書名・著者
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「風の谷のナウシカ」 漫画・コミック 徳間書店 95/08/31 7-95/1.15 \,
+税
83/08/31 83/8/31
宮崎 駿
「風の谷のナウシカ」 ラストと生きていく道について

 映画で有名な「風の谷のナウシカ」は宮崎駿による原作があります。これは13年間に渡って断続的に連載された大河漫画です。映画版はその途中でまとめて話こしらえたもので別のものだと思って下さい。その終わり方のことを思うとどこまでも考えるものがあります。

 産業文明の汚染が進んだ中で巨神兵という核エネルギーをも体内に内蔵する10メートル近いバイオ技術によるロボット兵器を使用した戦争で文明を滅ぼした死の7日間から千年。産業文明は再建されず、人類はその文明の残滓である機器を転用しながら使いつつ菌類の巨大な世界である腐海が拡張して脅かされながら生きています。

 500人の辺境の自治国 風の谷は海からの風を利用してやっと生きていますが汚染は徐々に人を減らしていきます。また腐海は徐々に他の地域を飲み込んでいきます。そんな中でも世界に残ったトルメキア王国とドルク帝国に戦乱が勃発。残った世界の中でどちらが勢力を張るかという愚かな戦争です。トルメキアとの古い盟約に従って辺境の小国が動員され、風の谷では族長の娘ナウシカと城オジたちがドルクの前線へと出発します。その南進軍の司令官はトルメキアの王女クシャナです。しかしドルクはかつて文明世界を滅ぼしたバイオ技術を使い菌類の森をつくることでその毒によりトルメキア軍を撃滅しようとします。

 挙げ句の果ては地下から掘り出された1体の巨神兵のキットを起動してそれをバイオ技術で育て最終兵器に使おうとします。しかし菌類や虫達を実験に使用したため腐海の主である王蠱を刺激して巨大な腐海の増殖活動である大海瀟を起こします。それでドルクは腐海に国土のほとんどを飲み込まれてしまいます。このときに巨神兵はナウシカのコントロールにおかれます。なぜこのようなバイオ技術が出てくるのかはシュワの墓所というところに主がいてそこから漏れ出てくるとわかります。その扉を閉めに行こうとします。しかしトルメキアのヴ王もその秘密を探りに行きます。

 そこでわかったのは、シュワの墓所自体がかつての産業文明の終末期に作られた人口生命体で、実はナウシカたち人もその他の生命種も全てはそのために作り替えられており遺伝子改良され、だからこそ汚染された世界でも生きていられるということです。腐海も虫たちも世界を浄化するためにセットされたものだったのです。腐海は毒を出していますがもともと大地が汚染されているのです。その汚染物質を吸収して体内で結晶化させ自死するのが腐海の役割です。その際に少し毒を出してしまう。千年たった場所には浄化された所も既にできています。汚染により人は減っています。ところがこれらの人も含めた生命体は完全に浄化された世界では生きていられないのです。人も血を吐いて死んでしまうのです。しかも墓所では浄化した後に入れ替えるため人は卵を用意。別に「庭」という所に他の生命種は生きたまま、文化は音楽と芸術を貯蔵しています。そして最終的には浄化された後にすべての生命体を総入れ替えする計画なのです。

 このシュワの墓所の主は支配者にバイオ技術を提供する交換に生命入れ替えするまで活動を継続するための様々の便宜を得ていました。ドルクはしかし滅びたので今度はトルメキアのヴ王に交渉を持ちかけます。ナウシカはこの入れ替え計画そのものに反発。シュワの墓所を破壊しようとします。

 私は迷いましたがシュワの墓所を壊すのはいいと思いました。それは予定し た人間の入れ替えなど科学者が準備した世界を受け入れない、そんなことはおかしいというのはごく当然の要求だと思うからです。
 実は「超整理法」で有名な野口 悠紀雄東大教授が、『超整理日誌』という本で科学者らしくこの入れ替え計画破壊を批判しています。つまりはどうやって人類は生き延びていくのだということです。

 シュワの墓所の主が「汚染に適応した人間を元に戻す技術もここに記されている」とナウシカに言いますが、ナウシカが「本当のことを言え、汚染した人間と生物の丸ごとの入れ替え計画なんだろう」と追求して初めて言っただけで、入れ替え計画であるのは間違いない。そして「交代は緩やかに行われる」ともいうが、卵を用意して断絶させようとしているのだから、旧世界の人間に子供を作らせようとはしないだろう。結局は今一代のみによる絶滅計画となるでしょう。反対するのは当たり前です。

 しかし問題はそこからなのです。この汚染された大地を造り替える腐海は人工的な発生ですが活動し続けています。いやむしろ聖な る生命体として自立しています。もれでたバイオ技術使用の戦争により科学者が予定した以上にあまりにも急速なものとして大地を 全て飲み込みすべての国を滅ぼそうとしています。国が滅べば入れ替えも当然できなくなります。これはシュワの墓所の矛盾そのものです。でも なお技術をもらして入れ替えもできぬまま世界を破滅させるでしょう。

 ではシュワの墓所を滅ぼした後その後の浄化された世界にどうやってナウシカたちは適応しようとしているのでしょうか。倒れながらもなお「朝に向かって飛ぶ鳥だ」といいます。つまりは自然に任せて浄化された世界にも進化して慣れようというのです。しかしナウシカ達の汚染への適応はバイオ科学によって与えられたもの。進化が間に合うようなものではないはずです。

 実はこの1つのキーワードとなるのが、「庭」の不死の人口生命である庭の番人だと思うのです。 ナウシカはこの時出会って実は再改良されました。汚染にも浄化された庭と空気に も両方適応するようにです。おそらく遺伝子レベルまでもでしょう。 今後はその技術と保存されている生物と文化をどう利用し協力する かがナウシカたちの生きていく道でしょう。でもそれは否定したものとの和解となるのでしょうか。それを考えると少し苦みがあるな と思っています。


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