和紙

蛇足
4月18日は「よい歯の日」です。
歯は辞書によると「鳥類を除く脊椎動物の口腔内にあって食物の摂取、咀嚼(そしゃく)、攻撃、防御にあずかる器官のこと」とあります。
みなさん歯は丈夫ですか?

■虫歯と日本人
現在、成人の歯の数は親知らずをのぞいた28本が基本です。
日本人の年代別喪失歯数は年齢とともに驚くべき割合で歯を失っていることがわかります。
30代  40代  50代  60代
1.6本 3.3本 7.2本 14.5本

なんと60代では半分以上が抜けてしまい、60代の総入れ歯は13.6%にも達します。

世界と比べても多いんですね。(12歳児 国別虫歯本数)
イギリス(1.4本)、オーストラリア(1.4本)、タイ(1.5本)、アメリカ(1.8本)
フランス(2.1本)、シンガポール(2.5本)、イタリア(2.9本)、日本(3.6本)
日本は世界138カ国中2番目に虫歯が多い国です。

■雑なお話
★デント(dent)

デントは歯の意味です。
歯医者(dentist)など歯に関する言葉に使われます。
これを語源にもつ言葉は多くあります。
・スパゲッティの茹で方で適度な歯ごたえあるのを
アルデンテっていいますね。これは al dente(伊)でデンテは歯の意味です。
・ワープロソフトで使う
インデント(indent)も行の始めを歯のようなジグザクを作ると言う意味です。
・シュガーレスガムの
トライデント(trident)は tri-(=三つの)+dent(=歯)で、海神ポセイドンが持っている三叉の戟(ほこ)を指します。
タンポポ(dandelion)はVol.119を参照してください。

■エピソード
★ワシントンと入歯

ワシントン(1732〜99)の写真は気難しそうなふくれっつらをしています。
実は彼は小さい頃から虫歯がひどく、28歳で入れ歯をしたといいます。
大統領(在任:1789〜97)就任時には、唯一、下あごに1本残っていただけとか。

当時の入れ歯はすごい代物です。重さ1.3kgで落ちないように強力なバネで固定するので、口から飛び出さないように常に顎をしっかりかみ締めている必要がありました。だから、いつも気難しそうな顔をしているように見えたのだそうです。

やがて食事が不自由になり顔の形も変わり発音も明瞭でなくなったと言います。
結局2期で引退します。これが
アメリカ大統領の任期が2期8年を超えないという慣習になりました。

蛇足ですが、江戸時代、日本の入れ歯は現在と同じ方法で西洋の技術より進んでいました。

★エリザベス一世と虫歯
エリザベス一世も生涯虫歯に悩まされたと言います。
貴婦人が
扇で口を隠す優雅な仕草がありますね。
実は入れ歯や、差し歯を隠すのが目的だったと言います。興ざめ ^^;

★鉄漿(お歯黒:おはぐろ)
江戸時代、既婚女性は眉をそり、お歯黒をつけました。
歴史的には、「古事記」や「魏志倭人伝」にも、お歯黒らしき記述があります。
奈良時代に伝わったようです。

もともと女性の習慣でしたが、男性も鳥羽上皇(1103〜56)の頃からお歯黒をするようになります。お歯黒は位の高い殿上人に限られていたようです。
武士の時代になると、高貴さの証として武士の間にも広がり、平家・源氏の公達や今川義元、北条早雲などもお歯黒をしていました。

鉄漿の主成分は、エナメル質の主体であるハイドロキシ・アパタイトを強化して耐酸性を向上させます。また、酸化するとタンニンと結合して、黒い耐溶性のものとなって歯の表面を覆い、細菌が歯につくのを予防する効果があるそうです。

★醍醐天皇と鉄漿
醍醐天皇(885-930)は虫歯がひどく歯が真っ黒で、気にしていたそうです。
そこで、側近達は鉄漿をして天皇が歯が黒いのを気にしないように気遣ったと言います。

★江戸の色男
江戸時代、白い歯は色男の条件の一つだったと言います。
歯磨き粉は享保(1716〜30)の頃には、すでに盛んに売られていました。
この頃の歯磨き粉は、
房州砂に龍脳と丁字(ちょうじ)を加えたものだったようです。
房州砂は房州の海浜にある非常に粒の小さな砂です。
ただし、当時の歯磨きは、歯を白くすることが目的で、虫歯の予防とか歯の健康を考えてのものではなかったようです。

■言葉
★歯牙にもかけない。歯牙の間に置く。

中国、秦の二世皇帝の時のお話です。陳勝と言う武将が氾濫を起こし陳(河南省)に入城し王位についたと言う報告がきます。二世皇帝は家来を集め、善後策について議論をします。
その時、叔孫通が「陳勝などはこそ泥のようなもので、歯牙の間におくに足りましょう」と発言し、二世皇帝は彼に従い、討伐を中止します。
が、結局、これが口火となり秦の滅亡につながっていきます。

そう言えば、中国・台湾で歯医者さんは「
牙科」です。最初見た時はドキッ!^^;

★楊枝(ようじ)
もともと、楊柳(ようりゅう、川柳のこと)の枝を、歯の掃除に使ったところから、きています。平安時代には既に用いられていたようです。
後には、黒文字(くろもじ)の木が使われました。
いまでも爪楊枝のことを
黒文字ということがあります。
なお、中国語の楊枝には、柳の枝という意味しかありません。

★唇亡びて歯寒し
春秋左氏伝に出てきます。
晋の献公はカク(将の旁りに虎と言う字です)を攻めるのに虞の国を通った方が都合がいいので、虞公に名馬と玉璧を贈って軍の通過を願います。
虞公の部下、宮之奇(きゅうしき)はカクと虞は表裏一体の関係でありカクが滅びれば虞も滅びると反対します。カクと虞は唇歯の関係にあると諭したのです。
しかし虞公は聞き入れず通過を許します。しかし、晋は、カクを滅ぼした帰り、虞も滅ぼしてしまいました。

★Bluetooth(ブルートゥース)
最近、パソコンの説明書などで見かけますね。
Bluetoothとは、モバイルPCや通常の固定PC、携帯電話、及びその他の周辺機器との間を無線でつなぐ新しい技術に付けられた呼び名です。

このBluetoothという名称は10世紀のデンマークの王、
Harald Blatand(通称Bluetooth=青歯王)にちなんでいます。
彼が幼少期からコミュニケーションの重要性を学んでいたことや960年にノルウェーとデンマークを無血統合したことから、この「二カ国の統合」を現代の「通信の世界とコンピュータの世界の統合」にたとえた名称です。

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