シティオブグラス  CITY OF GLASS
 

 

”それは一本の間違い電話から始まった。クィンのもとにかかってきた電話はポールオースター
という探偵へ依頼の電話だった。オースターとして依頼を受けることにしたクィンは依頼人である
スティルマンの家へ向かった。そこにはスティルマンの美しい妻バージニアと白痴のようなピーター
スティルマンがいた。ピーターがこのようになったのには理由があった。
ピーターの父親はハーバードで宗教学と哲学を専攻し、コロンビアイ大学で教鞭をとっていた。
が、妻の死後ピーターの父親ピーターシニアは大学を辞め、言語の実験の為に2才のピータージュニアを
アパートの一室に9年間も幽閉した。幽閉期間中ピータージュニアは一切の言葉を話すことを許されず
ピーターシニアはジュニアから神の言葉が発せられるのを待った。しかし、アパートに火事が発生し
幸い2人とも生き延びたが、ピーターシニアは精神病院へ、ジュニアは病院へと送られた。
オースターへの依頼というのはピーターシニアが明日釈放されるので、
ついては監視して欲しいという事だった。
クィンはスティルマン家の帰り際に赤いノートを買って感想を綴った。
翌朝クィンはピーターシニアの著作「THE GARDEN AND THE TOWER」を読んでみる。その著書には
エデンの園からの追放以来、名前とそれが表すものとは照応しなくなり、言葉は懇意なる記号に堕して
しまった事、そしてヘンリーダーク著「ニューバベル」について書かれていた。
クィンはピーターシニアが降り立つはずのグランドセントラル駅へ向かう。ところがピーターシニアと
思しき人物を二人見つけてしまう。当惑したクィンはみすぼらしい方の男を追うと、
彼はブロードウェイの安ホテルにチェックインする。次の日からピーターシニアは朝8時にホテルを
出て、彷徨を続け、時折かがんで路上の物体を拾い、ノートに記録するという目録を繰り返す。
ある晩、ノートにシニアの毎日の道筋を図示していくうち、彼の足どりは「THE TOWE OF BABEL」と
描かれていることに気付き、クィンは震撼する。
後日クィンは思いきってピーターシニアに話しかけてみることにした。
ピーターシニアは変わりゆく物に対応しうる言葉の発明というプロジョクトに没頭している事
などをとうとうと語る。次にカフェでヘンリーダークと名乗って話しかけるとシニアは
ヘンリーダークは自分の発明した偽の人物だと告げ、実はハンプティダンプティの
イニシャルを用いたのだと言う。
その日の夜、ピーターシニアはホテルをチェックアウトし、行方をくらませてしまう。
この頃からピーターとバージニアスティルマンとの連絡も取れなくなり、行き詰まったクィンは
ポールオースターのもとを訪ねる。ポールオースターは探偵ではなく、セルバンテスのドンキホーテ
の謎に関するエッセイを書いている作家だった。
途方に暮れたクィンはスティルマン家のアパートの前のゴミ箱の中で監視を続ける。
食事や睡眠を最小限に切り詰め、数カ月を過ごす。
夏の終わりにポールオースターへ連絡してみるとピーターシニアは2ヶ月前に自殺した事を
告げられる。なぜかその知らせに無感動のまま自分のアパートに帰ってみると、見知らぬ女性が
すでに暮らしていた。自分のアパートを追い出されたクィンはスティルマン家に行ってみると
鍵はかかっていない。暗く狭い部屋に入ったクィンは服を脱ぎ捨て眠る。
目が醒めると豪華な食事が用意されていた。そんなことが数日続くうちに、闇の時間が長くなり、
ノートに書く時間も極端に少なくなり、またノートも終わりかけていることに気付く。
そして言葉が自分から分離していくことにも・・・・・。
この後クィンがどうなったか誰にもわからない。


 
 

リオンリネット版シティオブグラス