P.M7:35 黒灰海岸チャコールグレーコースト通称『絶え果ての無い岸』。
あらゆる浮遊物が流れ着く黒い海辺。海藻や流木は、その黒い砂浜の色に侵され、黒ずんだ醜気となって
周りに散らばっている。

「うっわ・・・クッセェ〜。たまらんわ〜・・・」

鼻を押さえ噎せる儘。潮の臭いが鼻をつき、黒い砂にまみれた海藻の塊が歪で偉業のものと思わせる。
見ているだけで吐き気がしてくる。
三組にわけられた各部隊の指揮は、IFC.Oの5人が3チームに分かれ、彼らがとることになっている。
日本列島の太平洋側南北に連なるチャコールグレー・コースト。過去に千葉と名づけられた土地は消え、
東京も今や水没してしまっている。

現在、日本の中心は過去の埼玉と群馬の半程にある。国会議事堂や首相官邸、各省舎が移され、日本政治の
拠点とされている。今夜P.M8:00から行われる保安会議の場は国会議事堂。チャコールグレー・コースト
に程近い場所に位置する議事堂が狙われているとなると、周囲半径50kmを監視しなければならない。

「こちら、ポジションB。儘・朔羅チーム。今のところ動きは無し。せやけど、様子がおかしいねん」

「朔羅です。会議15分前だっていうのに静かすぎる気がするのよ、リーダー」

「ああ。俺もそう思うんだが・・・」

無線を使い、互いの連絡を取り合う彼らだが、彼らの使用している無線は外部には聴くことが出来ない特殊な
ものだ。5人だけが使用を認められている。

「こちらポジションC・・・私が思うに、潜水艦か何かで来ているようですよ。海中の水の動きがとても激しくなって いますし・・・恐らく」

「沖合いに三隻、海中に二隻〜。そしてお空にUFOが五機くらいでしょうかぁ〜」

チャコールグレー・コースト北部ポジションBには儘と朔羅が、南部ポジションCには湍畝と葵が、そして議事堂
正面に位置する海岸ポジションAには吏が敵を待ち構えている。
P.M7:52 議会が始まる8分前。恐らく大半の主要議員や有力政治家が集まった頃だろう。彼らはこの会議
が狙われていることを知らない。知っているのは会議に出席するIFC・Oの上級幹部と極わずかな政府の人間
のみである。下手に情報を流し、会議中の混乱を招くのを防ぐためである。
偉そうに椅子に腰掛け、茶をすすっている議員たちとは裏腹に、絶え果ての岸チャコールグレー・コーストは緊迫していた。

「いいか。もうすぐ5分前だ。今から無線の使用は禁ずる。攻撃合図は俺がテレパスで伝える。テレパスを感じ取ったら

それぞれ攻撃を開始しろ。合図があるまで勝手な行動はするな」
テレパスとは、特殊能力者の中でも極めて能力が高いものにしか扱えない、いわば電気信号のようなものである。
テレパスを受けたものの身体には、一瞬電気が走るような感覚が生じるが、一瞬のことであり、非常に微妙な感覚
なので、かなり集中していないと感じることは困難である。

「とくに儘と朔羅!!度が過ぎて殺すなどということはないように。我々の目的は生け捕りだからな!!」

「わーってるってぇ」   「ウサ耳つけられたらたまんないもん・・・」

「5分前だ。お前ら、気を抜くんじゃないぞ」

「了解!!」

―無線が切られ、辺りは静まり返り漆黒の闇と化した
息をひそめ、指示があるのを待つ。各ポジションの5人は、月明かりを浴び、キラキラと湯わめく海面をじっと見詰めた。
何も無い・・・船一隻の姿もない海。

「10秒前・・・」       

吏の心の中で攻撃開始のカウントダウンが始まる。敵は、カウントダウンが終わると同時に襲撃してくるはず・・・。
それと同時に攻撃を開始しては間に合わない。

・・3秒前。3秒前に敵は姿を現す。そのときに奇襲するべきだ。

「6・・5・・4・・3!!」
吏がテレパスと放ったと同時に、巨大な軍艦が姿を現した。各ポジションの4人はテレパスを感じ取り、目の前に
現れた軍艦を確認すると動き出した。

「よっしゃ〜!いくで〜!!オトコ女、足ひっぱるんやないぞ」

「あんたこそ。ボス猿が暴れすぎないでよね!!」

「葵!!準備はいいですか?いきますよ!」

「O〜K〜!!あおいガンバるぞぉ〜!」

『全部隊攻撃開始!!』  



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