和紙

蛇足
★歴史
伝説によると、5000年程前に中国古代の伝説上の帝王、
黄帝の妃の西陵が繭を熱湯に落としたのが絹の始まりと伝えられています。

春秋戦国時代(B.C.770〜B.C.403)に、書物として、「簡書」と「
帛書(はくしょ)」が用いられるようになりました。
「簡書」は竹や木片を細長く加工したもので、「帛書」は絹などの織物です。
当然、「帛書」のほうが柔らかく軽く、携帯にも便利だったのですが貴重でした。
やがて、
蔡倫(さいりん)の発明とされる紙(A.D.105)にとって代わられます。

絹は、日本には弥生時代(1世紀)に伝わったとされます。
魏志倭人伝には、日本でも桑を植え、蚕を飼育し絹を織っていたと記されています。

江戸時代には各地で養蚕が行われるようになり、錦絵なども残っています。
しかし、高価で金持ちしか着れませんでしたし、しばしば贅沢禁止の対象になりました。

生糸の輸出は明治以降のことです。当時ヨーロッパのカイコに病気が広がり生産が激減したことから、欧米に輸出されるようになったようです。
やがて、生糸の輸出は、日本の最大の輸出産業に成長し、大正から昭和15年頃までがその最盛期でした。

戦後はナイロン等の合成繊維の普及などで養蚕は衰退し、1930年代に40万トンあった生産が現在では1200トンにまで落ち込んでいます。
最近では中国からの安価な絹製品が市場に出回っています。

★絹の特徴
繭一つから取れる糸の長さは1.3km〜1.5kmにもなります。(マユは1本の糸で出来ています。)
しかし、蚕の糸は直径が0.02mmととっても細いので、絹織物一反(約700g、着物一着分)を作るのに2700粒も繭が必要なのだそうです。

<特徴>
1.吸湿性は綿の1.5倍。  
  ベトナムの民族衣装アオザイはこの性質で涼しいといいます。
2.保温性に優れている。  繊維に多くの空気を含んでいます。
3.保湿力があり静電気も起きにくい。
4.紫外線を防ぐ効果。  
  日光にあたると黄変するのは、紫外線を吸収しているためだそうです。
5.燃えにくく、有毒ガスも発生しにくい。  
  合成繊維の200℃前後に比べ、300℃〜400℃にならないと燃えません。

★疋(ひき、=匹)
絹織物の長さの単位です。
長さには変遷がありますが、寛文五年(1665年)に、鯨尺で五丈二尺を一疋と決められました。二反に相当します。
現在は、鯨尺六丈(約22.8m)で、幅九寸五分です。

「匹・疋」の音は正しくは「ヒツ」です。
馬や布に関して用いられるところから、それらを引くの意でヒキとよまれるようになったといいます。

蚕は「頭」で数えます。蝶と同じですね。

★絹がつく漢字には、難しい読みがあります。次の漢字読めますか?
生絹、正絹、紅絹、疋絹、縮緬

すずし(きぎぬ、せいけん)、しょうけん、もみ、むらぎぬ(ひきぎぬ、ひけん)、ちりめん

★シルクパウダーの植物への利用
植物活力剤としてシルクパウダーが注目されています。
成長が促進と同時に、葉色が濃くなり、果実は旨味成分が二割弱アップしたという実験結果も出ています。

★染料
繭に付着している細菌から青紫色の天然染料を作る研究がされています。

★日本で最初の今の仕組みのクーラーが導入されたのは、蚕の試験場で大正10年のことです。蚕の卵の保管用に利用されたそうです。

★ヨナクニサン
蛾の名前ですが、皆さんもどこかで聞いたことがあるでしょう?
ヨナクニサンは与那国島に多くいる天然記念物で羽根を広げると30センチメートルにもなる世界最大の蛾の一つです。
インドネシアでは糸を取る研究がされているようです。

ところで、この蛾、漢字で書くと、
与那国蚕(Attacus atlas)。蚕の字が入っています。 クスサンも樺蚕と書くんですね。この糸は、かつては釣り糸として利用されていたそうです。

★蜀
この「蜀」と言う字はヤママユの幼虫の形をあらわしています。
蜀といえば『三国志』ですが、三国志には桑の木が良く出てきます。
そして、蜀、今の四川省の特産物は今も昔も絹製品です。

★シルクロード(Silk Road)
ドイツの地理学者フェルディナンド・フォン・
リヒトホーフェン(Ferdinand Freiherr von Richthofen,1833-1905 )が大著「シナ」の中で記したのが最初とされています。
彼は研究旅行中に3回(合計10ヶ月滞在、内1回は立ち寄った程度、)日本に来ています。
最初の来日は幕末で、日本との通商条約締結のためにプロイセンより派遣された使節団の学術部員として随行しています。
また、あの「さまよえる湖」の著者、スウェン・ヘディンの先生にあたります。

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