和紙

カオス
□■カオス

■「
荘子」に載っているお話です。
南海の帝、(シュク)と北海の帝、忽(コツ)がいつもお世話になっている 中央の帝、
渾沌(こんとん=混沌)にお礼をしようということになりました。
人間の顔には目耳口鼻と合わせて七つの穴がありますが、渾沌にはそれがありませんでした。
そこで二人はこの穴を開けてあげようと、毎日一つずつ穴を開けていきました。
しかし、七日目に渾沌は死んでしまうのです。

この話は、と忽は"束の間"の意味で、人知の卑小さ、小賢しさを表していて、渾沌は"道"を表していると言われます。つまり、人間の賢しらさを戒めた話なわけです。

混沌とは物事の区別がはっきりしない様子という意味ですね。
この渾沌の英語が
カオス(chaos:ケイオス、元はギリシャ語 khaos)なのです。

世界中の多くの神話は始まりを、何か漠としたものとしています。
ギリシャ神話も例に漏れず、この世の始まりにまず生まれたのが、
カオス(混沌)でした。
カオスとは形も色も空間も光も、何もかもがごちゃ混ぜになっている無限の広がりのことです。
そこから、
ガイア(大地)が生まれます。そして、彼女はウラノス(天空)やポントス(海)を生みます。

日本書紀にも「古天地未剖、陰陽不分、
混沌如鶏子、溟A而含牙・・・」と出てきます。
世界がまだ鶏の卵のように混沌として・・・と言う意味です。
卵をかき混ぜたような状態から、重いものが沈んで地になり、軽いものが天になったという天地創造神話です。

■さて、最近、よく耳にする
「カオス」理論のお話です。
カオス理論を極簡単に言うと、運動法則が
決定論的(ある時点での状態が決まればその後の状態が原理的にすべて決まる)であっても、初期データには必ず誤差があります。そのわずかな誤差が運動の中で増幅されて、結果として、非常に複雑で不規則かつ不安定なふるまいをし、将来における状態が予測不可能になると言うものです。

もっと簡単にいうと「きちんとしたルールに従って起きる現象なのに、先の予測がつかない」と言うことになります。

それまでの学者は方程式と初期値がわかれば全ての運動が予測できると思っていましたから、この発見は物理学の予測能力の限界を示すものとして衝撃的なものでした。
そして、カオスの概念は新しい自然観をもたらしたと言えます。

著名な気象学者
ローレンツは、1963年、長期予報の不可能なことを「蝶の羽ばたきによるわずかな風が、数カ月後の台風の進路に影響を与えるかも知れない」という形で表現しました。
これが有名な
「バタフライ効果」です。
「北京で蝶がはばたくと、アメリカで嵐が起こる」と言う形で話題になりましたから、耳にした人も多いのでは?

このカオス理論、何だか、人間の小賢しさをあざ笑っているような理論だと思いませんか?

■次は、食べ物のお話。
うどん(饂飩)の起源です。
うどんは遣唐使が唐から持ち帰った、唐菓子の一種「混沌(こんとん)」に由来すると言われています。
サンズイを食偏で書くことも。
「混沌」は麦粉をこね、きざんだ肉を包んで煮たものだったようです。(ワンタンのようなものでしょうか? 飴を入れ丸めて揚げたものという説も)
やがて字も饂飩と変わります。その間に、形状も、今のうどんの様に変化したようです。

唐菓子の名「混沌」の由来は、ぐるぐるめぐって端が無いことからきたそうです。

日本の辞書では、ワンタンは饂飩又は雲呑とのっていますが、中国では混沌のサンズイを食偏にした字を使います。(中国語の発音はフントゥンが近いでしょうか?)

"饂"は日本で作られた漢字(国字)です。

骨董(こっとう)と言う言葉、これも混沌と語源を同じにする言葉です。
いろんな素材を飯の中に混ぜて煮た料理の名に用いられ、それが変化してガラクタの器の意味となりました。

天荒とは何も無く混沌とした世界の始めの状態をいいます。
唐代に荊州から科挙の合格者が一人も出ず、天荒と呼ばれていました。
しかし、大中年間に劉蛻が初めて及第したので、それを天荒を破ったと称したといいます。

破天荒;天地未開の混沌とした状態をきりひらくこと。
転じて、今までだれも行なえなかった事を成しとげることをいいます。

■カオスの反対の言葉は
コスモスです。この言葉は秩序と調和を意味していました。
調和のとれた花の意味でコスモス(cosmos、
秋桜)の語源であり、天体の秩序だった運行の意味で宇宙(cosmos)を指します。
また秩序は美の概念と結びつき、
化粧品(cosmetic)の語源ともなりました。

なお、宇宙を示すのにコスモスと言う言葉を最初に使ったのは
ピタゴラスだと言われています。

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