
めいちゃんが創作した怪奇倶楽部 番外編です。とってもリアルで、ほんとに怪奇倶楽部を見ている様な気分になりますよ! 超オススメです!是非読んでみて下さいね!
のぼるくん&エリカちゃんファンにはたまらない作品だと思います!!
武&晶編もあるんだよ!こちらです!こっちも最高にいいよ〜!(せるさんのHPにリンクしています)
怪奇倶楽部 番外編
★★★★★★★★Holy Night★★★★★★★★
by めい
「あーあ、もうジュースないよー」
晶がペットボトルを掲げて振った。
「お菓子ももうないよぅ」
シュウがポテトチップスの袋を覗き込んだ。
のぼるの家、いつものようにみんなが集まっている。
今日はクリスマスイヴということで、いつもの部屋がクリスマスカラーで 飾り付けられている。
クリスマスツリーも部屋には置かれている。
「あ、じゃあ、ぼく買ってくるよ」
「あ、私も行く」
のぼるが立ち上がるとエリカもそれに続いた。
「んじゃ、頼むわー」
「あ、僕、何でもいいから・・・うわっ!」
武と圭太は対戦型の格闘技系テレビゲームに夢中だ。圭太が防戦一方にな っている。
「じゃ、いこっか」
「うん」
のぼるとエリカが部屋から出ていった。
晶とシュウがのぼるとエリカが出ていったドアの方を見て、それから、2 人で顔を見合わせて、にっと人の悪い笑みを浮かべる。
「うわああああっ、くっそぉー、なんでだようっ!」
「へへーん、ざまーみろってんだ」
武が圭太に逆転負けをしてしまったらしい。
「圭太、もう1回勝負だ!」
「ったく、しょうがないなぁ」
晶とシュウはもう1度顔を見合わせて肩を竦めた。
「子供だねぇ」
「ん?」
「子供」な2人、武と圭太が振り返って、きょとんとした顔をした。
びゅうっと冷たい風が吹き抜けた。
「うわっ、寒ぃ」
急に冷え込んできたようだ。のぼるがダウンジャケットのポケットに手を 入れた。
「ほんと・・・寒くなってきたみたい。お昼はあんなに天気がよかったの に」
コンビニまでの道のり、葉のすっかり落ちた街路樹がざわざわとゆれてい る。エリカの横顔が少し寂しげに、のぼるには見える。
「今年も・・・もう終わり、だね・・・」
「うん、来年、次の年の今ごろは受験勉強してるんだろうな・・・・・・ 」
「あーあ・・・受験かぁ。紺野はいいよ、成績いいからなぁ・・・」
「そんなこと」
「僕なんかかあさんに勉強しろ勉強しろって・・・はぁーあ」
「でも、高校生になったら・・・・・・」
エリカが少し、考え込むような・・・悲しげな顔でのぼるを見た。
「うん?」
「みんな・・・・・・ばらばらになっちゃうのかな・・・・・・」
「・・・・・・」
のぼるも、エリカも黙り込んでしまった。
進路は、きっと5人それぞれに違うだろう。高校もバラバラになってしま う可能性が強い。
そうなった時、自分達は今のままではいられないはずだ・・・・・・。
「あのねっ」
エリカが顔を上げて、何かをのぼるに言おうとした時。
「うわああぁぁぁぁぁぁんっ、うわあぁぁん」
甲高い、子供の泣き声がした。
のぼるはエリカと顔を見合わせた。
「行ってみよう」
エリカもうなずくと声のする方に駆けだした。
「まーくんね、おつかい、しに行った、んだよ」
まだ、ぐすぐすといいながらその子はのぼるとエリカの顔を交互に見上げ た。のぼるも、エリカもコンビニの白い大きなビニール袋を手に持ってい
る。その子は手に白い小さなビニール袋をさげている。
大きな声で泣いていた小さな男の子の名前は「まさと」といった。おつか いでクラッカーを買いに行く途中で迷ってしまったということだった。
そこでのぼるとエリカがコンビニまで連れて行き、また迷子になっては・ ・・ということで家まで送ってやることにした。
「だけどね、道が、わかんなく、なっちゃってっ」
「大丈夫よ、送っていってあげるから」
まさとの家はのぼるの家から程近いところにある小さな教会だった。
普段は人の気配がしないところなので、のぼるは誰かが暮らしているとは 思っていなかったのだが・・・。
ふと見ると、まさとが口元に両手を持ってきてはぁっと息を吹きかけてい る。手が冷たいらしい。
そういえば、先程よりもずっと冷え込んできた。
それなのに、まさとは近所に買い物に行くという気軽さからか、マフラー をして、薄いGジャンを羽織っているだけだ。
「寒い?」
のぼるがまさとに聞いた。
「だいじょうぶだよっ」
そう答えるまさとのほっぺは真っ赤で、吐き出される息も白く、それが本 心からではないことはすぐにわかる。
「・・・・・・」
そんなまさとをちょっと難しいような、こまったような顔をしてエリカが 見ていた。そして、何かをふっきるかのように、言った。
「ちょっと待って」
立ち止まり、2人にちょっと背を向けて、コートのポケットから何かを取 り出し、がさごそと音を立てると、二人の方へとまた、振り返った。
「まさとくん、これ、使って」
エリカがまさとに差し出したそれは、グレーの手編み風の手袋だった。
まさとはそれをじっと見て、それから顔を上げてエリカを見た。
「おねーちゃん、いいの?」
「ん?だって、まさとくん、寒そうなんだもの、使って」
「・・・・・・」
「ほら、手を出して」
エリカは屈託なく笑ってそういうと、手袋をまさとの手にはめてやった。
小さなまさとの手には手袋は大きすぎて、指先が余っている。
まさとは手袋をした自分の手をじっとみつめ、それから、振り返ってのぼ るを見た。
「?」
のぼるは訳がわからずに、まさととエリカを不思議そうな顔をして見てい る。
「・・・ありがとうっ」
まさとはエリカを見上げて、大きな声でいった。にっこりと微笑んでエリ カはまさとの手を取って歩き始めた。
こじんまりとした教会の前にたどり着いた。
「ここでいいの?」
「うんっ!」
まさとが大きくうなずいた。
聖堂の中から少しだけ、明かりが漏れている。もう、クリスマス・ミサは 終わってしまったのだろう。人影はないようだ。
「あ、おかーさん!」
「まさと!」
聖堂ではなく、住居部分にあたる方の玄関から1人、人影がこちらへとや ってきた。
身長のそんなに高くない、どちらかといえば痩せ型で華奢な女の人だ。
髪を後ろに1つにまとめ、エプロンで手を拭きながら、ぱたぱたと小走り でこちらへやってくる。
「まさと、どこまで行ってたの?心配してたのよ」
まさとと目の高さが同じになるようにしゃがんで、まさとに話し掛けた。
「まーくん、迷子になっちゃって、泣いてたら、そしたら、おにーちゃん
と、おねーちゃんが一緒にクラッカー、買いに行ってくれて、一緒におう ちまで来てくれたんだ」
「あら、そうなの」
立ち上がると、まさとの母はにっこりと優しく微笑んでのぼるとエリカを 見た。
「ごめんなさいね、なんだかうちの子が迷惑をかけたみたいで」
「いえ、そんな、気に、しないでください」
「あの、私たちも買い出しに行く途中だったので」
「どうかしら?中に入ってお茶でも飲んでいかない?おいしいケーキもあ るのよ」
まさとの母はのぼるとエリカの顔を交互に見て言った。
「あ、せっかくですけど・・・」
「友達が、待ってるんです。みんなで集まっているので」
「まあ、そうなの・・・残念ね」
「じゃ、僕たちは、これで失礼します」
「失礼します」
のぼるとエリカはぺこりと頭を下げて今来た道を家の方へと歩き出した。
きっと、のぼるの部屋では「友達」たちが文句を言いながら待っているは ずなのだ。
「ねー」
「んー?」
「のぼるとお姉ちゃん、遅いねー」
「うん」
晶とシュウがぼんやりとソファーによりかかっている。
ぱっと、2人は跳ね起きるようにして顔を寄せ合うと、ひそひそと話し始 めた。
「エリカちゃん、準備してたでしょ?」
「うん、お姉ちゃん、ここんとこ、毎日、そわそわしてた」
「やっぱりねー」
2人がにやり、と笑みを浮かべた。
「うっわー!!またかよー!!」
「まったく、圭太は弱くて話になんないねー」
あいかわらずテレビゲームに夢中になっている武と圭太。
そんな2人を見て、晶とシュウは
「はぁぁぁぁぁぁっ」
と、ため息をついた。
風が、やんだ。
しん、と辺りが静まり返った中、のぼるとエリカが歩いていく。のぼるが 、少し先を行く。
なぜだかわからないけど、2人とも何も喋らない。
「おにーちゃーん!おねーちゃーん!」
突然、後ろから甲高い声がして、2人は同時に振り返った。
まさとが、駆けてくる。顔を真っ赤にして、手にはなにかを持っている。
「まさとくん!」
2人のところまでやって来ると、まず、エリカの方を見た。
「おねーちゃん、これっ」
「あ・・・!」
「これ、おにーちゃんに、プレゼントするつもり、だったんでしょ?って 、おかーさんが」
まさとが差し出したのはグレーのニットの手袋。まさとの言う通り、エリ カがのぼるへのプレゼントとして用意したものだった。
「ちゃんと、あげなくっちゃ、だめだよって」
「まさとくん・・・・・・」
それから、まさとはのぼるの方を見た。
「あのね、おかーさんが、これ、お礼だって」
「お礼?」
まさとはクラッカーを1つ、差し出した。
「ここで、上に向けて、やってみて!」
にこにこと微笑んでまさとがのぼるを見た。
「ここ・・・で?」
「うんっ!」
怪訝な顔をしているのぼるとは対照的に、まさとはにこにこと楽しそうな 顔をしている。
「今・・・?」
「うんっ!」
エリカもまさとに聞いた。大きくうなずいてまさとがエリカを見た。
のぼるはまさとの期待に満ちた目と手に取ったクラッカーを見比べた。
「じゃ・・・」
買い物の入った白いビニール袋を路上に置くと、のぼるは、クラッカーを 上に向け、ひもを、引いた。
静まり返った街にパァーン、という音が響いた。
「うわっ!」
「きゃっ!」
思わず2人は目を細めた。
クラッカーから飛び出したのは紙吹雪や、テープではない。さまざまな色 の、無数のまぶしい光の粒。
きらきらと輝きながら冬の夜空へとゆっくりと昇っていく。
のぼるも、エリカも、顔を上げ、その光景に見入っている。
「綺麗・・・・・・」
「うん・・・・・・」
光の粒は天高く昇っていき、そして、さらに、いっせいに輝きだした。夜 空で瞬いていた星も触発されたかのようにきらきらと強い光を放ちはじめ
る。光の饗宴が夜空で繰り広げられてゆく・・・。
しばらくして、星々は、落ち着きを取り戻し、静かに光りはじめた。
冷たい風が吹き抜けた。歩道に落ちた枯れ葉がかさかさと乾いた音を立て る。
のぼるが我にかえって辺りを見回すと、まさとの姿がない。まさとは一体 どこへ行ったのだろう・・・いや、まさとは何者なんだろう・・・。のぼ
るの頭の中で疑問が頭をもたげる。
「のぼるくん」
その時、エリカが一歩、のぼるの方に踏み出した。
「これ、クリスマスプレゼントなの。まさとくんに貸してあげちゃったけ ど・・・」
手袋をのぼるへと差し出した。
エリカが、寒そうにしていたまさとを無視していたら、それはのぼるの知 っている「紺野エリカ」ではない。
にっこりと笑って・・・だけども、内心、照れたり、喜んだりという気持 ちで混乱し、緊張しながら、のぼるはエリカの差し出したプレゼントを受
け取った。エリカもほんのりと頬を赤く染めて嬉しそうに笑った。
「あ、ありがとう」
さっそく、手袋をして、のぼるはエリカを見た。
「紺野、ぼく・・・」
「うん?」
「これから先、どうなるのかはわからないけど、今、ここに紺野といられ てよかったって思う」
「うん、私も・・・」
微笑んだエリカが少し考え込むような顔になった。
「でも・・・まさとくんって・・・」
のぼるは、何者かわからないまさとに、ただ素直に感謝する気持ちになっ ていた。
今日は、クリスマスイヴなのだ、こんなことが1つや2つおこっても、お かしくない夜なのだ・・・。
「いいんだよ、今日は。そういう日なんだ」
のぼるは、自分自身に言い聞かせるようにしていった。
エリカもそんなのぼるの気持ちを察したかのように、言った。
「今日は、クリスマスイヴだものね。これで、いいのよね」
2人は顔を見合わせ、そして、もう1度、冬の、冷え切った空気の中、美 しく星の煌く夜空を見上げた・・・。
クリスマスイヴの夜が明けた。
のぼるの家から程近い教会の聖堂の扉がぎぃぃっと音を立て、ゆっくりと 開いていく。
聖堂には長年にわたって人が入ったような形跡はない。蜘蛛の巣があちこ ちにはり、燭台には溶け残った古いろうがこびりつき、床にはわた埃がふ
わふわと舞っている。
その聖堂の祭壇の中央にある十字架の前に聖母子像、マリアとキリストの 像があった。
優しげな瞳で幼子キリストを見つめ、抱くマリア。
2人の上にクリスマスの朝のやわらかな朝の光が降り注いでいく。
光の加減だろうか、口元と目元に陰ができ、2人が、にっこりといたずら っぽく微笑んだように見えた。
それは錯覚だったのだろうか・・・それとも・・・・。
End