BOOK REVIEW
[注意]このページはお勧め書評のページで、ネタバラシはありません。
このサイトの文章・画像を引用する際には連絡頂けますようお願いします。

予告された殺人の記録
高原伸安

 ニューヨーク近代美術館で出会った私と由美。途端に二人は恋に落ちた。精神医学を学ぶ私は、由美とともに留学先で師事しているオッペンハイマー教授の元へ向かう途中、私立探偵のJ・B・オコーネルから重要な話があると呼び出されていた。オコーネルと出会ってすぐに、三人は強盗事件に遭遇し、不幸にもオコーネルは殺害されてしまうのだった。

 高原伸安氏によって1991年に書かれた作品です。ノベルスの著者のことばに目を通すと、本書はある種のトリックが施されていることが予測されるのですが、その予想は大まかに当っていました。
 しかし、そのトリック自体よりも、本書の登場人物が交わす会話の酷さに辟易してしまいました。十年以上前に書かれ、その後作者によって第二作が出版されることもない(自費出版か何かで出されていることは出されているようですが……)という事実を踏まえれば、本書の出来は予測可能なのですが、あまりに会話・地の文が下品すぎです。こういう会話がお洒落だという時代だったんでしょうか……。

 だらだらと羅列される精神医学の知識も整理されていない感じで読んでいて辛いですし、何よりトリックが酷い。とすると本書は取り分け見所になるところがあるわけではなく、そうするとどうしてこの作者がデビューするに至ったのか、僕にはまるで分かりませんでした。
 こういうトリックがお遊びだから悪い、というのではなく、あまりに無造作に使われすぎているところに問題があると僕は思います。ミステリとはどういうものを指すのか、というところの思考がなく、単に思いつきで書いたとしか思えないのです。いろいろなことの結果を知っている現在に、本書のあとがきを読むと、それはそれで面白いのですが、本書を読んでいて面白かったことがそれだけ、というのはあまりに辛い読書体験なのではないでしょうか。


<<… BOOK REVIEW INDEX 【注意】このサイトはIE5で動作確認しています。