会議も無事に終わり、IFC.Oの捕虜者取調べ室の前には長蛇の列。IFC.O幹部が吏たち5人がとらえた多国籍軍兵士
一人ひとにに拷問している。

例の5人は、ひと仕事終え、疲れを癒すようにくつろいでいた。『くつろぐ』といっても、本当にくつろいでいる者は誰
一人いない。葵は持参ミシンで何かを作っている。そして、その横では湍畝が迷惑そうな顔でPCに向かい、帳簿をつけて
いる。朔羅は読書しながらサンドバックに蹴りを入れ、儘は手のひらに丸めた紙をのせ、『燃やし遊び』らしきことをし
ていて、半ば放火寸前といったところである。そんな中、いまいち浮かぬ顔をしている吏。頭痛は薬のおかげで治った
ものの、気分が優れない。

「博士....また薬の成分を間違えたな。まったく、あの人は」

ほうっと淡いため息をつく吏。彼は博士のことを考えていた。
エルバート=セオフィラス2世 通称エルバート博士。いつもボロの白衣を着て(本人曰くファッションらしいが)グンゼ
のTシャツに黒のズボンというスタイルで、いかにも研究者らしい身なりをしている。ここまでは普通だ。彼は、その
『変人さ・奇妙さ・摩訶不思議さ』でなの知れている人物である。いつもダークインディコ・キャメロット
(通称インディコ)という名の黒猫を連れ、ときたまコスプレをして出現。口調は、ヨーロピアンの混血であるからか、
少々英語交じり。そして年齢不詳・・・。謎に包まれた人物である。

「なのにサイエンティストとしては博士の右に出るものはいないんだからすごいよなぁ」

「リーダー博士のこと考えてますねぇ〜?」

吏の独り言が葵の耳に入ったらしく、少し遠くから話し掛けてくる葵。それでもミシンを使うのは止めない。

「また博士とコスプレ勝負するつもりなんですよ葵は」

湍畝がサラサラの髪を掻きあげ、渋い顔をする。

「だってぇ、博士に負けたくないもぉん!!博士、今度はフリルいっぱいの王子様にするらしいから、葵はお姫様なんですぅ!!」

「あぁ・・・まぁ頑張れ。ほどほどにしろよ」

呆れた表情を浮かべ頭を抱える吏。いつにも増して辛そうな面持ちの吏を、心配そうに見つめる湍畝と葵。それに気づいたのか、
朔羅と儘も動きをやめ、吏に声をかける。

「なんや?また頭痛いん?リーダー」

「いや、頭痛はおさまったんだが・・・どうも気分が優れないんだ」

「ちょっとリーダー!何か変なもの飲まされたんじゃないの?博士のとこ言ったほうがいいと思うけど?」

「私もそのほうがいいと思います。中毒かもしれませんし、確認されたほうが・・・」

「そうだな。行ってくるか・・・くれぐれも俺の留守中に物が砕け散るようなことはないように。湍畝、たのんだぞ」

湍畝は少し頷くと、再び作業を再開した。
組織待機室を出て、あたりを見回す。
きれいに磨かれた廊下を歩いていく。角を曲がり、まっすぐ歩みを進める。

「博士のラボの入り口は確か・・・」

T字の通路を右折する。すると、廊下のずっと奥の突き当たりに2人の男が立っている。
白衣の男と・・・もうひとり、黒いコートに黒のスタイリッシュなスーツの黒で統一された服に、なんとも場違いな
ウエスタンハットをかぶっている男がいる。

「博士?」

「お〜!!これはこれはMr.ツカ〜サ〜。どうかしたのかい?ホワット ハップン??君はめったに、ここにこないから
ベリィ〜サプライズだね!!」

「はは・・・そうですか」

派博士の声に応えながら、隣の男の顔をうかがう吏。ふいに目が合ってしまった。口を半開きにしている男は、年齢20歳
くらいだろうか、左頬にホクロガある。大きい目が少々子供っぽい。

「あ!!イフコ!!」
いきなり、その男が大声を上げた。驚いた吏は、つい身構えして何故かファイティングポーズをとる。
「君ってイフコでしょ?」


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