
==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
参考人質疑第 147 回国会 衆議院 文教委員会 第 6 号 2000 年 03 月 10 日
東北大学大学院工学研究科教授・大学評価機関創設準備委員会専門委員
岡田益男氏の陳述
○岡田参考人 おはようございます。東北大学の岡田でございます。よろしく
お願い申し上げます。
私は今、東北大学の工学部におりまして、社会からの声としまして、地球環
境保全をどうするのかとか、高度情報社会にどうやって対応していくのかとか、
もっと独創的な学生を出してくださいよとか、そういうような声が非常に多う
ございます。社会からいろいろなことを要請されているなということが実感と
して感じられまして、大学などの高等教育機関が、地球というスケールで意識
しまして、独創的で新しい領域を開拓したり国際社会において知的リーダーシッ
プをとるなど、国際貢献の役割を果たしていくことが、今後我が国の豊かな社
会を実現することだというふうに考えております。
そこで大切なことは、私は大学院ですけれども、何をできるだろうか、いい
人材をいかに育てていくかだろうということです。
東北大学だけではないと思うのですが、最近、入学してくる学生が非常にお
となしいのですね。自分の意見が言えないとか他人が思いやれないとか、時間
が束縛されるからクラブ活動に入らないとか、社会で活躍するためには不向き
な学生が逆にますますふえている。これらの改善策としては、東北大学におき
ましても、アドミッションオフィスを設立するとか、面接試験による入学者の
増加を目指しているということがございます。しかし、外国の学生と比べてちょっ
と自己が確立してないのじゃないか、こういう指摘が多うございます。
これはどういうことかなと考えますと、アメリカとイギリスでは、小さい時
期から対話形式で授業が行われたり、また入学試験も大体面接試験で、インタ
ビューが入ってくる。日本の大学も今後は、時間とエネルギーは必要ですけれ
ども、インタビュー形式の入学試験を行って、入学の基準が、学力だけではな
い、人物考査も行って、入学基準の多様化が必要なのだろう、私はそう思って
います。
その次に重要なのは、今度は大学側です。受動的な授業がほとんどですから、
参加型の授業を多くするのが一つの解決策のように思います。
今現在の東北大学工学部での、課題探求能力のある学生を育てる試みを一つ
紹介させていただきたいと思います。
入学一年次に創造工学演習というのがありまして、参加型の科目を設定して
います。例えば学生に、ロケットプレーンをつくりなさいと、どこまで高く上
がるか競争させる。または、私の材料系ですけれども、炉があるのですけれど
も、乾電池一本だけで何度まで上がるか競争させる。乾電池一本だけでです。
先生にとっては、ずっとついてやるわけですから物すごい時間がかかるのです
けれども、学生には大変人気があります。ますます充実させていく必要がある
というふうに考えております。
また、若い人のもう一つの問題なんですけれども、人前で歌うのは得意なん
ですけれども、どうも自分の考え方を人前ではっきり言えない。そこで、何と
か早い時期から発表する機会をつくろうということで、クラスで討論のテーマ
を決めまして、例えば、環境保全と技術開発、それからデジタルとアナログと
いうようなことで、学生に人前で話す機会をつくってやる。その発表の様子を
見ていますと、最初照れているんですけれども、それなりにちゃんとしっかり
意見を述べられるようになるので、これからもますますこういう機会を私たち
はふやしていかなければいけないのじゃないか。
また今度は、工学研究科では、やはり先生に対してもいろいろなことをしな
ければいけませんので、もちろん授業評価も行っておりますし、新しく教員に
なった方、特に昇進した新しい助教授とか教授に対しまして、毎年四月に研修
会を行ったり、いい授業というのはこういう授業ですよというのを二人ぐらい
御紹介したり、またことし三月、初めてファカルティーディベロプメントとい
う研修を予定されていまして、徐々にですが、教員の資質も少しずつ高まって
おります。引き続きその努力も必要かと存じます。
しかし、これらの取り組みに関しまして、一番の問題は、それが本当に健全
に運営されているのか、そういうチェック機能かなと思います。そのためには、
自己点検評価、外部評価が必要です。私の所属する学部、学科では二度も外部
評価が行われています。確かにその点検評価で改善が進んだとか、学内の相互
理解が深まったとか、成果としてはございますけれども、ある学科では、外国
に在住の日本人に、また日本語のわかる外人に評価をお願いしていまして、結
局は評価者を自分たちが人選している。どうしても、点検はあるけれども評価
がないということで、それが非常な批判として残っております。ほかの大学は
一体どうなっているのかということとか、それからあと、評価手法は本当に正
しいのか、その辺の解決していない問題もございます。
もう一つ、国立大学ですので、国民の皆様に私たちの活動状況をもうちょっ
と明らかにしていく義務があるのじゃないか、こんなふうにも考えまして、こ
ういう社会的な評価の現状というのが不十分な状態で、このたびの国立学校設
置法の一部を改正する中に大学評価・学位授与機構の創設が盛り込まれており
まして、ようやくその社会的な要請に少しでもこたえられるような体制になる
かなというふうに期待しております。
それで、実際に大学評価を行う場合に、いかに透明性を高く、公平に評価を
行うのかが大きな問題になりますので、既に評価を行っている外国にその事例
を見ようということで、文部省の科学研究費をいただいて、東北大学の阿部総
長を委員長といたしまして、大学評価に関する研究会が平成十年の後半からで
きて、昨年の六月には中間まとめを公表しました。研究会はこの三月まで活動
いたしまして、イギリス、フランス、アメリカなどの評価の現状の調査を含ん
だ最終報告を出されることになっております。
私は、たまたまその研究会の幹事を仰せつかりまして、実際にイギリスの教
育評価の研修を受けてまいりました。このことは、また後で御紹介をさせてい
ただきたいと思います。
まず、アメリカの大学評価制度なんですが、私立大学が多いということから、
公立中心のヨーロッパと異なりまして、大学としての最適基準保障のシステム
として大学評価が位置づけられている。同格の大学が連合して協会をつくりま
して、アクレディテーションと呼ぶ適格認定を行っているようでございます。
この協会は非営利団体でございますが、民間の組織でございまして、幾つもの
協会が存在します。したがって、その幾つもの種類の最低基準も存在する。社
会はその基準の意味を個々に判断することになっている。しかし最近、州政府
により、やはり州立大学のアカウンタビリティーのために積極的にこの教育評
価を導入する、そういう動きがございます。
次に、フランスの大学の評価なんですが、一九八五年に設置された大学評価
委員会のCNE、これが大学の機関評価を行っております。現在、第一回目の
評価を終了いたしまして、最近では、その機関評価のほかに、分野別評価とか
テーマ別評価とか、こういうことを、できるところから順々に始めているよう
でございますが、全分野を一気にやるというような計画はないようでございま
す。
私は、イギリスの方に行く機会がありましたので、もう少し詳しく、外国の
事例としてイギリスの大学評価について次に御説明させていただきます。
イギリスでは、教育と研究の評価が別々になっております。教育評価は一九
九三年四月から開始されて、研究評価の方はもうちょっと早く、一九八六年か
ら始まりました。既に四回実施されておりまして、次回は二〇〇一年が予定さ
れております。この教育評価は、現在、高等教育水準保証機構、いわゆるQA
Aが行っておりまして、また、研究評価の方は、イングランド高等教育財政カ
ウンシル、HEFCが行っております。
まず、研究評価ですけれども、六十九の専門分野について評価パネルを設け
まして、各評価パネルの委員は、当該専門領域の専門家、いわゆるピア・レビュー
で、委員の数は委員長を含めて平均九人ぐらいで構成されまして、委員会方式
で行われています。評価の透明性を確保することから、その専門分野ごとに評
価基準と評価方法を事前に公表しております。研究評価は、人文系では、一部
かなり難しい分野もございますけれども、特に理系の学問分野では、国内とか
国際的基準が比較的設定しやすいものですから、評価は順調に行われているよ
うでございます。
次に、教育評価は恐らくそういうわけにはいきません。それは、実は教育と
いうのは学生と教師、教員という閉じられた世界ですから、どうやって透明性
を高く、公平に評価を行うのだ、これが問題になります。そのために、先ほど
述べましたQAAが主催で、教育評価のための研修会を開いております。
幸いに、私はこの研修会に出させていただきましたので、少しこの内容を紹
介させていただきます。
教育評価は、まず大学からの自己報告書の解析から始まります。その大学の
訪問調査を、委員長を含め三、四名から成る評価チームで、実際に行って行い
ます。評価結果は、評価項目は六項目ございまして、簡潔な論評をつけて公表
しております。訪問調査は約三日半行われまして、最終日に対象学部、学科に
口頭で伝えられまして、訪問後、評価報告書として公開されます。
この研修ですけれども、判断基準、評価のための証拠の集め方、訪問のとき
のインタビューの仕方、それから報告書の書き方など、非常に詳しく多岐に行
われました。私が受けた研修は、昨年の九月末日に、バーミンガムの郊外に缶
詰で、朝早くから遅くまで、三日間開催されたわけです。
要点だけ、ここで英国評価のスピリッツをまとめてみますと、まず、公平性
を保つためにどうしたらいいか。学科の目的に従い評価を行う、決して自分の
価値基準で評価をしてはいけない、これを守らないと学科の個性が失われてし
まう危険性がある。
それから二番目として、評価、判断をするためには、推測でやってはいけな
い。必ず証拠の裏づけがあって、エビデンスを収集してくる。この後に異議申
し立てをされても、きちっとそれで対応できる。
第三番目に、評価は学科、教員、学生のために行われて、特に学生は弱い立
場ですから、学生が苦しんでいることがあるなら、たとえ評価者がその後大変
な非難やエネルギーを必要とされても、あえて学生のために厳しい評価を下し
なさい。
こういうことを教えられてきました。
教育評価は、評価をされる学科の方も評価者の方も、お互いに相当の労力が
必要でございます。しかし、英国では、評価により内部の教育が大幅に改善さ
れたり、また意識が非常に高められたということで、非常に評判がよかったよ
うに思います。
そのような諸外国での現状で、我が国におきましても、昨年五月、大学評価
機関の創設準備委員会が発足いたしました。大学評価機関に関する研究会の幹
事を私が仰せつかったものですから、創設準備委員会の下の専門委員会として、
日本における大学評価の設立の意義、それから評価機関の組織及び評価のあり
方についての基本的な検討を行ってまいりました。ここでは、専門委員会で答
申に至る議論の中身の方の話を少し紹介させていただきます。
まず問題になりましたのが、評価の具体的な内容や方法です。全学テーマ別
評価での具体的なテーマをどうするかとか、大学に求める資料やデータをどの
ように考えるのか、分野別評価や研究評価も同様に、具体的な評価内容をどう
いうふうにしていくのか、また大学からの提出書類をどうするのかとか、特に
個人業績を含む研究業績はどうするのだとか、こういう数多くの問題点に答え
なければなりません。
まず、全学テーマ別の選び方ですが、やはり一番大事なことは、わかりやす
い形で国民に示せるもの、そういうものにしようとか、少ない作業でインパク
トの大きいテーマにしようとか、各大学の個性化への努力を損ねない評価だと
か、熱心な議論がされました。評価される立場から考えますと、評価体制が十
分整っていないなどの大学もあると予想されますので、一年目は大学として評
価される体制を整えられるテーマも考えなくてはいけないということで、評価
が進むにつれて年々大学内部において教育研究の質の向上ができることが目的
ですので、評価項目も大学の現状に合わせて研究していくことが重要だという
ふうに認識しています。
次に大きな問題は、教育評価においていかに大学の個性を失わないような評
価が実施されるか、こういうことが焦点になりました。それには、先ほど申し
上げました、教育目的や目標の内容を評価しない、目的があいまいとか抽象的
なのはこれはいけませんので、どういうふうにしたらいいかという議論を何回
もしまして、教育目的、目標が明確であるか、具体的であるかを評価して、内
容自身は評価しない、そういう意見が多かったように思います。
研究評価で次に問題になりましたのが、研究業績は何をもって評価すればい
いのだと。対象学部や学科の教員全員の業績を求めるのか、それから、業績の
提出数に制限を設けるのか、業績以外に論文点数、学会活動など他のデータの
提出を求めるのか。この問題については、また新しく設置される大学評価委員
会で議論されると思います。
そのときに出た大事な議論なんですが、業績として、数量ではなくて質を評
価しようとする意見が多かったことを紹介させていただきます。これはかつて、
イギリスの研究評価を開始した当初、論文数で評価を行った。向こうの方から
聞いたのですけれども、一つの論文を五つにしたり、研究のクオリティーが一
挙に低下した歴史があると。そういうような、これから非常に考えなければい
けない問題がたくさん残されていると思います。
このように、新しく設置される大学評価・学位授与機構の具体像も明らかに
されてまいりまして、長年諸外国では実施されてきた、第三者による大学など
の諸活動に対する評価が行われることになり、大学人としては、また大きな労
力を割くことになります。しかし、英国で一緒に研修を受けた英国人が言って
おりました。大変ですけれども、評価を実施したことにより確実に英国の大学
内部がいい方に変革していると。この力強い言葉に私はかなり勇気を得まして、
これから我が国におきましても大学評価を実施することによりまして、これか
らの二十一世紀に、ますます社会からの大学への要請が多様化する中で、多く
の大学は立派に使命を果たしていけるような気がいたします。
このたびの法改正がそのような契機になることを期待しまして、私の発言を
終わりたいと存じます。ありがとうございました。(拍手)