化石論講座 
−2時間目:フィールド・ワークの準備−
 


 
 休み時間も終わりましたので、コーヒーでも飲みつつ、2時間目のお話に入りましょう。

 さて、2時間目は、化石掘りのフィールドワークについてのお話です。この時間は、最初に化石掘りの心得をお話しして、その後、使う道具などについて説明していきます。

 (化石掘りの様子)

 まず、化石を掘る際の心得について、簡単にお話します。

 化石を掘る際には、まず掘ろうとする場所について調べることが大切です。その場所が掘ってもいい場所であるか、許可が必要であるのか。どのような場所であるのか。崖などの危険な場所がにあるのか。岩場であるのか、砂地や泥地であるのか…。

 そういったことを調べてから、その場所にあった準備をしましょう。例えば、川の近くの泥岩を掘る場合には、濡れても汚れてもいいような服装を準備しなくてはなりませんし、場合によってはゴム長靴を持っていかなければならないかもしれません。崖の近くの岩場である場合には、ヘルメットなどを準備する必要があるかもしれません。掘るのに許可がいる場所である場合には、お役所やその土地の所有者に連絡をとる必要があります。

 こうしたことを調べるのは、結構たいへんなことです。また、そもそもどこに掘りに行けばいいのかも、最初はわかりませんよね。

 一番よいのは、化石を掘ったことがある人に聞くことです。また、自然史関係のことを扱っている博物館や科学館に尋ねてみるにもよいことです。こうしたことに答えるのも、博物館学芸員の先生のお仕事のうちですから、きっと快く教えてくださるでしょう。とはいえ、学芸員の先生方もお忙しいのですから、皆さんは大丈夫だと思いますが、失礼のないような礼儀正しい態度で質問しましょう。また、地方によっては化石の掘れる場所を紹介した本などもあるようです。

 最初に化石掘りに行くときは、博物館や地元の地学サークルなどが実施している観察会に参加してみるのもよいでしょう。また、最近ではインターネットのホーム・ページでもこうした情報を入手出来ますし、地元の地学サークルのページも見つかったりします。

 後で詳しく述べますが、3時間目にフィールド・ワークに出かける予定の東京都狛江市和泉の多摩川河川敷の地層の場合、川崎市の青少年科学館でいろいろと教えてくれます。
(川崎市青少年科学館:小田急線「向ヶ丘遊園」より徒歩15分 電話044-922-4731)
 また、私も行ったことのある埼玉県皆野町の荒川河床の地層の場合、埼玉県立自然史博物館でいろいろと教えてくれますし、ここの場合、公開観察会も行っています。さらに、埼玉県立自然史博物館のホーム・ページには、質問コーナーも設けられており、ここに質問を送ると、学芸員の方から電子メールでお答えがいただけます。 ※1
 
 いずれにしましても、いろいろな情報ソースがありますから、こういったものを上手に活用したいものですね。
 



 
  次に、化石掘りに出かける準備をお話します。
 当たり前のことですが、化石掘りに出かけるにあたっては、十分に安全に気をつけましょう。ヘルメットやゴム長靴などの準備が必要な場合には、必ず準備していきましょう。また、どこへ行くのか,いつ帰る予定かなどを誰かに知らせていきましょう。化石掘りは、宝捜しのようでわくわくするものですが、現場では決して危険な崖などの場所に近づかないようにしましょう。

 また、化石を掘るときは、焦ってがつがつと掘ったり、滅多矢鱈と掘りまわったり、欲張って片っ端から化石を持ち帰るような真似は慎みましょう。夢中になってがつがつと掘るのは危険なことがありますし、滅多矢鱈と石を砕いていては、貴重な化石を掘り出す前にこなごなにしてしまうことにもなりかねません。また、そういった掘り方や、片っ端から化石を持ち帰るようなことは、他の採取者の迷惑になります。化石は無尽蔵にあるわけではありません。むしろ、貴重な資源というべきでしょう。無茶な乱獲は避け、ゆっくり気長に丁寧に発掘を楽しみたいものです。

 また、貴重な化石を発見したときは、独り占めしたりせず、博物館の先生などに渡して科学の研究に役立てるという姿勢が大事です。掘った化石はあなたのものかもしれませんが、学術的な発見につながるような化石は、決してあなた一人のものではなく、それに興味を持つみんなのものなのです。

 以上、化石掘りの心得を長々と話してしまいましたが、つまるところは、ほかの人の迷惑にならないようなマナーを守るということです。そのことは心に留めておきましょう。
 


 次に、化石を掘る道具や準備するものについてお話しますが、だいたいどこの場所に掘りに行くにも持っていくものに、次のようなものがあります。
 
ハンマー ・たがね ・刷毛、絵筆 ・錐などの先のとがったもの ・シャベル 新聞紙 ・軍手 ・フィールドノートと筆記具 ・カメラ ・ルーペ…etc.
 
 このほかに、掘りに行く場所によって必要なもの・持っていったほうがよいものが変わってきますが、そのあたりに事情も、以前に掘りに行ったここがある人に聞いてみるとよいでしょう。
 
(化石掘りの道具)

 さて、テーブルの上に化石掘りの道具を並べてみました。

 化石を掘る道具は、基本的にハンマーとたがねです。ハンマーは、値段がやや高いですが、柄の部分まで金属でできている岩石採掘用のハンマーがあると、使い勝手が良いようです。また、岩石を大きく割ったり、硬い岩石を割るなどする場合のために、1キログラムほどある大きな金槌があると心強いです。たがねは、出来れば2本以上用意しましょう。たがねが岩石に食い込んで抜けなくなることがあるからです。こういうとき、スペアのたがねがあると、それを使ってたがねを取り出すことが出来ます。この二つで岩石(堆積岩)を割って、化石を探します。また、柔らかい泥岩層などは、園芸用のシャベル(移植ごて)で掘ったりもします。さらに、刷毛や絵筆、錐などを持っていると、化石を見つけたときに、こびりついている岩石や土ぼこりなどを取り払うのに重宝します。

 フィールド・ノートと筆記具、そしてカメラは、また後で申し上げますが、化石がどのような状態で発見されたかを記録するために使います。カメラは、出来れば一眼レフのカメラがお勧めです。コンパクト・カメラの場合は、オート・フォーカスで精度の良いものを使いましょう。化石掘りのフィールド・ワークでカメラを使う場合、化石に近づいて撮ることが多いため、ピントがボケやすくなります。こういったことを防ぐには、やはり一眼レフのカメラがよいでしょう。事前に、そのカメラの最短撮影距離、つまりどのくらい近づいて撮ることが出来るかを、取扱説明書などで確かめておきましょう。「写るんです」などのレンズ付きフィルム、いわゆる使い捨てカメラは避けたほうがよいと思います。また、ポラロイド(インスタント・カメラ)は、撮ったその場で写り具合を確認できるのが良いところですが、オートフォーカスでないものが多く、何回も撮り直しをしているとフィルムがすぐになくなってしまうので思いのほかお金がかかってしまったり、肝心なときにフィルムがないといったことがままあるので気をつけましょう。最近ではデジタル・カメラがあり、撮ってすぐに写真を確認できるので便利です。とはいえ、普通一眼レフカメラの写真と遜色がないほどの画質で撮れるようなデジカメはまだまだ高価なので、お勧めは出来ません。デジカメの場合、液晶画面に写真を写す関係で電池の消耗が早く、スペアの電池を携帯するなどの用心が必要といえるでしょう。

 軍手やヘルメット、岩石の破片が目に入らないようにするゴーグル、日射病にならないための帽子など、身に着けて身を守るものは、各自持参するようにしましょう。あと、お弁当や水筒、おやつなども、各自の判断で持っていきましょう。日がな一日化石を黙々と掘りつづけるのは辛いので、休み休み掘りつづけられるような準備は、是非ともしていくべきだと思います。

 ルーペやものさし、ペンライトなど、化石の観察に必要と思われるものも、あってよいでしょう。しかし、化石そのものの観察は化石を持ち帰って標本にしてからすればよいのですから、自宅に用意しておいて、フィールド・ワークに携行する必要はないかもしれません。

 新聞紙は、掘った化石を包んで持ち帰るのに使います。小さな化石を運ぶために、ふたのついた缶や容器を持っていく人もいます。
 

 長々とお話ししてまいりましたが、化石掘りもピクニック気分で楽しむつもりで出かけると良いでしょう。そういう心積もりや準備をすると良いと思います。
 

 さて、これで2時間目にお話しする予定だったことは全てお話ししたつもりですが、質問はありませんか?

 次の時間は、いよいよ実際のフィールド・ワークに出かけて化石を掘ってみることになります。採取場所ですが、狛江市の多摩川・宿河原堰堤近くに地層がでておりますので、そこに出かけることにしましょう。詳しいことは、現地でお話し致します。次の時間は、現地に集合ということにします。

 では、2時間目を終わります。


 
 ※1埼玉県立自然史科学館のホームページ
   http://www.kumagaya.or.jp/~sizensi/


化石論講座のトップへ
トップページへ