ずさはら)がある。『難訓辭典』に磐城國行方郡橲原(ヅサハラ)村とある。

  175. 【村−寸+勝】 4f1201
    苗字に[村−寸+勝]島(なべしま ぬでしま ぬでじま ぬべしま のでしま)・[村−寸+勝]嶋(ぬでしま ぬでじま)がある。[村−寸+勝]島町(ぬでしまちょう)は群馬県前橋市の、[村−寸+勝]生(ぬでお)は高崎市の地名。『国土行政区画総覧』にみられるが、JIS第2水準までに採用されておらず、JISの「椦」は、[村−寸+勝]を誤ったものと考えられている。「椦」参照。(解説途中)

  176. 【】
    苗字に山(たもやま)がある。

  177. 【欟】
    『中華字海』に『玄應一切經音義』を典拠に「同罐」とあり、国字ではない。『新撰字鏡』に「豆支又加太久弥」、『拾篇目集』に「ツキノキ」とある。

  178. 【毟】
    『易林本小山板節用集』に「繕 ムシル 綿 毟 同 鳥」とある。「繕」は綿を、「毟」は鳥の毛をむしる意か。『和字正俗通』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ムシル」、『國字考』に「ムシル 古本節用集に見え(下略)」、『倭字攷』に「ムシル 音訓國字格」とある。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。[持−寺+劣]・[持−寺+毟]・[毟−少+小]参照。

  179. 【持−寺+毟】 4m0701
    『新字源(新版)』「国字・国訓一覧」に「むしる」とあり、漢字の国訓としての読み方である旨の印を付している。『漢語大字典』・『中華大字典』などになく、『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。印のつけ誤りか。「毟」・[持−寺+劣]・[毟−少+小]参照。

  180. 【気】
    『日本語の現場第2集』に「『当用漢字の新字体』の著者、山田忠雄さんにはわからなかった「気」の出典を明らかにしたのは林さん(著者注=元国立国語研究所長の林大氏)だ。山田さんは(中略)「氣」の略字として(中略)「気」が『漢字ノ研究』(中略)に出ていることは知らなかったという。」とある。『中華字海』には「同气」とあるのみで、出典がないが、日本の常用漢字表から引いた場合は、その旨記してあるので、字書に載ることの無かった民間俗字として、中国でも存在した文字なのであろうか。

  181. 【汢】
    高知県高岡郡窪川町に汢ノ川(ぬたのかわ)があるとするものが多い。窪川町役場税務課及び町民課で聴取した結果では、[冷−令+土]の川が正しく汢ノ川とする資料はないとのことであった。法務局の登記簿には、どちらの小字も存在しない。現地の住宅地図も[冷−令+土]の川となっており、おそらく『国土行政区画総覧』の誤りであろう。『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』には文字があるのみで注文がない。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『伊呂波字類抄(早川流石写)』では「ヌル」の読みがつけられており、泥も同じ読みになっている。同形別字と考えられるが、密教では「淨土」の略字として用いられる。JIS漢字の典拠は『国土行政区画総覧』の誤りに基づくもののようであるが、文字としては同形のものが存在することには間違いない。

  182. 【涜】
    『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。拡張新字体であろうから、広い意味で和製異体字か。

  183. 【溂】
    『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に、「日本で溌剌の「剌」が「溌」の偏につられて三水が付いて派生した字体として異体字ともいえよう。」とある。使用例も同書に詳しい。

  184. 【燈−登+石】 4q0501
    JIS第1第2水準・JIS補助漢字のいずれにもなく、中国や台湾の漢字規格にあるが、中国本来の漢字ではなく、明治40年頃作られた国字である。笹原宏之著『位相文字の性格と実態』に、小野賢一郎著『陶器大辞典』(1935年出版)などを典拠に「1907年頃にstone wareの訳語「石器」に同形異語の区別のためか技術家が火偏をつけたもので、中国にも輸出された」とある。2000年JISの改訂で、第4水準に入った。『中文大辭典』にはない。

  185. 【熕】
    『国字の字典』が『字源』から「砲熕(ほうこう)は大砲(おおづつ)」と引き国字とする。『漢語大字典』・『中華字海』が清代の『小腆紀年附考』を引き「同[熕−火+舟]」などとする。笹原宏之著『漢和辞典の国字に関する諸問題』に、「『大正漢和大辭典』が漢籍『武備志』などを引用しており、山田俊雄氏『いはゆる国字の一つについての疑ひ』により国字説が明白に誤りであったことが証明されている」とある。『書言字考節用集』に「銅發熕 イシビヤ 其ノ制見タリ『武備志』」とある

  186. 【熔】
    中教出版『書の基本資料1漢字の研究』が「とかす」意の国字とする。漢字そのものであると考えられるが、『康煕字典』にはなく、『中華大字典』には「俗鎔字」とあるが、典拠がない。『漢語大字典』・『中華字海』には解説・用法のみで典拠・異体字情報ともにない。日中いずれで作られた文字にしても新しい文字であることには間違いないようである。

  187. 【燵】
    『運歩色葉集』・『易林本小山板節用集』に「火燵 コタツ」とある。『国字の字典』は『漢字の研究』を引き「炬燵(こたつ)」と使う国字とする。『日本魚名集覧』が『水産寶典』を引いて「燵鯛(ひうちだい)」とする。

  188. 【狆】
    『國字考』に「チン」とあり、『国字の字典』は、『康煕字典』に同字があるとしながら国字とする。『國字考』も『字彙補』に「苗人名」と見えるとしながら、「いと近き代に造り出し」とある。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)にも「チン」とある。別字衝突ということであろうが、国字ではなく、国訓というべきである。

  189. 【瑣−貝+月】 520701
    『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。『名義抄(観智院本)』に「音肖 クサリ トラル ホタル」とあり、書名に『[瑣−貝+月]玉集』がある。JIS補助漢字で『大漢語林』に「瑣」の俗字とある。和製異体字か。(解説途中)

  190. 【瓧】
    デカ(十)グラムの意の国字。『中華大字典』・『辭源』などが日本字とする。笹原宏之著『メートル法単位を表す国字の製作と展開』に「中央気象台でメートル法を表す記号を研究して1891年7月1日各気象台に通知し、気象観測の月報などに使い始めた」とある。小泉袈裟勝著『度量衡の歴史』・『日本メートル法沿革史』にも詳しい。

  191. 【瓩】
    キロ(千)グラムの意の国字。『メートル法単位を表す国字の制作と展開』に『日本建築辞彙』は、「[瓦+千]に作るが(中略)活字の制約やデザインによろう(下略)」とある。『漢韓最新理想玉篇』は韓国国字とするが中国と同じkwの意味で、日本がkgの意味で使い始めた方が両国より古く、国字である。立偏・米偏の単位を表す国字も両国に輸出され、使われたことがあるが、現在両国とも使われていない。「瓧」を参照。

  192. 【瓦/万】 540301
    ミリア(一万)グラムの意の国字。『中華大字典』が日本字とする。

  193. 【瓲】
    1トン(屯)の意の国字。「瓧」を参照。

  194. 【瓰】
    デシ(1/10)グラムの意の国字。「瓧」を参照。

  195. 【瓱】
    ミリ(1/1000)グラムの意の国字。「瓧」を参照。

  196. 【瓸】
    ヘクト(百)グラムの意の国字。「瓧」を参照。

  197. 【甅】
    センチ(1/100)グラムの意の国字。「瓧」を参照。

  198. 【瓦/泉】 540901
    『新撰字鏡天治本』に「波尓佐不」、『和字正俗通早大本』に「ツチタラエ」とある。[楾]・[瓦/樂]参照

  199. 【瓦/樂】 541302
    『新撰字鏡天治本』に「波尓佐不」とある。[楾]・[瓦/泉]参照。

  200. 【甼】
    『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とあり、「町」の和製異体字か。JIS漢字の出典は、情報処理学会漢字コード委員会『標準コード用漢字表(試案)』(1971)である。笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に詳しい。『漢字百科大事典』「浄瑠璃外題」に「糸櫻本甼育(いとざくら ほんちょうそだち)文化10年初出」とある。

  201. 【畑】
    『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に[火*田]があり、火田からこの字ができ、のち動用字として「畑」ができたものと考えられる。古字書には「ハタ」とのみある場合が多く、畠の「ハタケ」と使い分けがあったのであろうか。『弘治二年本節用集』に「ハタ 山ノ畠」とある。平地における水田に対するものが「畠」、山で焼き畑などを行うものが「畑」という使い分けがあったものであろうか。『米沢文庫本倭玉篇』・『増刊下学集』・『明応五年版節用集』・『天正十七年本節用集』・『大谷大学本節用集』・『早大本節用集』・『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』・『異體字辨』・『和字正俗通』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ハタ」、『合類節用集』に「ハタ 字未詳」、『同文通考』に「ハタ 漢語抄ニ火田ニ作ル」とある。『運歩色葉集』に「ハタケカサ」とあるが、皮膚病の「ハタケ」のことであろう。なお字喃に灯台の意味を表す熟語を作る文字であるが、国字には違いないであろう。[火*田]・「畠」参照。

  202. 【火*田】 580401
    『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「火田 ヤキハタ」とあり、「火田」を合字して、この意をあらわしたものか。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『黒川本色葉字類抄』に「ハタ」とある。「畑」参照。

  203. 【畠】
    『倭名類聚抄(眞福寺本)』・『倭名類聚抄(元和古活字那波道圓本)』が漢籍『続捜神記』を引くが、佚書であり『箋注倭名類聚抄』では「白田」とあるため書写時の誤りも否定できない。国字であるか否か難しいところである。『中華字海』は「同[巛*田]」とするが、典拠がなく、詳しいことはわからない。『名古屋市博物館本和名抄』に「ハタケ 粟田 アハタ 豆田 マメフ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「ハク ハタケ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『有坂本和名集』・『明応五年版節用集』・『大谷大学本節用集』・『天正十七年本節用集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』などに「ハタケ」、『篇目次第』に「ハク反 ハタケ 无 日本ニテ作之」、『音訓篇立』に「ハク音 ノハタケ ハタケ ヲカス」、『玉篇要略集』に「ハタケ ハク」、『合類節用集』に「ハタケ 又陸田同 順和名」、『異體字辨』に「はた」、『同文通考』に「ハタケ 陸田也(下略)」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ハタ」とある。『増刊下学集』・『和字正俗通』にも「ハタケ」とあるが、前者は「白」が「自」に、後者は「田」が「曰(ひらび)」になっている。「畠」が「白田」の合字とすると、異体字というより誤字の範疇に入ってしまうのであろうか。「畑」参照。

  204. 【畩】
    苗字に畩ヶ山(けさがやま)がある。鹿児島県曽於郡末吉町の地名に畩ヶ山(けさがやま)がある。

  205. 【畳】
    『日本語の現場第2集』に「当用漢字表に採用された文字の中で唯一全く新に作られた字体の漢字。活字字体整理協議会案であった「疂」、これを「畳」にすべきだと字体委員会で提案したのは、カナモジカイ理事長の松坂忠則委員である。」とある。当用漢字制定以前に使われていた「畳」の字体を見ると「疂」の[軣−車]が無いものもあるが、[畳−田]の部分がより簡略化されていたりして、「畳」と全く同じ字体のものは、今のところ発見できていない。ご存じの方は、典拠とともにお知らせいただきたい。『中華字海』に「見日本《常用漢字表》」とある。「疊」の和製異体字には間違いないのであろう。『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『両足院本節用集』に「疂 タヽミ」、『堯空本節用集』に「[疂−且+互] タヽミ」とある。

  206. 【田*町】 580702
    『同文通考』に「布帛ノ幅也」とあり、漢和辞典などの解説もこれに準じたものになっている。『和字正俗通』に「ノ」、『國字考』に「ノ 布帛乃幅(中略)古本節用集[田*町]交[絵−会+晃]と見え(下略)」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ハバ」、塙保己一編『武家名目抄』に「[田*町][遖−南+車] のれん」とある。『書言字考節用集』に「一[田*町] ヒトノ 又作[(田△田△田)*貝]」とある。後者も国字であろうか。

  207. 【症】
    『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「シャウ」とあり、『国字の字典』が国字とする。『簡化字源』が宋代の『文渓集』に「症候」とあるのが、「症」字の始見とする。漢字そのものである。『合類節用集』に「病症 ヒャウシャウ」とある。

  208. 【癌】
    『平凡社世界大百科辞典』に「〈癌〉という字は,清代の有名な《康煕字典》(1716)には出ていないので,和製漢字といわれていた。しかし明らかに中国製で,12世紀に書かれた《衛済宝書》には〈癌〉の字がみられ,また中野操の研究によると,南宋の楊士瀛(ようしえい)の《仁斎直指方》(1264)に〈癌〉の字と症状についての記載がなされているという。ほかに〈岩・[D26D]・嵒・巌〉などの文字も用いられた。」とある。

  209. 【癪】
    癇癪などと使う国字。癪ノ瀬(しゃくのせ)は宮崎県延岡市の地名。『中華字海』が『広州話方言詞典』を引いて「疳積」とする。典拠として古いものがないため日本の用法の影響とも考えられる。その場合は国字ということになるが、このあたりの方言文字が日本に入って使われたものもある。これらの文字が、北京などで作られた字書にないことから国字とされていることもあるので注意を要する。

  210. 【硲】
    『新刊節用集大全』に「ハザマ」、『和字正俗通』に「ハサマ」とある。『難訓辭典』に越後國三島郡硲田(はざまだ)村とある。『国語学研究と資料』所収の『地域訓の一考察―「硲」字の歴史と地名用字訓―』に詳しい。(解説途中)

  211. 【硴】

  212. 【碗】
    『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)「ワン」とあり、『国字の字典』が国字とする。(解説途中)

  213. 【碵】
    音義未詳とされることがあるが、『伊呂波字類抄(早川流石写)』に「ツミイシ 柱下石 イシスエ」、『篇目次第』に「柱下石 无」とあり、『龍龕手鑑』が[砲−包+眞]の字で「正音眞柱下石也」とする。この場合は[砲−包+眞]の異体字といえる。苗字に碵(せき)があり、名乗りに碵人(ひろと)がある。人名の例は「碩」の異体字と考えられる。前項参照。

  214. 【穃】
    笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に、「JISの典拠は『国土行政区画総覧1974.06』の沖縄県中頭郡美里村古謝小字穃原(ようばる)である。1995年現在、沖縄市役所の固定資産税課によると、ここは「榕原」と書くもので、現存している1983年の土地台帳、公図でも同様という。」とある。

  215. 【稼−家+最】 5l1202
    苗字に[稼−家+最](さい)・[稼−家+最]所(さいしょ)がある。[稼−家+最](さい)・[稼−家+最]東町(さいひがしまち)岡山県岡山市の地名。

  216. 【竍】
    デカ(十)リットルの意の国字。笹原宏之著『メートル法単位を表す国字の製作と展開』に「中央気象台でメートル法を表す記号を研究して1891年7月1日各気象台に通知し、気象観測の月報などに使い始めた」とある。小泉袈裟勝著『度量衡の歴史』・『日本メートル法沿革史』にも詳しい。『日本人の作った漢字』に「漢字にその字形がある」とあるが、日本の国字を輸入したものである。

  217. 【竏】
    キロ(千)リットルの意の国字。「竍」を参照。

  218. 【竕】
    デシ(1/10)リットルの意の国字。「竍」を参照。

  219. 【竓】
    ミリ(1/1000)リットルの意の国字。「竍」を参照。『日本人の作った漢字』に「漢字にその字形がある」とあるが、日本の国字を輸入したものである。

  220. 【竏−千+升】 5n0401
    『新大字典』に「国字 一リットル」とある。(解説途中)

  221. 【竡】
    ヘクト(百)リットルの意の国字。「竍」を参照。

  222. 【竰】
    センチ(1/100)リットルの意の国字とする。「竍」を参照。

  223. 【笂】
    群馬県前橋市に笂井(うつぼい)町がある。『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「『国土行政区画総覧』にあるこの町名がJISの原典典拠」とある。

  224. 【笹】
    笹原宏之著『「佚存文字」に関する考察』に、「世の異体字として周代の金文にあるが偶然字体が一致したにすぎず佚存文字ではない」とある。『異體字辨』・『和字正俗通』・『國字考』に「サヽ」、『同文通考』に「サヽ 小竹也」、『俗書正譌』に「さゝ 和製と見えて字書になし」、『漢字要覧』に「笹ノ字ハ、葉ノ字ヲ[笹*木]ト書セシヨリ、ソノ下ノ木ヲ省キテ、ささノ義トナシタルモノ」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ササ」とある。『中華字海』には「同[屋−至+世]。見日本《常用漢字表》」とある。『中華字海』・『漢字要覧』の注文からすると、「世」の異体字と「葉」の和製異体字の別字衝突ということになる。

  225. 【篏】
    『漢語大字典』・『漢語大詞典』・『中華字海』がともに『西遊記第二十三回』を引いて「同嵌」とする。日中とも同じ意味であるが、典拠が古いものがなく、国字か否か難しいところである。

  226. 【簓】
    苗字に簓(ささら)がある。『温故知新書』・『大谷大学本節用集』・『和字正俗通』に「[笠−立+彫] サヽラ」、『弘治二年本節用集』に「編木 サヽラ 又作簓」、『永禄二年本節用集』に「編木 サヽラ [笠−立+彫]」、『堯空本節用集』に「編木 サヽラ 簓」、『新刊節用集大全』に「さヽら 小兒之翫具」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「[笠−立+彫] ササラ」とある。[笠−立+玩]参照。

  227. 【簗】
    『国字の字典』が『広辞苑』から「やな」と引き国字とする。『中華字海』が遼時代の墓誌を典拠に「築」の「訛字」とする。『法華三大部難字記』に「チク ツク」とある。やや崩れた字形で『有坂本和名集』・『運歩色葉集』に「ヤナ」、『同文通考』に「ヤナ 譌字 梁也」とある。『名義抄(観智院本)』に「築」と「簗」の中間的字形が見られ、『拾篇目集』には、「築」のやや崩れた字形で、「チク反 ツク ヤナ クハタツ」とある。中国ばかりでなく日本においても本来「築」の異体字として存在した文字であった可能性があり、「梁」と字形が近いことから、「梁」に竹冠を付けてできた「ヤナ」の意の国字として字源俗解されたものか。

  228. 【籏】
    『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「JISの原典典拠は『国土行政区画総覧』にある埼玉県の籏居(はたい)」とある。『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「白籏世界樹樹鏡(ぎんせかい きごとのかおみせ)天保9年11月初演」とある。『正楷録』が「旗」の倭俗訛字とする。

  229. 【籵】
    デカメートルの意の国字。笹原宏之著『メートル法単位を表す国字の製作と展開』に「中央気象台でメートル法を表す記号を研究して 1891年7月1日各気象台に通知し、気象観測の月報などに使い始めた。中国では19世紀末から教科書や科学書に、日本から伝わった「粁」や「瓩」等が体系的ではないが使われ始めた」とある。笹原宏之著『メートル法単位を表す国字の漢字圏各国における衰退』、小泉袈裟勝著『度量衡の歴史』・『日本メートル法沿革史』にも詳しい。『字彙補』・『康煕字典』などに「古[距−巨+番]字」とあるが、笹原宏之著『メートル法単位を表す国字の製作と展開』によると『古今韻會擧要』にある類似した文字を誤刻しているとのことである。国字としてよいと考えられる。

  230. 【糎−里】 620201
    『読む日本漢字百科』に「糎([糎−里])センチメートル」とあり、「糎」と同意の国字としていることがわかる。

  231. 【粁】
    キロ(千)メートルの意の国字。十一粁橋(じゅういちきろばし)は、北海道沙流郡平取町の地名。「籵」を参照。

  232. 【粂】
    東粂原(ひがしくめばら)・西粂原(にしくめばら)は、埼玉県南埼玉郡宮代町の地名。『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「クメ」とある。『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「粂仙人(くめのせんにん)元禄元年2月初演」とある。『旺文社漢字典』に「国字 くめ」、解字に「形声。久 ク と 米 メの音をとってクメの音を表した字」、意味として「くめ。姓名・地名などの「くめ」を表すのに用いる。」とある。『角川漢和中辞典』も同様の解説で、「米」の音「メ」が「ベイ」の転音であり、「ク」と「メ」の合字であるとする解説が追加されるのみである。これらの解説は、ごく普通の妥当な解説と考えられるかも知れないがそうではない。解字で、形声とするのが特によくない。形声とは、『大漢語林』には、「意味を表す部分(形)と発音を表す部分(声)からなる漢字。」とある。「粂」には意味を表す部分がなく、「ク」・「メ」ともに発音を表し、「メ」は漢字音ではなく、日本の慣用音である。六書は、漢字の成り立ちをあらわしたものであり、国字としながら六書を適用しようとすること字体に無理があるのである。『新大字典』は国字とするが、字義に「くめ。久米の合字。姓名・地名等に用いる」とするほか「齊の略字」とし、俗字として[条−木+米]を載せる。略字・俗字というのが日本でのみのことであれば、「久米を合字した国字」と「齊の略字」という形の和製異体字の別字衝突ということもできる。『中華字海』に「粂」は「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とあり、[条−木+米]は、「同齊。字見《字彙補》」とある。『大漢和辭典』には「粂」は「国字 くめ。久米の合字。@姓名・地名等に用ひる。A齊の略字。」とあり、[条−木+米]は『字彙補』を典拠に「齊に同じ。」とある。「齊」の意に用いられる「粂」と[条−木+米]の関係は、『新大字典』とその旧版である『大字典』にあるのみである。『字彙補』に「[条−木+米]與齊義同見〔五音集韻〕」とあることから、「粂」も「齊の略字」として用いられるようになったのであろう。これは日本でおきたことなのであろうが、この時点で、「久米の合字」としての「粂」ができていたかどうかが、国字とすべきか否かの分かれ目となる。国字「粂」に漢字「齊」の略字としての意味が加わった可能性と、齊の略字[条−木+米]の和製異体字としてできた「粂」に「クメ」の訓が加えられた可能性が考えられるが、『大字典』・『新大字典』が[条−木+米]を「粂」の俗字とするのは本末転倒であると考えられる。

  233. 【籾】
    『国字の字典』が『和字正俗通』を典拠に「もみ」の意の国字とするが、『和字正俗通』の字形は、下に示したとおりである。『五音篇海』が『捜神玉鏡』を典拠に「音尼」とする。『名義抄(観智院本)』に「正(中略)チマキ カシキカテ [籾−刃+予 俗]」、『世尊寺本字鏡』に「チウ音 女救反 マウ音 モツ モミ 古籾[飯−反+刃] 雑也 粽也(下略)」、『有坂本和名集』に「モミ」、『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』に「モミ 米 音尼」、『正楷録』(倭楷)に「末密」とある。『皇朝造字攷』は『続日本紀』などの典拠を示すのみで読みや解説は付けない。『玄應一切經音義』・『新撰字鏡天治本』に『世尊寺本字鏡』と同様な注文があり、『五音篇海』と『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』に同じ音注があることを考えれば、「モミ」は国訓であろう。『運歩色葉集』・『大谷大学本節用集』・『和字正俗通』・『國字考』に「[籾−刃+刄] モミ」とある。「籾」と[籾−刃+刄]の中間的な字形で、『同文通考』に「モミ 穀也」とある。(解説途中)

  234. 【籾−刃+刄】 620301
    『運歩色葉集』・『大谷大学本節用集』・『和字正俗通』・『國字考』に「モミ」とある。『和爾雅』には、「倭俗ノ制字」として「モミ 殻ノ字佳」とある。「籾」の異体字にすぎず、国字とはいえないであろうが、和製異体字の可能性はある。「籾」参照。

  235. 【粉−分+万】 620302
    メリア(万)メートルの意の国字。

  236. 【粍】
    ミリ(1/1000)メートルの意の国字とされる。「籵」を参照。『米沢文庫本倭玉篇』に「カウ ツクル」とある。この場合は、「耗」の異体字であろう。『漢語大字典』に『改併四聲篇海』が『俗字背篇』から「知革切」と引くとある。明らかに同形別字であるが、漢字としての字形の方が先に存在している。漢字「粉(こな)」に対して「粉(デシメートル)」が国訓であるという取り扱いが一般的であることを基準にすれば、国訓といえるであろう。『中華字海』には『漢語大字典』の解説はなく、mmの旧訳とのみある。

  237. 【粐】
    粐薪沢(ぬかまきざわ)は秋田県秋田市の地名。『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「『国土行政区画総覧』にあるこの地名がJISの原典典拠」とある。「すくも」と読む辞書もあるが、「粭」の読みをあてただけで、根拠のないものであろう。

  238. 【粭】
    粭島(すくもじま)は山口県徳山市の地名。『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「『国土行政区画総覧』にあるこの地名がJISの原典典拠」とある。『難訓辭典』に「周防國都濃郡粭島(すくもじま)村」とある。

  239. 【粫】
    『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「『国土行政区画総覧』にある福島県の粫田(うるちだ)がJISの原典典拠。ただし、現地(白河市)の役所によれば糯田(もちだ)」とある。「糯」は苗字では「うるち」とも「もち」とも読まれる。「粫」が誤字としても「糯田」が「うるちだ」と呼ばれた時期がある可能性は否定できない。

  240. 【粨】
    ヘクト(百)メートルの意の国字。「籵」を参照。

  241. 【糀】
    『異體字辨』に「カウジ」・『同文通考』に「カウシ [麹(旧字体)]也」、『和字正俗通』に「カウチ」、『國字考』に「カウシ」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「カウヂ」とある。『和字正俗通』には、「糀」に対応する漢字として[麥+(句−口+米)]があげられている。『異體字辨』は、四画の草冠である。

  242. 【糎】
    センチ(1/100)メートルの意の国字。「籵」を参照。『読む日本漢字百科』に「糎([糎−里])センチメートル」とあり、[糎−里]の字形も「糎」と同意の国字としていることがわかる。

  243. 【糘】
    『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』に「JISの典拠は広島県の祇園町西山本糘尻(すくもじり)」とある。『日本地図帖地名索引』に同県の糘地(すくもじ)、『国字の字典』に岡山県久米郡久米町大字桑下字糘山(すくもやま)がある。

  244. 【絵−会+巴】 630401
    JIS補助漢字にある文字で、『大漢語林』は「絹糸の一種。薄くて光沢がある。」と解説し、国字とはしない。『大漢和辭典』にも「ハ 絹布類」とあるだけで典拠がない。中国でよほど使用頻度の低い文字なのか、『漢語大字典』にはなく、『中華字海』には「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  245. 【綛】
    苗字に綛田(かせだ)がある。『伊呂波字類抄(早川流石写)』に「子リ」、『異體字辨』・『和字正俗通』・『國字考』に「シヽラ」、『倭字攷』に『音訓國字格』を典拠に「シヽラ」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「[綛−忍+忍(旧字体)] カスリ」とある。

  246. 【緕】
    「絣(かすり)」の意の国字とされることがあるが『中華字海』に「同纃」とある。「纃」は『漢語大字典』などが『大唐新語』から引用する。ともに国字ではないと考えられる。『運歩色葉集』に「アガク」とある。

  247. 【縅】
    『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ヲドシ」とある。(解説途中)

  248. 【絵−会+晃】 631001
    苗字に[絵−会+晃]岩(ほろいわ)がある(丹羽基二編著『姓氏の由来事典』(県別姓氏宮城県))。『運歩色葉集』・『増刊下学集』・『早大本節用集』・『明応五年版節用集』・『元和三年板下学集』・『新刊節用集大全』などに「ホロ」、『易林本小山板節用集』に「縞[絵−会+晃](シロキトバリ)」とある。『大谷大学本節用集』に「ホラ 母衣 同」、『和字正俗通』に「ホコ」とあるのは「ホロ」の誤りか。

  249. 【繊】
    『中華字海』に「同纖。字見日本〈常用漢字表〉」、『大漢和辭典』に「セン 纖の略字」とある。「纖」の和製異体字か。

  250. 【繧】
    『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「繧[繝−月+日] ウンケン」、『明応五年版節用集』に「繧繝 ウンケン」とある。

  251. 【纃】
    「絣」の意の国字とされることがあるが、『漢語大字典』などが『大唐新語』から引用する。「緕」とともに国字ではないと考えられる。「緕」を参照。

  252. 【纐】

  253. 【聢】
    『異體字辨』・『和字正俗通』・『倭字攷』・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「シカト」、『同文通考』に「シカト 定辭」、『國字考』に「シカト 古本節用集に見ゆ(下略)」とある。『国字の字典』が「確(しか)と。耳で定かに聞く」意の国字とする。

  254. 【舮】
    青森県西津軽郡深浦町に大字舮作(へなし)がある。JISや『大漢語林』などの漢和辞典で「艫」の異体字・俗字とされる。この旁が「戸」になることは、中国でもごく一般的である。この字もあると思われるが、『中華字海』には「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。『難訓辭典』に「陸奥國西津輕郡舮(へなし)村」とある。こちらは、「舮」の後の「作」がない。表記がかわったのであろうか。

  255. 【苅】
    『大辭典』國字表に「カル」とある。『漢語大字典』・『中華字海』ともに「同刈」とのみあり、典拠がない。「刈」の異体字であることには間違いないが、日中いずれでできたものか詳しいことはわからない。『明朝体活字字形一覧』の「国文五号1887年」・「国文四号1887年」・「築地二号1894年・1906年」・「築地五号1894年・1913年」・「築地三号1912年・1935年」・「博文四号1914年」など多くの活字総数見本帳にこの文字がある。

  256. 【草−早+宅】 6n0601
    苗字に[草−早+宅](ところ)がある。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『弘治二年本倭玉篇』に「トコロ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「タク トコロ コモル」、『玉篇要略集』に「トコロ タク」、『同文通考』に「トコロ [草−早+解]也一[草−早+(安−女+ヒ)]」、『國字考』に「トコロ 一作[草−早+(安−女+ヒ)]延喜式に見え(下略)」とある。

  257. 【萢】
    苗字に鎌萢(かまくさ)・釜萢(かまやち かまやつ)がある。青森県の地名に後萢(うしろやち)・下萢(しもやつ)・前萢(まえやち)がある。『法華三大部難字記』にやや崩れた字形で「クチハ」とある。MSゴシック体で表示される[萢−巳+己]は『中華字海』に「姓」で使われるとあり、前後関係の調査が必要だが、「萢」も和製異体字ではあっても国字とはいえない可能性がある。『難訓辭典』に陸奥國北津輕郡横萢(ヨコヤチ)村とある。(再検討)

  258. 【草−早+枕】 6n0801
    『同文通考』に「クタビレ 勞倦也」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「クタビル」とある。[草−早+(村−寸+火)]参照。

  259. 【草−早+店】 6n0802
    『万葉集』にあり、「苫」の異体字ともいわれるがはっきりしない。

  260. 【萩】

  261. 【蓙】

  262. 【蓚】
    『岩波新漢語辞典』が、「蓚酸」と使う国字とするが、『説文通訓定聲』などにあり、国字ではない。笹原宏之著『JIS漢字と位相』に「中国に古くからこの意味で用例がある」とある。

  263. 【草−早+配】 6n1001
    苗字に[草−早+配]島(はいしま はいじま)がある。

  264. 【草−早+責】 6n1101
    『名義抄(観智院本)』に「アツマル アヤマツ」、『音訓篇立』に「アヤマル」、『篇目次第』に「アヤマツ 无」とある。

  265. 【蘰】
    苗字に蘰(かずら)がある。万葉集にも使われる古い字で、『國字考』に「カツラ」とあり、『国字の字典』が「葛(かずら)」の意の国字とする。『倭字攷』に「カツラ 古事記傳六、万葉に波祢蘰(ハ子カツラ)トアリ、コノ物、草ニテモ、糸ニテモ造ル故ニ設ケタル字ニヤ」、『玉篇略』に「マン ハナカツラ」、やや崩れた字形で『音訓篇立』に「カツラ」、『法華三大部難字記』に「ハナカツラ」とある。

  266. 【草−早+鬘】 6n2102
    『皇朝造字攷』に「カツラ」とあり、『国字の字典』が「葛(かずら)」の意の国字とする。草冠は4画。

  267. 【草−早+龝】 6n2103
    『広漢和辞典』・『大漢語林』などに「国字 はぎ。=萩」とするが典拠はない。いずれも[草−早+龝]の草冠は4画である。

  268. 【蚫】
    『新撰字鏡小学篇』に「阿波比」とあり、『国字の字典』が「鮑」の意の国字とする。『有坂本和名集』に「アハヒ」また「アワヒ」、『運歩色葉集』に「アワヒ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「アハヒ」、『元和三年板下学集』に「アブ」、『天正十七年本節用集』に「アワビ」、『弘治二年本節用集』に「鮑 アワビ 蚫 イ」、『永禄二年本節用集』に「長蚫 ノシ」、『同文通考』に「アハビ 石决明也」とある。『弘治二年本節用集』の注文の「イ」は、「蚫」が「鮑」の異体字であることをあらわしている。アワビの意の国字とされることが多いが、『字彙補』に「白交切」とある。『漢語大字典』・『中華字海』が『夢梁録』を引いて「同鮑」とする。意味も日中同じで、国訓ですらないと思われる。ただ「夢梁録の文章だけでは、蚫が鮑の意で用いられていることは、わからない。日本の意味から同鮑としたのかもしれない。」とする説もある。そうだとすると「あわび」は国訓ということになるのだろうか。

  269. 【蛯】
    『大字典』に「國字 エビ 海老とかき、エビと訓ず是より老と虫を合せ其義を示すか。渡島國茅部郡に蛯谷(エビヤ)村といふあり。」とある。蛯谷村は、茅部郡鷲ノ木村から明治8年に棒美・蛯谷古丹をもって分村して成立している。蛯谷古丹は、『角川日本地名大辞典』によると、江戸期から見える地名で、享保13年に最初の定住者があり、延享2年には蛯谷稲荷神社が創建されている。そのほかに江戸期から見える地名として、福島県相馬郡小高町蛯沢(当時は、蛯沢村)がある。このように地名としては、江戸期から見えるものの、節用集などで発見できない。字源説としては、『大字典』のものも否定できないが、節用集などで発見できないことからすると、「老と虫を合せ」作られたとするよりも、[蝗−皇+耆]の異体字としてできた可能性の方が高いのではなかろうか。「老と虫を合せ」作られたのであれば、江戸期に地名以外でももっと普通に見られ、節用集などにも登録されるはずであると考えられる。[蝗−皇+耆]・[蝗−皇+(老*目)]参照。

  270. 【蝗−皇+耆】 6p1001
    苗字に[蝗−皇+耆]原(えびはら)・[蝗−皇+耆]沢(ひれさわ)がある。『増刊下学集』・『早大本節用集』に「エビ」とある。「耆」には、老人の意があるから、「老人のように腰の曲がった虫」の意で作られた国字か。[蝗−皇+(老*目)]は、[蝗−皇+耆]の異体字と推定される。「蛯」は、江戸期には地名にみられるものの、節用集などで発見できない。[蝗−皇+耆]の異体字としてできたものと考えられるが、地名以外では普通には使われていなかったのであろうか。「蛯」・[蝗−皇+耆]参照。

  271. 【蟐】
    『新撰字鏡享和本』に「毛牟又世牟」とあり、『国字の字典』が「蝦蟇(もみ)。赤蛙(あかがえる)の異称」の意の国字とする。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。『偏旁冠脚の字典』に[好−子+常]」の宛字とある。典拠はあるのだろうか。

  272. 【蝗−皇+(瞞−目)】 6p1101
    『大漢和辭典』に「國字 蜘蛛類に屬する一種の小蟲」とあるが、典拠はない。笹原宏之氏が『異体字・崩し字に字源俗解を介した漢字の国字化』で[蝗−皇+{草−早+(肭−月)}]が、[蝗−皇+(瞞−目)]なったことを50種あまりの典拠をもとに解明している。国字とはいえないが、和製異体字の可能性はある。

  273. 【蝗−皇+(老*目)】 6p1102
    『大谷大学本節用集』に「エビ [鮎−占+(蝦)−虫]又海老」、『天正十七年本節用集』に「エビ」とある。『大谷大学本節用集』に「耆」の異体字と考えられる[老*目]があり、「ヲキナ」とある。[蝗−皇+耆]が「老人のように腰の曲がった虫」の意で作られ、その異体字としてできたものか。国字には違いない。蛯・[蝗−皇+耆]参照。

  274. 【蝗−皇+厨】 6p1501
    『拾篇目集』に「チ反 クモ」、『法華三大部難字記』に類似した字形で「クモ」とある。『国字の字典』は「現代名歌選」を引き「蚊帳」の意の国字とするが、作者の個人的な用字法か。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。台湾の規格にあるが未調査である。『中文大辭典』にはない。

  275. 【蝗−皇+憂】 6p1502
    『篇目次第』に「タマムシ 无」、『慶長十五年本倭玉篇』に「イウ タマムシ」、やや崩れた字形で、『字鏡鈔』・『和字正俗通』に「タマムシ」とある。

  276. 【袰】
    青森市の地名に袰懸(ほろかけ)があり、苗字に袰(ホロなど)・袰地(ホロチ ホロジ)・袰川(イヤカワ ホロカワ ヤンカワなど)・袰岩(ホロイワ)・袰野(ホロノ)・袰高(ホウタカ ホロタカ)などがある。『増刊下学集』・『明応五年版節用集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『易林本小山板節用集』・『新刊節用集大全』・『倭字攷』などに「ホロ」とあるが、いずれも「母衣」と二字である。

  277. 【]】
    苗字に](エナ)がある。『名義抄(観智院本)』に「ヱナ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『明応五年版節用集』に「エナ」、『易林本小山板節用集』に「ホロ」とあるが、『名義抄(観智院本)』以外は、いずれも二字である。

  278. 【裃】
    『文字ノいろいろ』(國字)に「かみしも」とある。(解説途中)

  279. 【裄】
    ゆき。衣服の背縫いから袖口までの長さの意を表す国字。『中華字海』に「同絎」とあるが典拠はなく新しい文字か。国字であることは間違いないであろう。

  280. 【褂】
    『名義抄(観智院本)』に「ウチキ」、『世尊寺本字鏡』に「ウチキ カク」とある。『古辭書音義集成18字鏡(世尊寺本)假名索引』は国字とする。『大漢和辭典』が『通雅』・『清會典』を典拠として「ひとへのはだぎ・いくさごろもの一・清代禮服の名」とする。国字ではない。

  281. 【褄】
    『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「重褄閨の小夜衣(かさねずま )初演」とある。『日本人の作った漢字』は山田俊雄氏の『近世常用の漢字−雑俳『新木賊』の用字について−』から「つま」と引いて国字とする。

  282. 【襷】
    『倭名類聚抄(元和古活字那波道圓本)』に「續齊楷記云織成襷本朝式用此字云多須岐今案所出音義未詳」とある。佚存文字であろうか。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『同文通考』・『和字正俗通』・『國字考』に「タスキ」とある。字形が[袖−由+舉]となるものもあるが、別字ではなく、書写体である。

  283. 【訳】
    『中華字海』に「同譯。見日本《常用漢字表》」とある。和製異体字か。『玉篇要略集』に「コトハ フ」、『音訓篇立』に「ワカル」とある。同形別字か。

  284. 【読】
    『中華字海』に「同讀。見日本《常用漢字表》」とある。和製異体字か。

  285. 【諚】
    『運歩色葉集』に「御諚 ヂヤウ」(自明のこととしてか御には読みがつけられていない)、『異體字辨』に「ヂヤウ 御−」・『同文通考』に「ヂヤウ 猶ヲ命ノ猶シ也」、『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「ヂャウ」とあり、「主君の命令の意」で国字とされることがある。『五音篇海(大阪府立中之島図書館本)』・『字彙補』に「[畔−半+比]濳切義闕」とあり、『中華字海』に「[話−舌+空]的訛字。字見『字彙補』」とある。国訓と考えられる。『新字源(改訂版)』に「国訓 ジョウ」とある。

  286. 【貮】
    『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。日本以外に台湾の規格にもある。「貳」の異体字か。『中文大辭典』にはない。

  287. 【販−反+長】 790801
    『国字の字典』が『大字典』を典拠に「勘定」の意の国字とする。『中華大字典』に「帳俗字」、『中華字海』に「同帳」とある。国字ではない。

  288. 【赱】
    『名義抄(観智院本)』などの古字書にごく一般的に見られる「走」の異体字。『中華字海』が『宋元以来俗字譜』を典拠に「同走」とする。中国でもより古い典拠は発見できるものと考えられる。国字ではない。

  289. 【距−巨+名】 7c0601
    『名義抄(観智院本)』・『字鏡集寛元本』に「アナウラ」、『世尊寺本字鏡』に「ミヤウ音 アナウラ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「アナフラ」、『玉篇略』に「シヤウ アナウラ」、『篇目次第』に「アナウラ 无」、『拾篇目集』に「アナウフ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「メヤウ アナウラ」とある。「蹠(あなうら)。足の裏」の意の国字か。『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『玉篇略』・『拾篇目集』は、書写時の誤りか。

  290. 【射−寸+分】 7d0401
    『異體字辨』・『和字正俗通』・『國字考』攷』に「セカレ」、『同文通考』に「セガレ」とある。『倭字攷』は、『和爾雅』・『続和漢名數』を典拠に「セカレ 我子ヲ今俗セカレト云、我子是我身之所分也(下略)」とする。『和爾雅』には、「倭俗ノ制字」として「セガレ 賤息ノ字ヲ用可シ」とある。

  291. 【射−寸+応】 7d0701
    「軈」の異体字。「明治期の小説家の手稿に「[射−寸+応]て」と見え、文脈からして、「軈(やがて)」の意に使われているのは間違いない」と、笹原宏之氏からご教示を受けた。『明朝体活字字形一覧』の「築地五号1894年・1913年」にもこの文字がある。広い意味で国字だが、使用位相が狭く、ほとんど手書きのみで、活字化されることが希であった文字であろう。

  292. 【射−寸+忍】 7d0702
    『運歩色葉集』・『増刊下学集』・『天正十七年本節用集』・『早大本節用集』に「子ラウ」、『明応五年版節用集』・『同文通考』・『和字正俗通』・『國字考』に「子ラフ」とある。

  293. 【射−寸+花】 7d0703
    『国字の字典』が『異體字辨』を典拠に「仕付(しつけ)」の意の国字とするが、『異體字辨』の和俗字には「躾」があるのみである。『和漢三才圖會』・『和字正俗通』・『倭字攷』などに「シツケ」とある。「躾」・[射−寸+益]参照。

  294. 【射−寸+空】 7d0801
    『同文通考』に「ウツケ 空虚也又人ヲ罵ルノ詞(下略)」、『和字正俗通』・『國字考』に「ウツケ」、『文字ノいろいろ』に「うつけ。空心。」とある。『倭字攷』は、『和爾雅』・『続和漢名數』を典拠に「ウツケ 按 放心ノ意、空虚也」とする。『和字正俗通』には[射−寸+空]に対応する漢字として[休−木+空]の字がある。

  295. 【躾】
    『黒本本節用集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『異體字辨』・『和字正俗通』に「シツケ」、『同文通考』に「シツケ 禮ヲ習也」、『國字考』に「古本節用集に見え(中略)礼儀を習う事ハ身を美する乃意(中略)いと近き代乃文字なるへし」とある。『倭字攷』には『和爾雅』・『俗和漢名數』・『燕石雜志』を典拠に「シツケ 按、威儀アルハ一身ノ美ナレハナリ、或ハ[射−寸+花]トカク、華 花同美ナルモ同意ナリ、或ハ[射−寸+益]トカク、威儀ノ則アルハ一身ノ益ナレハナラン」とある。『弘治二年本節用集』・『堯空本節用集』・『大谷大学本節用集』・『早大本節用集』などに「習氣 シツケ」とあるのは、「ならわし。習慣」の意で、「躾」とは意味が異なる。。[射−寸+花]・[射−寸+益]参照。

  296. 【軅】
    笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に、JISの典拠として『国土行政区画総覧』から「福島県白河市(大字なし)通称白坂字軅飛(たかとぶ)」が引かれている。同書に「この地名は「国土調査により字名変更」があり、「鷹飛(たかとび)」になっている。従来漢和辞典やワープロ漢字辞典のほとんどすべてが「軈(やがて)」の異体字としていた。しかし「軅」は「鷹」の動用字ないし篆書体に基づく字体[鳥+(應−/心)]がさらに崩れたものであった」とある。「軈」の異体字とした辞書の編者は何を典拠としたものであろうか。また同氏により、『JIS X 0208:1997附属書7(参考)区点位置詳説』にも『国土行政区画総覧』から同様の解説が付けられた。その後二年あまりを経て出版された『旺文社漢字典』が「やがて 〔軈〕の俗字」と解説するのは、理解に苦しむ。

  297. 【軈】
    『字鏡集寛元本』・『音訓篇立』・『米沢文庫本倭玉篇』・『弘治二年本倭玉篇』・『増刊下学集』・『天正十七年本節用集』・『和字正俗通』に「ヤカテ」、『字鏡集白河本』に「ヨフ ヤカラ ヤカテ」、『玉篇略』に「コン ヤカテ」、『弘治二年本節用集』に「ヤカテ 倭字」、『明応五年版節用集』・『異體字辨』に「ヤガテ」、『書言字考節用集』に「ヤガテ 本朝ノ俗字 音義未詳」、『同文通考』に「ヤガテ 猶ヲ少時ノ猶シ也」とある。『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「ヤカラ」とあるのは「ヤカテ」の誤りか。『字鏡集白河本』に「ヤカラ ヤカテ」双方があるのは、異なった典拠からの増補によるものか。『堯空本節用集』に「寸歩 ヤガテ [込−入+(山*而)] 同 早 同」とある。「軅」参照。

  298. 【轌】
    轌町(そりまち)は秋田県秋田市また秋田県仙北郡仙南村の地名、機織轌の目(はたおりそりのめ)は秋田県能代市の地名。

  299. 【辷】
    [迚−中+一]谷(いったに)は、徳島県勝浦郡勝浦町の、[迚−中+一]石(すべりいし)は、岐阜県山県郡美山町の地名。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「ヲシマロハス」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「カク ヒキタス フシワツラフ マロフ」、『音訓篇立』に「ヤウ音 マロフ カタス ホノメク フシワツラフ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「カク ウシフス マロフ フシワツラフ」、『弘治二年本節用集』に「マルフ」、『合類節用集』に「[迚−中+一]ヲシマロハス 字未詳」、『書言字考節用集』に「コロブ」、『和字正俗通』に「スヘル マロフ」とある。『大塔物語』に「タフシ」とフリガナされている。音注があるものが多いが、『中華字海』などにない。国字と考えられるが、佚存文字の可能性もある。

  300. 【込】
    『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「コモル セム」、『運歩色葉集』に「コムル 込入 コミイル」また「夜込 ヨコミ」、『温故知新書』に「タテコモル」、『音訓篇立』に「コム コモレリ セム コモル」、『米沢文庫本倭玉篇』に「コモリ ヒナサキ ハケキ スマイノコノミチ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「端込 ハシハミ」・『易林本小山板節用集』に「端込 ハシバミ」また「込入 コミイル」、『合類節用集』に「コム又[持−寺+入]同並字未詳」、『書言字考節用集』に「コム 本朝ノ俗字 入ノ字ヲ用宜」、『法華三大部難字記』に「ヒナサキ コモリ スイモノ コミチ ハテキ」、『異體字辨』・『同文通考』・『和字正俗通』に「コム」とある。『新撰字鏡天治本』にもあるが、注文がない。「しんにょう」は、三画のことが多いが、『合類節用集』・『書言字考節用集』・『異體字辨』・『和字正俗通』は四画である。『中華字海』にあるが典拠がなく、新しい文字と考えられ、国字であることは間違いないであろう。

  301. 【辻】
    『名義抄(観智院本)』・『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「ツムシ」、『黒川本色葉字類抄』に「十字 ツムシ東西南北相分之道其中央似十字也 辻 同ツムシ俗用之未詳」、『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「シフ ツシ」、『明応五年版節用集』・『易林本小山板節用集』・『和字正俗通』に「ツジ」、『増刊下学集』・『拾篇目集』に「ツシ」、『撮壌集』に「辻子 ツシ」、『運歩色葉集』に「ツシ」・「辻子 ツジ」また「辻固 ツジガタメ」、『大谷大学本節用集』に「ツジ 路」また「辻固 ツジガタメ」、『合類節用集』に「辻子 ヅシ」、『音訓篇立』に「シウ音 ツシ ツムシ」、『玉篇要略集』に「ツシ シウ」、『新刊節用集大全』に「つぢ」、『異體字辨』に「ツヂ」、『同文通考』に「ツジ 街ナリ」とある。『合類節用集』・『異體字辨』・『同文通考』・『和字正俗通』は4画の「しんにょう」である。『拾篇目集』には、「辻」のほか「しんにょう」に「一」から「九」までの数字を組み合わせた文字が載っているが、「九」以外は『中華字海』などにない。

  302. 【込−入+上】 4y0301
    『名義抄(観智院本)』に「ヲレハキアケ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「ヲシ ハキアケ ソテマクリ」、『字鏡集白河本』に「シ ヲレ ハキアケ ソテマクリ」、『音訓篇立』に「ハキアケ ヲレ」、『篇目次第』に「ハキアケ ソテマクリ 无」、『玉篇略』に「ウテマクリ」、『新刊節用集大全』に「たまだすき」、『和字正俗通』(妄制)に「タマタスキ」とある。『和字正俗通』は4画のしんにょうである。『字鏡集寛元本』は「上」が「止」になっているが、この字は中国にもある。字喃及び古壮字に「上」の意であるが国字であることには間違いないだろう。

  303. 【込−入+下】 4y0302
    『名義抄(観智院本)』に「タヒク マシ コシカラミ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『黒川本色葉字類抄』・『法華三大部難字記』に「コシカラム」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』に「タクヒ コシカラミ マシ」、『玉篇略』に「ヒツ タクイ タカイニ シタカウ タカシ ノカル」、『拾篇目集』に「ヒン反 タクヒ」、『音訓篇立』に「ヒン音 タクヒ マヒ コシカラム」、『篇目次第』に「アシカラミ」とある。『中華字海』に「音匹。義未詳」とある。『漢語大字典』は『字彙補』などから「音匹」と引くが[迚−中+下]に作る。『楷法辨體』に「匹」の異体字のひとつとしてある。「匹」の異体字としてできたものが、中国では義を失い、日本では[込−入+上]の影響を受けて訓義を増やしたものか。字喃及び古壮字に「下」の意であるが関係はないものと考えられる。

  304. 【迚】
    苗字に迚野(とての)がある。『異體字辨』に「トテモ」とあり、『国字の字典』が国字とする。『中華字海』が『篇海』を典拠に「音打義未詳」とする。『漢韓最新理想玉篇』は日本字とするが、国字とはいえない。『運歩色葉集』に「トテモ」また「サテモ」、『天正十七年本節用集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』・『同文通考』・『和字正俗通』に「トテモ」、『新刊節用集大全』に「とても」とある。『運歩色葉集』・『天正十七年本節用集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『新刊節用集大全』は、3画のしんにょうであり、『両足院本節用集』は、より崩れた字形である。

  305. 【逧】
    岡山県英田郡作東町大字梶原に字逧(さこ)がある。(解説途中)

  306. 【遖】
    『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「イカツラケフ アハレフ」、『玉篇略』に「ナン オヨフ イタル」、『米沢文庫本倭玉篇』に「キ アハレム カナシム」、『異體字辨』・『國字考』に「アツハレ」、『同文通考』に「アツハレ 語ノ詞讀テ天晴(アツハレ)ニ作」とある。「しんにょう」は三画のことが多いが、『異體字辨』・『同文通考』は、四画である。

  307. 【良+邑】 7h0701
    『最新JIS漢字字典』が、国字とする。国字ではなく、「郎」の異体字のひとつであると考えられるが、『中華字海』には、「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  308. 【配−己+元】 7i0401
    『漢字の研究』に「サケノモト」とある。「酒母(さけのもと)」のこと。「日本の職人ことば事典」に「酒母づくりの担当責任者のことを上[配−己+元]廻り(うわまとまわり)という」とある。[配−己+元]には「生[配−己+元](きもと)」や工程を一部簡略化した「山廃[配−己+元](さんぱいもと)」などが有名であるが、「速醸[配−己+元](そくじょうもと)」がもっとも一般的で90パーセント以上を占める。

  309. 【鈬】
    『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。国字ではなく、「鐸」の異体字にすぎないと考えられるが、他国の規格にはない。

  310. 【鈩】
    「鑪」の異体字にすぎないと考えられるが、『中華字海』は「日本地名用字」とする。『難読難解日本語実用辞典』に「たたら 東京都足立区にある苗字。」とある。

  311. 【銅−同+色】 810603
    『国字の字典』が、秋田県仙北郡南外村鉋殻谷地(かんながらやち)の町村合併前の地名表記「[銅−同+色]殻谷地」を引き、「鉋(かんな)」の意の国字とする。『中文大辭典』・『漢語大字典』・『中華字海』は、いずれも化学元素セシウムの意の文字としか載せないので、『大漢語林』でも「国字 かんな(下略)」とする。日中ともに[鉋−金]が、「色」・[色−巴+巳]などの字形になることは多く、『中華字海』に「[銅−同+(色−巴+巳)]同鉋。字見《川篇》」また「[炮−(包−己+巳)+色]炮的訛字。字見《龍龕》」とある。『運歩色葉集』に「カンナ」、『明応五年版節用集』に「曲[銅−同+色]クリカナ」、『音訓篇立』に「歩交反 ケツル トル」、『米沢文庫本倭玉篇』に「シ カンナ」、『法華三大部難字記』に「カナ オサム」、とあるが、字形は崩れているものが多く、特に「巴」の第3画を欠くものが多い。『早大本和字正俗通』も「鉋」の誤態とする。『新刊節用集大全』には、[銅−同+色]の字形で「かんな」とあるが、行書体は、[銅−同+(色−巴+巳)]となっている。以上のことから、「鉋」の一異体字にすぎず、国訓ですらないと考えられる。化学元素の名「セシウム」の意として使われるようになったのは、「かんな」の意より新しいと考えられ、『新大字典』が「ショク 字義 化学元素の名。セシウム。 和義 かんな(名)。(中略)鉋(かんな)近世では多く「[銅−同+色]」が使われた」と解説するのは、本末転倒の部分もあり、「国字 かんな」とするよりもよりおかしい表現である。『同文通考』は「タ」と読み、「俗ノ鉈ノ字」とする。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「ホコ シ」とあり、この場合も漢字そのものの用法かも知れない。

  312. 【銅−同+糸】 810604
    『字鏡集寛元本』にあるが注文がない。『大字典』に「國字 カスガヒ」、『文字ノいろいろ』(國字)に「かすがい」とあるが典拠はない。[銅−同+系]参照。

  313. 【銅−同+曲】 810605
    苗字に[銅−同+曲](いかり)がある。『新撰字鏡小学篇』・『新撰字鏡享和本』に「ナタ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「ナヘ」、『字鏡鈔』に「燭 他曲反 アナ」、『字鏡集白河本』に「キヨク 他曲反 アフ」、『字鏡集寛元本』に「他曲反 カナ」、『音訓篇立』に「他曲反 ヒラナヘ カマ カナヘ」、『篇目次第』に「他曲切 カマ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「カンナ」、『文教温故』・『倭字攷』に「クマデ」、『和字正俗通』に「イカリ」とある。

  314. 【鋲】
    苗字に鋲(びょう)・鋲屋(びょうや)がある。『國字考』に「ベウ」とある。韓国の規格にあり、『漢韓最新理想玉篇』に廣釘、日本的用法として廣頭釘とあることも無視はできないが、基本的には、国字と考えられる。『動植物名よみかた辞典』に「鋲蛸木 ビョウタコノキ パンダヌス・ウーティリスの和名」とある。

  315. 【銅−同+系】 810706
    『文教温故』に「かすかひ」、『倭字攷』にもこれを引いて「カスカヒ」とある。『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』にもあるが注文がない。[銅−同+糸]参照。

  316. 【鍄】
    『魁本大字類苑』に「カスガヒ」とあり、同訓のものとして「鎹、貼金」などがあげられている。笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に、JISの典拠として『国土行政区画総覧』から地名用例が引かれている。山形県山形市旅籠町一丁目及び山形県山形市旅籠町一丁目の旧通称小鍄(こがすがい)で、「[銅−同+糸]の崩し字から生じた字形」とある。同著「JIS漢字と位相」には典拠以外の用例として人名「鍄一(きょういち)・鍄鈴」・古字書の用例「『白河本字鏡集』・『魁本大字類苑』などがあげられている。なお同書で『日本地名大辞典』により「コカスガイ」としていた地名の読みは、役場での調査で訂正されている。漢和辞典などが揚げる中国の字書を典拠とした「音亮」・「打楽器の名」などは同形別字か。『名義抄(観智院本)』に「[鍄−京+亰] 俗亰 京正」、『字鏡鈔』に「[鍄−京+亰] 亰同 京同 ヲホキナリ ウレシ ワタル ミヤコ タカシ」、『字鏡集白河本』に「[鍄−京+亰] 亰同 京同 ウレシ ワタル タカシ ヲホキナリ ミヤコ 正」、『字鏡集寛元本』に「[鍄−京+亰] 庚 亰同 京同 オホキナリ ウレシ タカシ ワタル ミヤコ」、『音訓篇立』に「コヱ」、『法華三大部難字記』に「コエ」とある。

  317. 【錵】
    『名義抄(観智院本)』に「ヤサキ」、『音訓篇立』には「カナウス」、『法華三大部難字記』に「クワ カナウ」、『同文通考』に「ニヱ 劔之文也」、『正楷録』(倭楷)に「爾辺」、『國字考』に「ニヱ」とある。中国で化学元素の訳名として使われたことがあるが、日本の方が古く、国字である。

  318. 【錺】
    苗字に錺谷(かざりや)がある(丹羽基二編著『姓氏の由来事典(県別姓氏北海道)』)。『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「大錺万年暦(おおかざり まんねんれき)正徳3年1月初演」とある。

  319. 【銅−同+斧】 810807
    苗字に[銅−同+斧]田(おのだ)がある。『国字の字典』が『皇朝造字攷』を典拠に「斧(おの)」の意の国字とする。『中華字海』が『土地宝巻』を典拠に「同斧」とする。漢字そのものである。『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『拾篇目集』に「ヲノ」、『字鏡集白河本』に「フ ヲノ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「斧 ヨキ [銅−同+斧] 同」、『音訓篇立』に「タツキ」、『和字正俗通』(誤態)に「ヲノ 斧」とある。

  320. 【錻】

  321. 【鎹】
    『倭名類聚抄(元和古活字那波道圓本)』に「功程式云舉鎹 阿介賀須加比今案鎹字本文未詳」、『名義抄(観智院本)』に「未詳 カ爪カヒ アケカ爪カヒ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「未詳 アケカスカヒ カスカヒ」、『温故知新書』・『玉篇略』に「カスカイ」、『音訓篇立』に「アケカスカヒ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「ソウ カスカヒ カスカイ」、『書言字考節用集』に『延喜式』・『倭名類聚抄』を典拠に「カスガヒ」、『同文通考』に「カスガイ [蝗−皇+馬]蝗絆也」、『國字考』に「カスカイ 延喜式に見え(下略)」とある。『和字正俗通』にもあるが、注文がない。『中華字海』に「日本地名用字」、『漢韓最新理想玉篇』に「日字接釘」とある。字形は、[銅−同+送]となるものも多い。

  322. 【鏥】
    『国字の字典』が「錆(さび)」の意の国字とする。『龍龕手鑑』・『集韻』などに「鐵上衣也」・「同銹」などとある。全く漢字そのものである。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「サビ」とある。

  323. 【鐡】
    「鐵」の異体字にすぎないと考えられるが、『中華字海』には「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  324. 【鑓】
    苗字に鑓野目(やりのめ)がある。『米沢文庫本倭玉篇』に「ケン ヤリ」、『玉篇略』・『増刊下学集』・『易林本小山板節用集』・『異體字辨』・『和字正俗通』などに「ヤリ」、『早大本節用集』に「ヤリ 日本始造武具也」、『天正十七年本節用集』に「ヤリ 日本始造也云々」、『同文通考』に「ヤリ 鎗也」、『大系漢字明解』に「ヤリ 日本字ゆゑ音なし(中略)金刃を送遣するの意か」とある。苗字及び『天正十七年本節用集』・『異體字辨』・『大系漢字明解』の「しんにょう」は4画。

  325. 【閇】
    『玉篇』に「閉」の俗字とある文字で、「シナタリ」などは国訓である。[門#牛]も同じく「閉」の俗字であるが、同様に国訓として使われた例がある。[門#化]参照。

  326. 【閊】
    『異體字辨』・『同文通考』・『和字正俗通』・『國字考』に「ツカユル」、『正楷録』(倭楷)に「索矢紫革由」、『和漢三才圖會』に「ツカヘル」とある。韓国の漢字規格にもあるが、『漢韓最新理想玉篇』は「日本字、否塞」とする。『和爾雅』は、「中華之字書ニ出不」とする「倭俗ノ制字」ではなく、「和俗訓義ヲ誤所」として「ツカユル」の訓をつけるが、『中華字海』などにもない。現在は、佚書となった当時存在した中国の字書に存在したものであろうか。「倭俗ノ制字」に入れるべきところを誤ったものである可能性の方が大きいように思われる。

  327. 【閖】
    地名に宮城県名取市閖上(ゆりあげ)、同県桃生郡桃生町閖前(ゆりまえ)がある。『名義抄(観智院本)』に「俗[泳−永+勞]字力到反」とあり、『字鏡鈔』に[泳−永+勞]ほか五字が異体字としてあげられ、「ウツクシイ アマ水」ほか八個の訓がある。『角川古語大辭典』が『前田本色葉字類抄』から「[門#化]、閖、[門#下] シナタリ」と引く。『黒川本色葉字類抄』にも「[門#化] シナタリ 閖 [門#下] 同」とあるが、門構えは、[同−(一*口)]に近い形に略されている。『龍龕手鑑』に「俗音[泳−永+勞]」とあり、『国字の字典』のいう仙台藩専用の文字でないばかりでなく、国字でもない。地名で「ゆり」と読まれるためか訓に「ゆる・ゆれる」をあげる辞書があるが典拠があるのだろうか。[門#化]・[門#也]・[門#西]参照。

  328. 【門#中】 830403
    『天正十七年本節用集』に「ウツロ」とある。『和字正俗通』に「ウソロ」とあるが、字形から見て、「ウツロ」が正しいと思われる。

  329. 【閠】
    『廣韻』が「餘也」とし、『字彙』が「閏」の「誤」、『正字通』が「俗」、『漢語大字典』が「同」とすることから「閏」の異体字と考えられる。『世尊寺本字鏡』に『龍龕手鑑』の影響が考えられる「子ヤ 子トコロ」の訓がある。『頓要集』に「ツヒ」の訓があるが、「玉門」を合字してできた同形別字か。

  330. 【門#豊】 831301
    補助漢字にあるが、中国・日本ともに古字書に「五昆反」とあるのみで、意味・用法等は不明である。[門#豈]と誤ったものか。出典例(『字鏡集寛元本』)

  331. 【雫】
    『異體字辨』に「シツク」とあり、『国字の字典』が「しずく」と引き国字とする。『龍龕手鑑(宋本)』・『五音篇海(大阪府立図書館本)』に「俗奴寡奴寛二反」とあり、同様の字書の影響を受けたものか、『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』に「奴寛反」、『合類節用集』に「シヅク タ 海篇音拏上聲」とある。『運歩色葉集』に「アマダリ」、『堯空本節用集』・『天正十七年本節用集』・『和字正俗通』に「シツク」とある。『同文通考』は「シヅク」を国訓とする。中国での意味が失われているので、国訓なのか中国から来た時にこの意味であったのかはわからないが、国字でないのは確かである。古壮字では「下(面)」の意。

  332. 【霜−相+(隹+鳥)】 871902
    苗字に[霜−相+(隹+鳥)]見(うつみ つるみ)・[霜−相+(隹+鳥)]岡(つるおか)がある。『有坂本和名集』に「ツル」とある。

  333. 【霜−相+(鉄−失+鳥)】 871903
    苗字に[霜−相+(鉄−失+鳥)]田(つるた)・[霜−相+(鉄−失+鳥)]見(つるみ)がある。

  334. 【霜−相+鶴】 872101
    苗字に[霜−相+鶴](つる)・[霜−相+鶴]林(つるばやし)・[霜−相+鶴]見(つるみ)・[霜−相+鶴]我(つるが)・[霜−相+鶴]蒔(つるまき)がある。『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「勇[霜−相+鶴]七(いさましきつるしち)天保7年11月初演」とある。笹原宏之著『JIS漢字と位相』に「国字といわれるが中国にある」とある。ただ一般的な文字ではないらしく、『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  335. 【靹】
    『大漢和辭典』・『中文大辭典』などで音義未詳とされるが、『篇目次第』などに「同[靹−革+韋]」とある。『漢語大字典』は、『大漢和辭典』が引く『呂氏春秋』のほか、『札[込−入+多]』から「靹,當為[靹−革+韋]」、『農政全書』から「堅者耕之,澤其靹而後之」と引いて、「柔軟的(土壌)」とする。これがJIS漢字の典拠ではないが、「鞆」の異体字とする典拠もそれほど明確なものではない。『JIS X 0208:1997附属書6(規定)漢字の分類及び配列』に「ドウ,ノウ」とあるが、典拠は明示されていない。芝野耕司編著『JIS漢字字典』に「靹谷(トモタニ・姓)」とある。「鞆」参照。

  336. 【鞆】
    『名義抄(観智院本)』に「未詳 トモ」、『伊呂波字類抄(早川流石写)』に「トモ 俗用也」、『篇目次第』に「卑兵切 ヘイ反 トモ」、『音訓篇立』に「ヘイ音 トモ サヤ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「ヘイ トモヱ ツカ」『玉篇要略集』に「トモヱ ハウ」、『法華三大部難字記』・『和字正俗通』に「トモ」、『國字考』に「トモ 古事記神代紀万葉集延喜式(中略)乃書に見え(下略)」また頭書して「続字彙補鞆未詳見呂氏春秋」とある。『國字考』の頭書の字は、「靹」の誤りである。「靹」参照。

  337. 【革+付】 920501
    『現代漢語例解辞典』に「国字か。[革+付]掛(フかけ)は、舞楽の装束の一部で、脛巾(はばき)の一種」とある。

  338. 【鞐】
    『和字正俗通』・『國字考』に「コハセ」、『文字ノいろいろ』(國字)に「こはぜ」とある。

  339. 【革+朱】 920601
    『名義抄(観智院本)』・『音訓篇立』に「シホテ」、『運歩色葉集』・『天正十七年本節用集』・『明応五年版節用集』に「シヲデ」、『拾篇目集』に「シロシ シホテ」とある。『中華字海』が『金鏡』を典拠に「音朱義未詳」とする。国訓かもしれない。

  340. 【韋+(峠−山)】 930601
    『國字考』に「コハセ」とある。

  341. 【颪】
    『國字考』に「オロシ アラシ(注文略)」・『漢字の研究』(我國にて制作したる漢字)に「オロシ」とある。

  342. 【飯−反+(日*皿)】 990903
    「饂」に同じ。「[飯−反+(日*皿)][飯−反+屯]」の表記で、『増刊下学集』に「ウトン」、『早大本節用集』に「ウドン」『運歩色葉集』に「ウントン」、『新刊節用集大全』に「うんどん」とある。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「[飯−反+昆][飯−反+屯] ウトン」、『明応五年版節用集』に「温[飯−反+屯] ウントン」、『大谷大学本節用集』に「「温[飯−反+屯] ウンドン 或作[飯−反+(日*皿)][飯−反+屯]」とある。

  343. 【饂】
    [飯−反+(日*皿)]に同じ。国字とされるが、台湾・韓国の規格にもある。

  344. 【駲】
    『名義抄(観智院本)』に「俗州字音周馬白州(下略)」、『合類節用集』に「白州 ハクシウ 馬ノ白尻ナル者ヲ曰」とあるためか、『漢語林』は、「けつじろ 尻の白い馬。」とする。JIS漢字との関係は薄いと考えられ、「音シュウ」とする根拠としても弱い。「馴」の異体字とする説もあるが、典拠を示しているものはない。

  345. 【馴−川+黒】 a11101
    『漢字百科大事典』「歌舞伎外題」に「諸[帖−占+(世+木)]奥州[馴−川+黒](もろたつなをうしうぐろ)宝暦2年初出」とある。『名義抄(観智院本)』に「俗黒字」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「コク 黒同 [泳−永+黒]同 奥同 スミヌル クロシ クラシ」とある。歌舞伎外題のために作られた文字ではないことがわかる。

  346. 【髪】
    『字學擧偶正譌』などを典拠に『中文大辭典』にあり、和製異体字ではない。

  347. 【利*鬼】 a80701
    『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「カコツ」、『字鏡抄』に「カツコ」とある。『字鏡抄』は「カコツ」の誤りか。いずれも「鬼」の第一画が欠けている。

  348. 【鮎−占+入】 b10201 W2353 H74-33 @45969
    『易林本小山板節用集』に「エリ 取魚具」、『異體字辨』・『和字正俗通』に「エリ」、『同文通考』に「ヱソ 魚の名」、『正楷録』(倭楷)に「遠速」、『國字考』に「エソ 魚名」(典拠は『同文通考』)とある。漁具「エリ」の意が本来の意で、書写誤りで、「エソ」となり、魚名にも使われるようになったものか。『中華字海』には「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  349. 【鮎−占+(利−禾)】 b10203 W2355 @45964
    『新撰字鏡小学篇』・『新撰字鏡享和本』・『新撰字鏡群書本』・『世尊寺本字鏡』に「左介」とある。『中華字海』が『集韻』を典拠に「音計。解剖」とする。『天文本字鏡鈔』・『永正本字鏡抄』・『字鏡集(龍谷大学本)』・『字鏡集(大阪府立中之島図書館蔵本)』に「ケツ サク」、『字鏡集寛元本』・『字鏡集(野口恆重編校合)』に「ケツ サク 左介」とある。「鮭」の意の国訓か。『難訓辭典』に『字鏡集』を典拠に「サゴ 魚の名。」とある。『大漢和辭典』も『字鏡集』を引き「国訓 さご。魚の一」とするが、確認できた『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集』の版本のいずれにも「サゴ」の記述はない。版本をご存じの方は、ご教示いただきたい。

  350. 【鮎−占+丁】 b10204 W2356
    『運歩色葉集』に「[鮎−占+定]尾 チャウノヲ [鮎−占+丁]尾同」、『新刊節用集大全』に「[鮎−占+定]尾 ぢゃうのを [鮎−占+丁]尾同」とある。『大辭典』が『林逸節用集』から「土[鮎−占+丁] ドジャオ」と引く。『日本魚名集覧』は『水産名彙』・『湖魚考』を引いて「土[鮎−占+丁] ドジョオ」とする。エツコ・オバタ・ライマン著『朝鮮の国字と日本の国字』に「黒魚。いしのみ」の意の朝鮮の国字とある。『韓國固有漢字研究』にも(韓國の)國字とある。国字か否か難しいところである。或いはそれぞれの国字といえるのであろうか。

  351. 【魴】
    『書言字考節用集』に「マナガツホ 魴[鮎−占+弗] コトヒキ」とある。(解説途中)

  352. 【鮎−占+片】 b10407 W2370 H74-47 @46031
    『新撰字鏡群書本』に、「鯰 奈万豆 [鮎−占+片] 上同」、『新修漢和大字典』に「なまづ」とある。[鮎−占+斥]・[鮎−占+行]参照。

  353. 【鮃】
    『新撰字鏡小学篇』に「布奈」、『世尊寺本字鏡』に「フナ」、『字鏡集寛元本』に「音平 魚名 フナ」とある。中国では「平目」の意であるから、国訓か。

  354. 【鮖】
    『温故知新書』に「イシモチ」、『明応五年版節用集』・『永禄二年本節用集』・『米沢文庫本倭玉篇』などに「イシフシ」、『弘治二年本節用集』・『堯空本節用集』・『増刊下学集』・『早大本節用集』・『新刊節用集大全』に「イシブシ」、『文字ノいろいろ』(國字)に「かじか。杜父魚。」とある。

  355. 【鮗】
    『新撰字鏡小学篇』に「巳乃志呂」、『易林本小山板節用集』に「コノシロ」、『同文通考』に「コノシロ [鮎−占+制]魚也」、『正楷録』(倭楷)に「可那矢路」、『和字正俗通』に「コノシロ」、『サカナの雑学』に「コノシロ ヒイラギ」とある。韓国の漢字規格にもあるが、『漢韓最新理想玉篇』は日本字とする。

  356. 【鮎−占+尓】 b10509 W2381 @46090
    『明応五年版節用集』・『弘治二年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』に「イサナコ」、『同文通考』に「イサヾ」とある。『新刊節用集大全』には「いさなご」とあるが、字形は行書で[鮎−占+尓]、楷書で[鮎−占+爾]である。『龍龕手鑑』にあり、国字ではないと考えられるが、注文中にあるのみで、音義ともに未詳である。次項参照。

  357. 【鮎−占+斥】 b10518 W2389
    『日本魚名集覧』が『水産名彙』を引いて「ナマズ」とする。[鮎−占+片]・[鮎−占+行]参照。

  358. 【鮴】
    苗字に鮴(ごり)・鮴谷(ごりたに ごりだに ごりや)がある。鮴崎(めばるざき)は広島県豊田郡東野町の地名。『易林本小山板節用集』・『書言字考節用集』・『和字正俗通』などに「ゴリ」とある。

  359. 【鮟】
    『漢語大字典』が『集韻』を典拠に「魚名」とする。『字源』が国字とするのは誤りであるが、『中華字海』は日本から輸入された「鮟鱇」の用法でしか載せない。現行の用法に重点を置けば、限りなく国字に近いとはいえる。『大谷大学本節用集』に「クサル」とあるのは何に基づいたものであろうか。「鱇」・「鯱」を参照。

  360. 【鮎−占+伏】 b10609 W2398 H74-41 @46145
    『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「カマツカ」、『篇目次第』に「カマツカ 无」、『運歩色葉集』・『元和三年板下学集』・『早大本節用集』・『天正十七年本節用集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『書言字考節用集』・『和字正俗通』などに「コチ」、『同文通考』に「コチ 一ニマテ」とある(『同文通考』の注文の内「一ニ」は「ひとつに」と読む。)。『新刊節用集大全』に、「[鮎−占+伏]王 こち」とあるのは、珍しい表記である。

  361. 【鮎−占+成】 b10611 W2400 H74-81 @46200
    『易林本小山板節用集』に「ウグイ」、『書言字考節用集』に「ウグ井」、『同文通考』に「ウグイ [鮎−占+必]魚也」、『正楷録』(倭楷)に「胡古以」、『和字正俗通』に「イクヒ」とある。『旺文社漢和中辞典』に「もと[鮎−占+〔歳−小+{歩(旧字体)−止}〕]ケイの俗字」とあるが、『米沢文庫本倭玉篇』に「[鮎−占+(止*成)]ウクヒ」とあることを考えれば、頷けなくないことである。ということになれば、国字ではなく、[鮎−占+〔歳−小+{歩(旧字体)−止}〕]の和製異体字ということになる。

  362. 【鮎−占+行】 b10612 W2401
    『新撰字鏡小学篇』・『新撰字鏡享和本』に「鯰 奈万豆 [鮎−占+行] 上同」とある。『新撰字鏡小学篇』は、[鮎−占+行]の字形がやや崩れており、『新撰字鏡享和本』は、「鯰」の注文中に含まれている。『新撰字鏡群書本』には、[鮎−占+行]の字はなく、「鯰 奈万豆 [鮎−占+片] 上同」とある。『名義抄(観智院本)』に「鯰(注文略) [鮎−占+行] 或用也 未詳」、『世尊寺本字鏡』に「ナマツ」、『字鏡集白河本』に「カウ 未詳」、『字鏡集寛元本』に「未詳 ナマツ」とある。『字鏡鈔』・『字鏡抄』にもあるが、「未詳」とのみある。[鮎−占+片]・[鮎−占+斥]参照。

  363. 【鮎−占+老】 b10613 W2402
    『世尊寺本字鏡』・『拾篇目集』に「ヒシ」、『元和三年板下学集』に「[鮎−占+老]鱗 ウルカ」、『正楷録』(倭楷)に「伏落」、『書言字考節用集』に「ウルメ 未詳」、『同文通考』に「ボラ 鯔魚大ナル者」、『和字正俗通』に「ボラ ウルメ」とある。『倭字攷』は『和爾雅』・『続和漢三才名数』を典拠に「ボラ」とする。『和爾雅』には、「倭俗ノ制字」として「ボラ 鯔ノ字佳シ」とある。『日本魚名集覧』が『日本動物圖鑑』を引いて「トド」、『水産寶典』(大日本水産會編)・『水産名彙』・『水産俗字解』を引いて「ボラ」、『水産名彙』・『水産俗字解』を引いて「[鮎−占+巴][鮎−占+老]魚 アジ」とする。『角川古語大辭典』に「うるか【[鮎−占+條][鮎−占+(豚−月)]・潤香】鮎(あゆ)の腸。またはその塩辛(しほから)」とあり、『下学集』から「[鮎−占+老]鱗 ウルカ」と引く。他の表記法等、同書に詳しい。『大漢和辭典』には「ぼら おほぼら 鯔(イナ)の十分に成長したもの」とあるが典拠がない。

  364. 【鯏】
    『同文通考』・『國字考』・『倭字攷』に「アサリ」、『正楷録』(倭楷)に「阿索里」、『和字正俗通』に「イクヒ」とある。「アサリ」の意に関していえば、漢字本来の字形は、「蜊」であり、この字の和製異体字というべきで、国字とすべきではない。「イクヒ」とは、ウグイのことか。こちらの意味が先にできていれば、国字といえるかもしれないが、より詳しい調査が必要となる。

  365. 【鯑】
    『易林本小山板節用集』に「[鮎−占+東]鯑 カドノコ」、『同文通考』に「鯑 カズノコ [鮎−占+東]鯑 カツノコ」、『正楷録』(倭楷)に「革事那可」とある。『日本魚名集覧』は『水産名彙』を引いて「ウルカ」とする。『新修漢和大字典』に「にしん」とあるのは何を典拠にしたものであろうか。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「ハユ」とあるのは、「鮠(ハエ)」と音による通字か。『大漢語林』の解字に「会意。魚+晞省。晞は、かわかすの意味。鰊(にしん)のはらごを乾燥した食品、かずのこの意味を表す」とある。この説が正しいとすれば、「魚+希」は、字源俗解ということになるが、「魚+晞省」であるというのは、いかなる根拠に基づくのであろうか。

  366. 【鯒】
    やや崩れた字形で『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『易林本小山板節用集』・『新刊節用集大全』・『合類節用集』・『書言字考節用集』・『和字正俗通』に「コチ」、『同文通考』に「コチ 魚の名」とある。『大漢語林』の解字に、「会意。魚+甬。甬(よう)の字の形に似た魚、コチの意味を表す。」とある。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『合類節用集』・『同文通考』の字形は、[鯒−マ+ク]、『新刊節用集大全』・『書言字考節用集』・『和字正俗通』は、[鯒−マ+コ]であり、江戸期以前には、調査した範囲からは正確に同じ字形が見られず、明治以降に漢和辞典で整理され登録された字形とも考えられる「鯒」に基づき解字することが必ずしも正しいとは限らない。「鯒」の形と、甬の形からすると、あながち誤りともいえないが、よりふさわしい形の魚にこの文字が当てられなかった理由が不明で、より具体的な解明が必要であると考えられる。同じ大修館の漢和辞典でも『漢語林』・『大修館現代漢和辞典』の解字には、「会意。魚+甬。」とのみあり、うえの解説はなく、『大漢和辭典』・『広漢和辞典』・『大修館新漢和辞典』には解字自体ない。他社の主なものを見てみると、『字通』・『新明解漢和辞典』・『新字源』・『福武漢和辞典』には、親字として立項されてなく、『岩波新漢語辞典』・『新選漢和辞典』には解字がなく、『現代漢語例解辞典』は字解として国字とのみある。詳細は省略するが、『大漢語林』のように「甬」の字と魚の形を関連づけたものとして、『大字源』・『角川漢和中辞典』・『学研漢和大字典』・『漢字源』がある。『旺文社漢和中辞典』・『旺文社漢和辞典』・『旺文社漢字典』には「会意。魚と甬(痛いの省略形)とで、痛いとげのある魚の意。」とかわった解字をつけている。いずれにしても、[鯒−マ+ク]・[鮎−占+角]の字形を考慮に入れているものはなく、疑問である。[鯒−マ+ク]・[鮎−占+角]参照。

  367. 【鯒−マ+ク】 b10721
    『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「コチ」・『合類節用集』に「コチ 字未詳」、『同文通考』に「コチ 魚ノ名」とある。この字の旁は、「角」の書写体で、字典体にすると、[鮎−占+角]となる。「鯒」・[鮎−占+角]参照。

  368. 【鮎−占+角】 b10720
    旁が書写体になった形で、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「コチ」・『合類節用集』に「コチ 字未詳」、『同文通考』に「コチ 魚ノ名」とある。「鯒」・[鯒−マ+ク]参照。

  369. 【鮎−占+走】 b10706 W2418 H74-82 @46202
    『新撰字鏡小学篇』に「豆久良」、『世尊寺本字鏡』に「[鮎−占+赱] ツクラ 豆良 [鮎−占+走]作歟」、『黒川本色葉字類抄』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『拾篇目集』に「ツクラ」、『篇目次第』に「ツクラ 无」、『元和三年板下学集』に「スバシリ」、『同文通考』に「スバシリ 鯔魚ノ小ナル者」・『和字正俗通』(妄制)に「スハシリ」とある。『字鏡集寛元本』に「ツクラ [鮎−占+赱] 豆良 [鮎−占+走]作歟」とあるのは、『世尊寺本字鏡』の影響が考えられるが、親字が『世尊寺本字鏡』の[鮎−占+赱]から[鮎−占+走]になっているのにかかわらず、注文に「[鮎−占+走]作歟」をつけているのは誤りであろう。

  370. 【鮎−占+花】 b10715 W2428
    『世尊寺本字鏡』に「直灰臣灰二反 ハエ」、『頓要集』に「ハエ」とある。「ハエ」には通常[鮎−占+危]の字があてられる。『名義抄(観智院本)』にある字も崩れてこの字に近づきつつある。『世尊寺本字鏡』の字形は、ほとんど[鮎−占+花]の形になっている。[鮎−占+危]から[鮎−占+花]ができ、別字と認識されて、「ほっけ」の意に用いられるようになったものであろうか。『日本魚名集覧』が『水産名彙』を引いて「ホッケ」『実験活用水産宝典』を引いて「アイナメ」、『新撰北海道史』を引いて「カスベ」とする。

  371. 【鯲】
    『増刊下学集』・『易林本小山板節用集』・『和字正俗通』などに「ドヂヤウ」、『明応五年版節用集』に「トテウ」、『天正十七年本節用集』に「ドジヤウ」、『新刊節用集大全』に「どぢやう」、『同文通考』に「ドヂヤウ 泥鰌魚」とある。『日本魚名集覧』は『水産名彙』・『水産俗字解』などを引いて「ドジョオ」とする。『篇目次第』に「以周切 ユ反 ハエ」と注文に反切があるが、『中華字海』には「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。

  372. 【鯰】
    『新撰字鏡小学篇』に「奈万豆」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「ナマツ 似[鮎−占+追]而頭大也」、『黒川本色葉字類抄』に「ナマツ 似[鮎−占+追]大頭者也」、『元和三年板下学集』に「鮎 ナマツ 鯰 二字ノ義同ジ」また「鮎 アユ」、『増刊下学集』・『法華三大部難字記』に「ナマツ」、『拾篇目集』に「子ム反 ナマツ」、『米沢文庫本倭玉篇』・『玉篇要略集』に「子ン ナマツ」、『弘治二年本節用集』・『天正十七年本節用集』に「アユ」とある。『中華大字典』は日本字として「似鮎」、『漢語大字典』は『清稗類鈔』を典拠に「同鮎」とする。これからすると国字が中国に輸出されたとも見えなくもないが、『倭名類聚抄(元和古活字那波道圓本)』が漢籍『食經』を引用することも無視できない。『弘治二年本節用集』に「鮎 アユ(中略)鯰 同」とあるのは、本末転倒な注文である。

  373. 【鯡】
    『ワープロ・パソコン漢字辞典』に「国字 にしん/卵はかずのこ」とある。同辞典には、別途国字を集めたところがあるが、そちらにはない。判断が揺らいでいたものか。『大漢和辭典』は、『集韻』を典拠に「はらご。海魚の名。」などとし、「邦」として「にしん。[青(旧字体)]魚」とする。「にしん」が、国字でなく、国訓であることはいうまでもない。『書言字考節用集』に「ニシン [鮎−占+建] ニシン 未詳」とある。『書言字考節用集』の注文の内[鮎−占+建]の後の「ニシン」は、実際には、「同」とあるが、読みの所にあるため「ニシン」とした。

  374. 【鯱】
    漢和辞典は「シャチ」の意の国字としているが、古字書はそうではない。『米沢文庫本倭玉篇』に「ヒラメ」、『温故知新書』に「鮟鯱 アンコウノ」とある。『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「金鯱噂高浪(こがねのしゃちほこうわさのたかなみ)明治35年1月初演」とある。「シャチ」は新しい読みか。

  375. 【虎/魚】 b10804a W2433
    『倭字攷』が『東海道中膝栗毛』を引き、「シヤチホコ」とする。

  376. 【鮎−占+底】 b10808 W2435 H74-92
    『日本魚名集覧』が『岩波動物學辭典』を引いて「スケトオダラ」とする。

  377. 【鮎−占+長】 b10809 W2436 b1@46288
    『新撰字鏡小学篇』に「波无」、『名義抄(観智院本)』・『世尊寺本字鏡』・『有坂本和名集』に「ハム」、『字鏡集白河本』に「チヤウ ハム」、『篇目次第』に「ハム 无」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「カマツカ カマス」、『書言字考節用集』に「カマス 未詳」・『和字正俗通』に「カマス」とある。

  378. 【鮎−占+雨】 b10813 W2440
    『易林本小山板節用集』に「キギフ」、『新刊節用集大全』に「きぎう」、『和字正俗通』に「ギヾ」とある。魚名「ぎぎ」の意の国字か。

  379. 【鮎−占+岩】 b10814 W2441
    苗字に[鮎−占+岩]留(いわなどめ)がある。長野県安曇郡安曇村に字[鮎−占+岩]留(いわなどめ)がある。

  380. 【鮎−占+尚】 b10817 W2444
    『世尊寺本字鏡』に「タカニ」、『字鏡集白河本』に「タナコ」、『篇目次第』に「タカマ 无」とある。『世尊寺本字鏡』・『篇目次第』は、書写時に「タナコ」を誤ったものか。『国字の字典』が『サカナの雑学』を引き「タナゴ」の意の国字とする。

  381. 【鮎−占+近】 b10719
    『日本魚名集覧』が『水産名彙』・『実験活用水産宝典』を引いて「ワカサギ」、『水産名彙』を引いて「チカ」とする。

  382. 【鮎−占+若】 b10824 W2452
    『大字典』に「國字 ハエ ハヤ」とあり、『国字の字典』が「鮠(はえ)」の意の国字とする。『新大字典』に「国字 ハヤ ハエ」、『大漢語林』に「国字 わかさぎ。(中略)はや。はえ。(下略)」など国字とされることが多く、『漢韓最新理想玉篇』も「日本字 白魚」とする。『漢語大字典』が宋の『夢梁録』を典拠に「魚名、比目魚類、也作[笠−立+弱]」とする。国字ではなく、国訓と考えられる。『世尊寺本字鏡』・『字鏡集寛元本』に「ヒヲ ハエ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「ヒヲ」、『字鏡集白河本』に「シヤク ヒヲ」、『拾篇目集』に「ヒヲ イワシ ハエ」、『元和三年板下学集』に「[鮎−占+異] ハエ [鮎−占+若] 上ニ同シ」、『同文通考』に「[鮎−占+異] ハエ [鮎−占+若] 並同」とある。『大漢語林』は解字で「音符の若がわかさぎの「わか」の読みを表す、日本的形声文字。」とするが、古字書の注文からすると、「わかさぎ」は、新しい訓であろうから、この解釈は成り立たないと考えられる。新しい解釈を示すときには、典拠を明確にすべきであるが、「わかさぎ。はや。はえ。」ともに典拠をつけていない。『有坂本和名集』に「魚偏」が無く、かつやや崩れた字形で、「若 ハヤ」、『篇目次第』に「[話−舌+若] ヒヲ 无」とあるのは、書写時の誤りか。[鮎−占+異]・[鮎−占+輩]・[鮎−占+(輩−非+北)][鮎−占+(輩−非+比)]参照。漢和辞典は魚部9画とするが、古字書の多くは8画である。補助漢字にあり、『JIS X 0221:1995(ISO-IEC 10646-1:1993)』にもある。区点位置からすると9画であるが示されている字形は、3画の草冠で8画である(『大字典』も魚部9画としながら字形は8画である。)。当辞典では、漢字の正字意識に引かれた字形ではなく、歴史的に典拠のある字形による画数を採用し、魚部8画とした(部首で準拠した『大漢語林』の魚部9画を採用しなかった)。

  383. 【鰄】
    『元和三年板下学集』に「カイラギ 刀ノ鞘ニ之ヲ用ユ日本ノ俗作所也又梅花皮ト云ウ也」、『和字正俗通』(誤義訓)に「ウク井」とある。(解説途中)

  384. 【鰛】
    『漢語大字典』に「沙丁魚。魚綱鯡科。体扁側。小型魚類。是世界重要経済魚類(下略)」とあって鰯のことと考えられるが、同書が引く明代の『[門#虫]中海錯疏』には「鰛,似馬鮫而小,有鱗,大者僅三四寸」とあり、本来は鰯よりもなお小さい魚を指したものであろう。「鰮」参照。

  385. 【鰒】
    『弘治二年本節用集』に「フグ 或作[鮎−占+(幅−巾)]」、『永禄二年本節用集』に「フク [鮎−占+富]イ」、やや崩れた字形で『字鏡鈔』に「フク アハヒ フクヘ」、『運歩色葉集』に「[鮎−占+(幅−巾)] フク 鰒 同」、『増刊下学集』に「フク」、『同文通考』(國訓)に「フクトウ フグ 河豚(フグ)也 鰒(ハク)ハ音薄石決明也」とある。『漢語大字典』が『説文解字』などを典拠に「石決明。又名鮑魚」、『本草綱目・鱗部・鮫魚』を典拠に「古代対沙魚的別称」とする。漢字本来の意味は、「鮑(あわび)」であり、「河豚(ふぐ)」の意に使うのは、『同文通考』にあるとおり、国訓である。『音訓國字格』を典拠に『倭字攷』に「[鮎−占+夏] フグ」とあり、『国字の字典』が「河豚(ふぐ)」の意の国字とする。「鰒」の異体字の一つにすぎず、国字ではない。[鮎−占+夏]参照。

  386. 【鮎−占+神】 b10901 W2454
    海魚の一種「ハタハタ」の意の国字。苗字に[鮎−占+神](いなだ)がある。『大字典』に「鰰 國字 ハタハタ(名) [鮎−占+雷] 、雷魚、イナ。」とあるが、『国字の字典』が『大字典』を引き「燭魚(はたはた)」の意の国字とするが、字形と引用を誤り、「[鮎−占+神] ハタハタ(名)、雷魚、イナ。」とする。

  387. 【鮎−占+毘】 b10910 W2460
    魚名「ぎぎ」の意の国字。『明応五年版節用集』に「ギギ」、『易林本小山板節用集』に「ギギフ」、『同文通考』・『和字正俗通』に「ギヾ」とある。『拾篇目集』には「コン反 イヲノコ ハエ」とあり、[鮎−占+皆]や[鮎−占+異]などとの混乱が見られる。

  388. 【鮎−占+宣】 b10911 W2461
    『新撰字鏡小学篇』に「波良加」、『倭名類聚抄(元和古活字那波道圓本)』に「[鮎−占+宣]魚 辨色立成云[鮎−占+宣]魚 波良可音宣今案所出未詳本朝式用腹赤二字」、『名義抄(観智院本)』に「音宣 未詳 ハラカ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『伊呂波字類抄(大東急記念文庫本)』(一巻)・『合類節用集』に「[鮎−占+宣]魚 ハラカ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『字鏡集寛元本』に「セン ハラカ エヒ」、『有坂本和名集』・『早大本節用集』・『大谷大学本節用集』・『天正十七年本節用集』・『法華三大部難字記』・『和字正俗通』に「ハラカ」、『撮壤集』に「ハラアカ」、『篇目次第』に「セン反 ハラカ 无」、『拾篇目集』に「セン反 ハラカ」、『玉篇要略集』に「ハラカ セン」、『元和三年板下学集』・『弘治二年本節用集』に「ハラカ 腹赤魚也」、『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』に「ハラカ 腹赤魚也(略)云櫻魚也(下略)」、『同文通考』に「ハラカ魚ノ名本朝式腹赤二字ヲ用」とある。

  389. 【鮎−占+室】 b10912 W2462 H75-11 @46355
    『大漢和辭典』に「國字 むろあぢ」とあるが、典拠はない。『中華字海』に「日本地名用字。〔[鮎−占+室]碆〕在高知県」、『中華大字典』は「日本字。魚名。似鰺」とある。

  390. 【鮎−占+追】 b10918 W2468
    『新撰字鏡享和本』に「[鮎−占+台][鮎−占+追]同勅文○○○反壽也老也佐女」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「イシフシ 音夷 伏石間也」また「[鮎−占+追]魚 フクヘ イフク」、『伊呂波字類抄(大東急記念文庫本)』(一巻)に「イシフシ 性伏汎在石間物也」、『有坂本和名集』に「イシフシ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「イ イシフシ」、『篇目次第』に「イシフシ 无」、『拾篇目集』に「イシフシ チヽカフリ」、『玉篇要略集』に「イシフシ ツイ」、『元和三年板下学集』に「イシフチ」、『堯空本節用集』に「チヽカフリ ハリ」、『両足院本節用集』に「チヽカフリ」、『和字正俗通』に「フクラキ イシフシ」とある。『有坂本和名集』は、4画のしんにょうである。『字鏡集寛元本』には、「イシフシ チヽカフリ クラシ フクヘ」の読み、音注「イ」のほかに、「与之反」と反切もある。

  391. 【鮎−占+荒】 b10919 W2469
    『運歩色葉集』・『天正十七年本節用集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』にやや崩れた字形で「アラ」とある。

  392. 【鰯】
    「いわし」の意の国字であるが、中国や韓国でも日本と同じ意味で使われる。両国の規格にあるが、『中華大字典』・『漢韓最新理想玉篇』は日本字とする。『名義抄(観智院本)』に「イハシ 未詳」、『撮壤集』・『元和三年板下学集』・『増刊下学集』に「イワシ」、『温故知新書』・『異體字辨』・『和字正俗通』に「イハシ」、『弘治二年本節用集』に「イワシ」また「[鮎−占+時]イワシ」、『永禄二年本節用集』に「イワシ[鮎−占+時]同(下略)」、『堯空本節用集』・『両足院本節用集』に「イワシ[鮎−占+時](下略)」、『同文通考』に「イハシ 鰛也」とある。『拾篇目集』には「イワシ」の訓のほか「ヒヤウ反」とある。中国の佚書の影響でもあるのだろうか。

  393. 【鰮】
    『中華大字典』に「音未詳 魚名〔[門#虫]書〕鰮似馬鮫而小〔按日本動物學云鰮一名鰯屬(下略)〕」また「鰯 日本字 鰮魚一名鰯」とある。小魚の名であることのみ伝わっていた漢字を日本の用法により、日本字「鰯」の意に中国でも使うようになったということか。「鰛」参照。

  394. 【鰡】
    『廣韻』に「力求切」とあり、国字ではない。大漢語林は「鯔を日本で鰡に書き誤り、のち中国でも認められた」とするが、『廣韻』や『廣韻』が典拠とした字書などが編纂される前にその様なことがあったのだろうか。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「ナヨシ シ」、『玉篇要略集』に「ナヨシ リウ」、『元和三年板下学集』に「ナヨシ 或ハ名吉ト作ル」(名吉にはナヨシとフリガナされている)、『増刊下学集』・『天正十七年本節用集』に「ナヨシ」、『弘治二年本倭玉篇』に「リウ ウナキ ナヨシ」とある。

  395. 【鰰】
    海魚の一種「ハタハタ」の意の国字。苗字に鰰沢(いなさわ いなざわ)がある。『大字典』に「國字 ハタハタ(名) [鮎−占+雷] 、雷魚、イナ。」とある。『国字の字典』は『大字典』を引き「燭魚(はたはた)」の意の国字とするが、字形と引用を誤り、「[鮎−占+神] ハタハタ(名)、雷魚、イナ。」とする。

  396. 【鮎−占+恵】 b11220 W2480
    『新撰字鏡小学篇』に「左波」、『名義抄(観智院本)』に「アハヒ アヲサハ」、『世尊寺本字鏡』に「アヲサハ 左波」、[鮎−占+恵(旧字体)]の字形で、『同文通考』に「アヲサバ 魚ノ名倭名鈔所謂鯖也」、『和字正俗通』に「アヲサハ」、『大漢和辭典』に「國字 さば。あをさば。[鯖(旧字体)]。」、『広漢和辞典』に「国字 さば。あおさば。海魚の一。[鯖(旧字体)]。」とある。

  397. 【鱈】
    『運歩色葉集』・『増刊下学集』・『早大本節用集』・『易林本小山版節用集』に「タラ」『明応本節用集』に「タラ 北國有之」、『新刊節用集大全』に「たら」とある。中国・台湾の漢字規格にもあるが、日本の国字を輸入したものである。中国には簡体字さえある。[鮎−占+(膤−月)]の字形で、『和爾雅』に「倭俗ノ制字 タウゲ 嶺ノ字ヲ用宜」、『書言字考節用集』に「タラ 和俗所用」、『異體字辨』・『和字正俗通』に「タラ」、『同文通考』に「タラ [口**大]魚也 按ニ朝鮮俗ニ大口魚ト名」とある。

  398. 【鱇】
    『運歩色葉集』・『温故知新書』・『増刊下学集』・『合類節用集』などに「鮟鱇 アンカウ」とある。「鮟鱇(あんこう)」は海魚の一種。中国でもこの字を輸入して用いる。『天正十七年本節用集』・『大谷大学本節用集』・『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・などに「アンカウ 有足魚也」とある。頭部の提灯状のものを足に見立てたものか。

  399. 【鮎−占+異】 b11104 W2488 46469
    『元和三年板下学集』などに「ハエ」、『同文通考』に「ハエ [鮎−占+若 並同]」、『和字正俗通』・『國字考』に「ハヱ」とある。[鮎−占+輩]・[鮎−占+(輩−非+北)]・[鮎−占+(輩−非+比)]・[鮎−占+若]参照。

  400. 【鮎−占+常】 b11105 W2489
    『和字正俗通』に「[鮎−占+敷][鮎−占+常] イルカ」とあり、『国字の字典』が「海豚(いるか)」の意の国字とする。『広漢和辞典』に「国字 いるか。海獣の一。海豚。」、『大漢語林』に「国字 いるか。海豚。」とあるが、典拠はつけられていない。

  401. 【鮎−占+鹿】 b11107
    『国字の字典』が『新撰字鏡』を引き、「鰮(いわし)」の意の国字とする。『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「イルカ イハシ」、『拾篇目集』に「イルカ イワシ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「ロク イルカ」とある。いずれも字形はやや崩れた形となっているが、同字に間違いない。『龍龕手鑑』に「力木切 魚名」とある。『米沢文庫本倭玉篇』の音が『龍龕手鑑』の反切に一致しており、影響が考えられる。国字ではない。

  402. 【鮎−占+細】 b11108 W2492
    『和字正俗通』に「キス」とある。

  403. 【鮎−占+都】 b11117 W2501
    『新撰字鏡』に「奈万豆」、『名義抄(観智院本)』・『世尊寺本字鏡』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』・『篇目次第』・『拾篇目集』に「ナマツ」、『字鏡集白河本』に「ト ナマツ」とある。

  404. 【鮎−占+乾】 b11118 W2502
    『書言字考節用集』に「[鮎−占+昌] マナカツホ 和俗所用或[鮎−占+將]。或[鮎−占+乾]。並未詳」とある。『サカナの雑学』に「マナガツオ」とあるのは、『毛吹草』から「武蔵 ハタシロ筋鰹(中略)備前 [鮎−占+乾] マナカツヲ 紀伊 [鮎−占+乾] 筋鰹 肥前 [鮎−占+乾]」と引用する『古事類苑』(動物部十七 魚中)が典拠のようだ。

  405. 【鮎−占+(輩−非+比)】 b11119
    『新撰字鏡小学篇』・『世尊寺本字鏡』に「ハエ 波无」とある。[鮎−占+輩]・[鮎−占+(輩−非+北)]・[鮎−占+異]・[鮎−占+若]参照。

  406. 【鮎−占+冨】 b11120 W2504
    『増刊下学集』に「フク」とある。

  407. 【鰹】
    『異體字辨』に「カツヲ」とあり、『国字の字典』が「堅魚(かつお)」の意の国字とする。『龍龕手鑑』に「古田切大[鮎−占+同]也」とある。国字ではない。『新撰字鏡天治本』に「古年反平大[鮎−占+同]則反伊加魚名」、『名義抄(観智院本)』に「音堅 カツヲ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『法華三大部難字記』・『倭字攷』に「カツヲ」、『篇目次第』に「古田切 ケン反 カツヲ ヲホカツヲ」、『元和三年板下学集』に「カツウヲ」とある。

  408. 【鱚】
    『倭字攷』に「キス」とあり、『国字の字典』が国字とする。『大漢和辭典』に「国字 きす。海魚の一。鼠頭魚。鶏魚。」、『広漢和辞典』に「国字 きす。海魚の一。南日本沿岸の砂底に産する。鶏魚。」とあるが、いずれも典拠はない。『字彙補』が『唐韻』を典拠に「與熹同」とする。国字ではない。中国でも日本での魚名「きす」の意を逆輸入して使っており、『漢語大詞典』など辞書によっては漢字本来の意味が載っていないこともある。

  409. 【鮎−占+(輩−非+北)】 b11205
    『伊呂波字類抄(大東急記念文庫本)』(一巻)に「俗用也 未詳 ハエ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「ハヱ」、『異體字辨』に「ハヘ」、『同文通考』に「ハユ 魚名」、『國字考』に「ハエ」とある。「鮠」に同じ。[鮎−占+輩]・[鮎−占+(輩−非+比)]・[鮎−占+異]・[鮎−占+若]参照。

  410. 【鮎−占+富】 b11208 W2510
    『国字の字典』が『サカナの雑学』を引き「河豚(ふぐ)」の意の国字とする。『字鏡集白河本』に「[鮎−占+冨] フク 或云鰒」、『増刊下学集』に「[鮎−占+冨] フク」とある。

  411. 【鮎−占+暑】 b11219 W2519 H75-47 @46560
    『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『天正十七年本節用集』・『易林本小山板節用集』・『和字正俗通』に「シイラ」、『合類節用集』に「シイラ 字未詳」、『書言字考節用集』に「シイラ 未詳」、『増刊下学集』には「シヒラ 倭字歟」、『同文通考』に「シイラ魚名」とある。『弘治二年本節用集』に「シイテ」とあるのは「シイラ」の誤りであろう。『国字の字典』は『和字正俗通』を典拠に「勒魚(しいら)」の意の国字とする。

  412. 【鮎−占+署】 b11301 W2520 H75-52 @46582
    『古事類苑』(動物部)が、『書言字考節用集』から「九万匹 クマビキ 又云津字(ツノシ) [鮎−占+署] シイラ 未詳」、『物類稱呼』から「鮎−占+署 志いら(下略)」、『和漢三才圖會』から「[鮎−占+署] しひら くまひき」と引用する。『書言字考節用集』の字形は、[鮎−占+暑]が正しく、『古事類苑』(動物部)の引用は、正確でない。『国字の字典』は、『新字源(旧版)』(国字国訓一覧)を典拠に「勒魚(しいら)」の意の国字とする。『サカナの雑学』に「シイラ」とある。[鮎−占+暑]に同じ。

  413. 【鮎−占+雷】 b11302 W2521 H75-46 @46559
    『サカナの雑学』に「カムルチイ。ハタハタ」とある。「カムルチイ」は雷魚のこと。「ハタハタ」の意の文字とは同形別字か。国字か否か難しいところである。

  414. 【鮎−占+愛】 b11305 W2524 H75-49 @46562
    『拾篇目集』に「イシフシ」、『書言字考節用集』・『和字正俗通』に「ムツ」、『同文通考』に「[鮎−占+愛][鮎−占+郷] アイキョウ 魚ノ名」とある。やや崩れた字形で、『新刊節用集大全』に「あいきゃう」とある。(解説途中)

  415. 【鮎−占+敷】 b11501 W2534
    ややくずれた字形で、『名義抄(観智院本)』に「[鮎−占+敷][鮎−占+常] 敷常二音 [鮎−占+{浮−(海−毎)}][鮎−占+布] 一名々也」、『字鏡鈔』・『篇目次第』に「イルカ」とある。『和字正俗通』に「[鮎−占+敷][鮎−占+常] イルカ」とあり、『国字の字典』が「海豚(いるか)」の意の国字とする。

  416. 【鮎−占+輩】 b11503 W2536
    『和字正俗通』に「ハヱ」とある。[鮎−占+(輩−非+北)]・[鮎−占+(輩−非+比)]・[鮎−占+異]・[鮎−占+若]参照。

  417. 【鮎−占+(頁+頁)】 b11802 W2540
    『字鏡鈔』に「ナヨシ」、『法華三大部難字記』に「コノシロ」とある。

  418. 【鮎−占+(真+頁)】 b11901 W2541
    『名義抄(観智院本)』に「ナヨシ」とある。

  419. 【鮎−占+願】 b11903 W2539
    『世尊寺本字鏡』に「ツクラ」、『字鏡集寛元本』・『拾篇目集』に「ナヨシ」とある。『日本魚名集覧』が『水産名彙』『水産俗字解』を引いて「ナヨシ」、『水産名彙』を引いて「クチメ」とする。とする。『国字の字典』は『サカナの雑学』を引き「鯔(ぼら)」の意の国字とする。『字鏡鈔』に「イヨシ」とあるのは、「ナヨシ」の誤りか。

  420. 【鳰】
    苗字に鳰崎(におざき)・鳰生(におう)・鳰川(におかわ にえかわ)がある。「鳰の海・鳰の湖(におのうみ)」は、琵琶湖の別称。『新撰字鏡享和本』に「尓保」、『名義抄(観智院本)』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』・『増刊下学集』・『和字正俗通』に「ニホ」、『新刊節用集大全』に「にほ」、『世尊寺本字鏡』・『字鏡集寛元本』に「ミホ ニホ」、『篇目次第』に「ニホ 无」、『書言字考節用集』に「ニホ 所出未詳」、『運歩色葉集』・『元和三年板下学集』に「ニヲ」、『弘治二年本節用集』に「ニヲトリ 浮巣ニ子生ス [門#下]水鳥 同」『永禄二年本節用集』に「ニホ(下略) [門#下]水鳥 ニホトリ」、『堯空本節用集』に「ニホトリ 又[門#下]水鳥」、『合類節用集』に「[門#下]水鳥 ヘイスイテウ 鳰 ニヲヽ云」とある。

  421. 【鳥+入】 b20201
    苗字に[鳥+入](にお)・[鳥+入]川(におかわ にえかわ)がある。『合類節用集』(巻三名字部)に「[鳥+入] ニヲ」とある。

  422. 【鴫】
    『名義抄(観智院本)』に「シキ ツクミ」、『世尊寺本字鏡』・『字鏡集寛元本』に「シキ キシ」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『有坂本和名集』・『異體字辨』に「シキ」、『字鏡集白河本』に「テン シキ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「シギ」、『篇目次第』に「シギ 无」、『拾篇目集』に「ツミ シキ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「シキ ハチカキトリ」、『大谷大学本節用集』に「田鳥 シギ 鴫 同」、『合類節用集』に「田鳥 シギ デン 俗ニ鴫ニ作」、『同文通考』に「シギ 漢語抄田鳥ニ作」、『俗書正譌』に「しぎ 和製也」また「鴫居 しきい(注文略)」、『國字考』に「シキ 田鳥乃二字(中略)合わせて一字としたるなり(下略)」とある。『皇朝造字攷』は『倭名類聚抄』を引き、「しき」に「田鳥」の表記があることを示すが、「鴫」の字自体の典拠・解説はない。

  423. 【田*鳥】 b20501
    『世尊寺本字鏡』に「ウスメトリ」とある。溝五位(みぞごい)の古名。「オスメトリ」に同じで、『名義抄(観智院本)』などに「護田鳥 オスメトリ」とあることから、「田」と「鳥」を合字してつくられた国字か。『図説日本鳥名由来辞典』に「“おずめどり”の名は奈良時代から知られていた。江戸時代になってその本体が問題になり、ミゾゴイとも考えられ、またバンとも考えられた」とある。『角川古語大辭典』にも詳しい。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』には「ヲスメトリ」とある。

  424. 【(会−云+干)+鳥】 b20502
    『動植物名よみかた辞典』に「シメ。アトリ科の鳥。」とある。[今+鳥]が、[(今−ラ+テ)+鳥]の字形を経て変化した異体字であろう。鳥の事典・図鑑(写真によるものも含む)などで見ることがあるが、漢和辞典などにはない。

  425. 【鵈】
    笹原宏之著『「JIS X 0208」における音義未詳字に対する原典による同定』に、JISの典拠として『国土行政区画総覧』から「福島県相馬市石上字鵈沢」が引かれている。同書に「後に訂正され[舶−白+鳥]と変わっており、誤記であったと見られる。役所担当課でも[舶−白+鳥]が正しいという。」とある。『拾篇目集』に[胴−同+鳥]で「ミサコ」と読んでおり、地名との関係も考えられる(この用例は「舟月」であろうか)。『新撰字鏡小学篇』に「止比」、『世尊寺本字鏡』に「ショ音 ヒハトリ ヒエトリ 止比」、『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集白河本』に「ヒエトリ ニハトリ」、『字鏡集寛元本』に「シヨ ヒエトリ ツクミ ニハトリ 止比」、『篇目次第』に「ヒエトリ 无」とある。『世尊寺本字鏡』・『字鏡集寛元本』に音注があるが、『中華字海』などになく、国字であろう。『大漢語林』・『漢語林』・『旺文社漢字典』は、「鳶省+職省」であるとして、「鳶職」の意の国字とするが、うえにあげた古字書の注文からすると、鳥の名「鳶」と考えるのが普通ではないだろうか。

  426. 【鵆】
    『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「其鵆夜半の髪梳(そのちどりよわのかみすき)安永3年1月初演」とある。『同文通考』にやや崩れた字形で「チトリ [行+鳥] 同上 並信鳥也」、『正楷録』(倭楷)に「地多里 [行+鳥] 同上」とある。『倭字攷』は『月清集』から「チドリ」と引く。[行+鳥]の国訓「チトリ」が『名義抄(観智院本)』・『世尊寺本字鏡』・『温故知新書』などに見られるが、この字の動用字とすべきもので国字とするのは適切でない。大空社『節用集大系』により、江戸前期・中期の節用集を調査した結果、江戸前期には草書体にのみ見られるこの動用字は、江戸中期には行書や楷書でも用いられるようになった。元禄10年(1697)刊『頭書増字節用集大成』には草書体で「鵆 ちどり カウ」とあるが、楷書体は[行+鳥]のままである。明和7年(1770)刊『早引節用集』に楷書に近い行書で「鵆 ちどり カウ」とある。安永5年(1776)刊『早引節用集』では楷書も「鵆」の字形となっている。その後嘉永3年(1850)刊『永代節用集』で例外的に[行+鳥]が用いられているものの、「鵆」の字形が定着したと言っていいだろう。

  427. 【年+鳥】 b20601
    『新撰字鏡小学篇』に「豆支一云太宇」、『世尊寺本字鏡』に「ツキケ」、『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』に「タウ」また「[年+鳥]毛 ツキケ」、『黒川本色葉字類抄』に「タオ又ツキ」また「[年+鳥]毛 ツキケ」、『運歩色葉集』に「ツキ」、『米沢文庫本倭玉篇』に「タウ トキ」、『天正十七年本節用集』に「タウ」、『大谷大学本節用集』に「宿[年+鳥]毛 サビツキケ 馬毛」、『同文通考』に「トキ ツキ 朱鷺也」とある。『黒川本色葉字類抄』には「俗用之未詳」とあるのみで「ツキ」とはないが、「桃花鳥」の後であり、書写者が「同」を漏らしたものと考えられる。

  428. 【鵤】
    福建語にあり、『台語字典』が「音kak」とする。また『中華字海』が『篇海』を典拠に「音贊義未詳」とする。これらの影響は受けていないかもしれないが、『倭名類聚抄(元和古活字那波道圓本)』が漢籍『食經』を引き「崔禹錫食經云鵤 胡岳反 和名伊加流加」とすることは無視できない。また『皇朝造字攷』には『本草和名』も『食経』を引くとあり、「非皇朝造字也」と結論づけている。各字書に「イカルカ」または「イカルガ」の訓が多いが、『名義抄(観智院本)』に「胡岳反 ウ ツフリ イカルガ」、『運歩色葉集』に「タカヘ」、『早大本節用集』に「イカルガ 豆甘鳥也」、『黒川本色葉字類抄』に「カク イカルカ」、『篇目次第』に「カク反 イカルカ 无」とある。

  429. 【束+鳥】 b20701
    苗字に[束+鳥](うかい)・[束+鳥]浦(うのうら)・[束+鳥]飼(うかい うずらかい)・[束+鳥]川(うかわ)・[束+鳥]田(うずらだ)がある(『日本苗字大辞典』)。『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『天正十七年本節用集』に「ツクミ」、『元和三年板下学集』に「ツグミ」とある。『国字の字典』が『國字考』典拠に「鶫(つぐみ)」の意の国字とするが、『國字考』の字形は、[朿+鳥]である。『中華字海』に「一種鳥見《廣韻》。同[式+鳥]見《説文新附考》」とあり、[朿+鳥]は、「[束+鳥]的訛字見《字彙補》」とある。いずれにしても国字ではない。

  430. 【判(旧字体)*鳥】 b20702
    『色葉字類抄(永禄八年写二巻本)』・『同文通考』に「カシトリ 鳥ノ名」、『易林本小山板節用集』に「カシドリ」とある。

  431. 【長+鳥】 b20801
    『新撰字鏡』に「佐支又豆留」、『世尊寺本字鏡』に「サキ ツル」とある。「鷺また鶴」の意の国字か。

  432. 【易+鳥】 b20802
    『永禄二年本節用集』・『堯空本節用集』・『両足院本節用集』に「鵙 イスカ [易+鳥]同」、『和字正俗通』に「イスカ」とある。

  433. 【宗+鳥】 b20803
    『同文通考』に「キクイタヾキ 小鳥ノ名」、『和字正俗通』に「キクイタヽキ」とある。『異體字辨』に「キクタヽキ」とあるのは、「イ」がもれたものであろう。

  434. 【鶫】
    各種漢和辞典に「つぐみ」の意の国字とある。『明応五年版節用集』に「[軌−九+鳥] ツクミ [勍−力+鳥]」、『元和三年板下学集』に「[勅−力+鳥] ツグミ」、『天正十七年本節用集』に「[軌−九+鳥] ツクミ [勍−力+鳥] 同 [勅−力+鳥] 同」、『拾篇目集』に「鶇 ツクミ」、『易林本小山板節用集』に「鶇 ツグミ」、『合類節用集』に「桃花鳥 タウクハテウ 鶇 ツクミヲ云」、『新刊節用集大全』に「つぐミ」とある。大空社の『節用集大系』のうち約40種を調査した結果においても以上の字形が見られるのみで、「鶫」の字形はない。江戸末期もしくは明治初期に「鶇」が「鶫」の俗字と考えられてできた字形か。

  435. 【頁+鳥】 b20902
    『和字正俗通』に「イスカ」とある。

  436. 【神*鳥】 b20903
    『名義抄(観智院本)』・『世尊寺本字鏡』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』・『字鏡集寛元本』に「カウナイシトヽ」、『字鏡集白河本』に「シン カウナイ シトヽ」とある。

  437. 【鹿+鳥】 b21102
    『和字正俗通』に「コカラ」とある。

  438. 【番+鳥】 b21201
    『異體字辨』に「[(番−ノ)+鳥]バン」とあり、『国字の字典』が「[番+鳥]バン 鶴目(つるもく)水鶏科(くいなか)の鳥」の意の国字とする。『和字正俗通』(借字一)に「[番+鳥]バン」『法華三大部難字記』に「[(番−ノ)+鳥]モス」とある。『異體字辨』・『法華三大部難字記』の字形と『国字の字典』・『和字正俗通』の字形は、前者が書写体、後者が字典体によった忠実な楷書体の違いであって、別字ではない。『国字の字典』が、「『康煕字典』に同字がある」としながら、国訓である旨の注記をしないのは疑問である。

  439. 【斑*鳥】 b21202
    『和字正俗通』に「ヤマカラ」とある。『広漢和辞典』に「国字 やまがら。鳥の名」、『大漢語林』に「国字。やまがら。シジュウカラ科の小鳥。」とあるが、典拠がない。

  440. 【麿】
    『同文通考』に「マロ 麻呂二合ノ字(下略)」、『正楷録』(倭楷)に「漫路」、『文教温故』に「マロ 見多度寺資材帳貞觀十三年小水麿(下略)」、『國字考』に「マロ」とある。

  441. 【(雲△雲△雲)*(龍△龍△龍)】 g16801
    「たいと」と読む苗字で、生命保険会社の人名資料もしくは東京都の電話帳からといわれるが、詳細は確認できない。『国字の字典』が『姓氏の語源』を典拠に、「たいと」と読む国字とし、漢字「[雲△雲△雲](たい)」と「[(龍△龍△龍)](とう)」の合字とする。『難読姓氏辞典』に[雲*(雲+龍+雲)*(龍+龍)]の字形で、「だいと・おとど」とある(『難読姓氏辞典』が掲げる字形は、表現しにくいので、正確には、同書を見ていただきたい)。人名研究家の丹羽基二氏も存在が確認できないという幻の苗字で、実在が疑問のためか、同氏の『日本苗字大辞典』にも、この苗字が載せられていない。


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大原 望 <n-oohara@mue.biglobe.ne.jp>  Copyright (C) Nozomu Oohara,1998