==> 国立大学独立行政法人化の諸問題

中央教育審議会総会(第1回2001.2.1)議事録より

○町村文部科学大臣

 皆さんおはようございます。早朝からお忙しい中,こうやって第1回目 の中央教育審議会に御出席をいただきましたこと,心から感謝を申し上げます。

 今も会長と話していたんでありますが,30人のメンバー,それに役所 のメンバーが加わると,もうあちらのほうの席がいささかかすんで見えないほ ど大きな部屋でやらざるを得ないということでございまして,いささか会議の 最適サイズを超えているなと,そんな印象も持ったわけでございます。しかし, お忙しい皆さん方にこうして委員をお引き受けをいただいたこと,本当にあり がたいことだと思っておりまして,心から感謝をいたしております。

 また,鳥居会長,さらに木村副会長,茂木副会長をはじめ,委員の皆様 方には,文部科学省挙げていろいろな面で御指導,御示唆をいただくことにな るわけでございますが,心からよろしくお願いを申し上げる次第でございます。

 先ほど事務局からお話を申し上げましたように,1月6日の日に文部科 学省という形で,新たに省庁再編が行われまして,今までいくつかあった審議 会を統合して,名称は中央教育審議会のままでございますが,相当機能が拡充 をされた審議会になったということもありまして,大変多くの方々に御参加を いただいたのでありますが,逆の面から言えば,それだけ重要なまた会議になっ たんだということでございまして,ひとつ今後ともよろしくお願いを申し上げ る次第でございます。

 昨日から国会が始まりまして,本来いろいろな事件がなければ,教育改 革国会になったはずなんでございますが,そうなるのかならないのか,いささ かわからないような状態で,昨日から国会が始まりましたが,私どもとしては, この国会はまさに教育改革国会であると,そういう思いで一所懸命取り組んで いこうと思っております。昨日の総理の施政方針演説も,4分の1以上は人づ くり,そして教育の重要性,あるいは科学技術の重要性について触れておられ たわけでございまして,その重要性はいささかも変わっていないと思っている わけでございます。

 ただ,昨今の教育の状況,これは学校だけにとどま らず,家庭の教育,あるいは社会全体の教育力といったようなものを見たとき に,私は大変危機的な状況にあるのではないかという感じを強く持っているわ けでございます。

 私の考えにつきましては,先ほどお配りをいたしました,文部科学省ら しからぬ,資料9というカラフルな資料がございまして,だいぶ事務方の諸君 に知恵をひねってもらったわけでございますが,その資料9の冒頭に,私の, なぜ現在の教育がそれだけ危機的な状況にあるのかという考えも,若干触れさ せていただいているわけでございますが,いろいろな事件を見れば,それは一 目瞭然であるということも言えるわけでございます。また,余りにも平等とい いましょうか,行き過ぎた平等というものが,教育界あるいは日本の社会全体 に蔓延している。私はそういう意味で,教育改革を通じて日本の社会を少しで もいい方向に変えていきたい,そんな思いすら持って取り組んでいこうと思っ たりもしております。また,世の中が大変なスピードで変化をしている中にあっ て,現在の教育のシステムが時代にそぐわなくなってしまっているのではない だろうか。それを時代に合ったものに変えていくといったような観点,三つほ どの観点を示させていただいているところでございます。

 そういうことで,昨年の春から教育改革国民会議がスタートし,今日御 参加をいただいた数名の委員の方々にも,教育改革国民会議で大変な御努力を いただきまして,昨年の12月22日に立派な最終報告をいただきました。そ れを受けまして,文部科学省としても去る1月25日に,お手元に配ったよう な「21世紀教育新生プラン」というものを決めまして,これに基づきまして, この国会に予算あるいは6本の法律を提出して,できるだけすべての項目を実 現していく。若干の議論が必要なものにつきましては,今後,この中教審の場 などで御議論をいただいて,それもまた実現をしていこうということでござい まして,今,「教育新生プラン」の実現が私どもの最大の課題であろうかと思っ ているわけでございます。

 しかし,まだまだ課題がたくさん残っております。その多くの課題につきまして,この場で御議論をいただきたいと思いますが,例えば教育基本法の見直しといったようなテーマも,一定の方向づけは国民会議でしていただきましたが,さらに今,文部省内で議論をもう少し詰めております。その辺がある程度まとまった段階で,皆様方にお諮りをさせていただきたいと,かように思っておりますが,そうした教育基本法の問題をはじめとして,いくつかの問題点があろうかと思います。あまり冒頭から私が,これとこれとこれとお願いしては失礼に当たるので,今回,次回あたりで,少しく皆さん方の問題意識,お考えもお示しをいただいた後に,改めて私どものほうから皆様方に御審議をお願いする事項を整理してお諮りをしたいと思っております。いずれにいたしましても,まだまだ御審議をいただきたい事項がたくさんございますので,ひとつ御協力をよろしくお願いをしたいと思っております。

 いずれにしても,教育というのはいろいろな考え方がありますし,「A」と言えば「B」,「B」と言えば「C」という意見が必ず出てくる,そういう性格だろうと思っております。したがいまして,絶対正しいとか,絶対間違っているということはないのかもしれませんが,私は多少の異論があっても,大きな方向について,皆さん方の方向,判断を正しくしていただければ,それに沿って,多少の反対なりいろんな問題が生じたとしても,大きな方向でやっぱり思い切って変えていく,スピーディーに変えていくというのが,私の文部科学大臣としての考え方でございますが,できるだけスピーディーに,思い切って大胆にという方向で考えていきたいと思います。どうしても今までの教育に関することというのは,確かに関係する方が,ある意味では日本全国民でございますから,「まあ,もうちょっと緩やかに,ゆっくり」ということで今までやってきました。しかし,そんなゆっくり,のんびりやっている時代ではないと,こう思っておりますから,そういう意味でも,できるだけ大胆に,スピーディーに,皆様方の英知を結集していただいて,方向づけをしていただければありがたいと,かように考えているところでございます。

 大変お忙しい皆様方にこうやって御参加をいただきました。今後とも御指導をいただきますように,心からお願いを申し上げまして,大臣としてのごあいさつにさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。


○ 町村文部科学大臣

 私が物を言うと,何かそれが結論のようにとられると困るのて,私もこの会議の一参加者として発言をするということでお許しをいただきたいし,また,私が言ったことが,別に文部科学省の事務方の諸君を含めてきちんとしたコンセンサスができていないことも含めて,申し上げさせていただきたいんですが,多岐にわたる御議論をいただきまして,貴重な御意見だったと思っております。

 先ほど,委員がどういう大人を目指すか,どういう人間をつくりたいの かと。これは日本の教育で,端的に言うと戦後はないんです。私はないと思っ ているんです。かつてそういう試みを,例えば「期待される人間像」とか,あ るいは昭和20年代後半に天野文部大臣がやったけれども,マスコミから徹底 的にたたかれて,そういう上から押しつけはだめだということで,僕も文部大 臣をやったり,あるいは文教関係をずっとやってきて感じていることは,そこ なんです。こういう人をつくりたいとか,こういう大人になってもらいたいと いうのは,正直言ってありませんよ,教育のこの世界には。極めて抽象度の高 い表現で言うことはあっても,ほとんどない。それを実は中教審で御議論をい ただくのも一つかなと思います。

 しかし,中教審でやると,これは官制だとか,文部科学省の押しつけだ と言われる。たぶんここのところは,あまり役所が絡んだりしないで,まさに 民間の方々が,例えば司馬遼太郎さんのような方々が中心になって,民間の方々 で,こういう日本社会をつくりたい,こういう日本人が育ってもらいたいとい うようなことを,たぶん宣言をしていただいて,みんなが「そうだなあ」と思 えるようになってくると,また新しい教育のシステムなり中身ができてくるん じゃないだろうか。それをもちろん中教審で議論していただくことはとても大 切だと思うし,それを世に問うてもらってもいいんですが,こうだよと決めつ けるのが非常に難しいし,コンセンサスをつくるのが難しいし,僕は文部大臣 をやって2回目ですが,正直言っていつももどかしいのは,ある種の期待され る人間像というものなしに,いろんな制度やなんかを変えていかなきゃならな いところのつらさといいましょうか,それは一番感じているところなんです。 もしそれが幸いにしてこの中教審の中で生まれるならば,こんなにすばらしい ことはないと思っております

 したがって,理念がないじゃないかという御指摘がある意味では出てく るのは当然なんでありますけれども,しかし考えてみると,確かに対症療法的 な部分がもちろん含まれておりますけれども,それでもいくつかの共通した考 え方があるような気がいたしますし,国民会議の皆さん方も相当そこは御議論 をいただいたわけですが,例えば一つは,さっきから御議論が出ております公 と個の関係ですね。もちろんしっかりとした個を形成する努力をすると同時に, その個が公に対してどうかかわりを持つのか。ところが,公ということを,特 に戦後の日本の社会は無視しすぎてきた結果が,やや短兵急に言えば,この間 の成人式の騒動ではなかろうかと思ったりもいたしまして,そういう意識で, もう少し公というものをきっちり日本の社会でも考えていく,そのきっかけを 教育界からつくっていきたいというのが一つ。

 2番目に言うならば,戦後,言うならば平等というものを大切にしてき た。それはそれでいいことだけれども,それが行き過ぎて,機会の平等から結 果の平等にまでどんどんいってしまって,悪平等が蔓延をして,能力に応じと いうことを全く無視して,すべての人が結果も平等なんだということが,教育 界,日本の社会に蔓延し過ぎていることを,どこかで風穴をあけて正していき たいという思いで,今回,17歳というものを広げ,さらに私はしょうがない, 法律をつくるので,17歳で妥協をしましたけれども,私は10歳の大学生が いてもいいと思っているし,20歳の中学生がいてもいいと思っているんです。 そのくらい年齢とかかわりなしに,その子どもに合った一番望ましい教育とい うのは何なんだろうかということを考えたときに,年齢で学年が変わっていく ということは,余りにも行き過ぎた平等ではないのかなと思ったりしておりま す。そういうことのワンステップとして,私はこの17歳問題を自分の頭の中 では整理をしているつもりでございまして,そういう性格で今回の教育改革の 理念といいましょうか,考え方ができていると,こんなふうに考えております。 やはり教育の部分から少しでもいいから社会を変えていきたいという思いを持っ て,この教育改革のプランを一応まとめさせていただいたと私は考えておりま す。

 それから,奉仕とか,ITの問題とか,いろいろな御指摘がありまして, どういう事項をこれから御審議いただくか,着地点を2年間で見極めてという お話がありました。今からこの事項について,いつまでに着地点をと私が言っ てしまうと,それがそのまま諮問になってしまいますので,今,いつまでにと いうことは申し上げませんが,ただのんべんだらりと議論をしているつもりも ありませんので,私はいつも,前回もそうでしたけれども,諮問をしたらば, 申しわけないが1年以内に答えは出していただくということで,諮問から答申 までは1年ということを,まず通常のタイミングとしては考えるというふうに 思っております。

 どういうテーマかと言われば,既に今,随分出てきたと思います。奉仕 というか,体験というか,特に教育以外の面でそれをどうやっていくのかとい う,これは今回のプランの中にも,そこはまだ仕掛品ですよという意味で,中 教審に御審議をいただきたい。あるいは,このプランの中にもさらに残された といいましょうか,御審議いただきたいテーマとしては,例えば教員免許の更 新という,これはやや部分の問題かもしれませんが,そうしたテーマもまた残っ ております。それから,新しいコミュニティスクールとか,チャータースクー ルとか,この辺の在り方をどうするかということも,御審議いただきたいテー マだと思っております。

 それから,何人かの方が言われた国際競争ということを考えたときに, 特に高等教育の教育あるいは研究の在り方も,どうしたら競争力が強化できる かということもあると思います。あるいは,先ほど委員からお話があったスポー ツ,芸術,特にスポーツの関係について,まだまだ課題があるんだろうなと思っ ております。特に青少年の体力の低下が著しいといったようなことを,これか らどうしたらいいんだろうかということについても御審議をいただきたい。

 もし理念的なことも御審議いただけるなら,さっき言った年齢とともに 学年が進行していくということの問題,さらに言えば,一体平等というのは何 だろうか。別にここは哲学部会ではございませんから,平等の定義をここでし ていただきたいとも思いませんが,教育の現場でそれがどう生かされていった らいいか,悪平等打破というのをやったらいいか,もっともっと私はやるべき ことがあるのではないかと思ったりもしておりまして,その辺についても御議 論をいただく。しかし,今言ったことを,このメンバーで2年以内に全部答え を求めるのも,それもまたむちゃくちゃな話なので,もう1回ぐらいフリーディ スカッションをしていただいた後,ある程度の幅をもって皆さん方にまた御審 議をお願いしたいと思っているところでございます。よろしくどうぞお願いい たします。