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逆さ言葉
追加
■□□■逆さ言葉

今日は、「逆さ言葉(さかさことば)」のお話です。
辞書によると「逆さ言葉」は”言葉の音の順序を逆にしたり、中断して下の音を上にしたりしていうこと。”となっています。

よく、芸能人などが言葉を逆にして使っていますね、あれです。例えば、ハワイのことをワイハと言うように。あまり感じは良くないですね。

この「
逆さ言葉」、日本には古くからあります。現在使われているものは、隠語的なものが多いようです。
例えば、ショバ(場所)、ドヤ(宿)、ガサ入れの"ガサ"(探す)、ネタ(種)、トウシロウ(素人)、ダフヤ(札屋)などですね。
しかし、中には、これが「逆さ言葉」なの?と言うような言葉もあります。

そう言えば、映画「アマデウス」の中でモーツァルトは恋人コンスタンツェをからかいながら「逆さ言葉」でプロポーズします。「逆さ言葉」って日本だけではないんですね。

では、幾つか説明しますね。ただ、語源にはいろんな説があって、「逆さ言葉」としない説もあります。その辺は了承してください。

デカ
明治時代になって、一般の警官は洋服を着るようになります。しかし、刑事は和服、それも角袖(和服の四角い形をした袖)というものを着ていました。ですから、俗に「角袖巡査」と呼ばれました。そして、「カクソデ」と言えば刑事のことでした。このカクソデが隠語でひっくり返って「クソデカ」、そしてデカとなったと言われています。

ゲンをかつぐ
このゲンは江戸時代、近松門左衛門や紀海音などの浄瑠璃にも出てくる言葉です。
江戸末期の守貞謾稿には「江戸にて吉兆を縁起といひ、京坂にて儀縁という」と出てきます。
つまり、縁起→儀縁(ギエン)→ギェン→ゲンと変わったものとされていて、上方で使われていた俗語です。

なお、ゲン=験で仏教の加持祈祷の効き目、効能を表すこと。が語源とする説もあります。

ドサクサ ドサ回り
江戸時代佐渡で金山が発見され、江戸の無宿者、博徒、犯罪者などを強制的に鉱夫として狩り出しました。この人足狩りのことを「佐渡」を逆さにして「ドサ」と言ったと言われています。
ここから佐渡に送られることを「ドサを食った」、これが訛って「ドサクサ」になったそうです。

ドサ回りという言葉もありますね。
ドサ回りも佐渡のように隔離された絶海の地で、そんなところまで行ったことを強調して言われるようになったそうです。

ダラシない
式亭三馬が「浮世床」で「しだらがないという事をだらしがない、きせるをせるきなどいふたぐひ下俗の方言也」と説明しています。

「しだら」とは自堕落の転訛したもので、それを逆さにした「だらし」に、強調の「ない」がついたものです。そこから、身を持ちくずした格好、しまりがないこと、きちんとしていないこと等に使われるようになりました。
"しだら"と言う言葉は"ふしだら"として現在でも残っていますね。

これには別説が有ります
1.梵語の修多羅(スートラ:秩序・規律の意味)の転訛したと言う説。
2.手拍子の意味の「しだら」から来たと言う説。しだらを打つとは調子を整えて打つことで、これから、手拍子の調子が狂って踊りや歌が演じられなくなることをしだらがないためだといわれたのが訛って、だらしないとなったと言うものです。

グレ
貝のハマグリは一つ一つ微妙に形が違っていて、他のハマグリの殻とは合いません。そこから、貝合わせと言う遊びが出てきました。
そこで、ハマグリ(合う)→グリハマ(チグハグでかみ合わない)→グレハマ→グレとなったというのです。
江戸時代は、物事が食い違ったり、当てが外れる時に使ったようです。
愚連隊(ぐれんたい)などという表現もこの言葉の変化です。

ポシャ
武士は降参するとき、シンボルの兜を脱いで敵意の無い証としました。このことから「兜を脱ぐ」とは負ける、降参する、の意味に使われます。
時は幕末、陸軍はフランス式でした。そのころ、シャッポ(chapeau:帽子)という言葉が入ってきます。時は明治にうつって、帽子が広く男性に愛用されました。そこで兜がシャッポに変わり「シャッポを脱ぐ」と言う言葉が生まれます。
脱帽するという形でも残っていますね。

シャッポを脱ぐは降参する意味、降参すれば物事が駄目になるという連想から駄目になると言う意味が生まれます。それが「逆さ言葉」となり「ポシャる」と言う言葉が、計画がつぶれる、失敗するの意味で使われるようになりました。

ズボラ
ズボラは坊主の「逆さ言葉」とされています。
もともと坊主は寺の意味で、そのうち寺の住職をさす言葉になります。
これに対し「生臭坊主」や「乞食坊主」など、権威の下がった坊主のことを、人々は「ズボウ」と言うようになり、やがてそれが訛って「ズボラ」になったと言うものです。

■さて、「
倒語」と言う言葉があります。広辞苑によると
【倒語】対話の当事者には相互に了解ずみの事柄で、明示することをはばかる場合、しゃれていう場合、また意味を強める場合などに、音節や語の順序を逆にして造った語。「ねた(種)」「れこ(此)」など。

一方
【逆さ言葉・逆さ詞】
1.言葉の音の順序を逆にしたり、中断して下の音を上にしたりしていうこと。「これ」を「れこ」、「はまぐり」を「ぐりはま」という類。
2.意味を反対にいう語。「かわいい」を「にくい」という類。さかごと。さかことば。

と言う事で、厳密には微妙な違いがあるようですが、ここでは「逆さ言葉」で統一させていただきました。

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