==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
Date: Sat, 24 Feb 2001 10:05:45 +0900
To: giin
From: Toru Tsujishita 
Subject: 国立大独法化問題での情報とお願い


                     2001年2月24日

国会議員のみなさま

            「国大協への要望書」世話人
               北海道大学  辻下 徹
               佐賀大学   豊島 耕一
               岡山大学   野田隆三郎

拝啓

私どもは,国立大学の独立行政法人化(独法化)問題を憂慮し,この不当性を指摘し
続けている国立大学教員有志です.議員の皆様に最近の事態についてご理解いただき
,この問題がフェアーで幅広い国民的議論に付されますように皆様のご協力をいただ
きたく,メールを差し上げます.

今,緊迫した政局の陰に隠れて、この問題をめぐって学長らと文部科学省との間での
「談合」が進行しています.国立大学協会*は表向き独法化反対と言いながら,実は
国立大学の構成員の多くの意にも反して独法化案を文部科学省と一体となって作って
いるのです。本来このような重要な問題は,国会の場,すなわち議員の皆さんの前で
双方の考えの違いが明確にされ,それを通じて全国民によって吟味されるべきである
のに,いわば事前談合によって本質的な問題が闇に隠されようとしているのです。す
なわち「長尾試案」と称する「国立大学法人」案が独立行政法人の別名として,両者
の間で合意が図られようとしています.

そもそも国立大学の独法化とは,「独立」の接頭語とは正反対に,これまで曲がりな
りにも政府から独立していた国立大学を文部科学省の地方出張所に変えるものです.
これは,学問の自由と教育への「不当な支配」の禁止を定めた憲法と教育基本法に反
する違法なものです.

現在の大学に様々の問題があることは当事者として十分承知していますが,独法化は
それらへの解決になるどころか,逆に大学の最も本質的な役割である批判的な機能を
麻痺させるものです.国家はその重要な安全装置,警報装置の一つを失うでしょう.

私ども「国大協への要望書」のグループは,国大協が独法化を前提とした文部科学省
の「調査検討会議」に加わったことが根本的な誤りだとして,これからの離脱し、国
民に向けて直接意思表明することを求める署名を続けてきました.そしてこれまでに
69大学818名の教職員の方々がこれに賛同しています.さらに,多くの著名人を
含む国立大学以外の方々からもこの運動への支持が寄せられています.

このほど世話人3名(辻下,豊島,野田)の連名で,同要望書の最新の賛同者名簿,
国立大学以外からの支持者名簿**と,「長尾試案***」への批判文書とを国立大学の
全学長に送りました.「長尾試案にとらわれることなく,大学の本質に立ち戻って議
論されるように」との手紙を添えています.

どうか,この問題が、「当事者間で合意がある」とされて、国会の場での本質的議論
を俟たずに事実上「決着」する、というような筋書きが進行することのないよう,議
員の皆様におかれましては事態を注視していただきたく存じます.また,署名と支持
の依頼は続けていますので,独法化(ないし名前を変えた独法化)への懸念を共有さ
れる方々のご賛同,ご支持をお願い申し上げます.

以下,
  (1) 国立大学協会への要望書
 (2) 国立大学以外からの支持者名簿
 (3) 「長尾試案」への批判文書
 (4) 学長への手紙
と続きます.いずれも世話人のウェブサイトにも掲載しています。
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/kdk-shomei/

* 国立大学協会:99の全国立大学長が参加する任意団体。文部科学省は国立大学の
代表機関とみなしており「業界団体」に近い役割を果たしている。
** 賛同者69大学715名および国立大学以外からの支持者の名簿は次をご覧下さい.
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/kdk-shomei/meibo.html
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/kdk-shomei/meibo.html
*** 長尾試案:国立大学協会 設置形態特別委員会 委員長 長尾真,
「国立大学法人の枠組についての試案」,2001年2月7日

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(1) 国立大学協会への要望書
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 国立大学協会長 蓮實 重彦殿      2001年2月  日
 
           
国立大学協会会則第28条に基づき、国立大学教職員   名共同で、
以下の要望書を提出いたしますので、関係委員会においてご検討くださ
いますようお願いいたします。

               
              要 望 書

 国立大学協会は、さる6月14日開催された総会において、文部省が設置
を予定している「国立大学の独立行政法人化に関する調査検討会議」に参加
することを決定しました。
 各大学内に、独立行政法人化に対する根強い反対意見があるなか、十分な
審議を尽くさないまま、文部省、自民党の圧力に屈する形で、独法化を前提
とした「調査検討会議」への参加に踏み切ったことは、きわめて遺憾なこと
と言わねばなりません。
 私たちが何よりも危惧することは、「調査検討会議」に正式に参加すれば、
そこにおいて決定されることを拒否することは事実上不可能であり、結局は
独立行政法人通則法を骨格とする法人化の受け入れに繋がらざるを得ないで
であろうということです。
 蓮實国大協会長は14日開かれた総会後の記者会見において、「調査検討
会議」への参加が独法化受け入れを意味するものでないことを強調し、さら
に「最終的に全く理想的な形態がそこに成立しなければ、その後新たな問題
が起こるだろう」とまで述べておられますが、これらは、何の担保・保障も
ない以上、中味のない空証文に終わる恐れが強いのではないでしょうか。
 そもそも、文部省が独法化に向けて一方的に設置する「調査検討会議」へ
の参加の是非さえ余裕をもって判断できないようで、どうして今後、国大協
の主体性を期待できるのでしょうか。
 国大協が、6月14日の会長発表第一項にあるように、「国立大学の設置
形態に関して、これまで表明してきた態度を変更する必要があるとは認識し
ていない」というのであれば、「調査検討会議」への正式参加を取りやめる
以外にありません。
 いま国大協にとって大切なことは,文部省の中の一組織に性急に加わるこ
とではなく,広く国民にこの問題の本質を理解してもらうための組織的努力
を開始することではないでしょうか。
 その一つは「独立行政法人」に代わる案を国民の前に提示することである
と考えます。ぜひ会長発表第二項にある「設置形態検討特別委員会」におい
て、全大学関係者の英知を集めて、真に大学の独立を確保する国大協独自の
案づくりを進めてください。そして本格的な選択肢を広く国民に提示し,そ
の判断を仰ぐべきです。私たちもそのための協力を惜しみません。
 以上、要望いたします。

    集約先  岡山大学環境理工学部 野田 隆三郎
         岡山市津島中3丁目 TEL・FAX 086-251-8820
                 e-mail noda@math.ems.okayama-u.ac.jp

(国立大学教職員以外の方の)支持表明
 
   上記の要望書とこの署名運動を支持します。
     肩書き              
     お名前

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(2) 国立大学以外からの支持者名簿
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「国立大学協会長への要望書」
国立大学OB, アカデミズム界, 一般からの支持
          2001年2月23日現在 61名

   浅井 基文  明治学院大学教授
   足立 昌勝  関東学院大学教授(元静岡大学教員)
   伊ヶ崎暁生  富山国際大学教授・教育学者
   伊藤 堅二  立命館大学名誉教授
   梅田 欽治  宇都宮大学名誉教授
   大崎平八郎  横浜国立大学名誉教授
   大平 聡   宮城学院女子大学教授
   大森 昌衛  元麻生大学教授
   岡本 三夫  広島修道大学教授
   岡本 洋三  鹿児島大学名誉教授
   菊池 勇夫  宮城学院女子大学教授
   北西 允   広島大学名誉教授
   北野 弘久  日本大学教授
   鬼頭 純三  名古屋大学名誉教授 
   木下 信男  明治大学名誉教授
   銀林 浩   明治大学名誉教授
   工藤 英三  元静岡大学教授
   國弘 正雄  英国エジンバラ大学特任客員教授・元参議院議員
   小出昭一郎  東京大学名誉教授・山梨大学元学長
   坂下 志郎  北海道大学名誉教授
   佐藤 裕二  元秋田大学教授
   佐分利 豊  千葉短期大学教授
   塩田庄兵衛  東京都立大学名誉教授・立命館大学名誉教授
   白鳥 紀一  元九州大学教授  
   白岩 謙一  名古屋大学名誉教授
   隅野 隆徳  専修大学教授
   寺尾 光身  名古屋工業大学名誉教授
   暉峻 淑子  埼玉大学名誉教授
   永田 忍   宮崎大学名誉教授
   中小路 清雄 元日教組書記長
   中野 藤生  名古屋大学名誉教授
   長野 暹   佐賀大学名誉教授
   西岡 啓二  慶応大学教員
   服部 幸三  東京芸術大学名誉教授
   服部 学   立教大学名誉教授
   針生 一郎  和光大学名誉教授
   浜林 正夫  一橋大学名誉教授
   槙枝 元文  元日教組委員長、元総評議長
   松岡 延子  元大阪大学教員
   真鍋 毅   佐賀大学名誉教授
   宮田 光雄  東北大学名誉教授
   森 茂康   九州大学名誉教授
   柳原 二郎  千葉大学名誉教授
   矢倉 久泰  教育ジャーナリスト
   山田 浩   名古屋工業大学名誉教授
   弓削 達   東京大学名誉教授
   由比濱省吾  岡山大学名誉教授
   吉川 経夫  法政大学名誉教授
   吉田 克明  日本大学教授
   渡辺 毅   大阪大学名誉教授
   渡瀬 嘉朗  東京外国語大学名誉教授
   河合 知子  市立名寄短期大学
   鈴木 文明  市立名寄短期大学
   大坂 祐二  市立名寄短期大学
   毛馬内 常夫 市立名寄短期大学
   小平 洋子  市立名寄短期大学
   寺山 和幸  市立名寄短期大学
   三国 和子  市立名寄短期大学
   高田 哲   市立名寄短期大学
   清野 茂   市立名寄短期大学
   松岡 義和  市立名寄短期大学

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(3) 「長尾試案」への批判文書
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「国立大学法人の枠組についての試案*」への応急的な批判

                    2001年2月20日
            「国大協への署名」世話人
               北海道大学  辻下 徹
               佐賀大学   豊島 耕一
               岡山大学   野田隆三郎

1. 国大協の「独法化反対」に反する,事実上の独法化容認案である.

(イ)「独立行政法人の基本的枠組を参考にして」国立大学法人法を作るとあり,こ
れへの批判,「対案」を作ろうという意欲、姿勢が見られない.
(ロ)しかも「中期的な活動の目標」と「その目標達成のための具体的な計画」とし
て「基本法**」と「通則法」の中期目標と中期計画の概念・制度を容認している.「
大学が決定する」とはしているものの,「主務省と協議」を認め「行政指導」の受け
入れを表明しているのである.
(ハ)「大学の評価は、計画期間の終了時に設定した目標に対する計画の達成度を中
心に行う」として,いわゆる中期目標と中期計画を前提にした評価を容認しており,
これも「基本法」と「通則法」の通りである.しかも多元的評価と言いながら,「第
三者機関」であるどころか,正真正銘の政府機関である「大学評価・学位授与機構」
による評価を認めている.つまり国家による評価制度を許容している.

2. 名前が「独立行政法人」でなければよい,あるいは通則法と違う法律であればよ
い,というものではない.「基本法」と「通則法」の基本的枠組み,つまり内容無限
定の国家による指揮・監督・評価が含まれる限り名前を変えた「独立行政法人」であ
る.

3. 法人化を論じる文脈において,現行国立大学制度のどこがどう悪いのかについて
の国大協による分析を見たことがない.現状分析を踏まえない方針はおよそ方針の名
に値しないと言わねばならない。  

* 国立大学協会,設置形態特別委員会 委員長 長尾 真氏の2001年2月7日付けの文書
** 中央省庁等改革基本法

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(4) 学長への手紙
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国立大学 学長各位

 貴職におかれましては、大学における教育・研究発展のためにご尽力なさっておら
れますことに敬意を表します。

 さて、国立大学の法人化問題が重大な局面を迎えるなか、設置形態検討特別委員会
委員長 長尾 真氏による「国立大学法人の枠組についての試案」と題する文書が、
過日、貴職にも届けられたことと拝察申し上げます。
 
 「長尾試案」は、同封の別紙において詳しく批判していますように、名称こそ異な
れ、実質は「独立行政法人」容認案であり、国大協の従来からの独法化反対の方針に
も反するものです。 これで、はたして次世代への責任を果たし、歴史の評価にも堪
えうる案と言えるでしょうか。

 私たちは昨年6月、国大協が文部省の「調査検討会議」への参加を表明して以来、
かかる形での決着を危惧し、国大協が「調査検討会議」から離脱すること、そして真
に大学の独立を確保する国大協独自案を作成の上、国民の判断を仰ぐことを求めて署
名運動を続けて参りましたが、このたび賛同者が69大学818名(他に名誉教授等
46名)に達しましたので、賛同者名簿を添えてお届け致します。

 なにとぞ、要望書(別紙)の趣旨をご理解の上、「長尾試案」にとらわれることな
く、大学の本質に立ち戻ってご議論くださいますようお願い申し上げます。
 2001年2月20日
              「国大協への署名」世話人
               北海道大学  辻下 徹
               佐賀大学   豊島 耕一
               岡山大学   野田隆三郎 
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辻下 徹