和紙

紛らわしい言葉 言葉編
蛇足
今回は紛らわしい表現を集めてみました。

■言葉
★"女心と秋の空"と"男心と秋の空"

歴史的には"男心と"の方が先のようです。
室町時代の狂言「
墨塗」には「男心と秋の空は一夜にして七度変わる」とありますし、明治時代の尾崎紅葉「三人妻」でも「男心と秋の空」とでてきます。
"女心と"が出てくるのは、女性の社会的地位が向上した大正デモクラシー以降の事のようです。
つまり、恋愛の主導権を握ぎった方が、心が移ろいやすいと言われるようです。
"女心と"が定着したのは昭和になってからだとか。

因みに英語では A woman's mind and winter wind. やはり主語は女性ですね。

★"耳障(ざわ)り"と"肌触(ざわ)り"
耳障り
は、聞いて気にさわること、不愉快に感じたり、うるさく思ったりすることです。品詞的には形容動詞ですから後ろに「だ」をつけることができます。
耳障りが良いとは使えません。

一方、
肌触りの方ですが、手触り、舌触り、歯触りなど他の言葉にも使われますが、こちらは触った感触のことで、言葉自体に良し悪しの意味は含まれていません。こちらは名詞です。ですから、後ろに、〜良い、〜が悪いとつきます。

ただ最近は、耳障りも、肌触りなどと混同され、「耳触り」を載せている辞書も増えてきています。
もし耳触りを認めるとすると、話し言葉上は区別がつきませんね。
(Akiraさんの指摘で、一部文章を修正しました。2003.11.21)
(ルパンさんの指摘で、一部文章を訂正しました。2005.02.06)

★"嘘をつけ"と"嘘をつくな"
嘘をつくな」は嘘をついてはいけない、と言う表現です。
一方「
嘘をつけ」の方は、前後に言葉が省略されていると考えられます。
つまり、「嘘をつけるものなら、嘘をついてみろ、本当の事はわかっているんだぞ」というニュアンスになるわけです。

★"いいかげんな事するな"と"いいかげんにしろ"
「いい加減」は「よい加減」の変化した言葉です。
辞書を引くとわかりますが、この言葉、困ったことに(^^;)3通りの意味があります。
1.「いいかげんに」の形で、かなりの程度までいっているので、もうほどほどにしたい様子を表す。
 この意味で使われるのが「いいかげんにしろ」です。
2.「いいかげん」と語幹だけで副詞的に使われる場合、かなりな程度と言う意味を表します。 「いい加減くたびれた」等と使われます。
3.無責任でなげやりな様子を表す。
 この意味で使われるのが「いい加減な事をするな」です。

★"せわしい"と"せわしない"
「せわしい」は「せわし」と言う形容詞です。
「せわしない」は「せわしなし」と言う文語の形容詞に、「甚だしい」という意味を持つ「ない」と言う接尾語がついたものです。
この「なし」は否定ではありません。同じような言葉に「はしたない」「いとけない」「せつない」などがあります。

★"てんてこ舞"と"きりきり舞"
てんてこ舞い
は太鼓のリズムに合わせて両足を動かす舞から来ています。賑やかな忙しさです。
一方、
きりきり舞いは錐(きり)や独楽(こま)など一本で回転する様子から来ています。こちらは逃げ道の無い忙しさを表します。
と言うことできりきり舞のほうが程度がひどい状態です。なお、この中間を表す、
くるくる舞いと言う言葉もあるのだそうです。(私の辞書には載っていませんでしたが) 

★"へとへと"と"くたくた"
へとへと」は肉体的疲労で動けない状態をさしますが、時間が経てば回復することは可能な程度です。
一方、「
くたくた」は肉体的疲労に精神的疲労が加わったもので、回復が不可能なほど疲れている状態をさします。
なお、両者の中間の状態をさすのが「
へろへろ」だそうです。

★アンティーク(antique)とヴィンテージ(vintage)
antique
はもともとは「古代の」と言うような意味で、普通、作られて100年以上のものを指します。この100年と言う数字は次のことに由来します。
1891年アメリカでマッキンリー法が成立しました。この法律では製作後100年以上経ったものは陳腐化し価値が無いので輸出入関税を零にしました。これは現在の日本でも同じだそうです。

一方、ヴィンテージは
vin+tage(ワイン+年)で、もともとワインに使ったブドウの収穫年を示す言葉です。
普通飲むワインにはヴィンテージの書いていないものも多く(安価で安定した品質のものを提供するためブレンド等をしているため記載していない)、ヴィンテージと言う言葉に、良いもので高価と言うイメージがついたと言います。

ビンテージカーは1917年〜1930年の車
ビンテージジーンズは1930年代〜1950年代、およびその復刻版
などと使われます。

★スリル(thrill)とサスペンス(suspense)
スリル
とは穴をあけると言う意味です。心に穴をあける一瞬のドキッとする感情を表します。
一方、
サスペンスはぶら下げると言う意味です。宙ぶらりんで不安定な心の状態、つまり持続する恐怖を表します。
瞬間的か持続的かの違いなのです。
なお、ズボン吊りの
サスペンダーもサスペンスと語源は同じです。

★"おざなり"と"なおざり" 
おざなりは「御座形」と書きます。
いいかげんに物事をすることや、その場のがれで誠意のないさまをいいます。

なおざりは「等閑」と書きます。
語源は「直(なお)去り」とも言います。
深く心にとめないさま様子や本気でないさまを言います。

言葉は似ていますが、意味も由来も違います。

(追記) 2003.11.21 dominoさんから情報をいただきました。
antique のことですが、確かに米国税関の定義では、制作後100年以上の
もの、となっていますが、
真剣な蒐集家の間では、機械でものを制作するように
なった以前のもの、つまり、1800年代初頭か、それ以前に作られたもの、という
定義もあるようです。

これに対して、
collectible という語があります。これは、制作後100年以下の
大量に制作されたもので、制作された時点では安価であったもの、というのがその
定義です。(例えば野球カード、弁当箱、安価な人形、など)


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