議事堂前。ポジションA。
そこは他とは違い重々しい空気がゆっくりと、それでいて物々しく流れている。
向かい合いにお互いを見据える両者。

「あの〜・・・」

そんな中先に口火を切ったのは吏のほうだった。
吏は相手に分かるよう、流暢な英語で話し掛けた。

「あの・・・ここは大人しく引いていただけませんでしょうか。今なら僕もまだ見逃しますよ」

吏の言葉に、指揮官と思われる大柄の男が含み笑いをしながら言う。
『フン・・・童っぱに情けを掛けられるほど俺等は堕ちてないんでね』

後ろにずらりと勢ぞろいの男たちもニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。

「童っぱ・・・?ふーん。面白いこと言うね、オッサン。若く見られるのは悪くはないけど、ガキ扱いされるのはさすがに
 頭にくるな・・・」
吏はそう言うと少し苦笑する。
「交渉・・・決裂ですね」吏はそういうと「では、あなた達を拘束します」と付言し、目を見開く。
すると砂浜一面にいた何千という兵士たちが鉄の錠によって動きを封じられた。

『な、なんだ!これは?!』
動きを拘束されたにもかかわらず、男たちはもがき、錠をはずそうと必死になっている。

「僕は、平和主義なんで。あまり戦いは好まないんです。だから、こうしてあなた達の動きを封じさせてもらいました」
吏がそういって笑顔を見せる。
その間、さっきまで見下すように吏を見ていた司令官の目は一変し、今はまるでバケモノを見るかのような目で吏を
見ていた。指揮官だけではない。そこに拘束されているすべての人間が変わっていた。

「童っぱを甘く見ちゃいけませんよ」

吏は、そんな目を無視し、一仕事終えたといった感じで関節を伸ばしている。

「いや〜、ワンダフル!!相変わらず素晴らしいね〜!!」

上へと伸ばしていた腕を素早く戻し、構える。

「―――?!どしてあなたがここに?!」

吏が思わず口の隙間から声を漏らす。

「フッフッフ・・・君達のいるところに僕あり!!君と僕は一心同体・・・ってあ゛〜!!冗談です!!ジョーク、ジョーク!!」
吏の物々しいオーラに気づいてか、声の主はあわてて前言を撤回する。

「僕も呼ばれたんだよ。会議に」
言われてみれば、今日はちゃんと白衣を着てるな・・・
そんなことを考えながら、吏は白衣の男の方を見る。

「・・・呼ばれたのならなお更、こんな所にいてはおかしいのでは?博士」

「う〜ん。それもそうなんだけど・・・。でも相方の活躍を見守るのも僕の役目だしね・・・って冗談ですって!!」
諸手を挙げている博士を見て、吏ははぁ・・・とため息をつき、額を手で抑えた。

「おや?頭痛ですか?」
博士が諸手を挙げながら恐る恐る尋ねる。
アンタのおかげで悪化したよ。
吏はそう思いながらもそれを押し殺し、「えぇ。能力を使った後とか特にひどくて」と言いとめた。

「頭痛・・・あ、そうそう。思い出した。今日は新しい頭痛薬を持ってきたんだよ!」

博士は、そう言って白衣のポケットに手を突っ込み、なにやら探りを入れている。

「ぱらぱらっぱぱ〜ん♪New頭痛薬!!」

博士の手には青と白のカプセルが入っている瓶が握られている。

「・・・で、これは副作用はないんですね」
そう吏が聞いたのは、以前もらった薬はあまりにも強力なあまり、副作用もすごく、飲むとすぐ眠くなるという吏にとっては
最悪なクスリだったからである。

「オフコース!!もちろんですとも!以前のような眠気をさそう副作用はナッシン!まったくありません!」
博士の手から自分の手元へと持ってきた薬を、吏はふーんと眺める。

「では、もらっときます。えっと・・・代金は」

「No!いらないですよ!君と僕との仲じゃありませんか!」

「怪しいですね・・・」

吏の鋭い眼差しに耐えかねた博士が左腕にしていた時計に目を落とす。

「そろそろ、君の優秀な部下たちが仕事を終えてくるんじゃないですかね」
吏も時計を見る。時刻は9時を回る寸前。暴れすぎていない限り、そろそろ帰ってくる時間である。

「じゃ、薬も渡したし、Myすぃーとらばーの吏くんの活躍も見れたし、そろそろそろそろ戻りますね。では、アデューv」

「誰がすぃーとらばーだ!!」上機嫌で帰っていく博士の後ろで、吏の叫び声だけが夜のチャコールグレー・コーストに響き渡った。


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