和紙

蕎麦(そば)
蛇足
□■蕎麦(そば)

今日のテーマは"そば"です。

関西では"うどん"、関東では"そば"と言うように、"そば"は中部地方より東側で好まれているようです。

"そば"は中央アジア原産の
タデ科の一年草です。あの「蓼(タデ)食う虫も好き好き」のタデの仲間です。

この"
そば"と言う名前、日本の古語に「角(かど)」とか「稜角(りょうかく)」とか言うような意味の「ソバ」と言う言葉が元になっています。
と言うのは、ソバの実は三角錐で尖っており、また葉も三角形であることによるようです。
古くは、稜(そば)のある麦(むぎ)を意味する「そばむぎ(蕎麦)」と呼ばれたようですが、やがて略されて、単に"そば"と言うようになりました。

この「そば」と言う言葉、
崖や急な傾斜地を表す言葉としても使われたようです。
この意味から出たのが「
耳をそばだてる」の「そば」です。耳を崖の様にぴんと立てる様子からです。
やがて、崖は物の端ですから、そのような場所を指すようになります。

やがて、物の端にあたる部分は、見方を変え、その物から考えるとその物に
一番近い場所と言う事になります。これから、物の近くを「そば」と言うようになった、と言う説があります。
よく駄洒落で使う「蕎麦(そば)」と「側(そば)」、語源が同じなんですね。

日本に
伝わったのは奈良時代以前で、北方から朝鮮半島を経由して渡来したとされます。
また、弘法大師が持ち帰ったという説もあるようです。

"そば"が
麺(めん)の形になるのは、江戸時代初期(寛文年間)に東大寺に来た朝鮮の僧元珍が伝えてからです。
元珍は小麦粉のつなぎを伝えたと言われています。
つなぎは小麦粉に含まれるグルテンです。そば粉には含まれていません。

そば粉100%の"そば"は「生粉(きこ)打ち」といい、大変難しいようです。
つなぎが伝わる以前の、江戸の初期100年間は「生粉打ち」でした。「生粉打ち」の"そば"を"
生蕎麦(きそば)"と言いました。
現在の"そば屋"の看板のルーツです。

当時、生蕎麦は切れやすいので蒸篭(せいろ)で蒸したようです。今日の"
ざるそば"の容器のルーツは蒸篭だったのです。
始め、蒸篭の竹のすのこは底の方に敷かれていましたが、天保年間に幕府に16文の"そば代"の値上げを申請したのですが許されず、蒸篭の
すのこを底上げし"そば"を山盛りに見せ、これを「盛りせいろ」と呼びました。現在のもり、ざる、の登場です。

"そば"は寛永から元禄の頃までは菓子屋の副業でした。
そば屋が登場するのは享保末期(1736年頃)ころです。

ところで、
江戸っ子は"そば"の先を、ツユにチョットだけつけて食べますね。
江戸の"そば"のツユは相当濃い、この濃いツユに"そば"の先だけつけてすすりこむと"そば"の香りも生き、ツユの味にうまく溶け合いおいしく食べられるのです。どっぷりつけると塩辛すぎて食べられたものではないのです。

ただ、見栄で少ししかつけなかったと言う説も。
「せめて、死ぬ前に"そば"をどっぷりつけて食いてぇものだ」と死ぬ間際に江戸っ子が言ったとか、言わなかったとか。^^;

さて、
"もり"と"ざる"の違いは?
もりそばを竹製のザルに盛って"ざるそば"と言ったのは、享保頃の深川・伊勢屋が始まりとされます。
当初は容器の違いだったのです。
海苔を"もりそば"に乗せて"ざるそば"と呼ぶのは明治に入ってからです。

さて、"そば"と言えば"
引越しそば"、"年越しそば"ですね。
これは、江戸時代末期の風習です。諸説あるんですが、一番面白いのを。
「蕎麦はお金を集めるので縁起がいい」といいます。
昔、金(きん)を扱う職人は、お餅のように粘着性のある"そばがき"で飛び散った金箔を集めました。
そして金の粉がついた"そば"を水に溶かし、残った金を集めたのです。

"そばがき"は、そば粉に熱湯を加えて練ってから食べるものです。
やがて、「細く長く、いつまでもあなたのそばにおいてお付き合いください」などの意味が付け加えられたようです。

さて、そば屋と言えば「
××庵」。蕎麦屋の二割は庵がつくそうです。
江戸時代の有名な"そば屋"は浅草の浄土宗称往院(しょうおういん)の塔頭(たっちゅう)「道光庵(どうこうあん)」でした。
"そば屋"の屋号に“庵"が付くのは道光庵にあやかろうとする便乗商法です。

しかし、当の道光庵は有名になりすぎ、本寺からそばの製造を中止させられました。
やがて、麻布永坂の更科など多くの有名ソバ店が出来てきます。
現在移転して世田谷区北烏山にある称往院には当時立てられた「不許蕎麦入境内」の石碑が再建されています。

先日の新聞によると、日本の技術協力で
ミャンマーの麻薬生産地帯にケシの代替作物として"そば"の生産を薦めているようです。意外なところで"そば"が役立っています。ちなみに、現在日本で消費される"そば"は、中国・北米産が主です。

最後にソバポリフェノール(
ルチンなど)について
赤ワインで有名になったポリフェノール、"そば"も多く含んでいます。
ルチンは毛細血管の強化、血圧降下作用、膵臓機能の活性化、記憶細胞の保護・活性化など健康には随分にいいようです。
このルチンを特に多く含むのが"
韃靼(だったん)そば"です。
ルチンを日本ソバの100倍含むということでブームになっていますね。


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