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椿(つばき)
□■椿

椿の語源は、葉が厚いので「厚葉木(あつばき)」、葉に艶があるので「艶葉木(つやばき)」などから来たと言われます。
古くは神の依代(よりしろ)ともされ、春をつげる木として、椿の文字を与えられました。
中国で「椿」の字は別の植物を指します。

学名は
カメリア・ジャポニカ(Camellia japonica)と言います。
学名にあるように、原産地は日本、長崎県久賀島です。
学名の「カメリア」ですが、伝道のために東洋へ派遣された神父で、植物誌を出版するなどしたドイツ系のイエズス会神父であるゲオルグ・ジョセフ・カメルス神父の業績をたたえ、リンネがラテン語化して「カメリア」としたそうです。

リンネはスウェーデンの植物学者です。植物の分類法を定めた人で分類学の父といわれます。

椿の仲間
日本の園芸品種の母体は、いわゆる、ヤブツバキ、といわれる種類です。
ヤブツバキは、北海道を除く日本全土に広く分布しています。
そのほか、鹿児島県屋久島だけに分布する、リンゴツバキ、日本海側の雪の多い地方に分布する、ユキツバキなどがあります。

また、
サザンカ(学名を Camellia sasanqua 日本原産)やお茶(ツバキ科ツバキ属)も椿の仲間です。

椿の花が鑑賞されるようになったのは、鎌倉時代から室町時代にかけてです。
室町から桃山時代には、公卿、僧侶、武士の間に茶道、華道が流行し、椿が愛用されるようになったようです。
江戸時代には一大ブームになります。なかでも、二代将軍
徳川秀忠の椿好きは有名で椿をモチーフとした珍品奇品のコレクターとしての一面も持っていたといいます。
品種改良が簡単で現在では1万種以上あるとか。

芭蕉が「落ざまに水こぼしけり花椿」と詠んだように、椿の花はストンと落ちるので嫌う人があるようですが、ヨーロッパでは「貴族のように潔く散る」というのだそうです。

椿がヨーロッパに渡ったのは16世紀のことで、
東洋の薔薇ともてはやされました。
そして、ベルディのオペラで有名なデュマの長編小説「椿姫」(いつも椿の花をつけていた病める娼婦マルグリットと純情な青年アルマンの悲しい愛を描く1848)なども作られました。

■寒い時期に受粉は?
椿は虫の飛ばない早春に花が咲きます。受粉はどうしているのでしょう?
実は椿は
鳥媒花なのです。メジロやヒヨドリが花粉を運びます。
そのために多くの蜜を花に蓄えていて、花を吸うと甘いんです。

椿油
椿油は
遣唐使が献上品にしたといわれています。
この椿は種子の脂肪が60%と多いんです。
他の油を採る植物、ヒマワリ(24%)、コーン(5%)、胡麻(55%)、菜種(30%)より多いんです。
椿油で有名な伊豆大島には、何と300万本の椿があるそうです。

椿事(ちんじ)って
思いがけない出来事を椿事(珍事とも)と書きますが、なぜ椿なのでしょう?
実は、これは間違いなのです。中国語で出来事を数える言葉の「※事」を見誤ったと言われます。
※:椿の日が臼になった字です。 他の説もあります。

山茶花
「さざんか」ですが、読みが変ですね。もともとは「サンサカ」と読んでいたのですが、カナがひっくり返ってしまっています。
ちなみに、中国語で山茶は椿のことです。

ひっくり返ったので有名なのは、あの電気街のある
秋葉原(あきはばら)です。
1869(明治 2年)の大火を機に、当時の東京府は 9000 坪の火除地(ひよけち)を作りました。
そして、翌年に、遠州(現在の静岡県)から火除けの
秋葉大権現(あきばだいごんげん)を勧請し、鎮火神社としてまつったのが始まりです。
ですから、「あきばはら」が正しいはずなのですが・・・。

人の耳って、結構聞き間違えるんですよね。
中国語で感謝の意味を表す「
謝謝」を多くの日本人は「シェイシェイ」と発音します。
正しくは「シィェシィェ」です。ひっくり返っています。^^;

荘子に出てくる椿は伝説の木です。
この椿、春と秋が各八千年、つまり人間の1万六千年に相当する年を一年とする伝説上の長命の木です。
そこで、長寿を
大椿の寿とか、椿寿と言います。
美称の玉を冠した「
玉椿」という表現で、美しい椿、長寿を保つ木として歌に多く用いられています。

■最後に難読漢字を一つ
椿象」は何と読むのでしょう?
カメムシです。由来は良くわからないのですが中国の表現、そのままです。


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