和紙

歩く
蛇足
■語源、字源
★歩く

古くは、「
あゆむ」が歩行を意味しました。

一方、「
あるく」は移り進む、動きまわる面に重点があり、人間や動物以外のものの移動にも用いたようです。
「あるく」は「ありく」の形でも使われました。
しかし、この「あるく」、中世以降「徒歩で行く」というニュアンスが強くなって現在に至ります。
でも、「世界中をあるいた」と言う表現などには、まだ本来の意味が残っています。

★字源
漢字は左右両足の足跡が前後に並んでいる形をあらわす象形文字です。
"止"と"少"の部分が各々足を表します。
なお、"歩"と言う常用漢字は字画を間違えた俗字です。(参照:「Vol.089漢字」)

★長さの単位 歩(ぶ)
一歩は、左右の足を一足ずつ踏み出した、今でいう二歩の長さをいいました。
近年、歩は1.666mで1歩当り0.83と長めですが、漢字が出来た当時は歩は1.35m(1.08mと言う説も)くらいで、1歩が0.675mと妥当な数字でした。(なお、歩の時代変遷は蛇足参照)

ところで、英語のmile(マイル)はラテン語の千歩(milia passuum)から来ています。
1mile=1.6093km ですから一歩が約1.6m。この場合も現在の二歩を一歩と計算しているんです。洋の東西で同じなんですね。

■いろいろな歩き
★なんば歩き

私たちは歩く時、足と反対の手が前に出ますね。
しかし、この歩き方、我が国では意外と歴史が浅いんです。明治になるまでは、いわゆる「なんば歩き」が普通でした。
右足を出すとき右手を振り上げ、左足を出すとき左手を振り上げるような歩き方です。ただ、実際は上体をだらりと脱力して、見た目にはあまり肩や腕は振りません。
興味のある方は、浮世絵などを見てください。
乳幼児の歩き方はこの歩き方なんだそうです。

時代劇で私たちのような歩き方をしているのは、歴史考証が間違っている。^^;

★モンローウォーク
マリリン・モンロー
(1926-1962)が映画「ナイアガラ」(米1953)の中で披露したお尻を左右に振りながら歩く歩き方です。
この映画、彼女にとっての主演の初カラー作品です。(ちなみに、初主演は「ノックは無用(Don't Bother to Knock)」です)
彼女はこの歩き方をするために、片方のヒールを切って歩いたのだそうです。

★千鳥足
酒に酔った人がふらふら歩くことを指しますね。

「白鳥をのんだでちどり足になり」 柳多留
   白鳥とは白く首の長い徳利(とっくり)のことです。

古くは馬の足並みが乱れている状態を言いました。(「太平記」(南北朝時代))
また、「馬の足並みの乱れが千鳥の飛ぶ姿のようであること。一説には馬の足並みの音が、千鳥の飛ぶ時の羽音に似ているから」と「五武器談」(江戸時代)にあります。
これが、やがて酔った人の歩き方に使われるようになったようです。
「和訓栞」(わくんのしおり:安永6年〜明治10年刊)には「千鳥の足は前指が三本で後指がないため、足を左右に踏み違えて歩く。これを酔った人に例えていった」とあります。
しかし、千鳥の歩き方は決してふらふらしていません。と言うより、ツツツーと真っ直ぐに歩きます。^^;

■言葉
★五十歩をもって百歩を笑う

出典は「
孟子・梁恵王上」です。
梁(魏が秦に圧迫され梁に遷都したため)の恵王は、富国強兵の具体策を模索し孟子を招きました。
自分は心をくだいて国政を見ているのに民百姓が私に期待感を持たないのはなぜかと質問します。
孟子は次のように説いたといいます。
戦で逃げ出した兵が、あるものは百歩逃げてとどまり、あるものは五十歩でとどまったとします。五十歩でとどまった者が百歩も逃げた者を卑怯者と嘲ることができますか?
あなたは、農民を、戦だ、普請だと農繁期に駆り出し、凶作をまねいています。凶作になった後で、いろいろ手を打っても駄目なのです。
農繁期を避けて農民を駆り出せば凶作になることも無く農民は豊かな暮らしが出来、あなたの望む富国強兵も可能になります。

★ザリガニ
いざる(膝行る)ように歩くことから「いざりがに」と呼ばれ、それが訛ってザリガニとなりました。
アメリカザリガニの赤いのは餌の水草や微生物に含まれるカロチンで赤くなっています。ですから、カロチンを含まないものを1〜2ヶ月与えつづけると、綺麗な青い色になります。近年、ペットショップで人気なのだそうです。
なお、ニホンザリガニは茶褐色なのだそうです。見たこと無いですね。^^;

★救急車(ambulance)
語源はラテン語の「歩き回る」と言う意味のambulare です。
そこから、馬に引かせた野戦用の救急車を hopital ambulant 「歩き回る病院」と言い、その hopital が脱落した形の名詞化です。
hopital:仏 oは上に^がつきます)

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