==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
独立行政法人会計基準の概要

Date: Thu, 23 Mar 2000 14:13:14 +0900
Subject: [reform:02676] 独立行政法人会計基準の概要
To: reform@ed.niigata-u.ac.jp

 富山大学は、3月9日、宮脇淳北大法学部教授(「独立行政法人会計
基準研究会」メンバー)をお招きして、「独立行政法人化問題と大学経営
について」の講演会を開催しました。
 鈴木孝志人文学部教授(評議員)が、3月22日の人文学部教授会で、
以下の「参考資料」に基づいて、宮脇氏の講演の要旨を報告されました。
極めて衝撃的な内容です。

「独立行政法人会計基準の概要

 宮脇淳北大法学部教授の講演と当日配布された資料による私的理解」

                        22/3/2000   文責  鈴木 孝志

1 企業会計制度とは全く異なる会計原則

独立行政法人の会計基準の作成に於いては、国立大学への応用に関する問題点は一切 論議の対象となっておらず、本来独法化が意図されている組織への基準として作られ ている。その際、通則法では「原則として企業会計原則による」とされているが、現 実には利益の獲得を目指す組織ではないことから、「営利企業の会計原則とは基本的 に異なる」と定義し直して、企業会計制度とは全く異なる会計原則、「損益計算上の 利益(剰余金)の獲得を目的」としないとしている。平たく言うと、節約して次年度 或いは次期計画へ資金を貯めておこうという発想は、本来存在しない会計原則です。

2 大蔵省から財政上の指導

中期目標とそれに基づく中期計画は、予算の執行という観点から評価され、認可され るので、計画の立案段階に於いて、その計画に基づいて予算が適正に執行できるかど うかの審査が大蔵省(財務省)によってなされるのは、必然となる。つまり個別大学 の中期計画に、文部省を飛び越えて大蔵省から財政上の指導がされることになる。

3 基本的に財政の評価基準が全く別のものになる

*独立行政法人に下される運営交付金には人件費も含まれる点に注意して下さい。 現行: 予算-人件費=残高             (現在は一般にはこの残高の部分を予算と呼んでいる。) 独立行政法人に特異の複式簿記方式     予算-人件費・維持管理費・研究費等=残高(金の流れ)     負債-コスト=残高(帳簿上の計算) 宮脇先生による説明図を修正すると、予算を10億円受け取った場合の簿記 (従来型)            (複式簿記型) 現金     10億円 現金     10億円  負債   10億円 人件費    -5億円 人件費    -5億円  コスト  -9億円 研究費等   -3億円 研究費等   -3億円 維持管理費等 -2億円 維持管理費等 -2億円           残高      0円 残高      0円   残高   1億円                            (剰余金/利益) 分かりやすく言い換えると、今後政府から交付される運営資金は、独立行政法人が国 民へ行政サーヴィスをするための資金として与えられたとみなされる。その交付金に 対応するサーヴィスの義務量が負債と表現される。これに対して、実際に行われた行 政サーヴィスの評価額がコストである。10億円の交付金があり、人件費、維持管理 費、研究費等が実際の金の流れとして執行され、年度内で手持ちの現金が0になるよ うに中期計画は設計される。この実施内容が人件費も含めて評価の対象になる。  さて、実際に行われた行政サーヴィスが9億円の評価しか受けなかったとすると、 独法の帳簿上はまだ1億円の負債が残っていることになる。これが1で言う剰余金、つ まり不当な利益とみなされる。独立行政法人は利益を目的としていないので、この 1億円は返済を求められる。現実に手元には現金がないため、短期借り入れを行う。 次年度(或いは次期計画時)にこの借入金は返済しなければならないから、実質的に 剰余金の額だけ運営交付金は減額されることになる。

4 運営剰余金

運営剰余金には上述の不当な利益とは別に、経営努力によって独立行政法人が生み出 す利益もあり得る。その場合には中期計画が誤っていたのではなく、格別の経営努力 によって生み出した経営の成果であることを、独立行政法人側が証明しなければなら ない。そうでなければ水増しの計画であったと評価される。その意味で、5年計画を 4年で前倒しするというようなことは、予算の先取りにもつながり、認められない。

5 会計監査

独立行政法人は、国の定める基準に基づき財務諸表を作成し、その監査を公認会計士 によって受けなければならない。特に重要なものは  1 損益計算書  2 キャッシュ・フロー計算書  3 行政サービス実施コスト計算書 の3つであるらしい。特にキャッシュ・フロー計算書について若干の説明があった。 その中で、手数料収入や寄付金収入等は当該年度の収入の部に組み込まれ、例えば基 金などとして独立行政法人の内部に留保することは認められないことが指摘された。  行政サービス実施コスト計算書については、その中に「機会費用」という項目があ り、その説明がされた。機会費用とは、各独立行政法人が無償使用している国有財産 が、民間に貸し付けられたとするとどれ程の費用となるかを算出したり、運営交付金 が例えば国債の購入に充てられた場合の利潤を算出するというものである。これは、 どれだけの価値のある施設と資金が与えられているか、そしてそれが適正に有効利用 されているかを評価するための基準となるのであろう。更に将来的な可能性として、 法人の施設に固定資産税が掛けられた場合の税額を算出させ、それが免除されている ということは、同額が既に交付されていると解釈されると、これは推測と予想を交え て説明があった。 細部に関しては、まだまだ色々ありますが、先日の講演を聴いて私は独立行政法人の 会計基準の基本的な構造はこのようなものであると理解しました。宮脇先生は、独立 行政法人の会計とは、黒字は出すな、赤字がでたときは自分達で何とかしろという制 度だと言われていました。