
Pink Floyd
ピンク・フロイド、1960年代後半からブリティッシュ・ロック(プログレッシブ・ロック)界において、他の追従を許さない独特の世界観を提示し続けているグループ。現在はギターリストであるデイブ・ギルモアが主導権を握り新譜を発表しないまま過去の遺産で喰いつないでいるのが現状・・?しかし、フロイドの残した実績はロック・ミュージックの歴史を語る上でも重要な作品が多いと言える。コンプリートに全てを掲載できないので、もっとも聞き込んだものをセレクトしました! july.2000
Atom Heart Mother / 原始心母 (1970)
ピンク・フロイド初期の名作の1つであり、最高傑作であると評価している評論家もいる。絶対にライブでは再現不可能な音世界はこれぞプログレッシブ・ロックと言えるものであり、当時ヒッピー・ムーブメントによるピース運動や、ドラッグによる精神世界へのトリップにも一役買った作品でもある。60年代から活動してきたいるフロイドだが元々サイケデリック・グループとしての評価があっただけに、このアルバムでの大作主義は後に活躍する他のプログレ・グループにも多大なる影響を与えている。この作品におけるインパクトの強さはジャケットに写し出されたモーモー(牛)さんの姿にある。大きな後ろ姿で振り向きざまともいえる素晴らしいポージングは一度見たら忘れる事の出来ないものである。やはりフロイドのメンバーは動物好きなのか?オーケストラを大々的にフューチャーし、女性コーラスも導入、4人のメンバーだけでは決して表現仕切れない密度の濃い音が詰まっている・・。70年当時リアル・タイムでこのアルバムに接したロック・ファンは度肝を抜かれたに違いない。そして、当時の東芝EMIの担当者のセンスのなさによる邦題がこの作品をさらなる高みに押し上げたのは考え深いものがある・・・。まんま直訳ではないかっ??全く意味不明な日本語となるが、なぜか説得力がありその内容と相まってわが日本でのフロイドの知名度もアップしたのは言うまでもない。
Meddle / おせっかい (1971)
このアルバムは”狂気”の前に発表されてはいるが随分と開きがある様に感じられる。しかし、現在でもフロイドの代表曲と言える”One of These Days”や大作の”Echoes”が収録されている事で、このアルバムを勧めるファンは多いと言える。特に”One of These Days”は「吹けよ風、呼べよ嵐」と言う邦題で全日本プロレスが悪役のテーマして器用、ブッチャーが登場する時にカナラズ会場で流された・・。それでこの曲だけが一人歩きしてフロイドの事を知らないプロレス・ファンが「吹けよ風、呼べよ嵐」はブッチャーのために書き下ろされたものと勘違いしていた。(実際私の周りのプロレス大好き小僧はほとんどそう思っていた・・・)ホントウの所この仕掛け人が誰なのか解らないが、EMIと全日と日本テレビあたりが仕組んだものと推測されるが・・・。フロイドがすでにCBSに移籍していたのでそれが容易になったのでありましょうか?フロイドのメンバーもまさかブッチャーのテーマ曲に使用されるとは思ってもみなかったでありましょう。そして、23分の大作”Echoes”でありますが、ゆったりと流れるその曲調は、フロイドのトリップ感覚の名曲の一つとして記憶されている。
Dark Side of the Moon / 狂気 (1973)
ピンク・フロイドの名前を永遠のものとしている最高傑作と言われる超名盤であります。この1枚のアルバムでフロイド以外の人間がロック・ミュージックの表舞台にあがるキッカケともなった作品でもある。その人はアラン・パーソンズ、このアルバムにエンジニアとして参加しているパーソンズは当時アビイ・ロード・スタジオにおいて優秀な録音を手がけて業界からも注目されていた。当時アナログ盤の優れ音LPとして、このアルバムは評論家からもステレオ装置のチェック用として推薦されていたほどでありました。だからこそ長きに渡りチャート・インしており、全世界で2900万枚近い売り上げをしているのである。これはパーソンズが取り組んだSEとフロイドのメンバーが全力を傾けてこのアルバムを制作したからに他ならない。アイデアの面では他のプログレ・グループの追従を許さない所がフロイドの凄い所でもあります。前半における時計の音が鳴り響く所や、人が走り回る様のサウンド・エフェクトはパーソンズなくしては成し得なかったはずである。そして、”タイム”におけるエモーショナルなギルモアのギターが官能の嵐を呼び起こします。このアルバムの邦題もまた特別のものであり、なぜDark Side of the Moonが”狂気” となるのか10代の少年である私を悩ませたものであります。(”月の裏側”と訳すのがせいぜいの私でありますが・・・)しかし、なぜかこの邦題のおかげでフロイドの神秘性やプログレッシブな感覚が、当時から現在まで否定されずに済んだのは、この邦題をつけた担当者の先見性か、「何か上手くいったなぁ・・」と言った所でせうか?お金のジャラジャラの効果音が楽しい”マネー”をはさんで前半部と後半部と分かれると思いますが、後半部はより重厚なつくりであり、なかなかライブでは表現しきれなかったのでありましょう・・。全体をライブで発表できたのはオリジナルが発表されてから20数年が経過した時でありました。(2番目のライブ”Pulse”にて完全再現!)フロイドが他のプログレ5大グループと違うのは、下地にある音楽的背景がR&B、ブルース、ジャズ、そしてフォーク&トラッドにあると思いますが、けっして上手ではないヴォーカルもそのサウンドの中においては一つのファクターにしか過ぎないと感じられます。だからこそ、長きに渡り多くのリスナーに愛され続けているのでしょう。アメリカで一番成功したブリティッシュ産のグループがフロイドであるのも判りますし、世界的にみてもこのアルバムは一番多くの人に聴かれたプログレッシプ・ロックの名盤といえるでしょう・・・。
Wish You Were Here / 炎 (1975)
当時は洋楽に副題とか邦題をつける習慣があったのか、フロイドのほとんどの作品には意味深(意味不明?)な邦題をつけていた。そして原題と最もかけ離れているのが、この”炎”と”狂気”だっ。オリジナルのタイトルからすると”あなたがここにいてほしい”でいいではないかと思ってしまうのだが?当時のCBSソニーのフロイド担当者は頭をグチャグチャにして考えたたのであろう!?東芝EMIに先をこされて焦っていたのか真意は判らないが・・。ヒブノシスによるジャケットで握手をしている紳士が炎を発しているからか、ジャケットのテーマが土・水・火・空気をイメージして作られたからか?しかし作品のインバクトを上げる効果はかなりあったはずである。内容は狂気の後だが4人のメンバーのアイデアは枯れてはいなかったのだ。”狂ったダイヤモンド”をアルバムのトップとラストに配置しトータル的なイメージを大事にしながらも、各曲のクォリティは十分に保たれている。私のお気に入りの曲に”ようこそマシーンへ”がある、アルバム・タイトル曲や”狂った・・”より印象薄い感じがするが、この曲をラジオで初めて聴いた時のショックはいまでも忘れられない。作品の発表の周期が何年かに一度と言うフロイドだったので、なにげなく聴いたFMで他のプログレ・グループの曲と一緒に流れていたのだが、なぜか機械音を加工したアノ音やフレーズが耳から離れなかったのである。この曲がこのアルバムに収録されているものと言う事は後から知る事となるのだが・・。シャイン・オン・・に流れるSAXの切ないフレーズは他のグループでは絶対に出せないブルージーかつジャジーなものであり、フロイドの真骨頂と言える!ギルモアの乾いたフレーズも郷愁を誘う・・。
Animals / アニマルズ (1977)
豚が空を飛ぶ、そりも工場地帯の上を・・。前作”炎”から期待して待っていたファンは一瞬とまどったかも知れないが、私にとって初のフロイドのリアル・タイムな作品がコレである。この時期はハード・ロックもプログレも関係なしにロックを聞き込んだので、過去のフロイドのアルバムと比べてどうか?なんて関係なかったのがホントウの所・・。ギルモア色が出てきたと言うかアコースティック・ギターを効果的に使用している所もある。あんまりライブ活動らしきものを本格的にしていなかったフロイドだが、このアルバム発表後は何回かライブを行っているようであり、ブートレッグも何枚か残されている。会場の雰囲気は一種独特であり、ステージ上のメンバーと観客とは何かで遮られているかのように、ファンを突き放した感じで淡々と演奏をしていたと言う・・。それにしてもフロイドは動物好きである。豚に牛に羊に犬と家畜化されてきた動物達を作品やジャケットに多用している。誰が好きなのか?ウォーターズかギルモアか?それともメンバー全員か?
The Wall / ザ・ウォール (1979)
このアルバムでフロイドのメンバー間に大きな亀裂が生じたと言われている。それは、コンセプトから曲の内容までウォーターズが主導権を握るべく他のメンバー以外にゲストを参加させて制作している。ドラムスには今は亡きTOTOのJeff Porcaroの名前もあり、ニック・メイスンを一時期脱退させていたのが事実である事が確認できる。同時に映画も同タイトルで制作されているが、フロイドのマニア以外にはチトお勧めできないものだっ。(こんなのがたまらんのよと言う方も多いが・・・)ウォーターズが自身の少年期の体験を元にロック・オペラを作りたかったのは判るが、長年一緒に活動してきたメンバーと袂を分かつのはどうかなぁ・・と思ってしまう。しかし、フロイドをここまで導いてきたと言う自負があるのかこのアルバムの評価はすこぶる良い!フロイドの70年代のラスト作としてばかりではなく、プログレ最後の砦として業界から絶賛された事は真実ではある。そして、伝説の”壁”ツアーも本国英国において数回行われたのみで極東の島国へその模様は多くは伝わらなかったのである。ウォーターズにしてみればしてやったりであろう。当時アナログ盤で1000万セット以上を売り尽くしたのだから・・・。驚異的としか言いようがない・・。そして、時は流れウォーターズのいないフロイドが”壁”のライブ盤を発表したのは2000年であり、ライブが行われてから20年が経過していたっっ。(権利関係のもつれが原因と言われているが・・、なぜ2000年の今なのか?新作発表までのつなぎのつもりかしらギルモアさん!)なにはともあれ、こんな作品はもう二度と作られる事はないだろうと思えるくらい凄いアルバムである。2枚組ながらきの抜く暇がない密度の濃さであり、シングル・ヒットまで生まれたのだから・・。他のプログレと言われたグループのほとんどが過去の作品とはかけ離れた作風に変化していった中、フロイドも軌道修正はしているもののリッパにプログレスしている所は特筆すべき点がある。さすがにフロイド初心者にはきつい2枚組ではあるが、1曲ごとに聴くとポップ・フィーリングがあり80年代にも通用する内容であった事を付け加えておこう・・。事実上4人フロイドのラスト作といっても良いアルバム。
A Momentary Lapse of Reason / 鬱 (1987)
ファイナル・カットで一度はフロイドとしての幕を閉じたはずだが、ロジャー・ウォーターズ以外のメンバー(特にデイブ・ギルモア)がフロイドとしての仕事がしたかったのか、3人の残ったメンバーと豪華なゲストによってこのアルバムは制作されている。”壁”発表時期からメンバー間のゴタゴタがあり、ついにはグループの中心メンバーであるウォーターズが脱退することでフロイドそのものも終焉したと誰もが思っていた。何年かの争議の末に権利関係がクリアされ、晴れてピンク・フロイド名義でこのアルバムは発表された!当初はデイブ・ギルモアのソロ・アルバムとして発表するのではと噂されていたがリチャード・ライトとニック・メイスンが参加している事もあり、フロイドとして初の大規模なワールド・ツアーを行う前段の作品として認識されている。(しかし、中ジャケに写っているのはギルモアとメイスンの二人だけであり、ライトはゲスト扱いだった様である。)私が注目しているのはもう一つあり、参加メンバーにプログレッシブ・ロックとは縁遠いミュージシャンがいる事だっ。ギターでセッション・ギターのLAでの代表選手、マイケル・ランドーの名前がある。(この人我が日本の女性歌姫である”A”さんのバック等でも大活躍している!)そして、80年代クリムゾンの立て役者の一人、ベースでトニー・レビンのオヤジも参加しているし、SAXでフュージョン界のトップ・スターであるトム・スコットの名前もある。(これは収録のほとんどがLAで行われたからと推測される。)プロデュースはキーボードで参加しているボブ・エズリンとギルモアの共同プロデュースであり、CBSが総力を結集してピンク・フロイドの新作として取り組んだのが判る・・。全曲におけるギルモアの熱いギター・プレイが堪能する事ができるのでギルモアのファンには涙もののアルバムであるし、ファイナル・カットでガックリとしたファンにも嬉しい復活であったはずだっ・・。(しかし70年代テイストを指示するファンからは???と言われたアルバムでもある・・。)それは、セールス的にも成功し歴史的な大ツアーを敢行、これまた大成功する次作(ライブ盤)で証明しているから業界もロック・ファンも熱望していた事は明白であった。
Delicate Sound of Thunder [live] / 光〜パーフェクト・ライヴ (1988)
前作”鬱”において復活をとげたピンク・フロイドが世界ツアーの模様を収録した2枚組のライブ盤である。フロイド名義では初のライブ盤であり、70年代の名曲もいくつか披露している。4人だけでは実現不可能であった曲も強力なサポート・メンバーの助けにより見事に再現している所は、ロジャー・ウォーターズがいた頃には考えられなかった事である。3人のメンバーの他にキーボード、ギター、ベース、パーカッション、コーラス3人と言う大所帯での興業でした。特にギターでギルモアをサポートしたTim Renwickの音色はギルモアそっくりで、ふたりギルモウ状態でありましたし、ギーボードのJon Carinはライトよりも器用にフロイドの音を出しておりました。(なぜウォーターズがライブ演奏そのものに固執しなかったのか?謎は深まるばかり・・スタジオ盤はゲストを入れて作製してもライブ盤では実現使用とはしなかった・・・)残念なのは前作よりシングル・カットされた”One Slip(理性喪失)”が無い所です。共作者のフィル・マンザネラが許可しなかったのでしょうか?ちなみにビデオもありまして、こちらには”One Slip”も入っているので、CDにも入れてほしかったであります。(Dogs of War 〜 One Slipの流れはライブにおいてもなかなかの出来で、私は大好きな所だったのですが・・・)ですからフロイドのファンは両方を揃えてライブを楽しむ事になるのであります。なにはともあれこのアルバムに収録されたワールド・ツアーは当時の全ての記録をうちやぶる事となるのですが、そりはあまり論じられていない様です。キング・オブ・ポップと言われた”マイケル・ジャクソン”も同時期にワールド・ツアーをしているのですが、何とそれを上回る観客動員数記録をフロイドは打ち立てたのであります。(この時点においてピンク・フロイドは真の意味で産業ロックの覇者となったのであります。)元々のファンはこの時点で真っ二つの分かれます、精神性や哲学的な意味を求めて、音とイメージを増幅させるトリップ・ミュージックとして聴くにはこの時点のフロイド・ミュージックはポップ過ぎたのです。大衆向けを通り越して業界の怪物と化してしまったのであります。
The Division Bell / 対 (TSUI) (1994)
このアルバムは前作”鬱”とライブ盤の”光”において史上空前の大興業を行い、全てのポップ・ミュージックの歴史を塗り替えたギルモアズ・フロイドの2作目のスタジオ盤であり、唯一の90年代におけるフロイド名義のオリジナル・アルバムである。この作品も邦題がつけられているが、以前の様なキレが感じられない。「対」???なんだコリャである。センスがない、なぜ原題のディビジョン・ベルではいけなかったのか??この点だけはソニーの担当者に一言いっておきたい。きちんとした意味があって付けているのにあえて日本語の一文字で表現しなくとも良いではないか・・・。”炎”と”狂気”からはすでに20年以上経過しているが、当時とは洋楽(ロック)に対するリスナーのスタンスは180度以上変わっているし、ピンク・フロイド自体スーパー・グループなので邦題の付ける意味があるのか・・。と思ってしまったのは私だけではあるまい・・・。内容に関しては、ギルモアのギターをふんだんにフューチャーした作りになっており、70年代の作品群とは異なるものとして整理した方が良いだろう・・。(ギルモアのソロ・アルバムとして聴いた方がしっくりくるかも・・)ギルモアのファンは手放しでよろこべるものとなっている事は間違いがない。ジャケットの素晴らしさは実物を手にとっていただけると判ってもらえるはずである。もはやトリップや瞑想する音楽ではなくなっており、歌詞の内容も哲学的かつ危なげではなくなっているので和みの一枚としてオススメいたします。
Pulse / パルス(ライブ) (1995) 、
Is There Anybody Out There ? (The Wall live) / ザ・ウォール・ライブ (2000)
この2枚のアルバムはどちらもライブ・アルバムだが、内容に相当の開きがある。”パルス”の方はThe Division Bell発表後のツアーを収録したもので、”鬱”とライブ盤の”光”と同傾向のファンを喜ばせるだけの様だっ。しかし、”狂気”全曲をライブ盤で初のコンプリート収録している点は評価できる。前述と同じにビデオ盤も発売されたがこの映像がこりまた素晴らしいものとなっている。レーザー光線とバリ・ライトが光の渦を作りコンサート会場をスペクタクルなイベント会場と化している。こりほど金のかかったライブ・ツアーもなかったであろう・・。しっかりとそれをペイできるのだから、フロイドのネームは世界的に凄いのである。そして、突然発表された”壁”の80年に行われた実況録音盤が2000年の今になり・・・。当時ライブそのものが数回しか行こなわれなかったので、世界中の熱狂的なフロイド・ファンは大喜びしたであろう。特にウォーターズの心棒者は現在のギルモアズ・フロイドに難色を示していると思われるので、ヤッバリコレでなくちゃねぇ・・。と言ったかどうか。ステージ上に壁を作りそりをぶちこわして演出したと言われるが、ライブ映像で確認できないのが残念だがしっかりと映像で残していたりするかもしれないので、なんとか出してくれないだろうか??。また何年か待たされるのでしょうか?音源そのものに手を加えたか定かではないが、スタジオ盤とくらべるとライブにおけるソリッドでダイナミックな感触が味合う事ができます。ウォーターズのフロイドを自分自身のものと勘違いした結果うみだされた作品なのだが、商業上このライブ・ツアーは大赤字になりロック・オペラは上演打ち切りとなってしまったのだから・・。(トミーの様な大成功は出来なかった?)見事砕け散ったプログレッシブ・グループの最後の姿がここに刻まれている。
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