和紙

香 その1
蛇足
■香
★香の字源
香の元の字は「黍(きび)」と「甘」を組み合わせた形で、口に入れた黍のこうばしいにおいを表しています。

★かおり
「かおり」は「香居り」が由来と言われます。「か」が、かおりやにおいを指す語で、「香居り」は、香りがそこに在る様子をさしています。

★「かをり」「かほり」どちらが正しいのでしょう?
歴史仮名遣いでは「
かをり」の方が正しいのです。
「かおり」=「香居り」と考えると、「居り」の歴史仮名遣いは「をり」ですから納得がいきます。

この誤用が広まったのは、小椋佳作詞の「シクラメンのかほり」ではないかと言われています。この題名、小椋佳の奥さんの名が佳穂里で、彼女の名の「かほり」と花の「かをり」との掛詞で付けたということのようです。

ただ、この「かほり」の用法、歴史的にも古くからなされているようです。
 「花橘のかほりなつかしくにほひて」花散里(源氏物語)
 「かをりをかしき顔ざまなり」     柏木 (源氏物語)

★「におい」と「かおり」
「におい」の歴史仮名遣い、こちらは「
にほひ」です。

「におい」の漢字には「
」と「」の二つがあります。
もともとは「臭」です。上の自が鼻、下の大が犬を表し、犬が鼻で臭いをかぐ意味です。悪いにおいの意味に使われます。
常用漢字は犬の点を取ってしまっています、変ですね。(Vol.089の蛇足 参照)
ちなみに、中国では点は残っています。

一方、「匂」は国字(日本で作られた字)です。
「余韵(よいん)」をにおいと言うことから、「韵」の旁(つくり)を変形したのがもとです。

では、二つの言葉の違いは?
元々は、
「におい」が視覚に関する言葉で、「かおり」が嗅覚に関する言葉だったようです。
平安時代頃になると、「におい」は、視覚・嗅覚両方に関する意味を有するようになり、平安後期には「におい」と「かおり」は、ほぼ同義語となっていきます。
後に、「かおり」は良い匂いに、「におい」は匂い全般について使いわけされるようになりました。

■香道、聞香
香が日本に伝来したのは6世紀頃だといわれています。

平安時代になると、貴族の間で衣服や髪に香を薫(た)き込める「
空薫物(そらたきもの)」の習慣が生まれます。また、香を薫き比べる「薫物合(たきものあわせ)」も始まります。

室町時代になると「
沈香(じんこう)(注1)」を主に使用する香道という日本独自の芸術文化にまで発展します。
なお、香道では香りを聞くといい、
聞香(もんこう)といいます。

戦国時代になると武士の間でもたしなみとして定着します。安土城跡からも「聞香」用の中国製青磁香炉や瀬戸焼の香炉が出土しています。

蘭奢待(らんじゃたい)は、聖武天皇の時、中国から献上され、正倉院(東大寺)に納められた伽羅(きゃら)という香木です。沈香の中でも特に最良のものを伽羅といいます。 長さが156cm、太さが一番太い木元のところで約40cm、重さが11.6kgの中空の木です。足利義政、織田信長、明治天皇が切り取った後が残っています。
なお、蘭奢待の字には東大寺が隠れています。

注1:沈香
インドネシア、タイ、カンボジアなどが産地です。
水に沈むのでこう呼ばれておりますが、もとの木の材質はやわらかく軽く、白色あるいは灰色に近いもので香気はありません。
ところが、木の表面の傷に、ある種の菌が付着すると、まれに幹や枝などに樹脂分の沈着凝集が生じます。 これが長い年月、埋もれて深い香りが生まれるそうです。

■香の効果
ラベンダーや白檀(びゃくだん,注2)、伽羅の香りは
α波(鎮静波)が出るのを促し、気持ちを落ち着かせたり思考力を高める効果があるといいます。
バラやジャスミンの香りは、
β波(興奮波)が出るのを促します。気持ちをリフレッシュさせ、やる気を起させる効果があるそうです。

注2:白檀
マレー半島からインドネシアに産する丈の高い木で、樹芯から芳香が採取できます。

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