和紙

漆(うるし)
蛇足
□■漆(うるし)

今日は、読者のリクエスト第二弾「漆 (うるし)」です。

■漆は英語で
Lacquer Tree、そうです、塗料で使うラッカーですね。
「うるし」は、「うるしる(潤汁)」「ぬるしる(塗汁)」に由来すると言います。
他に、「うるわしい」という言葉が由来とする説もあります。

昔から、
塗料接着剤として使われ、その塗膜は耐久性、耐薬品性(酸やアルカリに強い)に優れ、優美な肌合いと独特の情感を持っています。

漆を採るヤマウルシは、
原産地が、中国、チベット、インドなどの高原地帯です。
塗料にしたり、(ろう)を採るために、日本各地で古くから栽培されてきました。
幹を傷つけて漆液をとり、果実の皮からは蝋を採ります。葉や幹にふれるとかぶれます。

ウルシ科の植物で有名なのは、
櫨(ハゼ)の木です。やはり蝋が採れますし、かぶれますね。他に変わったところで、マンゴー(マンゴー属)、ピスタシオ(ピスタシオ属)、カシューナッツ(カシューナッツ属)などもウルシ科の植物です。

漆器は英語で
japanです(jは小文字)。Chinaとchinaの中国と陶器の関係と同じですね。

漆の歴史
縄文時代前期、約5500年前の遺跡からも、漆を塗った櫛や盆などが出土しています。
縄文時代晩期(B.C.1000-B.C.300)には、土器・弓・装身具などに塗料として用いられます。

日本書紀に、
漆部造兄(ぬりべのみやつこあに)と言う人物名があり、漆を製作するグループの存在がうかがわれます。

大宝律令(A.D.701)では大蔵省の管理下に漆部司、漆部がおかれます。
また、正倉院文書では地方に漆部があったと伝えています。
正倉院宝物には、さまざまな漆技法をつかった楽器や調度品が残っています。

奈良時代には、
蒔絵(まきえ)技法が興ります。螺鈿(らでん)の技法も中国より伝わりました。
鎌倉時代には、浮彫彫刻に漆をかけた鎌倉彫が考案されましたし、蒔絵の基本的な技法も完成します。
室町時代には
堆朱(ついしゅ)が行われ、桃山時代には、平蒔絵に絵梨地(なしじ)などの技法をあわせた大胆な意匠感覚の蒔絵があらわれました。(注参照)

江戸時代には、会津、輪島、津軽など各地方でも特色ある漆器がつくられるようになり、現在に至っています。

上杉鷹山
名君として名高い米沢藩主、上杉鷹山(治憲:はるのり 1751-1822)ですが、藩財政の改革も最初は大変だったようです。
竹俣当綱(たけのまたまさつな)が「
樹養篇」と題する財政改革案を出します。
漆の木100万本を藩全体に植え、蝋を採って売り、藩財政を立て直そうとしたのです。しかし、西日本で櫨(はぜ)から採れる櫨蝋が市場に出回り、米沢の漆蝋は「悪ろう」と市場から駆逐されてしまいました。

和蝋燭(ろうそく)は、石油を原料としたパラフィンにおされ、今では、ほとんど使われる事はありませんが、石川県
七尾の和蝋燭(櫨蝋)や会津の絵蝋燭(漆蝋)などの民芸品として残っています。

下瀬火薬
日露戦争で使われた下瀬火薬の威力は凄かったと言います。
下瀬火薬は純粋なピクリン酸を使った爆薬です。
このピクリン酸は反応が敏感で砲弾に装填すると、弾に使われている鉄と化合して、輸送や発射の衝撃でも爆発してしまうようになります。
そこで下瀬博士が考えたのが、弾体の内部に漆を塗って鉄とピクリン酸の反応を防ぐ方法でした。

■漆にちなむ言葉
烏帽子(えぼし)
昔、男性が元服した時にかぶった帽子です。烏の字は漆で黒色に塗ったからだそうです。
漆が黒くなるのは含まれるウルシオールがラッカーゼという酵素の働きで酸化して黒く、かつ乾燥する性質によります。

漆黒(しっこく)
漆黒の髪、漆黒の闇などと使いますが、黒漆を塗ったように黒くてつやのあることや、暗さを表します。最近は茶髪ばやり、夜も電気で明るくなり、漆黒は死語になりつつあるようですね。^^;

蝌蚪(かと)文字と言うのがあります。蝌蚪(科斗)とはオタマジャクシのことです。
中国の古体篆字(てんじ)のことで、竹簡に漆で文字を書いたため、粘って文字の線の最初が大きく、末が細く、オタマジャクシに似ていたところからこういわれます。
そう言えば、将棋の駒の字は漆で書かれていますね。


大字
(だいじ)と言うのを知っていますか?
壱、弐、参、・・・と言うように、領収書や小切手など書き換えられないように使われる字です。
この大字の七は漆です。両方とも中国ではqi(日本人にはチーと聞こえます)と同じ発音です。

漆喰(しっくい)
漆喰は、消石灰を結合剤とする塗り壁やモルタルのことを言います。
ところで、漆喰の字ですがこれは当て字で、「しっくい」は「石灰」の唐音から来ています。
漆とは関係有りません。

注1)
蒔絵:漆で文様を描き、乾かないうちに金銀粉や色粉などを蒔いて付着させ、文様を表すものです。
注2)
堆朱:朱漆を厚く塗り重ねて文様を彫ったものです。
注3)
梨地:漆面に金銀の梨子地粉を蒔き、その上に透明な梨子地漆を塗って、粉を研ぎ出さずに漆を透かして見せるものです。仕上がりの肌が梨の皮に似ているのででこの名がつきました。
注4)
螺鈿:夜光貝・あわび貝など、真珠光を放つ貝殻を文様に切って、木地や漆塗りの面に嵌(は)めこんだり、貼りつけたりしたものです。

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