“IFC.O”。それは政府が設立した対多国籍軍隊のための組織である。中でも、リーダー儺居吏おにやらいつかさ率いる
特殊能力組織は、任務遂行の際の手際もよく政府からも厚い信頼を得ていた。が、あることが政府内部に不満をもたらしていた。

「寄るなバカがうつる」

彼女の名は蘿匐朔羅すずしろさくら。“重力”を操り、さらに巧みな蹴り技で相手を降伏に追い込む。              

「誰がバカやて!?だ・れ・が?!!!」

そして彼の名は武尊儘ほたかじん。“火”を操りケンカも強い。しかし頭が弱いことに難点がある奴である。

「自覚がないなんて・・・あんたのその頭は髪を乗っけるだけの物でしかないのかしらね〜」

そう言って朔羅が儘を哀れむような目で見る。もちろん、そんな状況に儘が耐えれるわけがない。

「・・・さっきからワケのわからんことをゴチャゴチャと・・・!男なら正々堂々と勝負せい!!

それとも何か!!?ワイに負けるんが怖いんか」
豪語する儘に今度は朔羅がキレた。

「男じゃないけど、その勝負受けて立つ!!」

不安要素。それは今や日常茶飯事となりつつあるこのバカ二人の勝負である。
勝負が行われるたびに建物がゆれ、備品が次々と壊れるというミニ震災にあうのである。

「そういえば〜、リーダーはどこいっちゃったんですかぁ〜?」

この殺伐とした空気の中でのこの緊張感の無い声。声の主の名は可愛葵えのあおい。“雷”を操るコス好きの女である。

「さっき会議があると言って出て行きましたが・・・」

葵の質問に答えたのは鴻湍畝おおとりはやせ。“水”を操り、リ−ダ−の補佐も勤める。
そんな湍畝が自分の時計に目を落とし、「そろそろ時間のようです」と付言した。
その言葉を聞いた葵はドアに目を向け、両耳を塞ぐ。数秒後・・・

「お前等!!いい加減にしないか!!」

バタン!!といきよいよく開けられたドアの向こうには、怒りで忘我状態となりつつある吏が朔羅と儘を鬼の様な
形相で睨みつけている。しかし、この二人。一度勝負を始めると周りなどアウト・オブ・眼中である。故にこの
状況を止める手段は自ずと限られて来るのであった。

「・・・シカトとはいい度胸だな・・・!!」

と、次の瞬間、取っ組み合いを始めていた朔羅と儘の体が宙に浮き、吏の元へと手繰り寄せられていった。
吏の能力は“無限大”。つまり考えたことを実行できる能力を持った人物である。      

「おぉ〜!浮いた、浮いた〜♪」と葵が歓声に近い声を上げる。しかし、手繰り寄せられた方としてはこれは
心地よいものではない。むしろ、その逆である。

「お。リーダーやん。いつ帰ってきたんや?」「お帰りなさい」

二人とも、苦笑しながらも諸手を挙げて降伏の意を示していた。
「お前等。今週に入って俺に注意を受けた回数は」

「何回やったかな〜・・・確か〜・・・」「2回です・・・」

「儘。朔羅。3回目は無いことは知ってるよな」
吏の周りのオーラが弁解の余地が無いことを物語る。さすがにこの状況で4の5の言うほど二人もバカではないらしく、
二人はただただ頷いた。

「もし次回同じことしたら・・・今回の罰はウサ耳生やして建物清掃だ。分かったな」

そう言うと吏は青ざめてぐぅの音も出ない二人を床へと落とした。
「何でウサ耳なんですかねぇ〜?」葵が隣に居た湍畝に小声で尋ねる。

「さぁ。でもこの罰ゲーム考えてるのは“上”の方だと聞きましたから・・・きっとその人の趣味でしょう」

と湍畝がウサ耳の謎について話している間、吏は部屋の中央にある大きな机へと移動し、その上に一枚の地図を広げる。
そこには大きなマルが3つほど書かれていて、横には“多国籍軍停泊”という文字が書いてある。
「今回の任務だが、今夜行われる保安会議に関係している」

「護衛ですか?」

朔羅が落ちた際に打った腰を擦りながら尋ねる。
「まぁ、護衛なんだが・・・」

「ただの護衛ではないんですね」

水色の澄んだ湍畝の目に静かに頷く吏の姿がうつる。
「地図のマル印のところに、多国籍軍のものと思われる船が三隻停泊している。奴等の狙いは今夜の保安会議と思われ、

“上”も心配している」

「そっか〜。保安会議には政府も“上”も集まるもんねぇ〜。その集まった所を襲撃すれば〜、日本はかなりマズいですよねぇ〜」

「マズいじゃ済まないでしょう。もし誰か一人でも殺されてみな。日本は混乱に陥ってその間に多国から攻撃を受け壊滅するわよ」

頭を失った軍隊は砂で作ったお城のように、少しの動きでもろくも崩れてしまうものである。

「朔羅の言うとおりだ。誰一人として殺させてはいけない。が、だからといって殺してもいけない。

私たちの任務はあくまでも捕獲だ。分かるな。儘」

儘が顔を上げ「わ、わい?!」と自分を指差して驚く。

「ほぉ・・・自覚ナシか」

怪訝な顔つきな吏。見れば右手は強く拳が握られている。
「以前命令を守らず相手を半殺し以上にしたのは、どこのどいつだ!!」

「痛っ!!いた、痛い〜!!もうせんて!!絶対せんから!!」

容赦ない吏の拳に儘は頭を手で覆うようにして守ろうとしたが、それも無駄な抵抗でしかなかった。
「いいか!敵は恐らく三隻一斉に攻撃を仕掛けてくる。そこでこちらも三チームに分かれて敵を同時に向かえ撃つ。

「今回は、チームワークが重要となる。故に乱した奴は許さんからな!」

口強の吏の後ろで倒れている儘を葵が「大ジョブですかぁ〜?」と突っつく。儘もなんとか答えようと手を挙げるが
その手は痛みからか、プルプルと震えたままだった。    
「攻撃のタイミングは敵に悟られないよう、精神感(テレ)能力(パス)を使う。以上!健闘を祈る!」

「了解!!」






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