和紙

蛇足
今日は絹のお話です。最近は輸入物が多くなって価格の安いものもあるようですね。 現在、衣料以外に医療分野での利用の研究もなされています。

■語源
きぬ」の語源は「着布(きぬの)」の略からきていると言います。

蚕(かいこ)」の語源は「なまこ(海鼠:Vol.096)」の蛇足を見てください。

また、蚕の食べる「
桑(くわ)」は
1.食葉(くうは)が転訛したもの
2.蚕葉(こは)の転訛したもの
と二説あるようですが、いずれも蚕に関係しています。

■日本の絹
日本の伝統的な衣類は、庶民は麻、上流階級は
ヤママユ(山繭)などから採った絹でした。
綿が入ってくるのは戦国時代です。この頃、現在の蚕のが中国から大量に輸入されるようになり、戦国大名は好んで着たといいます。

絹が一般庶民にまで普及するのは元禄時代です。
絹織物は通常「
呉服物(ごふくもの)」と呼ばれました。
綿織物の方は「
太物(ふともの)」と言います。
この時代に登場するのが
三井越後屋、今の三越の前身です。

当初、絹は朝鮮人参などと並び輸入品のトップを占めます。しかし、これにより金銀が大量に海外流出します。
新井白石などが絹の国産化を主張し、吉宗の適地適産政策の導入により国産化が推進され、明治以降は最大の輸出品になります。

■蚕の仲間
蚕の糸が絹ですが、世界に10万種以上いるとされる蛾のほとんどは利用されていません。それが利用できないかとの研究が進んでいます。
抗菌効果や中性脂肪の低下などの効果のある繭も見つかっています。

★クワコ(桑蚕)
蚕は人間に飼いならされた、いわば家畜です。
野生種はクワコと言って、中国や日本などに生息している小さな繭を作る蛾ですが、現在では別の種とみなされているようです。

★クリキュラ(Cricula trifenestrata)
インドネシアのクリキュラと言う蛾は街路樹やカシューナッツ等を食い荒らし嫌われていますが、その
黄金の繭は紫外線を遮断する特殊な機能があります。
普通の絹は紫外線のCとBの一部をカットするのに比べ、クリキュラの絹は紫外線A,B,Cとも完全にカットします。
いまではインドネシアの特産物になろうとしています。

★天蚕(てんさん:Antheraea yamamai)
ヤママユガをいいます。天蚕の糸は、高価で「繊維のダイヤモンド」と呼ばれ珍重されています。繭の色は薄緑色をしています。
安曇野穂高町が、この天蚕の日本一の産地です。

■医療分野への利用
シルクは人間の皮膚と同じ動物性タンパク質なので、人の肌を正常な生理状態に保つのに最高の素材といわれています。
・柔らかい手ざわりが皮膚や末梢神経に適度の刺激を与え、皮膚病にかかりにくい健康な美肌になるといいます。
・外科用の縫合糸、人工皮膚などに活用され、酸素透過性のコンタクトレンズとして利用も研究されています。
・マウスの実験では皮膚ガンを抑制する効果もみとめられています。
・シルクを粉にして(
シルクパウダー)、食品に混ぜると次のような効果があるとして、研究されています。  
 血糖値が下がる。  
 善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす。  
 中性脂肪の減少。  
 高血圧、動脈硬化予防効果。  
 二日酔い防止。  
 糖尿病予防。  
 アトピー性皮膚炎改善。  
 痴呆予防改善。
他に、黄色ブドウ球菌が発生しにくい。
シルクの粉が黒カビ、青カビの繁殖を抑えるという研究も始まっていると言います。

また、蚕に特定の遺伝子を組み込み、蚕の体内を有用物質の工場にしようという、
昆虫産業の創出の動きも始まっています。

■雑
★真綿(まわた)
皆さん、植物性の綿(わた)だと思っていません? 辞書を引いて見てください。
手元の辞書では、「繭を煮て引き伸ばして作った綿で、多くは生糸にならない屑繭を用いる。」 絹なんです。^^;

★一張羅
一枚しかなくて、かけがえのない着物のことですね。
」とは薄く織った絹布の総称で、うすぎぬのことです。
また、「
」は袈裟などを数える数詞です。

★綺羅星
「綺羅、星の如し」と読むのは、「Vol.061 言葉の誤用」で書きましたが、この「
」は綾織(あやおり)の絹、「羅」は薄絹。
つまり、綺羅とは綺や羅をまとった立派な人々を言う言葉です。

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