「・・・イフコ?」

見たことの無い人に、聞いたことのない単語。身構えてはいても吏の頭の中は混乱していた。

「そう!IFC.Oだから略してイフコ!!この方が言いやすくていいでしょ?」

そういってスーツの男は、満面の笑みを浮かべた。
「はぁ・・・」そんなことはないだろうと吏が言いかけた瞬間、突如パンっという音がする。
見れば、そこには両手を合わせて口を丸く開いている博士の姿があった。

「そういえば、君たちはファーストコンタクト。初対面だったね!ヒーネーム イズ Mr.ディック〜〜!」

「初めまして!立科・ディック・アルデルフィア。20歳です!ディックって呼んでね!」

そう言ってディックはかぶっていたウエスタンハットを取り、軽く頭を下げた。

「あ。こちらこそ」
それを見て、吏も思わず頭を下げる。

「ドゥーユーノーヒム?ディックは吏のこと知ってるよね?」

ディックと吏を交互に見ていた博士の目が再びディックに向く。

「うん!知ってるよ!IFC.Oの破壊・・・もとい、活躍はつねづね耳にしてるからね!!・・・それよりさ・・・」
ふと言葉を濁すディックに、吏は何?とばかりに首を傾げる。

「”つかっち”って・・・呼んでもいい?」

「はぁ?」突拍子もない申し出に、吏の動きが止まる。

「あ、嫌だった?じゃあ・・・じゃあ・・・儺居だから・・・”おにっち”は?」
俺の方が年上なんだよな・・・
だが、目で必死に訴えてくるディックを目の前に、もはや吏は反論する気力さえ失っていた。

「じゃあ、せめて初めのほうで・・・」それが今の吏の精一杯の言葉だった。
「ありがとっっ!!」ディックが吏の手を握りブンブンと振る。

「おぉ〜!友情だね〜、フレンズだね〜!う〜ん、いいね〜」

それを見て博士が指を顎にあて、納得気にうんうんと頷く。

「で、つかっちはどうしたの?何か用があって来たんじゃないの?」
ディックの指摘に一瞬固まる吏。
しばしの間。
次の瞬間、吏は責め立てるように博士に言い寄る。

「博士!!あの薬に何いれたんですか?!!」

「ワット?何のことですか?アイドントノー。分からないですね〜」

「惚けないでください!!確かに頭痛は治りましたよ。でも!」

「治ったんならいいじゃないですか。ノープロブレムじゃないですか」

吏に最後まで言わせまいというまでに、博士が言葉をかぶせる。

「問題無しだったら、俺は今、ここにいません!!」

それでも、吏の舌鋒を交わすことはできず、次の逃げ場とばかりにディックに目で助けを求める。
その視線に気づき、ディックがポンっと手をひとつ叩く。

「あ、僕、邪魔だったね。ゴメン!気づかなくて!じゃあ、博士、お願いしますね!あ、あとつかっちも
ほどほどにね!!」

そう言い残し、ディックは廊下をパタパタと走っていった。

「NO〜〜!!!それは違うのです!!ミステイクなのです!!ディーーック!カムバーック!!」
涙目で叫び続ける博士。それを無視して走り去るディック。
まるで映画のワンシーンのような場面が吏の前で繰り広げられる。

「かむばーーーーーーーーっく!!」

だが、博士の叫びもディックには届かず、ただ虚しく空を切った。


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