◇ 健康と生命と仏法を語る 第一回 「風邪は万病のもと」  2004-2-5

 

 21世紀「健康の世紀は」は「哲学の世紀」

 

 仏法は「生老病死」の解決を目指す

 

 知恵をわかせ生命力を高め毎日を生き生きと!

 

池田名誉会長: 「健康は第一の富である」とは、アメリカ、ルネサンスの思想家エマソンの言葉です。「健康に生きたい」「長生きして、いつまでも若々しくいたい」――これは、時代を超えた万人の願いですね。

 日本は「世界一の長寿国」と言われてますが、いつごろからですか。

 

森田ドクター部長: 1980年代の初めです。以来、平均寿命は20年以上、1位の座にあります。

 

椎場・白樺会大阪委員長: あまり、うれしいという実感がわきませんが……。

 

成見・創価青年医学者会議室長: そうですね。ある調査では、将来の不安の要因として、「寝たきりになる」など健康や介護の問題が高い伸びを示しています。

 

椎場: 死と向かい合った患者とその家族を支える“看取り”の医療も課題になっています。

 

名誉会長: 「世界一の長寿国」だからといって、「世界一の健康国」とは言えないようですね。むしろ、寿命が延びるほど、ますます“健康”が焦点になってきている。

 心身ともに、はつらつと、充実した日々を生きるには、何が必要か。楽しく長生きし、価値ある人生を送るには、どうすればいいのか――21世紀を「健康の世紀」と輝かせゆくために、大いに語り合いましょう!

 なるべく専門的になり過ぎないように(笑い)、具体的に、分かりやすく、お願いします。

 

森田、成見、椎場: よろしくお願いします。

 

 

◆ まず臨終のことを習え

 

名誉会長: 皆さんは、大病の体験はありますか。

 

森田: 私はありませんが、小学4年生の時に、母を肺壊疽で亡くしました。44歳でした。終戦直後で十分な薬もない。お金もない。見舞いに行くたびに、やせ細っていく母。その姿を、ただ見守るしかありませんでした。母を助けてあげられなかった!――その悔しい思いもあって、私は医師になろうと決意しました。

 

名誉会長: そうでしたね。創価学会のドクター部長として今、実に多くの会員の方々の健康を守っておられる――最高の親孝行ではないでしょうか。

 日蓮大聖人は、「どうして、この法華経の力で、わが母が成仏できないことがあろうか。それゆえに法華経を持つ人は、父と母の恩を報じているのである」(御書1528ページ、趣意=以下同じ)と仰せです。

 お母さまも、きっと喜んでいらっしゃると思います。

 成見さんはどうです?

 

成見: 中学1年生の時、右の腕に痛みがあり、レントゲンで異常が見つかりました。自分で家庭用の医学書を読んだことを覚えています。調べていくうちに、“もしかすると骨肉腫ではないか”と不安になりました。「死に至ることもある」。その解説を見た時は、体が凍り付きました。幸い良性だったので完治しましたが、死を意識した初めての経験でした。

 

名誉会長: 貴重な経験ですね。

 死は人生の根本問題です。無関係な人は、一人もいない。しかし多くの人々は、それを忘れている。いや、むしろ、目を背けて生きている。

 大聖人は、こう言われています。

 「“生まれた者は必ず死ぬ”という道理を、王から民まで、だれ一人知らない者はない。しかし実際に、このことを重大事と受け止め、このことを嘆く人間は、千万人に一人もいない」(同474ページ)

 

成見: 今も同じです。ますます少なくなっているかもしれません。

 

名誉会長: 大聖人は、「まず臨終のことを習ってから、他のことを習うべきである」(同1404ページ)と仰せです。

 死の問題を避けては、どんな幸福も、根なし草であり、砂上の楼閣です。死を正しく見すえてこそ、初めて「どう生きるべきか」も明らかになるからです。

 生死の問題をどう解決していくか――これが21世紀の最大の課題でしょう。

 アメリカのポーリング博士(ノーベル化学、平和賞受賞者)、カズンズ博士(ジャーナリスト、平和運動家)、ラウン博士(「核戦争防止国際医師の会」共同創設者、ノーベル平和賞受賞者)、デュボス博士(微生物学者、ピュリツァー賞受賞者)、カナダのシマー博士(モントリオール大学前学長)、オーストリアのウンガー博士(ヨーロッパ科学芸術アカデミー会長)等々―私がお会いしてきた世界の医学者、科学者らとの対談の結論も同じです。

 「健康の世紀」は、裏を返せば、「哲学の世紀」「宗教の世紀」と言えるかもしれない。

 

 

◆ 仏典にも治療・予防・看護法が

 

森田: 仏法と医学の関係が、いよいよ大切なテーマになってくると思います。

 

名誉会長: そうですね。釈尊の出家の出発点は「生老病死」――「生まれる苦しみ」「老いる苦しみ」「病む苦しみ」「死ぬ苦しみ」を、どう乗り越えるかにあった。その解決を目指すという点では、医学も目的は同じだと思います。

 医学は「知識」を賢明に使って、病気と闘う。仏法は人間の「智慧」を開発して、医学の治療も最大限に生かしていく。自身の生命のリズムを整え、生命力を高めていくものです。

 

成見: 仏典には、当時、世界の最先端であったインド医学の真髄が取り入れられていますね。

 

椎場: 病気やその原因、具体的な治療法や予防法、そして看護法まで記されているのには、びっくりしました。

 

名誉会長: 仏法は、健康で、生き生きと人生を生きる智慧を教えたものです。生命の「健康法」であり、真の意味での「長寿の法」なのです。

 

 

◆ 病気が人生を開拓してくれる

 

名誉会長: 話は戻りますが、椎場さんは、病気の体験はありますか?

 

椎場: 幼いころ、軽いやけどを負った以外は、幸い大きな病気一つせず、ここまで来ました。私が28歳の時、父を肝硬変で亡くしました。分かった時は、もう手遅れの状態で、診断から1カ月後のことでした。

 これまで、何百人と、入院された患者さんの家族と接してきましたが、自分がその立場になって、家族の方が、どれほどつらい思いをされているかを痛感しました。私自身、看護の姿勢が変わったように思います。

 

名誉会長: 大聖人は「病気によって悟りを求める心は起こる」(同1480ページ)と言われています。

 病気を患い、病苦と闘っていくことで、人間は人生の意味を求め、生命の尊さを学び、一段と充実した人生を開拓できる。家族に病気の人を持った場合も、同じではないでしょうか。

 私も病弱でした。幼い時には、高熱を出したり、肺炎にかかり、ずいぶん母を心配させた。

 10代になって結核にかかり、毎日、熱が出て、夕方から体がだるくなった。本当に苦しかった。結核は当時、"不治の病"です。医師からは「30歳まで生きられないだろう」と言われ、食事も十分に取れず、あばら骨が浮き出るほどやせ、血痰も吐いた。

 しかし、だからこそ体の弱い人、病気の人の心が分かるようになった。一瞬一瞬を大切に生きよう、生あるうちになすべきことをなそう、この人生を完全燃焼して生きていこうと思った。

 

森田: 医師としての経験からも、長い闘病生活を耐え抜いた人は、人間が変わったように人生を大切にします。人への思いやりも強くなる。物事の見方も、深くなっていくように感じられます。

 

 

◆ くよくよしない

 

名誉会長: 病を背負っていても、偉大な仕事をして、はつらつと生きた人も多くいる。これは厳然たる事実です。

 

成見: 発明王エジソン(1847?1931年)が、そうだと思います。

 彼は12歳で耳が不自由になります。しかし、それを「幸運」ととらえて生きています。〈「聴力の異常を感じはじめた頃は読書に没頭した。今では、雑音が耳に入らないことを幸運だと思っている」(浜田和幸著『快人エジソン』日本経済新聞社)〉

 

名誉会長: 確か、エジソンの健康の秘けつは、「くよくよしないこと」でした。こんなエピソードがありますね。

 エジソンが67歳の時のことです。研究所が火事になり、すべてが灰になってしまった。

 しかし彼は、すぐさま立ち上がる。「自分はまだ六十七歳でしかない。明日から早速、ゼロからやり直す覚悟だ。そうすれば、今よりもっと大きく立派な研究所ができる。意気消沈などしているヒマはない」(同)と。

 

椎場: エジソンは何歳で亡くなったのですか。

 

成見: 84歳です。

 

椎場: 一般に、長生きされる方は、楽天的な方が多いようです。

 

 

 「何年 生きたか」そして「どう生きたか」

 「いよいよ!」の挑戦人生を

 

◆ 心が強くあれば 体も良い方向に

 

名誉会長: 真の楽観主義とは、行動であり、創造です。エジソンは、焼け残ったテーブルの上で仮眠を取ると、すぐさま復興作業に取り組んだ。

 嘆いている暇があったら「どんどん実行する」。まさに行動する楽観主義者でした。行動したからこそ、未来に確信を持てた。信念に裏付けられた楽観主義だったのです。 彼は亡くなる数力月前まで働いている。

 

森田: すごいバイタリティーですね。

 

名誉会長: 意気軒高です。何より、強い。

 戸田先生は「人生は強気でいけ!」と、よく言われました。長い獄中生活もあり、戸田先生も決して体が強いほうではなかった。しかし、毅然として偉大な人生を生き抜かれた。

 たとえ肉体的に病気の状態であっても、心が強く、健康であれば、必ず体にも良い力を及ぼしていくことができるものです。

 

椎場: いくつになっても、「目標をもって生きる」。これも、長寿の方々の特徴です。

 

名誉会長: 常に、「いよいよ、これからだ!」と出発する。この向上人生は、仏法の説く理想の生き方でもあります。

 自分で目的をつくり、自分で希望をわきたたせ、自分で挑戦を貫いていく―これが、はつらつと長寿を生き抜く極意ではないだろうか。

 

椎場: 人生には、病気で寝たきりになったり、不慮の事故で亡くなったりする厳しい現実もあります。

 

名誉会長: そうですね。「生老病死」の悩みは、だれ一人避けられない。、ですから私は、「何よりも健康であってもらいたい」[少しでも長生きしてもらいたい」と、日々、わが同志の健康、長寿を祈っています。

 

森田: 千差万別の人生にあって、確かに「何年生きたか」は重大な関心事ですが、より重要なのは「どう生きたか」――生き方の中身ではないでしょうか。

 

名誉会長: その通りです。大聖人は、「120歳まで長生きし、汚名を残して死ぬよりは、生きて一日でも名をあげる事こそが大切である」(御書1173ページ)とも教えられています。

 限りある一生に、自分はこれだけやりきった。人々のため、社会のために尽くした――この満足感は永遠に不滅です。他人が認めるのではなく、自分が一番よく分かる。いわんや妙法を持った生命は、最高に健康で、最高に尊い宝の生命となっていくのです。

 

 

 「たかが風邪」と油断しない

 

 御聖訓「心に深く用心しなさい」

 

 自分が医師で自分が看護婦 賢く心身をコントロール

 

 

◆ 新型肺炎と鳥インフルエンザ

 

名誉会長: ところで、昔なら名前も聞かなかった病気が話題になっていますね。

 

成見: 例えば新型肺炎「サーズ(SARS=重症急性呼吸器症候群)」です。昨年、世界を揺るがすほど、多くの犠牲者が出ました。

 

名誉会長: 風邪とは、どう違うのですか。

 

森田: サーズは、風邪の原因となるウイルスの一種が突然変異して起こると考えられています。

 

名誉会長: 今、騒がれている鳥インフルエンザも、ウイルスの突然変異が原因ですか。

 

成見: はい。一般にウイルスは増殖する時に、その遺伝子を変化させることがあります。それが突然変異です。

 少しぐらいの変異なら、人間がそれまでに獲得してきた、そのウイルスに対する抵抗力が勝ちます。ですが、大きな変異には、それを退治する武器(免疫)がないので、てこずってしまいます。

 

森田: サーズも鳥インフルエンザも、人類にとっては未知のウイルスです。有効なワクチンがないため、人から人に感染するようになると、大流行の危険があるのです。

 

名誉会長: 鳥インフルエンザは、鶏卵や鶏肉らも感染しますか。

 

椎場: その心配はありません。しかも、75度以上の加熱処理をすれば、ウイルスは死滅します。

 

 

◆ インフルエンザは早めの対応を

 

名誉会長: 風邪とインフルエンザの違いは、どうでしょうか。

 

成見: 鼻水や鼻づまり、咳や喉の痛み、それに38度前後の発熱の3要素がそろっていれば、風邪です。

 

森田: インフルエンザは、急激な高熱や体の節々の痛み、強いけん怠感といった重い症状が特徴です。インフルエンザのウイルスは感染力も強いです。

 

名誉会長: 風邪とは明らかに違いますね。

 

成見: はい。インフルエンザは特に高齢者や乳幼児では重症になりやすいので、早めの対応が必要です。

 

椎場: 風邪の場合は、ひいていても比較的、元気なことが多いです。重い病気ではないですが、やはり休養が大事です。

 

森田: それをいいことに、風邪を仮病に使ってはいけません(笑い)。

 

名誉会長: 大聖人を迫害した極楽寺良観も、そうです。大聖人が佐渡に流罪されている時には「法論に来い」と言いながら、いざ鎌倉に戻られると、臆病にも門戸を閉ざし、あるいは「風邪をひいたから」と仮病を用いて、逃げ回った(御書1283ページ)。

 

成見: 鎌倉時代の他の記録にも、現在の「風邪」を意味すると思われる「風引き」「風気」等の病名が残っています。

 

 

◆ 医師が風邪をひかないのは

 

名誉会長: お医者さんは、多くの患者さんと接していながら、あまり風邪をひかないようですが、何か秘けつがあるのか(笑い)、読者の皆さんに代わって、ぜひ伺いたい。

 

森田: 仕事柄、年中、予防の基本となるうがいや洗顔、手洗いを徹底しているからでしょうか。

 

成見: いつも患者さんと接しているので、ワクチンを摂取するのと同じ効果を得ているのかもしれません。

 

椎場: 痛い注射のないワクチン摂取でしょうか(笑い)。

 

森田: しかし、医師も人間です。無理を重ねれば、風邪もひきます。

 

名誉会長: それが道理ですね。何であれ、無理はいけない。無理と強信とは違う。無理して、病気になったり、交通事故を起こしたりすれば、自分も周囲も苦しむ。

 大事なのは、「疲れをためない」ことです。これは、すべての病気の予防に通じる。そのためには、睡眠を上手に取ることです。ある程度の年齢になれば、なおさらです。

 戸田先生は「夜は12時までに休むことだ。12時すぎてから寝るのとでは、疲れの取れ方が違う」と言われていた。

 その日の疲れは、その日のうちに取る。毎日、リフレッシュしながら、希望に燃えて生きていく――これが理想の健康人生ではないでしょうか。

 多忙な現代人には、なかなか難しいかもしれないが、少しでも早く休むように心掛けていきたいものです。

 

椎場: そうですね。十分な睡眠、規則正しい食事、適度な運動が、ウイルスに侵されにくい体をつくります。

 

森田: 予防のためには、体を冷やさないことも大切です。冷えると、体を温めようとして、交感神経が興奮します。

 

成見: 寒さによって交感神経の働きが高まると、白血球、つまりリンパ球が減少し、抵抗力が低下します。

 

名誉会長: 確かに冷えは禁物ですね。牧口先生の心温まるエピソードを思い出す。ある晩、指導を受けに来た婦人が、幼子を背負って帰ろうとした。牧口先生は「風邪をひかせてはいけない。こうすれば、1枚余計に着たのと同じだよ」と、子どもの背中に、折り畳んだ新聞紙を入れてくださったそうです。

 

椎場: 生活の智慧ですね。

 

名誉会長: 戸田先生も豪雨でビショ濡れになった男女青年部のために、新聞紙をあらゆるところから集めて与えてくださったことがあった。今のように豊かな時代ではありません。未来ある青年たちに風邪をひかせてはならないという心に打たれました。

 リーダーには、こまやかな配慮が必要です。会合の際も、集ってきた人が「疲れていないか」「おなかがすいてないか」と、状況を敏感に察知しなければならない。なるべく、皆が早く休めるようにする。

 第一にも、第二にも、友の健康、無事故が根本です。

 

 その日の疲れは その日に取る

 

◆宇宙では風邪になりにくい

 

椎場: 「風邪をひかないぞ」と意識することも、大事な予防のポイントだと思います。

 

名誉会長: そうですね。ロシアの元宇宙飛行士、セレブロフ博士とお会いし、楽しく語り合いましたが、その時、博士もおっしゃっていた。

 「宇宙にいる時は、絶えず緊張しています。緊張している時は、風邪になりにくい」と。

 博士のお母さまも、従軍医師として前線で野営していながら、戦場にいる緊張感からか、一度も風邪をひかなかったそうです。

 「一番、病気にかかりやすいのは、ベッドの中なんだよ」――これが、お母さまの口癖であった。経験に裏打ちされた、智慧の言葉ですね。

 

成見: 確かに心地よい緊感は、心の側から全身の神経を刺激して、抗力を高めます。ですが、不安や恐怖などの強度のストレスは、抵抗力を低下させますので注意が必要です。

 

森田: 予防には水分の補給も大切です。例えばペットボトルに緑茶や紅茶を入れておき、頻繁に飲むようにすれば、うがいと水分補給の両方が可能です。

 

成見: さらに、室内を温かくし、湿度を高くすれば、ウイルスの感染力は弱まります。その際、1時間に1回程度の換気をしてください。

 

名誉会長: マスクも効果がありますか。

 

森田: 乾燥や冷気から喉や鼻を守ってくれるので、効果が期待できます。

 

椎場: ひいてしまった場合に、“うつさない”エチケットとしても心掛けたいですね。

 

 

◆ 解熱剤に注意

 

名誉会長: では、ひいてしまったら、どうすればよいですか。

 

森田: 風邪に特効薬はありません。やはり休息が何よりの薬です。

 インフルエンザなら、発症して48時間以内は特効薬が効果的です。

 

椎場: ただし、症状が和らいでも無理は禁物です。ウイルスは依然として感染力を持っています。熱が下がっても2?3日は休養することを、お勧めします。

 

名誉会長: 熱がある時は、どうしますか。

 

森田: 熱の種類にもよりますが、38度以上の高熱の場合は、インフルエンザの可能性があるので、すぐに病院に行ってください。吐き気や頭痛、意識がはっきりしない場合も要注意です。

 

成見: 発熱は、自分の体が体温を上げて、ウイルスと戦っている証拠です。解熱剤を使って無理に下げると、風邪の場合、かえって回復が遅れることもあります。また、小さな子どもの場合には、解熱剤の種類によって、重い副作用が現れることもありますので、注意が必要です。むやみに解熱剤を出すような医師には気を付けてください。

 

椎場: 氷枕や氷のうなどで、頭を冷やしてあげてください。お母さんや周囲の人の真心が、何よりの健康回復の力です。

 

名誉会長: ほかに気を付けることはありますか。

 

森田: 食事は、温かいうどんや、卵など消化のよい良質のタンパク質を取ってください。内側から体を温めることで、体力が回復します。

 

椎場: 高齢者の場合は注意が必要です。風邪から気管支炎や肺炎を併発する恐れもあります。

 

成見: 熱がなくても食欲がない、体がだるいなどの時は、医師の診察を受けてください。脱水症状が見られる場合には、入院や点滴が必要になることもあります。

 

名誉会長: 風邪だからといって、軽く考えてはいけないということですか。

 

森田: 風邪をひくのは、体力が低下している証拠です。体力の低下は余病を起こしかねません。

 

名誉会長: 「風邪は万病のもと」と言われるゆえんですね。

 ともあれ、信心しているからといって油断するのは禁物です。聡明とはいえない。御書にも「心に深く用心をしなさい」(1176ページ)と仰せです。

 むしろ、より以上に、自分自身で注意し、自分自身で工夫して、健康を守り、長寿の方向へと、心身をコントロールしていかねばならない。

 もちろん、治療については自分勝手な判断をせず、医師とよく相談するのは当然です。

 その上で、自分が“患者”であると同時に、自分が“医師”となり、“看護師”となって賢く健康を守ることです。

 健康は智慧です。賢明な智慧があれば、病気を未然に防ぐこともできる。健康即勝利の賢者の一日一日を、晴れ晴れと送っていきたいものです。

 

 ◇ 健康と生命と仏法を語る 第2回 「習慣が健康をつくる」 2004-2-12

 

 

 広布のリズムは健康のリズム!!

 

 食は命エネルギーの源

 

 御聖訓「賢きを人」「はかなきを畜」

 

 自分を律し心豊かな食生活を

 

 

成見・創価青年医学者会議室: 日本人の3大死亡原因は、がん・心臓病・脳卒中で、いずれも生活習慣病です。

 

池田名誉会: かつては“成人病”と言われていましたね。

 

森田ドクター部長: そうです。子どもの時から健康を守るための生活習慣を身につけようと、こう呼ばれるようになりました。

 

名誉会長: 生活習慣病の原因は、やはり食事ですか。

 

森田: 食べ過ぎや飲み過ぎ、そして運動不足が主な要因です。そこで今回は、まず「食事」について考えてみたいと思います。

 

椎場・白樺会大阪委員長: 最近では、メニューに料理のカロリーを表示しているレストランもあります。栄養の取り過ぎを防ぎたいというお客さんの願望を反映したものでしょう。

 

名誉会長: 仏典にも食べ過ぎの弊害が説かれています。

 @なまけ、おこたる心が生じる

 A過分な睡眠で人に迷惑をかける

 B体調を崩し多くの病にかかる(「尼乾子経」)。

 

森田: 思い当たる節がありますね(笑い)。

 

名誉会長: 天台大師も病気の起こる原因の一つに、「食生活の乱れ」を挙げています(「摩訶止観」)。

 

◆ 知らないうちにカロリー過多に

 

名誉会長: 食べ過ぎは、どんな病気にかかりやすいですか。

 

成見: カロリーの高い脂肪やでんぷんを取り過ぎると、肥満や高脂血症、高尿酸血症などになります。また、塩分が多過ぎると高血圧に、アルコールが多いと脂肪肝など肝臓の障害の原因になります。

 

名誉会長: 現代人は、栄養の取り過ぎといわれますね。

 

森田: 食生活の変化が一番、大きな原因だと思います。朝食一つとっても、昔は「焼き魚に豆腐か納豆、そして、みそ汁」というように簡素なものでした。

 

成見: 油で揚げたものや脂の乗った肉類、味付けされた加工食品などが氾濫しています。お母さん方も、便利なので、ついつい食卓に並べてしまう。これでは、脂肪分や塩分を取り過ぎます。

 

椎場: スナック菓子も想像以上に高カロリーです。つまみやすいので、量が増えてしまいがちです。

 

名誉会長: 注意しなければ、知らず知らずのうちに栄養を取り過ぎてしまう――これが現代の食生活ですね。

 

 ◇肥満の予防には

     規則正しい食事

     腹8分目

     野菜から食べる

     十分にかむ

     適度な運動

 

 ◆ 朝食は健康のバロメーター

 

森田: 生活リズムの変化も、食生活に大きな影響を与えています。30〜40年前と比べれば、現代社会は断然、夜型になっています。

 

成見: 寝る時間が遅くなると、空腹を感じ、何かを口にしてしまう。それで快眠が妨げられ、朝は寝坊。朝食も取らずに飛び出し、その結果、昼食を食べ過ぎてしまう。

 

名誉会長: 悪循環ですね。やはり食事は毎日、朝・昼・晩の3度、“腹8分目”が基本ですか。

 

森田: はい。何よりリズム正しい食生活を心掛けてください。厳密ではなくても、毎日同じ時間帯に食事をすることです。

 

椎場: 朝食を食べない方もいますが、朝食がおいしく食べられるかどうかは、健康のバロメーターでもあります。しかも朝の食事は、口の筋肉を動かすことで、脳を目覚めさせ、一日をフレッシュにスタートできます。

 

森田: 私は、長年、外科医をしてきましたが、緊急の手術のために昼食を取れないことも考えられるので、朝食だけは、しっかり食べるように心掛け、実践してきました。

 

名誉会長: 日蓮大聖人は「食には三つの働きがあり、第1には生命を継続させ、第2には体や顔の色つやを増し、第3には心身の力を盛んにする」(御書1598ページ)と言われています。信心しているからこそ、聡明でなければならない。食事も、朝食をきちんと取り、その日のエネルギーを十分に蓄え、一日を力強くスタートしていきたいものです。

 

◆ 頭で食べる

 

名誉会長: よく食事は「腹で食べずに頭で食べる」と言われますが、食べ過ぎを防ぐ秘けつはありますか(笑い)。

 

成見: 私は、まず野菜から食べるようにしています。また急いで食べないよう注意しています。そうすることで、血糖値の急激な上昇が抑えられ、栄養がゆっくり吸収されますし、主食が少量でも満腹感が得られます。

 

名誉会長: イギリスの名宰相・グラッドストンも「柔らかき物も27度噛め」と言っていますが(笑い)、「かむ」ことは確かに大事ですね。

 

成見: 「27度」は難しいですが、かむと口の筋肉の動きなどが脳に刺激を与え、満腹感を覚えたという信号を発します。ですから、少量でもよくかめば、十分な満腹感が得られるのです。また、唾液の分泌を促して胃腸への負担を軽くします。反対に、かまずに飲み込んでいるだけでは、なかなか満腹感が得られず、食べ過ぎてしまいます。

 

森田: 帰宅が夜遅くなることが分かっていれば、夕食をしっかり食べて夜食を取らないとか、また1日3食で取る総摂取カロリーを4食に配分するなど、工夫している方も多いようです。

 

名誉会長: やはり夜食はダメでしょうね?

 

椎場: 夜食を出す病院はありません(笑い)。絶対にダメとは言いませんが、健康のためには避けたいですね。

 

成見: どうしてもという場合は、うどんなど消化のよいものを軽く食べるくらいにしてはどうでしょう。

 

 

◆ 貧・瞋・癡の三毒が生命を弱める

 

名誉会長: 生活習慣病は、ドイツでは「文明病」、スウェーデンでは「裕福病」と呼ばれていますね。

 

成見: モノがあふれ、だれもが豊かで便利な“文明の味”を満喫できるようになったことから、そう名付けられたのだと思います。

 

名誉会長: ストレス解消のために食べ過ぎる人も多い。おなかより、心を満たすほうが難しいのではないでしょうか。

 大聖人は「貪り・瞋り・癡の三毒が次第に強盛になっていくにしたがって、次第に人の寿命も縮まる」(同1465ページ)と指摘されています。 貧・瞋・癡の働きが強くなるほど、健康な生命力が衰える。心身のバランスを崩してしまう。

 

森田: 確かに「食べたい」という欲望を自制できず、運動もしないで、おいしいものを食べ続けたら、確実に肥満になります。

 

椎場: 肥満は、糖尿病や心臓病などに深くかかわっています。

 

名誉会長: 不摂生な食生活を、どう正していくか。必要以上に食べたいという欲望を、どう律していくか。御書には「賢いものを人といい、愚かなものを畜生という」(1174ページ)とされています。人間は愚かであってはならない。賢く生きることです。賢明な智慧があれば、「健康で長生き」できるのです。仏法では、そうしたコントロールの智慧の力、生命力が、もともと私たちに備わっていると説いています。そのための信仰です。自分の体は、自分で責任をもって管理していく――聡明な食生活で、いよいよ健康な日々を送っていきたい。

 

 

 ◇“文明の味”より“家庭の味”

 

  団欒が心の栄養を増す

 

◆ イライラする子は一人で食事?

 

森田: 食事とストレスで思い出したのですが、数年前、文部科学省が行った調査では、「イライラしている」という中高生に、「夕食、朝食を一人で食べた」「きのう家族との会話がなかった」という答えが目立ったそうです。

 

名誉会長: 昔は、家族そろっての食事が、大切なコミュニケーションの場でした。一日の出来事や相談事を話し合い、体の栄養だけでなく、心の栄養も取っていました。ストレス解消にも役立っていたのではないでしょうか。

 

成見: 私は食卓で両親から、箸の上げ下げや魚の食べ方といった礼儀作法から社会を見る眼まで多くのことを学びました。

 

椎場: 最近は、共働きや塾通いで、家族の帰宅時間はまちまちですから、一家団らんも思うに任せないのが現実です。

 

名誉会長: 私も、多忙ななか、子どもたちとの食事には苦心しました。レストランで食事する約束をして、大幅に遅刻し(笑い)、一緒にいたのは、たった10分ほど。子どもたちには、努力だけは伝わったと思います。

 

椎場: 忙しいからこそ、わずかの時間であっても、機会を見つけては一緒に食事をするなど、工夫したいものです。

 

名誉会長: 仏典では、「食」を四つに分けています(「倶舎論」)。

 @段食=実際に口にする食物

 A触食=素晴らしい音楽や美術などに触れて、喜びや楽しみを得る

 B思食=好ましい思想や希望を抱いて元気になること

 C識食=心に備わる、生きようとする力――です。

この四つは「四食」と呼ばれていますが、いわゆる「食物」だけでなく、生きるために必要なエネルギーを与えてくれるものを「食」としているのです。これらが相互に連関性を持ちながら、生命は健全に維持される。

 

椎場: 確かに真の健康とは、色心ともの健康だと思います。

 

森田: 食事とともに、生活習慣病と深い関係があるのが「運動」です。

 

名誉会長: ガンジーは、こう言っています。「どんなにたくさん仕事を持っていようとも、人間に食事の時間があるのと同様に、身体訓練の時間をつねにつくっておかなくてはならない」(ろう山芳郎訳『ガンジー自伝』中公文庫)

 

成見: インド独立のために闘ったガンジーも健康に注意していたのですね。

 

名誉会長: ガンジーはさらに続ける。「それは、人間の仕事をする能力を減退するどころか、かえって増加する」と(同)。現代人は、ついつい運動不足になりがちですね。

 

椎場: 運動不足を解消するため“週末だけ”運動する人や、ジムに通う人も多いようです。ですが、日常生活のなかに“適度な運動”があれば、生活習慣病も心配することはありません。経済的にも安心です(笑い)。

 

成見: ラジオ体操も立派な一つの運動です。真剣に手足を動かしているうちに、汗ばんできます。

 

名誉会長: 私も健康のためにと妻に勧められ、ラジオ体操を始めて18年になります。

毎日というわけにはいきませんが、音楽に合わせて無理なく体を動かし、ほぐすことで、健康の増進につながり、気分転換にもなる。大切なことは持続ですね。持続は力です。

 

 ◇人生は歩いた者が勝つ

 ◇会合に行く 激励に歩く 弘教に励む

 ◇学会活動は最高の健康法

 

◆ 階段を利用し 一駅分、歩く

 

名誉会長: 体操に限らず、“適度な運動”というと、日常的には、どの程度の運動を行えばよいのでしょう。

 

森田: 最も手近なのは、「歩く」ことです。最近は、あえてエレベーターやエスカレーターを使わず、階段を利用する人も増えています。通勤の際に一駅手前で下車して、歩くようにしている人も多いようです。

 

成見: 私も、歩いて行ける距離のところは、乗り物を使わないようにしています。

 

名誉会長: なるほど。そういえば、釈尊の一生は“歩け、歩け”の一生でした。最後まで弘教に歩いた。よく歩いたので足も頑丈だったといわれています。ところで、「老化は足から」とも言われます。「歩く」ことの効用は具体的に何でしょう。

 

森田: 歩くことで、全身の筋肉の7割を使います。心肺機能を強化し、血圧を安定させ、脳を活性化させます。

 

椎場: ですから、ボケの予防にもなります。実際に、老人性痴呆症が治ったという症例もあります。

 

名誉会長: “憲政の父”と謳われた尾崎行雄氏は、「人生は、よく歩いた者の勝ちだ」と言って、よく歩いていたという。彼は、子どものころから体が弱く、無事に育つかどうか心配されるほどだったようです。しかし、意識して健康に努め、95歳の長寿を全うし

ています。

 

椎場: 現代の“肥えた”政治家にも見習ってほしいですね(笑い)。

 

 

◆ 一日一万歩

 

森田: 私は外科医として数多くの手術を手掛けてきましたが、10時間以上も同じ姿勢で立ちっ放しのことがありました。そうなると体力勝負です。そこで、日ごろから時間をつくり、縄跳びをして体力の維持に努力していました。

 

名誉会長: 最近では、ジョギングする人も多いようですが。

 

成見: ただ万人に向いているとは言えません。膝や腰を痛める可能性があります。中高年の過度な運動は、細胞の老化を早める活性酸素の影響が増すなど、体に悪いことも起こり得ます。

 

名誉会長: 確かに20代、30代までは、肉体を鍛える年代といえるが、40代以降は、無理も利かなくなる。運動も年代に応じてということですね。一日にどれぐらい歩くのが望ましいのですか。

 

森田: 一日一万歩が目標です。

 

椎場: 例えば、一日中、家にいた場合は、平均2000歩。ご近所に買い物に出掛けて、4000歩程度です。平均すると一日に、男性が8202歩、女性では7282歩という統計もあります。

 

森田: ですから、毎日30分程度の散歩を生活に取り入れてください。

 

成見: ただし食後すぐに歩くのではなく、30分程度は休息を取ってください。また、背筋を伸ばし、手を振りながら、少し早足で、少々汗ばむぐらいが良いとされています。

 

名誉会長: それが、けっこう難しい(笑い)。時には路傍の草花や風景を楽しみながら、時には友と語らいながら歩くというのが、有意義で潤いのある一つの理想と、私は思います。

 

椎場: 先ほどのお話ですが、釈尊もよく歩いたのですね。

 

名誉会長: ある記録によれば、出家の目的を果たした直後に、200キロを超える道のりを歩きました。かつて一緒に修行した、5人の仲間に法を説くためです。

 

成見: 200キロというと、ほぼ東京〜浜松間に相当する距離ですね。

 

名誉会長: 釈尊は、生涯、歩き続けました。常に人間の中へ飛び込み、人間の中で真理を語り、人々の苦悩を癒した。大聖人も弘教のため、歩きに歩かれました。

 

成見: 阿仏房のように、何度も佐渡から身延の大聖人をお訪ねした門下もいますね。

 

名誉会長: 身延を訪ねた阿仏房は、老齢であったようです。佐渡から身延までは、直線距離でも約300キロ。途中には険難な山並みが続き、治安も悪く、決して安全とは言えない。その苦労はいかばかりであったろう。尊き求道心の表れです。今でいえば、海外から来日されるSGI(創価学会インタナショナル)のメンバーの姿も信心の鑑です。私も皆さんに接するたびに、「仏を敬うが如く」最敬礼する思いです。

 

森田: 歩くと言えば、私たちの日々の学会活動こそ、何よりの運動であり、健康増進の秘けつです。

 

名誉会長: 会合に参加する、友の激励に歩く、弘教に励む――そこには常に偉大な目的があり、「行動」があります。

 

椎場: 以前、シナノ企画のビデオを見ました。そこでは、沖縄の初代婦人部長を務められた仲間玉枝さんが、沖縄広布を振り返って、語っておられました。「歩かなければ家庭指導はできません」「歩くこと、徹して歩くことが、若さと健康の秘けつです」と。

 

成見: 味わい深い言葉ですね。

 

椎場: 仲間さんは、どんな島でも知らない道はないというほど沖縄中を歩き抜かれたそうです。本当に若々しく、美しい姿に感動しました。

 

名誉会長: 立派な方です。仲間さんが話していたことがある。“戦いは足が鉄板のようになるまで歩き抜いてこそ、初めて勝つ”と――。法のため、人のため、社会のために尽くしゆく行動が、どれほど生命を革新させるか、はつらつと人生を生きる源泉となるか、計り知れない。友のための行動こそ、真の健康の源です。「人のために灯をともして明るくしてあげれば、自身の前も明るくなる」(御書1598ページ)との御聖訓の通りです。

 

 ◇声を出せば若返る

 ◇正義と真実を勇敢に語れ

 

 

◆ 「心は鍛えるほど軽くなる」

 

成見: 朝夕の勤行も、医学的に見ても正しい健康法になっています。正座でもイスでも、背筋を伸ばし、声を出すことで、呼吸機能が活性化し、心臓や肺の機能が高まります。

 

森田: 教学の研さんや学会指導の学習も、頭脳を働かせ、より深い人生を生きるために知恵を得ることになりますね。

 

名誉会長: 古代ローマの哲学者で、雄弁家であったキケロは言っています。「肉体は鍛錬して疲れが昂ずると重くなるが、心は鍛えるほどに軽くなる」(中務哲郎訳)

 

椎場: 雄弁といえば、婦人部の得意な「しゃべること」「声を出すこと」も(笑い)、健康法の一つになると思います。

 

成見: 明るく、にぎやかな語らいは、ストレスの解消にも通じます。心身の疲れを癒してくれますからね。

 

森田: のみならず、声を出すことは、脳を刺激し、痴呆の予防にも役立ちます。

 

椎場: さらに、正義と真実を語ることで、自身も勇気づけられ、元気になれます。

 

名誉会長: 一石二鳥、いや三鳥だね(笑い)。仏法では仏の説法を「師子吼」と呼ぶ。仏典には、その意義がこう説かれています。

 @偽者の正体を暴く

 A邪悪を寄せつけない

 B同志を守り、安心させる

 C内なる仏の生命を呼び覚ます

 D戦いをリードする

 Eすべてを自身の味方にする

 F自身と同志を高め、豊かにしていく――などです。

仏法の正義や哲学を語り抜く声は、皆、「師子吼」です。王者の声なのです。ともあれ、広宣流布の行動に一切、無駄はありません。学会活動には、健康になるための条件がそろっています。これが私の50数年間の信仰の一つの結論です。広布のリズムのなかで、健康のリズムを整えていくことができる。広布のために、喜び勇んで動いた分だけ、自身の生命に金剛不壊の幸福の基盤を築くことができるのです。

 

◇ 健康と生命と仏法を語る 「第3回 薬と生命力」 2004219

 

 

 希望 使命感 愉快な心 これが健康への力

 

 戸田先生「体は一大製薬工場」

 

 カズンズ博士「人体そのものこそ最良の薬屋」

 

 生命には病を『治す力』が

      「心」が免疫力を高める

 

◆目標を持って生きる 何らかの仕事に励む ユーモアを忘れない

 

 

森田ドクター部長: 今回から、ドクター部の上東・健康相談室議長と白樺会の荻上書記長に加わっていただきます。上東健康相談室議長・荻上白樺会書記長よろしくお願いします。

 

池田名誉会長: 読者のために、遠慮なく、いろいろ教えてください。

 

上東・荻上: はい。

 

名誉会長: 長生きして生き生きと仕事を続けた文豪ゲーテは、こう謳っています。「『教えてほしいいつまでもあなたが若い秘密を』/何でもないことさ つねに大いなるものに喜びを感じることだ」(内藤道雄訳)私たちも、広宣流布という大目的に向かって、若々しく朗らかに進んでいきたいものです。そのためにも健康は大事です。前回は、生活習慣病のカギを握る、食事と運動について語り合いました。それ以外にも、日常生活で気を付けなければならない点はありますか。

 

上東: ある程度の年齢になったら、日ごろから、ちょっとした体調の変化にも注意してほしいですね。“何かおかしい。いつもと違う”――素朴な疑問から重大な病気が見つかることも少なくありません。

 

荻上: 若いころから頭痛持ちだった患者さんが、いつものように薬を飲んでも治らないと相談に来たことがありました。脳外科の受診を勧めたところ、くも膜下出血の始まりだと分かったのです。

 

森田: 熱が出た。痛みがある。そういう、つらい症状が続く時は、だれでも病院に行こうとします。ですが、食欲がない。眠れない。何となく違和感がある。ずっとではないが時々痛む。こういう体のサインの場合は、つい我慢して見逃してしまうことが多いです。

 

名誉会長: 異常があっても、甘く見てしまう場合がある。神経質になる必要はないが、用心するに越したことはありませんね。

 

 

◆自分の体は自分で守る

 

上東: はい。がんや高血圧、糖尿病などの生活習慣病も初期の間は、あまり症状がありません。

 

森田: ですから何か症状が出たら病院へ行くというのではなく、定期的に健康診断は受けていただきたいと思います。

 

名誉会長: 自分の体は自分で守るしかない。大切な人生です。「使命」のある人生です。

日蓮大聖人は、門下の四条金吾が危険の中を生き抜いたことを喜ばれ、そうできた理由として三つ挙げられています。一つは「前前の用心」。二つは「勇気」。三つは「強い信心」です(御書1192ページ)。信心しているからこそ、「普段からの用心」と「勇気」が必要なのです。「強い信心」には、聡明な「智慧」がなければならない。

 

 

◆ 薬は自然治癒力を引き出す仲介者

     飲み方で効き目が変わる

 

    ◇薬の正しい飲み方

         服用の時間・量を守る

         水やぬるま湯で飲む

         低温・乾燥の所に保管

         他人の薬はもらわない

         勝手にやめない

         妊娠中の服用は注意

 

◆薬は毒にもなる

 

森田: 「用心」といえば、「薬」も注意が必要です。薬は本来、体にとって異物ですから、多少の毒性を持っています。量や飲み方を間違えると、大変な副作用が起きることがあります。

 

名誉会長: 確かに「薬は毒にもなる」と言われますね。読者の皆さんが安心できるように、正しい薬の飲み方を教えてください。

 

上東: 簡単に言えば、?内服薬(飲み薬)は、水やぬるま湯と一緒に飲む?決められた時間にきちんと飲む?決められた用法・用量、注意事項を守る、です。

 

荻上: 必ず、コップ1杯ぐらいの水と一緒に飲んでください。錠剤やカプセルが喉や食道に引っかからないためにも大事ですし、胃の荒れなども防ぎます。

 

名誉会長: お茶やコーヒーなどで飲んではいけませんか。

 

上東: 薬によっては若干の影響が出ますので、水やぬるま湯で服用してください。特に、お酒はやめてください。

 

名誉会長: 飲みやすくするために、錠剤を砕いたり、カプセルをはずしたりしても大丈夫ですか。

 

森田: それも避けてください。本来の効果や作用する時間にも影響が出る場合があります。大きくて飲みにくい場合などは医師や薬剤師に相談してみてください。

 

荻上: 保管にも気をつけたいですね。薬は光、温度、湿度に影響されやすいので、高温多湿を避けて、缶の中や引き出しなど涼しい所に保管してください。子どもの手の届かない場所に置くことも大事です。

 

◆高齢者・子どもは 飲む「量」に注意

 

名誉会長: お年寄りや子どもが注意すべき点はありますか。

 

森田: 高齢者は「成人の常用量だと量が多過ぎる」ことがあるので、できるだけ病院に行って相談してください。どうしても市販の薬を利用する場合は、「定められた量の半分くらいから飲み始める」ほうが安全です。

 

荻上: 子どもの場合は、決められた量を、きちんと守ることです。また解熱剤は、むやみに使わないほうがいいでしょう。妊娠中は、どうしても必要な薬以外は飲むべきではありません。

 

上東: というのは、胎児の生命は薬物に敏感なので大きな影響を与える危険があります。特に妊娠初期は、薬をなるべく控えたほうがいいでしょう。

 

森田: アレルギー体質の人や腎臓・肝臓の悪い人は、副作用が出やすくなります。医師や薬剤師に、アレルギー体質や妊娠の有無とともに、今、使っている薬を必ず伝えてください。

 

名誉会長: 大聖人も「病人に薬を与えるには、前に服用した薬のことを知らなければならない。薬と薬が体内でぶつかって、争い、人の体を壊すことがある」(同1496ページ)と仰せです。思想・哲学を弘める上においても、これまでどんなものが弘まっていたのかを、よく知らなければならない(教法流布の先後)ということの例えとして言われたのです。

 

荻上: 大聖人は、当時の医学にも通じておられたのですね。

 

名誉会長: 詳しいことは省きますが、釈尊の時代には、門下に名医と言われた耆婆がいた。仏典の中には「医喩経」「治禅病秘要法」など、医学関係のことが説かれたものもあるくらいです。もちろん鎌倉時代には、中国からも医学に関する多くの研究、論述も伝わっていた。大聖人も、そうしたことを踏まえられていたと拝されます。また、門下に医師でもあった四条金吾がいたのは有名です。

 

◆ビタミンC

 

名誉会長: 最近は、栄養剤やドリンクなどが、手軽に手に入るようですね。例えば、ビタミンCを取るのに、錠剤を飲むのと食物から取るのとでは違いがありますか。

 

上東: ことビタミンCについては違いはありません。ビタミンCは果物や野菜に多く含まれており、通常の食生活でも摂取できます。食物だけで取れない場合は、錠剤を飲む必要もあるでしょう。ですが、余分なビタミンCは尿と一緒に出てしまいます。

 

名誉会長: ビタミンCといえば、ポーリング博士を思い出します。二つのノーベル賞(化学賞と平和賞)を単独で受賞された方です。博士とは4度お会いしました。ひとこまひとこまが映画のように胸に残っています。偉大な方でした。博士のお父さまも、薬剤師でした。当時の薬局では、単に製薬会社から仕入れた薬を売るだけでなく、自ら薬を作ってい

た。「私は?製造する薬剤師?だ」と誇らしげに語りながら、幼い博士に薬の調合の様子を見せてくれたそうです。

 

荻上: やはり、子どもの時に、化学・医学に縁をされていたのですね。

 

名誉会長: そう思います。博士はビタミンCの摂取量を増やすことで、発がん物質から体を守る力を高められると考えておられたようです。

 

◆安易に薬に頼らない

 

名誉会長: 話は戻りますが、ほかに薬で注意すべき点はありますか。

 

森田: 病院でもらって、余った薬を使うのもやめてください。同じような症状と思っても、前の病気と違う場合があります。時間がたつと、薬の成分が変わることもあります。

 

上東;「この薬、よく効いたよ」と言われて、他人の薬をもらったりするのも、絶対に避けてください。

 

荻上: 市販の薬は、外箱などに使用期限が書かれています。ただし、期限内であっても、変色しているなどの場合は、処分したほうが安全です。

 

森田: 薬は本来、体の持っている「治す力」を助けるものです。薬(内服薬)を英語で「メディシン」と言いますが、その語源には「媒介」「仲介」「仲裁」などの意味があります。体のもっている「自然治癒力」を引き出す媒介が薬だと思います。

 

名誉会長: そうでしょうね。戸田先生も「人間の体は一大製薬工場だ」と、よく言われていた。「それを、医学で、薬で、補おうというだけなのです」と。あくまでも、病気は人間の体自身が治すものである。人間の生命の中に、その力が備わっていると強調されていました。

 

上東: 薬に頼ればいいという安易な姿勢ではなく、根本は、できるだけ薬がなくてもいい方向に、自分の体をもっていくことが大事なんです。

 

◆医師・薬剤師に 積極的に相談を

 

名誉会長: かといって、必要な薬を勝手にやめてはいけませんね。

 

荻上: そうです。病院の薬を勝手に中断したり、減らしたり、取捨選択して飲むことは危険です。

 

名誉会長: よく聞くのは、高血圧の薬を勝手にやめてしまって、その後、倒れてしまうというケースです。

 

森田: その通りです。大変に危険な状態に陥った方が何人もいます。必ず、医師や薬剤師に相談してください。

 

名誉会長: 疑問があれば、信頼できる専門家に積極的に質問し、十分に納得した上で、薬の長所を生かしていくことですね。

 

上東: その通りです。

 

名誉会長: 先ほど、人体は「一大製薬工場」と言いましたが、仏典には「薬王菩薩」という菩薩が登場します。良薬を衆生に施し心身の病苦を治す菩薩といってよいと思います。その働きがわれわれの生命の中に本然的にある。それを引き出していくのが妙法です。ところで、私たちの体内で「治す力」を担当しているのは、どこですか。

 

上東: 体の恒常性を維持しているのは自律神経とホルモンですが、外敵から身を守るのは、血液中の白血球です。私たちの体は、外部から侵入しようとする異物を、皮膚や粘膜で防いでいます。それらをすり抜け、侵入してきた菌やウイルスをとらえ退治するのが白血球です。

 

森田: この白血球の働きを指して「免疫力」とも言います。

 

名誉会長: 最近、よく耳にする言葉ですね。

 

荻上: 「免疫力」がタイトルについた書籍も多いです。

 

◆健康も勝負!!

    体内では 白血球と病原体が戦う

 

◆「ミクロの宇宙戦争」

 

上東: 白血球は、大別すると、顆粒球とリンパ球に分けられます。もう一つ、数は少ないのですが、単球というのもあります。この三つが協力して、外敵と戦い、病気になるのを防いでいるのです。

 

名誉会長: ロシアの世界的な物理学者に、モスクワ大学前総長のログノフ博士がいます。何度もお会いして語り合いましたが、博士は、この戦いを「ミクロの宇宙戦争(スター・ウォーズ)」と呼んでいました。

 

森田: おもしろい表現ですね。まさに、その通りです。

 

上東: 白血球のうち顆粒球は、侵入した細菌や体の中の異物を見つけると、そのまま飲み込んで、分解します。その後、自らも死んでしまいます。

 

森田: 傷口が化のうして膿がたまることがあります。これは死んだ顆粒球などが集まったものです。

 

名誉会長: ログノフ博士は、白血球の働きによって、がんの発生も抑えられていると紹介されていました。普通の人の体でも、一日に数個のがん細胞が出現している。しかし、絶えずリンパ球が、がん細胞を捜し出し、排除しているから、私たちの体は守られている、と。

 

森田: 確かに、リンパ球の機能が弱くなったり、減少したりする病気になると、がんや、さまざまなウイルス感染症にかかる危険性が高くなります。

 

上東: ログノフ博士が言われるように、リンパ球は、ウイルスなどをとらえて、毒性を弱める物質(抗体)をつくったり、ウイルスに感染した細胞を攻撃し排除したりします。このとき一度出あったウイルスなどの形を、リンパ球は記憶することができます。ですから、一度かかった病気に対し、私たちの体は抵抗力を増すのです。

 

荻上: 感染予防に使われるワクチンは、そうしたリンパ球の働きを利用したものです。

 

◆ストレスにより免疫力は低下

 

名誉会長: なるほど。では、こうした「治す力」を高めるためには、何が必要ですか。

 

森田: やはり栄養でしょうか。戦後、日本人の平均寿命が飛躍的に延びたのは、一人ひとりの栄養状態が「治す力」に大きく影響しているのではないかと思います。

 

上東: 外部からの侵入者や体の中で生まれる異常な細胞に対し、体は常に警戒を怠ることができません。ある程度の栄養状態が保たれていなければ、病気に対する抵抗力は弱くなります。

 

荻上: 適度な量と栄養のバランスのとれた食事が大切だと思います。さらに加えると、十分な睡眠を取ることも大切です。

 

名誉会長: 逆に「治す力」を弱める要素は、どんなものがありますか。

 

上東: ストレスを持続して受けると免疫力は大きく低下します。ストレスが高じると、交感神経の働きが過剰になり、免疫を担う白血球の働きにも影響を与えるのです。

 

森田: ただ、ストレスがすべて悪かというと、そうではありません。適度なストレスは人間に活力を与え、総体として免疫力を上げます。

 

名誉会長: いずれにせよ、「心」と、体が持つ「治す力」には深い関係がある。

 

荻上: 池田先生が対談集を出されたノーマン・カズンズ博士は、“アメリカの良心”と言われたジャーナリストですが、「心身相関の医学」でも先駆的な研究を残していますね。

 

名誉会長: 博士は、膠原病、心筋梗塞という2度にわたる大病を克服された。その体験からも、人間の体がもつ「治す力」(治癒系)とともに、それを引き出す「精神の働き」(確信系)に注目されていました。「希望」「喜び」「生きる意欲」などの前向きな感情は、人体の「治す力」を高めていくというのです。

 

荻上: 看護師としての経験からも、そう思います。血液のがんの患者さんを担当していた時のことです。その婦人には、幼いお嬢さんがいました。治療の関係で、お嬢さんとも自由に会うことはできなかったのですが、「娘が小学校に上がる時には一緒に入学式に行こう」と、目標を持ち続けていました。その結果、治療の効果も上がり、親子で入学式を元気に迎えることができました。

 

名誉会長: 子どもの成長を見続けたいというお母さんの希望が、体の中の「治す力」を強めていったのでしょうね。心は不思議である。心一つで大きく変わる。これは、紛れもない真実です。仏典にも「心は巧みな画家のようなものである」とあります(御書400ページ)。

 

荻上: 「責任感」「使命感」も、「治す力」を引き出す要因ではないでしょうか。私の母の例で恐縮なのですが、5年前、子宮がんになりました。

 

名誉会長: おいくつですか。

 

荻上: 現在、91歳です。高齢のため手術はできないと診断され、放射線治療を始めました。放射線治療は若い人でも体に負担が掛かります。当時、母は、副看護部長で忙しい私に代わって家事を引き受けてくれていました。そのため母は「私が寝込んだら、この家はもたない」と(笑い)、入院中も週末には家に帰って来て、家事を続けたのです。医師や看護師、他の患者さんもびっくりするほど元気で、治療も効果が上がり、がんは治りました。現在まで再発もありません。

 

名誉会長: まさに“母は強し”ですね。確かに何らかの仕事、使命の実現に励む人は、年齢にかかわらず強さがあります。古代ローマの哲人セネカも「仕事は高貴なる心の栄養なり」と言っている。「自分には、なすべき使命がある!使命がある限り、倒れるはずが

ない!」――この確信がお母さまの生命力のもとになったのではないでしょうか。もちろん信心の力が根底にあったことは言うまでもありません。ほかに「治す力」を強める心の働きはありますか。

 

森田: 「ユーモア」や「笑い」も、そうだと思います。「ユーモア」や「笑い」が、がん細胞の発生を監視するリンパ球の働きを強めるという事実は有名です。

 

◆心と体は一体

 

上東: カズンズ博士も、「笑い」が「治す力」に優れた効果をもたらすとして、こんな研究を紹介しています。10人の学生に愉快な映画と、そうでない映画を30分ずつ見せたところ、愉快な映画を見たあとでは目立って、唾液中の免疫の働きが活発になったというのです。反対に、つまらない映画を見たあとには、そのような変化は見られなかった。

 

名誉会長: 有名な実験です。カズンズ博士も「人体そのものこそ最良の薬屋」と指摘されていた。これも生命に備わった「病気を治す力」を例えたものでしょう。そして「心と体は一体」と強く強く言われていた。科学的に、それを実証されようとした。博士の主張は、仏法に通じます。それは、人間の真の健康とは何かを示唆しているように思われる。日々、朗々たる唱題で生命力を増し、「希望」と「使命感」と「愉快な心」をもって、最高に充実した毎日を送っていきましょう!

 

    健康と生命と仏法を語る(第4回)「医師と病院」 2004-2-26

 

 患者第一の医療革命を!!

 医学は「民衆に奉仕する芸術」

 緒方洪庵の信念「安逸を思わず名利を顧みず人を救うべきである」

 「医師が上 患者が下」の転換を

 

池田名誉会長 現在、 私はアメリカの経済学者 ガルブレイス博士と対談を続けています。95歳の博士は、ご自身の健康法を、こう言われていました。

 「何よりも大事なことは、朝起きた時に、きょう一曰の計画が決まっていない、考えていない、といったことが、ないようにすることです」

「さあ、きょうも何かを始めよう!」と、前進していく。そこに、より新しい、より希望に満ちた人生が開けていく。若さも生まれます。さあ、きょうも、はつらつと語り合いましょう。

 

どんな病院にかかればいいか

 

森田ドクター部長 多くの会員の方から「病気になった時、どんな医師や病院にかかればいいか」と問い合わせがあります。

名誉会長 それは、皆が関心のある問題ですね。

森田 いつも答えに困ってしまうのですが(笑い)、病院の環境面に関して言えば、患者さんが安心できるよう心配りがされている所がいいと思います。

上東健康相談室議長 受付や待合室の雰囲気も大切です。美しい絵が飾られていたり、優しい音楽がかかっていると心が和みます。

名誉会長 確かに、病院があまり殺風景だと不安になるでしょう。チリの女性詩人、ガブリエラ・ミストラルは、病院の壁を「その白さがくらくらさせる」と言っています。

  最近は、患者をホッとさせる工夫をする病院も増えているようですね。

荻上白樺会書記長 清潔な環境も、治療の第一歩だと思います。私も「掃除も立派な看護の仕事」と心掛け、後輩にもそうアドバイスをしてきました。      |

名誉会長 ナイチンゲールも、看護のポイントは「患者の生命力の消耗を最小にするように整えること」(『ナイチンゲール著作集』第1巻、現代社)だと言っています。患者さんが〃よし、病気と闘おう!〃と思える環境づくりが大切ですね。       

  では、大学病院と町の開業医では、どちらがいいのでしょう。

上東 地域の医療事情によっても違いますが、一般に大学病院は、高度な治療、専門的な医療が必要な病気の時などに適しています。

 糖尿病や高血圧など、日常的に通院が必要な病気は、自宅の近くにある病院でもよい

と思います。いざという場合も、いろいろ相談に乗ってもらえますから。

名誉会長 いわゆる「かかりつけ医」ですね。

森田 はい。信頼できる「かかりつけ医」がいれば安心です。必要な時には、専門医や設備の整った病院を紹介してもらうこともできます。

名誉会長 20世紀最高の歴史家・トインビー博士も、私との対談の際、「専門医は貴重な存在、一般医は不可欠の存在」と、かかりつけ医の重要性を語っておられました。

 

  御書にある名医

 

名誉会長では、「信頼できる医師」とは、どういう医師でしょうか。

森田 まず「病気を的確に判断し、正しく治療する技術」が大事だと思います。

名誉会長 森田さんは外科医として、多くの患者を手術してこられましたね。

 御書には、森田さんの大先輩の外科医も紹介されている(笑い)。「三国志」に登場する「華陀」も、その一人です(御書1179n)。他の史書にも、大変な名医であったと残っています(「後漢書」)。

 「三国志演義」によると、彼は、勇将・関羽の腕を切開して、骨に付いたやじりの毒を削り取る 〃外科手術〃も行った。

  手術を終えた華陀に、関羽が黄金百両を差し出すと、華陀は「わたくしは殿の仁義の名を聞いてまいったもので、さようなものをあてにしてまいったのではござりませぬ」(立間祥介訳)と言って立ち去つたという。

上東 御書には、ほかにも古代インドや中国の名医が出てきますね。

名誉会長 「治水」「流水」「耆婆」「扁鵲」も挙げられています(御書995n等)。

荻上 治水・流水は、どういう人ですか。

名誉会長 「金光明経」に出てくる親子で、伝説上の人物です。国内に疫病が流行した際、父子一体となって多くの人々の病を治したとされます。

荻上 扁鵠は、どうでしょうか。

名誉会長 中国の春秋・戦国時代の医師で、有名な司馬遷の「史記」に登場します、

広い医学の知識を持ち、特に脈診を主とした診察に優れていたといいます。

荻上 耆婆は、釈尊の弟子ですね。

名誉会長 ええ。釈尊の侍医であったという説があります。「医王」とも謳われ、大臣も務めていました。当時、すでに腸閉塞のための開腹手術や、脳腫瘍のための開頭手術を行ったと伝えられている(「四分律」「大品般若経」)。二千数百年も前に、驚くべきことですo

森田 耆婆は、全身麻酔のようなことも行ったと聞いたことがあります。

名誉会長 ひどく塩辛いものを与えて、のどが渇いたところで酒を飲ませ、感覚を麻痺させたとされています(「四文律」)・アルコールによる麻酔の一種でしょうか。

「利財を貪るな」

 

上東 信頼できる医師の条件としては、だれよりも患者さんを思い、慈しむ姿勢も大切です。

森田「患者第一」−これが医療の根本でなければなりません。 

名誉会長その通りですね。

 幕末の医学者に、「適塾」を開いたことで有名な緒方洪庵がいます。

 幼い時から体が弱かった洪庵は、医学の道を志し、人々のために種痘を広めたり、コレラの流行とも闘った。

 当時、評判の医師の〃番付〃があったようですが、39歳の洪庵は最高位の大関に位置している。しかし、彼の生活は質素そのものであった。

 医師がこの世で生活するのは、ただ人のためであって、自分のためではない。安逸を思わず、名利を顧みず、ただ己を捨てて、人を救うことを願うべきであるーこれが医師・洪庵の信念であった。  

 他の医師が往診を嫌がるなかで、洪庵は率先して往診に歩いたといいます。身分や貧富の差など、まったく気にも留めず、ただ目の前で苦しんでいる人を救いたいとの一心で行動した。

仏典にも、医師のあるべき姿が、こう記されています。

「いつの場合でも慈悲の心をもって病人に接し、いやしくも利財を貪るような心をもってはならない」(「金光明最勝王経」)

この「慈悲の心」を輝かせて大勢の庶民に尽くしゆく、真の名医になってもらいたいこれが私のドクター部への願いです。

森田 ご期待におこたえできるよう、精進してまいります。

 

病気を診て 病人を診ない

   

上東 先ほど技術が大切だという話がありましたが、技術ばかりに目を向けていると、「病気を診て、病人を診ない」状態に陥らないとも限りません。

名誉会長 がん研究の世界的な権威である、モントリオール大学前学長のシマー博士が、私に、こう言われていました。

 現代医療において問題なのは「医師と患者の間に『侵入者』が入ってきたこと」だ、と。

荻上 「侵入者」ですか?

名誉会長 そう。それは「機械や器具、ますます増える検査」だというのです。博士は、技術一辺倒では、医師と患者の間の〃人間としての絆〃を壊してしまう、と心配されていました。

 

さあ、きようも始めよう「前進」に若さは生まれる

 

 

森田 そうかもしれません。

 確かに科学技術の発達は、それまで治療不可能とされていた多くの患者を救ってきました。

 さまざまな検査も、データが医師の診断のよりどころになるので重要です。

 しかし、だからといって、患者との間に信頼関係を築く努力を怠っていいということにはならないと自戒しています。

名誉会長 そうですね。医学が発達すればするほど、医師は「より人間的に」なる努力が必要ではないでしょうか。医学は、どこまでも「人間のため」なのですから。

上東おっしゃる通りです。

名誉会長 病気の人は、その患部だけで苦しんでいるのではない。生命全体で苦しんでいるのです。

 現在、私は、ヨーロッパ科学芸術アカデミー会長で、著名な外科医であるフエリックス・ウンガー博士とも対談集の発刊に向けて対話を続けています。

  実に1万人以上の患者の手術を行ってきた、世界的な名医です。

  博士は「理想の医師」について語っておられる。

 「『医学の技術者』はいらない。私たちが必要なのは『医師』なのです。私の言う『医師』とは、全体性に立った人格の光る医師です。人間性豊かな医師です」と。

荻上 私が教壇に立つ看護学校では、看護実習に入る前に、「一人を思いやる心」や「人のために何ができるか」を考えるよう、学生に教えています。

上東 医学生にも、人間性を磨くための教育が必要だと思います。

名誉会長 アメリカのカズンズ博士は「病気のことは分かっても、人間のことはわからない医師」(松田銑訳)が増えていくことを危惧していました。

 そこで、医学部の履修課程で文学や哲学を重視するべきだと提案されています。

 

「病の人」こそ最大の教師

医師は「より人間的に」なる努力を

丹念に聞く 十分な説明 温かいはげまし

 

森田 人間を深く尊敬し、苦しんでいる人に奉仕していくーこれは学会のドクター部の原点でもあると思います。

名誉会長 ウンガー博士は「『大臣(ミニスター)』の語源も『奉仕する者』の意味です」「同じように、患者に奉仕するのが、医師の役目であり、目的です」「医学も、そして政治も、民衆に奉仕する芸術なのです」とも語っておられた。

指導的立場にある人間は、人々に「奉仕する」のが第一の責務です。

民衆こそ「主役」であり、指導者は「奉仕者」である。その「主客」が転倒し、逆転するところに、腐敗や堕落の元凶があるのです。

  

いや「癒しの芸術」は「聞く芸術」

 

名誉会長 患者さんに奉仕するためには、話を「丹念に聞く」ことも大事ですね。

上東 はい。丁寧に問診を行うだけで、かなりの病気の診断を下せるという統計もあります。

森田 かつて池田先生は、米・ハーバード大学名誉教授のバーナード・ラウン博士と会談されました。〈博士はアメリカの著名な医師。IPPNW(核戦争防止国際医師の会)の共同創設者で、ノーベル平和賞を受賞している〉

  博士は語っています。

 医療とは「癒しの芸術」であり、「癒しの芸術」とは「聞く芸術」であるーと。

 人手不足で忙しい医療の現場では難しい場合もありますが、私も、できるだけ時間をかけて、患者さんの話を聞くことを心掛けています。

上東 ラウン博士は「上手に聞くためには、耳だけではなく五感を総動員しなければならない」(小泉直子訳)とも語っています。問診だけでなく、声の響きや顔の色つやなどから病状を判断したり、触診・聴診など基本的な診察をしっかり行うことが大事だと思います。

荻上 看護師としての経験からも、患者さんは、言葉だけでなく、いつも体のどこかからサインを送っていると思います。それを逃さずに〃聞いてあげる〃。そこから信頼関係も生まれます。

名誉会長 ラウン博士も、苦しむ人々のために勇気と慈愛の行動を貫いてこられた、偉大な医学者です。博士は「患者こそ私の最大の教師である。私を医師に育ててくれたのは患者である」(同)とまで言われています。

 偉大な人は謙虚です。

 それでこそ、「正しく聞く」こともできる。「正しい判断」もできる。

上東 患者さんの不安を軽くするためには、「十分な説明」も大切です。

 「自分の病気がどんなものなのか」「どんな治療が必要なのか」ー丁寧に説明してくれる医師は信頼できると思います。

名誉会長 病気の名前にしても、薬の名前にしても、医学用語は難しい。一言でも説明してくれるとありがたいですね。

  17世紀のフランスの劇作家・モリエールの作品に「いやいやながら医者にされ」という喜劇があります。

  女房の悪知恵で「にわか医者」に仕立てられた、きこりの主人公が、謝礼をもらえることを知り、自分から医師を装うという物語です。

  きこりは、でたらめのラテン語や怪しげな医学用語で患者さんをけむに巻き、それに疑問をはさまれると、最近はこう変わったんだとごまかす。しまいには「あなたはわれわれほど物知りである必要はない」(鈴木力衛訳)と権威ぶって言い放つ。

 難解な専門用語をもって、自分を偉く見せようとする見栄と傲慢を風刺したものでしょう。

 

 指導者には「説明の義務」が

 

荻上 先ほども話題になりましたが、最近は医療技術が進み、検査にも、さまざまな機械が使用されています。

 検査をする前に、どんな機械が、どうして必要かということを説明する必要があると思います。説明足らずでは、患者さんが不安にあることもありますから。

名誉会長 医療だけでなく、あらゆる分野で、指導的立場の人には「説明する義務」がある。また、だれもが「知る権利」と「納得する権利」がある。

 しかし、これまでの日本の社会には、それがあまりにも欠落していたのではないでしょうか。

森田 かつては、「患者は黙って言うことを聞いていれば、いいんだ」

「患者に言っても分からない」という風潮が、少なからずあったと思います。

名誉会長 患者さんのほうにも、〃医師任せ〃の傾向があったかもしれません。

 先ほども述べたように、決して「医師が上、患者が下」ではない。治療という同じ目的に向かって協力し合うパートナーではないでしょうか。

森田 はい。「患者が主役、医師が支援者」という新しい関係が必要とされています。

 

 「いすの高さを等しくせよ!」

 

上東 医師の応対の姿勢も大事です。

 説明の内容がどんなに理路整然としていても、患者さんが形式的と感じてしまえば伝わりません。

名誉会長 医聖・ヒポクラテスは、医師のあるべき姿を、こう示しています。

「医師は、ある生き生きとした雰囲気といったものを身に付ける必要がある。しかつめらしい固さは、健康な人にも病人にも拒絶的な感じを与えるからだ」

 先ほど紹介した医王・耆婆の名前には、サンスクリット語で「生き生きとした」「生命を与える」などの意義があるといいます。

上東 確かに、医師が冷たい感じで、もったいぶった堅苦しい雰囲気だと、もしかすると、会っただけで体調の悪くなる人もいるかもしれません(笑い)。

名誉会長 ヒポクラテスは、こうも指摘しています。「いすは医師と患者の高さが同じになるよう、できるだけ高さを等しくする」

 これは単なる形式ではなく、苦悩の人を見下してはいけない。平等のまなざしを持つべきであるという意味でしょう。

荻上 患者さんには、細か過ぎるくらいの配慮が大事です。

 ナイチンゲールも「看護というものは、いってみれば小さな〈こまごま〉としたことの積み重ねなのです。小さな〈こまごま〉としたこととはいいながら、それらはつきつ

めていけば、生と死とにかかわってくる問題なのです」(『ナイチンゲール著作集』第3巻、現代社)と言っています。

 

 命は黄金に勝る宝

 聡明な智慧で健康を守れ

 

名誉会長 シマー博士が言われてました。「男性よりコミュニケーションが上手な女性医師が多くなれば、患者と医師の関係も、もっとスムーズになっていくと思います」と。その通りかもしれない。

 

 「言葉は医師の最大の道具」

 

 名誉会長 ともあれ、医師の言葉は影響が大きい。

  ラウン博士も「言葉は医師の最大の道具である」(小泉直子訳)と強調されています。

荻上 私の母が高血圧で倒れた時、救急車で病院に運ばれました。家族として、私も救急車に同乗しましたが、不安で仕方がありませんでした。

 病院で治療を開始した時に、看護師長さんの「もう大丈夫ですよ」の一言に救われた気がしました。病院の原点を見る思いでした。

名誉会長 温かい励ましが大事ですね。反面、ラウン博士は「言葉は、患者を癒すだけでなく傷つけることもある両刃の剣だ」(同)と、医師の軽率な言葉、不適切な言葉を注意されています。

上東 歌人の石川啄木が、腹膜炎の疑いで診察を受けた際の歌を思い出しました。

 「そんならば生命が欲しくないのかと、/医者に言はれて、/だまりし心!」と。

  傷ついた啄木の無言の怒り、反発、苦悩が伝わってきます

森田 最近は、「ドクターハラスメン卜」(医師による患者への暴言)という言葉さえあります。皆が待望する「医療革命」へ、私たち医師の責任は重大です。

名誉会長 患者さんのほうも、受け身ではいけない。疑問があれば積極的に質問し、十分に納得した上で治療を受ける心構えが必要でしょう。ある意味では、自分の体は  自分で律し、守っていくしかないからです。

森田 納得できない場合は、「セカンドオピニオン」(主治医以外の医師の意見)として、他の医師の意見を聞くことも大事です。

 いずれにせよ、治療の方針を立てるのは医師ですが、通院・服薬・食事療法など、治療を実践するのは患者さん自身です。

名誉会長 仏典には、病人としての積極的な心構えも説かれています (「摩訶僧祇律」)。

@それぞれの病気に適した薬や食事を服用する。

A治療する人・看病する人の言葉に従う。

B自分の病気が重いか、軽いかを認識する。

C苦痛に負けない。

D努力を怠らず、聡明な智慧をもつ。

 こうした仏法の智慧は、医学の道理とも響き合っていると思います。

荻上確かに的確な洞察だと思います。〃医師任せ〃ではない、患者さんの主体性を教えています。

森田 高齢社会が進み、介護保険や医療保険などが整備されつつありますが、老後への不安は、解消されているわけではありません。ますます〃自分の健康は自分で守る〃ことが必要になってきました。

名誉会長根本は、自分自身が自分の〃医師〃 なのです。

  曰蓮大聖人は「命というのは、自分にとって一番貴重な宝である。たとえ一曰であっても寿命を延ばすならば、千万両の黄金にもまさる」(御書986n)と仰せで す。

  一日でも長く生きれば、それだけ妙法を唱えられる。仏法を教え伝えることができる。その分、永遠の福徳が積まれていく。

  ともどもに、健康で、長寿で、「かけがえのない人生」「使命の人生」を生き抜いていきましよう!

 

健康と生命と仏法を語る 「第5回 予兆と対応」 200441

 

 治療の時代から予防の時代へ

 舌のもつれ 手足のしびれ 胸の痛み 脈の乱れ

 「小事こそ大事」と油断なく!

 

池田名誉会長:いよいよ春本番です。花や鳥、風や光、森羅万象が生きる喜びにあふれている。私の好きなユゴーの詩に、こういう一節があります。「万物はうめく、おまえのように。万物はうたう、私のように。/ 万物は話をしているのだ。そして、人間よ、おまえは知っているか?/ なぜ万物が話すのかを。よく聞け。風、波、炎、/ 木々、葦、巌、こうしたものすべてが生ある存在だからだ!」(辻昶・稲垣直樹訳『ユゴー詩集』潮出版社)生命のあるところ、音がある。声がある。生き生きとした語らいがある。躍動と歓喜がある春は、それが一段とにぎやかな季節です。

 

森田ドクター部長:春の到来とともに健康座談会も再開です。今回から、ドクター部の豊福救護運営室議長、白樺グループ(女子部の看護者の集い)の浅川副委員長に加わっていただきます。

 

豊福ドクター部救護運営室議長・浅川白樺グループ副委員長:よろしくお願いします。

 

名誉会長:こちらこそ、よろしく。お二人とも、読者の皆さんのために遠慮なく語ってください。

 

森田:読者の方から、再開を願う声が多数寄せられたとうかがいました。やはり、長寿社会で健康への関心が高まっていることを感じます。

 

 兆しを見逃すな

 

名誉会長:早速ですが、御書には「一つの花が咲くのを見て春の訪れを推察せよ」(222ページ)とあります。仏法では、何ごとにも兆しがあり、現れがあると説きます。その兆しを敏感に察知して、手を打っていく。その人が賢者であり、勝利者となるのです。健康も同じです。ある程度の年齢になれば、体に現れる小さな兆しにも、的確に対応していかなければならない。では、具体的に、どんな予兆に注意すべきか、教えていただけますか。

 

森田:病気の初期症状は、さまざまあります。症状の現れにくいものもあります。

 

 脳卒中の症状

 

名誉会長:脳卒中の場合は、どうでしょう。

 

浅川:急に舌がもつれて、うまくしゃべれなくなった。片方の手足に、軽いしびれや、まひを感じた。こういう症状があって、10分くらいで治まった患者さんがいました。

 

豊福:それは一過性脳虚血発作です。放っておくと、脳梗塞の大きな発作が起こることがあります。

 

名誉会長:そういう場合は、症状が消えても、病院に行ったほうがいいですね。

 

森田:はい。脳の血管が、一時的に血栓(血の塊)でふさがって現れた症状ですから、血栓をできにくくする薬で、脳梗塞を予防する必要があります。

 

名誉会長:何ごとも「小事」が「大事」です。小さなことを軽く考えてはならない。大聖人は「しっかりした田のあぜでも、アリの大きさほどの小さな穴があったならば、たまっている水も必ずそこから漏れて、ついにはなくなってしまう」(御書1308ページ)と教えられています。小事をおろそかにするところに、思わぬ事故が起きる場合がある。健康の問題も「小さな症状だから大丈夫」と素人判断するのではなく、特に年配者は大きな病気の予兆かもしれないと、とらえていくべきです。

 

豊福:どんなささいな症状でも構いません。気になることがあったら、遠慮なく診察を受けてください。

 

 心臓病の現れ

 

名誉会長:心臓病にも気を付けたいですが、狭心症や心筋梗塞は、どんな初期症状がありますか。

 

森田:やはり胸の痛みですが、胸の辺りの漠然とした不快感のこともあります。

 

豊福:さらに息苦しさや冷や汗が出る場合は、迷わず救急車を呼んでください。

 

名誉会長:痛み以外に、心臓病の症状は、どんなものがありますか。

 

豊福:脈が乱れることもあります。

 

名誉会長:不整脈ですね。

 

森田:はい。主に脈がドキンと感じたり、ドキドキドキと急に続けざまに打ったりします。頻繁に感じるようなら、検査が必要です。

 

浅川:不整脈も、種類によっては脳梗塞の原因になります。

 

豊福:不整脈の中の心房細動という病気は、脈が不規則に乱れます。そのとき、心臓に血栓ができることがあり、それが血流に乗って脳へ運ばれ、血管を詰まらせて脳梗塞を起こすのです。

 

名誉会長:そういう知識を少しでも知っておくことが大事ですね。それで、どれだけ生命が守られるか分からない。

 

 信仰者だからこそ注意を!

 

豊福:そうなんです。ところで、症状が治まると、病院に来なくなる患者さんがいます。心臓病、脳卒中は経過をよく見なければならない病気です。状態によって薬の量や種類を変更します。定期的に診察を受けてください。

 

森田:昔、学会は「信心しているから、病院には行かなくてもいい」「お題目をあげているから、薬はいらない」と言っているなんて、無認識な批判がありましたが、的はずれもいいところですね。

 

名誉会長:「宗教のための人間」ではない。「人間のための宗教」です。また仏法は道理です。自身の生命のリズムを調節し、生命力を高め、医学も最大限、価値的に使って病気を克服していくのです。ですから、信心しているからこそ、人一倍、健康に注意するのが本当です。「信心しているから大丈夫だ」というのは、ある意味で慢心です。何か症状があったら、病院に行くのが当然です。戸田先生も「医者にかかって治る病気は、医者にかかるべきである。それを、折伏で治すなどというのは、片寄ったものと言わねばならぬ」と、よく言われていた。

 

森田:学会員の方々は、仕事や家事、活動にと忙しく働いているのですから、疲れて当然です。一生懸命な人ほど、疲れも大きいでしょう。ゆえに自分自身で注意し、何かあったら医師に相談しながら、健康を守っていっていただきたいと思います。

 

名誉会長:御書には「必ず心が堅固であることによって諸天善神の守りは強いのである」(979ページ)とあります。「広宣流布のために健康になろう!」――そう一念を燃やせば、医師や薬も諸天善神の働きに変わり、健康の方向へと進んでいけるので

す。

 

 仏法は道理 医学を価値的に活用

 ・健康診断を受ける

 ・医師の助言を聞く

 ・薬は勝手にやめない

 

 普段からの用心が大事

 

豊福:実際、脳卒中や心臓病は、高血圧や糖尿病、高脂血症などを、そのままにしておいた結果、起こることが多いのです。ところが、こうした生活習慣病は、ほとんど自覚症状が現れずに進行していきます。

 

森田:ですから、「何か症状が出たら気を付ければいい」というのではなく、何も症状がなくても、定期的に健康診断を受けていただきたいと思います。

 

名誉会長:「定期的」というのは、どの程度の頻度ですか。また何歳くらいから受けるべきでしょう?

 

豊福:1年に1回は受けるべきです。その場合、近所であれば、大きな病院でも町の診療所でも構いません。

 

森田:事業主には、雇用者に年1回の健康診断を受けさせることが義務付けられています。勤めていない主婦の方も含め、30歳をすぎたら、積極的に健診を受けたほうがいいでしょう。

 

名誉会長:とても健康そうに見えた人が、健康診断を受けて、初めて異常が発見されたと、よく聞きます。健康も普段からの用心が大事ですね。

 

豊福:症状があるのに放っておいて健診を受けない人もいます。まだ研修医のころ、相次いで二人の胃がんの患者さんを診療しました。そのときは、どちらも末期の状態で、手の施しようがありませんでした。なぜ、もっと早く病院に来られなかったのかと悔やまれてなりませんでした。以来、定期健診の大切さを訴えながら、どんな小さな異常も見逃すまいと、日々の診療に取り組んでいます。

 

名誉会長:怖がったり、面倒に思ったりせず、健診は必ず受けるべきでしょう。尊き人生です。「使命」ある人生です。「自分は大丈夫」という油断や慢心で、体を悪くしたら何にもならない。

 

森田:健康診断を受けただけで安心されても困ります(笑い)。大切なのは、結果に基づいた医師のアドバイスを受けることです。場合によっては、薬が必要になることがありますので、きちんと服用してください。

 

浅川:よく聞くのは、高血圧などの薬を自分で判断し、勝手にやめて、その後、倒れてしまうというケースです。

 

豊福:その通りです。大変に危険な状態に陥った方が何人もいます。薬の増減や中止については、絶対に医師の判断に従ってください。

 

浅川:指示通りに飲んでいないのに、医師や看護師には「飲んでいる」と報告する人もいるようです。これも、医師の判断を誤らせるので、正直に伝えてください。

 

名誉会長:先ほども言いましたが、「題目をあげていれば、薬を飲まなくてもいい」というのは妄信であり、仏法とは相いれません。信心しているからこそ、人一倍、健康に留意する。賢明に生きていく。そして、はつらつと人々のため、社会のために働いていく――これが仏法の目的です。

 

 お年寄りにはかかりつけ医を

 

豊福:医学は、「治療の時代」から「予防の時代」に入りました。特に、自覚症状のない生活習慣病は、ますます予防が大事になります。

 

森田:高齢者の健康も、そうです。高齢になると、熱が出にくいなど、病気の症状が現れにくくなります。しかし、声の調子、顔色、食欲など、わずかな変化の中に症状が現れていることがあるのです。

 

浅川:外来の患者さんの、せきの感じがいつもと違うので、精密検査を勧めたところ、肺がんが見つかったことがありました。

 

豊福:お年寄りは症状を自覚することが少ないので、家族の方は注意が必要です。また、かかりつけ医がいれば、日ごろの様子や病歴を踏まえて診察できますので、強い味方になります。

 

名誉会長:そうですね。32年前、トインビー博士と私が対談したとき、博士は83歳でしたが、「かかりつけの医者」の重要性を強調されていました。「専門医と違って、患者やその環境を個人的によく知っているからです」と言われていました。また博士は「彼(かかりつけの医者)は、自分が診察している家族全員の友人であり、信頼できる友なのです」「患者を人間として理解しており、互いに敬意をもち信頼し合うという人間的な関係にあるため、その技量を効果的に用いることができるのです」とも語っておられた。医師と患者がこうした人間的な信頼の絆を築いていくことが、ますます重要ではないだろうか。

 

 高齢者の健康維持 筋力を保つ生きがいを持つ

 ガルブレイス博士「年配者は精神的な努力を継続せよ」

 広布の活動は最高の精神闘争

 出会いを広げ 友情を結ぶ

 積極人生こそ長寿の条件

 

老化で悪いのは無関心

 

名誉会長:そこで、もう少し具体的にうかがいたいのですが、高齢者の健康維持は、どんな点を注意すればいいですか。

 

豊福:一つは筋力を落とさないことです。足の筋力が落ちると、つまずいたり、転んだりしやすくなります。おなかや背中の筋力が弱まると、腰痛も現れます。

 

名誉会長:筋力を保つには、何が大切でしょうか。

 

森田:自分でできる日常のことは、自分でやる。そう心掛ければ、必要な筋力は保たれます。

 

名誉会長:散歩やラジオ体操など、適度な運動も大切ですね。

 

豊福:はい。もう一つのポイントは「生きがい」を持つことです。長寿や痴呆予防に不可欠であると、医学的にも証明されています。

 

浅川:確かに何かに打ち込んでいるときは、心身が生き生きとします。

 

名誉会長:「張り」をもち、何かに真剣に取り組んでいくことですね。フランスの作家アンドレ・モーロワは語っています。「老化にともなういちばん悪いことは、肉体が衰えることではなく、精神が無関心になることだ」(中山真彦訳)と。「攻めの人生」というか、何かに挑戦する。希望に向かって進むことが大切です。

 

浅川:「人付き合いがいい」「交際が広い」といった、周囲との積極的なかかわりも長寿者の要件です。

 

森田:そうですね。自分の世界が大きく広がる。人生を何倍にも楽しむことができます。

 

名誉会長:世界的な経済学者であるガルブレイス博士も言われていた。博士は今、95歳です。「年配者の最大の誤りは、仕事から引退してしまうことです。やるべき仕事がなくなれば『肉体的努力』と『精神的な努力』を、しなくなってしまう。特に『精神的な努力』をやめることは、非常によくありません」いわんや、私どもの信心に、「引退」はない。広布の活動は、生命力を増す「最高の精神闘争」です。生命の根本的な健康法とも言えるのです。行動の春です。多くの友と積極的に出会いを広げ、宝の友情を結びながら、若々しく、さっそうと前進しましょう!

 

◇ 健康と生命と仏法を語る 第6回 「歴史を変えた病 〈上〉」   2004-4-8

 

人類の歴史は病気との闘争

ヒルティ「病気が心を耕して、深く、大きくしてくれる」

闘った分だけ生命は強くなる

 

池田名誉会長 :鳥インフルエンザが国内で問題になっていますね。

 

森田ドクター部長 :はい。最初に山口県で検出されましたが、その後、大分、京都

でも、検出されています。これらの鳥インフルエンザは、極めて似たウイルスによる

ことが分かっています。感染力が強く、いずれも鶏の大量死が見られます。

 

名誉会長 :感染症は怖いですね。31年前になりますが、世界的な微生物学者であ

り、ピュリツァー賞にも輝いた、アメリカのルネ・デュボス博士とお会いしたことが

あります。〈1973年11月〉その年の春、私は、2年越しのトインビー博士との

対談を終えました。その最後の日に、トインビー博士は、ご自身の友人を私に紹介し

てくださった。その中の一人がデュボス博士だったのです。デュボス博士はつづって

います。「疫病はしばしば、政治の歴史をつくってゆく上で政治家や軍人よりも大き

な影響を及ぼしてきたし、また疾病が文明の気分にある色を与えることもある」(

野敬訳)確かに疫病は人類の歴史に大きな影響を与えてきた。人類の歴史は、ある意

味で、そうした病気との闘いの連続であったともいえるかもしれない。

 

浅川白樺グループ副委員長 :新しい感染症も生まれています。今後も必ず現れると

思います。

 

名誉会長 :今回は、いつもと雰囲気を変えて、こうした病気との闘いの歴史につい

て考えてみてはどうでしょう。

 

森田・豊福ドクター部救護運営室議長・浅川 :よろしくお願いします。

 

鶏肉・卵は70度に

加熱して調理を

 

名誉会長 :話は戻りますが、鳥インフルエンザは、人にも感染することがあります

か。

 

豊福 :国内では、そうした報告はまだありませんが、今回、タイとベトナムで人へ

の感染が確認されています。幸い、人から人へ感染が広がらなかったため、大流行に

は至っていません。

 

森田 今、一番心配されているのは、そのことです。鳥から人への感染が繰り返され

ることで、このインフルエンザウイルスが、人から人へ感染する能力をもつようにな

るのが怖い。ですから、早期に発見し、人に感染する能力をもつ前に根絶しようとし

ているのです。

 

名誉会長 :前に話題になった時(第1回)には、鶏肉や鶏卵は食べても安全であると

のことでしたが。

 

豊福 :ええ。今までは、鶏肉や鶏卵から感染したケースはありません。これまで人

に感染したのは、感染した鳥と近距離で接触した場合、または鳥の内臓や排泄物に接

触した場合がほとんどです。

 

森田 :感染した鶏やその卵が市場に出回るということも、現在はないと思います。

それでも心配な方は、食品の中心温度がセ氏70度に達するよう加熱してから使って

ください。そうすればウイルスは死滅します。

 

浅川 :鳥インフルエンザは日本だけでなく海外でも発生しているようですが、そう

した国への旅行は大丈夫ですか。

 

森田 :人の間で感染が広がったという例はありませんから、心配する必要はありま

せん。ただ、鳥インフルエンザが発生・流行した地域などを訪れ、不用意に生きた鳥

などの施設へ近づくようなことは、やめてほしいですね。

 

名誉会長 :小鳥などをペットとして飼う人も多い。家で飼っているペットヘの感染

は心配ないですか。

 

豊福 :鳥インフルエンザが鶏やアヒルなどに感染することは知られていますが、

ペットの小鳥がすぐさま感染の危険にさらされることはありません。

 

浅川 :ただ、鳥インフルエンザに限らず、鳥や動物は、人への感染の有無は別とし

て、さまざまなウイルスを保有していることがあります。ですから、動物に触れた手

は洗うこと、排泄物は速やかに処理し、清潔にすることを心掛けてほしいと思いま

す。健康を維持するためには、まず感染源を体に寄せつけないことです。

 

名誉会長 :よく分かりました。身近なことが大切ですね。たとえば風邪などを防ぐ

ためにも、日常的に手洗いやうがいが大切なのに、意外とやっていないものです。仏

典によれば、釈尊も、食前に手洗いや、うがいを必ず行うよう、弟子たちに教えてい

たとされる〈「四分律」〉。普段の心掛けを大事にするのが、健康の智慧です。

 

ペスト

ユダヤ人の虐殺を招く

未知の恐怖から悲劇が

知識と知恵が命を守る

 

憎悪のデマが

迫害を生んだ

 

名誉会長 :動物から感染して、人類に大きな被害を与えた病気には、ペストがありますね。

 

浅川 :はい。14世紀に大流行し、ヨーロツパを席けんしました。

 

森田 :ペストは「黒死病」と呼ばれ、恐れられました。高熱を発し、体に出血性の紫斑が現れ、全身が黒ずむところから、そう呼ばれたようです。しかし、それがペスト菌によるものだとは分かっていませんでした。

 

名誉会長 :どれくらいの被害が出たのですか。

 

豊福 :死者はヨーロッパだけでも2500万人に及んだのではないかと推定されています。第2次世界大戦での(連合国と枢軸国の)戦死者数3800万には及ばないまでも、当時の人口を考えると、その死亡者は、どんな戦争も比較になりません。

 

森田 :人口が密集する都市では、死亡者の数は人口の半分を超えていたのではないかともいわれています。

 

名誉会長 :二人のうち、どちらかが死ぬ――そうした不安が当時の社会を覆った。原因も分からない――言い知れぬ恐怖が、さらなる悲劇を生んでいった。

 

豊福 :はい。ユダヤ人への迫害です。黒死病の流行は「ユダヤ人が井戸に毒を投げ込んだからだ」との根拠のない噂が広まり、虐殺が繰り広げられました。

 

名誉会長 :ペストの歴史を語る上で見過ごすことのできない史実です。この噂は恣意的に、ねつ造されたデマであったともされている。

 

豊福 :ユダヤ人に対する、日ごろからの、いわれなき反感・憎悪が火を噴いたといわれます。

 

森田 :多くのユダヤ人が、焼き殺され、死体は樽に詰められ、川に沈められたといいます。また居住区が焼かれ、財産を没収された人もいた。犠牲者には、ユダヤ人だけでなく、当時のハンセン病患者もいました。

 

名誉会長 :根も葉もない噂が既定の事実として流布され、時に多くの人々を狂気の行動へと駆り立て、ほんろうしていく。そうした恐ろしさを人間社会はもっている。特に災害や疫病のような社会不安のときには、それが強まる傾向があります。

 

浅川 :関東大震災の際の朝鮮人虐殺もそうですね。

 

名誉会長 :断じて忘れてはならない、また繰り返してはならない悲劇です。世の中、いったい何が「真実」で、何が「ウソ」なのか――。事象の奥にある本質をとらえる眼をもたねばならない。そして、虚偽や悪と戦う「賢さ」と「強さ」をもたなければ、正義を守り抜くことはできない。邪悪がまかり通る社会になってしまう。

 

浅川 :健康を守るためにも、そうした賢さや強さをもって、正しい知識を得ていくことが大切だと思います。ペストは当時、病原体も感染経路も分かっていなかったため、感染を防ぎようがありませんでした。もし分かっていたら、そうした悲劇も最小限にとどめることができたのではないかと思います。

 

名誉会長 :そうですね。何でも正しい知識がないと損をする。だまされてしまう。まして病気は生死にかかわってくる重大問題です。

 

森田 :ペストは今日、大流行する危険性はほとんどなくなりました。その原因には、ペスト菌をもつノミが取り付いたネズミの駆逐など、さまざまな説が挙げられていますが、やはり大きいのは、人類が都市・公衆衛生に取り組んだことだと思います。

 

「牛痘を受けると毛むくじゃらに」

 

名誉会長 :人類の歴史には、勇気ある人々が知の力で偏見を打ち破り、真実を明らかにして、病気を撲滅したケースもあります。天然痘が、そうですね。

 

森田 :はい。1980年に、WHO(世界保健機関)が天然痘の根絶を宣言しました。この人類の不幸の一つが地球上から消滅したのは、つい24年前のことなのです。

 

豊福 :18世紀のヨーロッパでは、100年間の天然痘による死者が6000万人にも達したといわれています。

 

名誉会長 :撲滅の原点となったのは、イギリスのジェンナーによる牛痘接種法の発見(1976年)ですが、初めは偏見との闘いだった。専門家の医師は認めない。権威ある王立協会は、ジェンナーの論文を受け取らない。当時の聖職者は、牛痘を人間に植え付けるなど「神の道の妨害だ」と説教したという。また、「牛痘を受けると、牛のように毛むくじゃらになり、しっぽがはえる」と詩に歌われ、多くの人が信じたといいます。今から見れば笑い話のようですが、新しい動きに対しては必ず、古いものからの攻撃があるものです。

 

森田 :ところが、牛痘の効果が知られていくと、次第に人々はジェンナーを認め始めます。

 

名誉会長 :御書に「道理証文よりも現証にはすぎず」(1468ページ)とありますが、「実証」は力です。真実の「現証」ほど雄弁なものはない。

 

天然痘

勇気が不幸を根絶

偏見に耐え種痘法を実証したジェンナー

真実ほど雄弁なものはない

 

「神に背くもの」

 

名誉会長実 :実は、牛痘接種法の前段階となる人痘接種法(天然痘患者の膿を植え付ける)の普及にも同じような障害がありました。

 

豊福 :トルコ駐在のイギリス大使夫人モンタギューが母国に伝えたと、聞いたことがあります。

 

名誉会長 :ジェンナーより約80年前のことです。人痘接種法は、ヨーロッパよりも早く、中国、インド、アラビアなどで行われていた。彼女は、弟を天然痘で亡くし、自分もかかって、その美貌を失ったという。その後、イスタンブールで人痘接種法を知って、自分の息子に試してみる。結果は、見事、成功。各方面に手紙を書き、普及に努めたのです。

 

浅川 :やはり非難が巻き起こったのでしょうね。

 

名誉会長 :そうです。古い知識にとらわれた医師は「命を奪うもの」と中傷し、聖職者は「神の御心に背くもの」と妨害した。しかし夫人は屈しなかった。著名な医師の前で、自分のほかの子どもにも接種して、やはり効果があることを証明してみせた。その勇気ある行動が種痘への理解を広げ、天然痘の予防療法の可能性を開き、ジェンナーの牛痘接種法へと続いていったのです。風評を恐れることなく、正しいことは正しいと言い切っていく。その真実と正義の叫びが、必ず新しい時代を開いていく。

 

「白いペスト」

 

名誉会長 :感染症といえば、結核も人類を脅かした病気ですね。私も若い時代、苦しめられました。

 

森田 :結核は、19世紀のヨーロッパで、「白いペスト」と呼ばれ、当時の死亡の最大の原因でした。

 

名誉会長 :どれくらいの人が亡くなったのでしようか。

 

豊福 :正確な数字はわかりませんが、ヨーロッパでは死亡者の4人に1人が結核であったといわれています。

 

名誉会長 :大流行した原因は、何だと思われますか。

 

森田 :当時、ヨーロッパ諸国に産業革命が広がっていました。大量の労働者が農村から工業地帯へと移動します。そうしたなかで、過重な労働、不衛生な住居、栄養不良などが、結核菌をまん延させる土壌となったようです。

 

豊福 :安らぎや楽しみのない都市での生活が、心理的なストレスとなり、進行に加担したともいわれています。

 

名誉会長 :なるほど。先ほど紹介したデュボス博士は、こうしるしています。「あきらかに、ただ病原微生物をもってきただけでは、流行状態をおこすにはたりないことが多い。そして、流行はみんな、なんらの社会情勢で条件づけられたことを、しめすことができよう」(田多井吉之介訳)と。人類に画期的な変革をもたらした産業革命が皮肉にも、結核を流行させることにもなってしまった。文明が病気をつくったともいえる。

 

結核

産業革命 文明が病をつくりロマン主義 病が文明をつくる

 

結核で死んだ作家・芸術家

 

名誉会長 :当時の犠牲者の中には、多くの有名な文化人もいた。

 

浅川 :はい、調べてみたところ、18世紀だと啓蒙思想家のボルテール、画家のワトー、作家スターンがいます。19世紀に入ると、詩人のキーツ、作家のエミリー・ブロンテ、音楽家ではショパンやパガニーニが結核で亡くなっています。20世紀の前半だと、作家のチェーホフやカフカなどです。

 

名誉会長 :結核は、18世紀から19世紀にかけてヨーロッパで花開いた「ロマン主義」にも影響を及ぼしていたようだ。

 

森田 :文学や芸術にもですか。

 

名誉会長 :作家のデュマ・フィスは、こう書き残しています。「一八二三年と一八二四年には、肺病が流行だった。みんな、とくに詩人は肺病だった。ひどく感動して感激するたびに血を吐き、三〇歳に達する前に死ぬことはよい形だ」(田多井吉之介訳)と。そうした病弱や早逝を美化するごとき風潮は、当時の時代、社会状況の反映かもしれない。いずれにしても、結核が人間の文化に影響を与えたといえる。さらに言えば、病気が文明を方向づけたといってもよいでしょう。

 

大病の人は人生の深さを知る

 

名誉会長 :しかし、文学の世界では美しく描かれても、現実の結核は本当に苦しくつらい。なった者にしか分からないでしょう。私は、10代の後半からずっと、胸を患っていた。体はやせ、ほおはこけた。寝汗はひどいし、血痰も出る。病状はかなり重かった。自分の体のふがいなさを何度も思い悩みました。戸田先生は、絶えず、そのことを心配してくださっていた。「お前も長生きできない体だな。できることなら、私の生命を削って、お前にあげたい」と。そのたびに、私は生き抜かねばなら

ない。自身の使命を果たすまで、断じて生きてみせる!師の慈愛にこたえるために!と、広布への闘争にまい進した。あの苦闘の日々があればこそ、病弱な人、病の人の心も分かるようになった。一瞬一瞬を片時も無駄にせず、最大に充実させて生きてこられたのです。

 

豊福 :ヒルティ(スイスの哲学者)だったでしょうか、「病気が心を耕して、深く、大きくしてくれる」と言っています。〈「河の氾濫が土を掘って田畑を耕すように、病気はすべて人の心を掘って耕してくれます。病気を正しく理解してこれに耐える人は、深く、強く、大きくなり、それまで理解できなかった識見や信念を体得するにいたります」(岸田晩節訳)

 

名誉会長 :戸田先生もよく、「大病を患った人は人生の深さを知っている」と言われていた。まったく、その通りだと思う。戸田先生も大病を患われた。大病と闘いながら、法のため、社会のために、行動し抜いてこられた。病気と闘うからこそ、人生の苦も楽も分かるし、不屈の精神力も鍛えられる。また、闘った分だけ強くなる。健康な生命になるのです。人類も同じです。「感染症」という新たな脅威と試練にぶつかるたびに、全人類の知識を結集し、知恵を発揮して新しい文明の沃野を開拓してきた。病気との闘争を通じて、進歩の歩みを勝ち取ってきた。ともあれ、これからの時代は、ますます健康が焦点になっていくことでしょう。一人ひとりが健康に対する正しい知識と哲学をもって、価値ある人生を生ききっていきたいものです。

 

◇ 健康と生命と仏法を語る 第7回 「歴史を変えた病 〈下〉」 2004416

 

衛生改革へナイチンゲールは挑戦

庶民の女性に直接、訴えた

健康の智慧を説いた著作がベストセラーに

 

森田ドクター部長 :今回も、前回に引き続き、人類の病気との闘争の歴史について語り合いたいと思います。

 

池田名誉会長 :人類の健康の守り手といえば、忘れてはならない人物がいます。アメリカの詩人ロングフェローは、その人を讃え、こう詠っている。「見よ、悲惨のきわみのとき / ランプを手に歩む女性の姿あり。/ 薄暗がりの中を病室から病室へと / 静かにゆっくりと彼女は進む。/ さながら至福の夢の影のように / おもむろに過ぎ行くその姿。/ 声を忍んで苦しみに耐えている患者は / 暗い壁に落ちるその影に / せめてもとくちづけするのだった」(中村妙子訳)

 

浅川白樺グループ副委員長 :ナイチンゲールですね。

 

名誉会長 :そうです。有名な詩です。

 

浅川 :ナイチンゲールについては、これまで池田先生が折に触れて語ってくださいました。

 

名誉会長 :そうですね。「クリミアの天使」と讃えられた彼女の崇高な生涯を思うとき、私は「妙法のナイチンゲール」として医療の場や地域で慈愛の看護に徹する、尊き「白樺(看護者の集い=白樺会・白樺グループ)」の友の姿を思い起こさずにいられません。あらためて感謝申し上げたい。

 

浅川 :ありがとうございます。

 

責任感が改革に立ち上がらせた

 

名誉会長 :ところで、クリミア戦争の時、イギリス軍では、戦場より病院で亡くなった兵士のほうが、はるかに多かったといわれている。

 

豊福ドクター部救護運営室議長 :総死亡数2万人のうち1万6000人が戦場ではなく、病院で亡くなったそうです。

 

名誉会長 :原因は病院の劣悪な環境にもあったようですね。ナイチンゲールが赴任した当時、病院には、収容人数をはるかに超えた患者が押し込まれていた。必要最低限の医療器具や医薬品にも事欠き、ノミやシラミが大量に発生するほど不潔な状態だったといいます。

 

森田 :はい。汚染された水、汚れた空気、過密状態のベッド、日当たりの悪い部屋など、病院内の不衛生な環境によって、院内に感染症などの病気が広がりました。ひん死の状態で運ばれた兵士たちは、その病気の犠牲となったのです。

 

浅川 :ナイチンゲールは、眼前の患者のためにわが身をなげうって尽くし、病院の改革にも真剣に取り組みましたが、それでも多くの犠牲者を出してしまいました。その自責の念に駆られて、帰国後、母国の衛生改革に立ち上がったともいわれています。

 

名誉会長 :彼女は責任感が強かった。「人間の言葉のうちで『私は知りません』ほど情けない言葉はありません」()とも、記しています。ですから、多くの兵士の命を奪った衛生問題についても、黙っているわけにはいかなかった。「二度と悲劇は起こさない!」との断固たる決意で立ち上がったのでしょう。人間の生死を預かり、真剣に向き合っていく、看護師さんほど、責任の重い仕事はありません。また、「私がいるから大丈夫!」と、深き使命感に立つからこそ、数え切れない蘇生のドラマも生まれるのでしょう。

 

評判が何だ!

批判が何だ!

 

名誉会長 :話は戻りますが、当時のイギリス国内の衛生状況はどうだったのでしょう?

 

森田 :まだ衛生環境が整っておらず、人口が集中する都市部では、大勢の人が極度に不潔な環境で暮らしていました。ロンドンでは、コレラで毎年、1万8000人が亡くなったといわれています。

 

浅川 :ナイチンゲールは、そうした衛生問題を解決するよう政府に働き掛けます。しかし「衛生の改善によって、どれだけ病気を防ぐことができるのか疑問だ。だから公金は、病気の原因を探る研究のために使うべきだ」と、批判の声が上がったそうです。

 

豊福 :公衆衛生に対する認識がまだ浅かったのでしょう。政府の衛生委員会は当時、流行していた感染症は「衛生改革をしても避けられない」と報告したといわれています。

 

名誉会長 :いつの時代も先駆者というものは、必ず無理解な批判を受ける。ナイチンゲールは、つづっています。「人がめったに経験しないような人生の道を歩みながら、私はいつも感じていました――世間の評価はけっしてその人間の真骨頂を明らかにするものではないことを」()世間の評判が何だ!批判が何だ!彼女は、ひとたび自らの進むべき道を決めると、どんな障害があっても、最後まで決心を曲げなかった。自分自身の信念に徹して生き抜いた。政府が動かぬならと、今度は、家庭における衛生の重要性を、女性たちに直接、訴えようと本を著します。

 

『看護覚え書』

 

浅川 1859年に出版された『看護覚え書』ですね。そこには「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさを適切に保ち、食事を適切に選択し管理すること――こういったことのすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えること」(『ナイチンゲール著作集』第1巻、現代社)とあります。

 

名誉会長 :彼女の看護観の真髄を表した有名な言葉です。この『看護覚え書』は、専門の看護師のためではなく、一般家庭の庶民の女性のために書かれたものだった。庶民が一番、大切です。庶民が根本です。だからこそ彼女は、庶民に直接、訴えていったのでしょう。事実、この本は発売1カ月で1万5000部が売れ、ベストセラーになり、あらゆる境遇の人の読むところとなった。また、フランス・ドイツ・イタリアなど各国語にも

翻訳され、彼女の150に上る著作の中で最も大きな反響を呼んだ。

 

浅川 :私も、看護学校時代に薦められて以来、何度も読み返してきました。健康を守る知恵や看護の在り方が詳しく説かれていて、今読んでも、少しも色あせていません。それどころか、ますます新鮮に思えます。

 

名誉会長 :活字の力は大きい。魂を込めた一書は、人々の心を打ち、やがて国を超えて広がっていく。時を超えて、永遠に輝いていく。

 

看護とは

新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさを保ち、食事を管理すること

 

家庭に病気の人がいる場合

 

浅川 :やがて、都市部の感染症による死亡率は低下します。

 

名誉会長 :衛生状態を改善すれば、どれほど多くの人の命を救うことができるか――ナイチンゲールの改革の功績は、今も不滅の光を放っています。

 

浅川 :確かに、その通りです。先ほど紹介したナイチンゲールの看護の条件は、現在、病気の人がいる家庭にも当てはまります。

 

名誉会長 :家庭に病気の人がいる場合、どんな点に注意すればいいですか。

 

浅川 :まず、@部屋は、できれば日当たりが良く、換気のできる部屋がいいと思います。ただし、ベッドや布団は、直接、光が当たらない位置に置いてください。

 

名誉会長 :部屋の温度や湿度は、どのくらいに保てばいいですか。

 

豊福 :季節や病気の人の状況によって変わりますが、A室温は、夏でセ氏25〜28度、冬はセ氏17〜22度が快適に過ごせる温度だと思います。ただ夏は、外気との温度差が5度以上にならないようにしてください。

 

浅川 :B湿度は夏は50〜60%、冬は40〜50%に保ち、せきがひどかったり、のどが痛かったりする時は、加湿器などを使用し、少し湿度を高めにしたほうがいいと思います。

 

名誉会長 :食事で気を付ける点はありますか。

 

浅川 :C食事の基本は必要なエネルギーや栄養が十分に含まれている、ということでしょうか。

 

豊福 :病気によっては、制限があったりするので、医師とよく相談してください。

 

 

森田 :消化のいいものを選び、食欲を出させる工夫も必要です。むせたり、のどに詰まらせたりしないように、流動食がいいか、小さく刻んだほうがいいか考えてほしいですね。

 

病人がいる家に夜分、電話しない

 

名誉会長 :体が不自由な方の場合、寝床や衣服、体を清潔に保つのにも周囲の手が必要ですね。

 

森田 :はい。病状の悪化や他の病気の併発を避けるためにも、清潔は大切です。D寝床は可能であれば、布団を敷くより、ベッドのほうが衛生的です。畳の上に布団を敷く場合は、時々、敷布団の位置を変えて、畳の湿気を除いてあげてください。

 

浅川 :E寝間着は小まめに洗濯し、常に清潔にしてほしいですね。シーツも週に2回以上取り換えるといいと思います。F体はできる限り毎日、ふいてあげるのが望ましいでしょう。全部ふけない時は、部分的に分け、少しずつでもふいてあげてくださ

い。

 

豊福 :G食事が普通に取れない方には、口の中の手入れも必要です。だ液の分泌が低下し自浄作用が落ちていますので、朝晩、口に水を含ませてゆすいだり、汚れを綿棒等で取ってあげたりするといいと思います。

 

浅川 :またH精神的な配慮として、静かに落ち着いて休めるよう、光が直接、目に入らない工夫をしたり、物音にも注意してあげてほしいですね。ですから、病気の人がいる家庭に、夜遅く電話することは控えるべきだと思います。

 

森田 :お題目は、横になってしてもいいのでしょうか。

 

名誉会長 :もちろんです。体調の悪いときには、無理に正座することはありません。「場合に応じて、読経はせず、唱題だけでもよいし、御本尊に向かってしなくてもよいのですよ」と仰せの御書もあります〈1203ページ〉。大切なのは、題目をあげようという「心」です。聡明に判断すればいいのです。

 

教育こそ予防策

 

名誉会長 :ところで、現在、世界に拡大している感染症の一つに、エイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)がありますね。

 

浅川 :はい。アフリカを中心に多くの感染者を出しています。

 

名誉会長 :エイズについては、まだワクチンや根治薬はないのですか。

 

森田 :発症を遅らせたり、症状を改善する薬は開発されましたが、根治薬やワクチンは開発されていません。ですから今、一番重要なことは感染を防ぐ予防策です。

 

豊福 :日本ではエイズについての意識が、若者を中心に低く心配です。先進国の多くで新たな感染者の発生が毎年、減少しているのに対し、日本は増加傾向にありま

す。

 

名誉会長 :正しい知識の普及と高い予防意識が大切ですね。私が対談したカナダ・モントリオール大学前学長のシマー博士も、「エイズウイルスの感染力は、決して強くはありません。感染に対する予防を行うことで、エイズの拡大を最小限に食い止めることは可能です」、また「『エイズ教育』を行うことが、エイズ拡大を食い止めるうえで大切になってきます」と強調されていました。では、将来、人類は、こうした感染症をはじめとする病気を撲滅することができると思いますか。

 

豊福 :医学は年々歳々、進歩しています。かつて難病といわれた病気も、人類は挑戦に次ぐ挑戦を重ね、克服してきました。今後も、そうでしょう。しかし、ゼロには

ならないと思います。

 

森田 :医学が発展する一方で、新たな感染症も発生しています。これは社会がグローバル化(地球規模に拡大)していることも一因です。それまで一地域の風土病だった感染症が、交通手段の発達等により、人間の移動・交流とともに世界に広がっているのです。

 

豊福 :歴史的に大流行したペストやコレラも、もともとは一地域の風土病であったといわれます。将来も未知の風土病が、世界的に拡大する可能性は十分あります。

 

名誉会長 :サーズ(SARS=重症急性呼吸器症候群)もアジアで発生し、全世界に広がりましたね。まさに病気には国境がない。その意味からも、人類の防疫体制には、国を超えた対策・協力が必要になってきます。

 

森田 :インフルエンザに関していえば、現在、WHO(世界保健機関)では、世界121カ国に約200カ所の国内インフルエンザセンターを設け、監視を続けています。さらに各国間で、情報を共有し、新型インフルエンザの大流行を防ぐ取り組みが進められています。

 

「核戦争防止国際医師の会」

 

名誉会長 :国境を超えた協力といえば、15年前(1989年10月)IPPNW(核戦争防止国際医師の会)のミカエル・クジン会長と、「医師の国際的な連帯の重要性」などについて語り合いました。

 

森田 :確か、IPPNWの誕生の秘話も紹介されていましたね。

 

名誉会長 :そうです。発端は、3人の旧ソ連人医師と3人のアメリカ人医師による、スイスのジュネーブでの会談でした。東西冷戦の真っただ中、イデオロギーが全く違う大国の医師の語らいは「最初はケンカばかり」。二日間議論したが、何一つまとまらず、お互いにテーブルをドンドンとたたいて怒鳴り合ったり、席をけって出ていったりする場面もあったという。だが、医師として、「生命尊厳」という共通認識に立ったとき、一切の対立は氷解する。「私たちは医師だ。医師として『すべての生命を守る』使命がある。それがコレラであれ、エイズであれ、核兵器であれ、力を合わせて闘う使命がある」――。こうして、人類の「最悪の疫病」である核兵器の廃絶のため、「核戦争防止国際医師の会」が発足したのです。その会議におられたのが、ソ連のクジン会長であり、以前、この座談会でも紹介した、IPPNW共同創設者のアメリカのバーナード・ラウン博士です。

 

母の叫びが政府を動かした

 

名誉会長 :クジン会長との語らいの際、話題に上ったのが、四十数年前の日本に、「1000万人分の生ワクチン」を緊急に提供した旧ソ連医学者の献身的な医療援助でした。

 

豊福 :ポリオ(小児まひ)が大流行した年に行われました。ポリオに感染すると、発熱、頭痛、吐き気が起き、弛緩性のまひが現れて、一部の人は生涯、まひが残ります。

 

名誉会長 :次々と倒れるわが子に、母たちの嘆きはどれほどであったろうか。確か1960年(昭和35年)には前年の3倍、5600人以上が感染し、3000人を超える子どもが亡くなっています。

 

森田 :当時、ポリオに有効とされる生ワクチンの使用が、日本の法律では認められていませんでした。

 

名誉会長 :日本でのポリオの猛威を救ったのが、旧ソ連から贈られた生ワクチンでした。ソ連ではすでに数百万の子どもに生ワクチンを使用し、ポリオを克服していた。しかし当初、日本は、ソ連からの提供の申し出を、いわゆる「反ソ」的政治勢力や製薬会社が法律を盾に反対する。母たちはわが子のために立ち上がった。「子どもたちに生ワクチンを!」。その叫びが全国的な運動に広がり、役人の重い腰を動かした。ソ連の生ワクチンを、1000万人分、緊急輸入することを決めたのです。

 

壁を破った

勇気と挑戦

 

名誉会長 :だが、一口に,「1000万人分の生ワクチン」といっても、製造は並大抵ではない。「10日以内に零度に保って空輸」という日本政府の無茶な要求や、国家やイデオロギーの障壁、官僚の緩慢な対応―― 一切の壁を破ったのは、ソ連医学者の勇気と挑戦でした。モスクワ郊外のポリオ研究所では、24時間、不眠不休でワクチン製造に当たった。「あの時、私たちは真剣でした。まさに戦いでした」と、当時を振り返り、研究所所長は語った。それは、「人間の生命と健康は断じて守らなければならない。そのためには国境など関係ない」との、医師としての使命感、責任感そのものだったのでしょう。

 

森田 :96年に、難民医療調査団の一員として、ネパールの難民キャンプを訪れた時のことが、私は今でも忘れられません。重度の口蓋裂の子どもを前に、医療が充実していれば、治癒できるのにと、何度も悔しさが込み上げてきました。

 

浅川 :同行した小島白樺会委員長も話していました。中耳炎を繰り返している子どもも多いそうです。完全に治りきらないうちに、汚れた川で泳ぐなどして、慢性化してしまう。もっと衛生教育がなされていればと、残念な思いに駆られたそうです。

 

『平和即健康』の世界を

病に国境なし病との闘いのも国境なし

「命こそ宝」の思想を広げたい

 

目的は一つ――苦を除くこと

 

名誉会長 :そうです。教育が大切です。ともあれ、「健康」「生命」に勝る宝はありません。大聖人は仰せです。「生命というものは、あらゆる財宝のなかで最高の財宝です。『宇宙に遍く敷き満つる財宝といっても、身命に値するものはない』と経文に説かれているように、宇宙に満ちあふれた財宝であっても、生命には換えられない」(御書1596ページ)「命こそ宝」との思想を広げていく――「健康な地球」も、この一点から出発するのではないでしょうか。その意味で、医師や看護師の皆さんが果たす役割は極めて大きい。

 

森田 :責任を痛感します。

 

名誉会長 :また、エイズやインフルエンザのような感染症から、尊き生命を守るためには、ますます国境を超えた医療体制の充実・整備が必要になってくるでしょう。「自分の国さえよければ」という考えでは、とうてい病気を撲滅することなどできない時代に入っている。健康も平和も目的は一つ――民衆の苦を取り去ることです。人類は、この目的の下に、人種や民族、思想や利害を超えて団結しなければならない。「平和」という「人類社会の健康」を、どう実現していくか――これが21紀の課題であり、創価学会の挑戦です。仏法の目的も、「民衆の苦を取り去る」ことにあります。そして、仏とは、民衆のあらゆる苦悩に対して「抜苦与楽(苦を抜き、楽を与える)」の行動に徹する人のことです。私たち一人ひとりが、この行動に生き抜くことが広宣流布であり、「平和即健康」の社会を実現する道なのです。

 

◇ 健康と生命と仏法を語る 「第8回 死をどう見るか<上>」   2004422

 

妙法に寿命を延ばす大功徳

御聖訓「法華経の行者は久遠長寿の如来なり」

「わが命は人々のために!」と前進

仏法は若々しく!!

 

「死を学ぶ」のは豊かに生きるため

大聖人 「まず臨終の事を習うべき」

セネカ 「生涯かけて学ぶべきは死」

 

森田ドクター部長 :前々回、結核で亡くなった文化人を紹介したところ、読者の方から他の著名人の死因も、参考のために教えてほしいとの要望がありました。

 

豊福ドクター部救護運営室議長 :「あの人は、どんな病気で、どんな風に亡くなったのか?」――そうした疑問は、高齢社会における健康への高い関心の表れの一つではないでしょうか。

 

池田名誉会長 :いずれにせよ、死を見つめ、そこから学ぶことは大切なことです。以前(第1回)も紹介しましたが、日蓮大聖人は「生まれた者は必ず死ぬという道理を、王から民まで、だれ一人知らない者はない。しかし実際に、このことを重大事と受け止め、このことを嘆く人間は、千万人に一人もいない」(御書474ページ)と仰せです。だれもが死を免れない。「私は関係ない」と言い切れる人は、一人もいません。にもかかわらず、多くの人が遠ざけようとする。真剣に考えていないともいえる。

 

浅川白樺グループ副委員長 :医学が発達して、死を先に延ばすことはできても、死をなくすことはできません。実際、医療技術等の発達により平均寿命が延びた半面、脳死や安楽死、尊厳死といった新たな死の問題が大きな焦点となっています。

 

名誉会長 :その通りです。逃げたところで、やがては死につかまってしまう。死は避けようのない「人間の条件」なのです。

 

豊福 :最近では、「死の教育(デス・エデュケーション)」の試みが、なされています。小・中学生、また医・看護学生などの医療関係者に対する死の教育や、末期がんの人に対する死の準備教育などが行われるようになりました。

 

森田 :大聖人も「まず臨終のことを習ってから、他のことを習うべきである」(同1404ページ)と言われていますね。

 

名誉会長 :そうです。古代ローマの哲人セネカも「生涯をかけて学ぶべきは死ぬことである」(茂手木元蔵訳)と語っています。死を真正面から見すえてこそ、初めて「どう生きるべきか」が明らかになる。人生は確かになり、豊かになる。

 

肝臓ガン 目立った症状がないのが特徴

脳卒中 塩分を控え高血圧の治療を

リウマチ 関節のこわばりに注意

 

アンゼルセンは肝臓がんだった

 

名誉会長 :前置きが長くなってしまいましたが、早速、著名人の死について紹介してください。

 

豊福 はい。代表的な人物について調べてみました。まず、がんで亡くなった主な人には、哲学者のマルクス(肺がん)、思想家エンゲルス(喉頭がん)、作家のアンデルセン(肝臓がん)、精神医学者フロイト(上顎がん、安楽死)、物理学者のキュリー夫人(白血病)がいます。

 

名誉会長 :全世界の子どもたちに夢を贈った童話の王様アンデルセンも、がんだったのですか。葬儀は国葬で行われ、王族から庶民、老人から子どもまで参列し、広大な葬儀場には弔問者の10分の1も入れなかったといわれていますね。

 

豊福 彼は70歳で亡くなりますが、その誕生日には、記念の銅像の建設も決まりました。ですが、その時、すでに体は病に、むしばまれていたといいます。

 

名誉会長 :実はアンデルセンは、自分の容ぼうや不遇な生い立ちへの劣等感、また強度の神経衰弱に悩まされていたという。しかし、そうした苦悩を見事に昇華させ、国中、いや世界中の人々に愛される詩情豊かな作品を生みだした。彼は自伝で記しています。「私の生涯は波瀾に富んだ幸福な一生であった。それはさながら一編の美しい語である」(大畑末吉訳)。その言葉通りの満足の人生だったのではないでしょうか。ところで、肝臓がんには、どんな症状があるのですか。

 

森田 :肝臓は「沈黙の臓器」です。肝臓がんも、進行するまでは目立った症状がありません。ですから、症状だけでは早期発見が難しいのです。

 

豊福 :ほとんどは、慢性肝炎や肝硬変を経て発症しますので、こういう病気のある方は、定期的に診察を受けて、早期発見に努めてください。

 

スターリンは脳卒中で死去

 

名誉会長 :分かりまた。では、脳卒中で亡くった人には、どんな人がいますか。

 

浅川 政治家のフランクリン・ルーズべルト、レーニン、スターリン、音楽家のバッハ、画家のゴヤ、作家のディケンズ、スティーブンソン、化学者のパスツールなどがいます。

 

豊福 :スターリンの73歳の臨終の模様が印象的です。最後の数分になって、彼は、不意に目を開け、周囲を不気味なまなざしで、ぐるりと見渡す。そして突然、左手を上げて威嚇的な身ぶりをしてみせたといいます。

 

名誉会長 :「死に様は生き様を映す」という。権力に執着した人生の最期は、大なり小なり、同じような姿がある。ところで、脳卒中は何に気をつければいいのでしょうか。

 

森田 :はい。脳卒中は、高血圧、糖尿病、高コレステロールが要注意です。そのためには塩分や脂肪分を控えることも大切でしょう。そのうえで、脳卒中の原因となる病気の治療が大事ですので、医師と相談してください。

 

ルノワールはリウマチと闘う

 

名誉会長 :ほかの病気は、どうでしょうか。

 

豊福 画家のセザンヌは糖尿病、植物学者のメンデルは肝臓病、哲学者のベルグソンはリウマチを患っていました。

 

名誉会長 :リウマチは大変ですね。私の父も長い間、苦しみました。

 

森田 :リウマチといわれる病気の代表は、慢性関節リウマチですが、主に手足の関節の痛みや腫れ、変形が起こります。

 

浅川 :画家のルノワールも、そうです。78歳で死ぬまで指の変形に苦しめられますが、それでも絵筆を離すことはなかったといいます。

 

豊福 :亡くなる前、往診に来ていた医師から、2羽の山シギを撃ち止めた話を聞くと、「山シギの位置を変えてくれ。早く絵の具を……パレットをくれ……」と、うわごとを言ったそうです。やがて、彼は息を引き取ります。

 

名誉会長 :病気を患いながら、亡くなる直前まで創造の戦いを続けた。生涯挑戦の人生です。晩年、彼は口癖のように語っていたという。「まず何より、勤勉な人間でなくてはいけない」「勉強しすぎて天才になれない、なんてことはないんだから」(幸田礼雅訳)と。ところで、リウマチは、いつごろからあった病気ですか。

 

森田 :リウマチは、古代エジプト時代から人々を苦しめてきた病気です。病因について研究も進み、治療法も進歩してきていますが、いまだに治療が難しい病気です。悪性関節リウマチは、厚生労働省の「難病」にも指定されています。

 

浅川 :朝、起きた時に指の関節がこわばって動きにくい、全身の関節がきしむなどの症状にはリウマチが疑われます。こういう症状があれば、早めに受診してください。

 

釈尊の逝去の原因は赤痢?

 

豊福 :著名人の臨終といえば、釈尊の場合はどうでしょうか。初めて聞く読者の皆さんも、いると思います。

 

名誉会長 :分かりました。釈尊は、王舎城から故郷・カピラヴァストゥを目指した旅の途中、クシナーラーという所で、80歳で亡くなっています。

 

森田 :旅の途中に立ち寄ったナーディカという村で、何らかの感染症にかかった可能性が考えられます。というのは、その村では、多くの人が次々と亡くなっていたからです。残された人々が、釈尊に故人の死後の運命を繰り返し問い掛けてきました。

 

 

名誉会長 :その後、釈尊は、ベールヴァという村に着きますが、そこで「恐ろしい病いが生じ、死ぬほどの激痛が起った」(中村元訳)とされています。釈尊はすでに、ここで自身の死期を悟ったともいわれる。

 

浅川 :直接の死因は何でしょう?

 

名誉会長 :さらにその後、パーヴァーという地でチュンダという名の弟子がもてなした、きのこ料理を食べたこととされています。経典には、「尊師(=釈尊)が鍛冶工の子チュンダの食物を食べられたとき、激しい病いが起り、赤い血が迸り出る、死に至らんとする激しい苦痛が生じた」()とあります。また、チュンダの出した料理は、いろんな説があって、例えば、上等の野豚の生肉、柔らかな米飯、野豚の好むタケノコであったともいわれています。ところで、このような激しい下血が起こる病気として、考えられるものは何でしょうか。

 

豊福 :食中毒か、食物による細菌性の感染症、おそらく赤痢ではないかと思われます。赤痢は、急性の消化器系の感染症で、飲食物を介してうつります。通常は1〜3日の潜伏期間を経て、発熱し、下痢が起こり、主に粘液質の血便が出ます。

 

森田 :すでに病を患っていた釈尊の体力の衰弱が激しかったことは言うまでもありません。そこに、師の健康・長寿を願って出したチュンダのごちそうを食べたことで、下痢が起こり、かえって釈尊の体力を奪ったのでしょう。

 

「怠ることなく修行を完成せよ」

 

名誉会長 :釈尊は臨終を前に、そばの弟子に、こう語ります。「誰かが、鍛冶工の子チュンダに後悔の念を起させるかもしれない、――〈友、チュンダよ。修行完成者(=釈尊)はお前の差し上げた最後のお供養の食物を食べてお亡くなりになったのだから、お前には利益がなく、お前には功徳が無い〉と言って」()そこで、チュンダへの伝言を託します。――釈尊は、あなたが差し上げた食物によって素晴らしい涅槃に入られたのだから、あなたが供養した食物は、他の供養の食物よりも、はるかに優れた大いなる功徳があると伝えなさい、と。自分の身は病み苦しんでいながらも、他者の身を心配し、苦しまないように慈愛の手を差し伸べる――これこそ「仏法の心」であり、「医学の心」「看護の心」であり、そして深い意味での「健康の心」ではないでしょうか。やがて釈尊は、弟子たちに「もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成なさい」()と告げ、2月15日の真夜中から明け方ころに入滅します。

 

大聖人の御入滅

 

豊福 :そこで今度は、大聖人の御入滅について、考えてみたいのですが。

 

名誉会長 :大聖人は、弘安5年(1282年)10月13日の午前8時ごろ、現在の東京・大田区にあった池上宗仲邸で御入滅されています。現在の暦では、11月21日ごろに当たります。数えで61歳であられた。

 

豊福 :御入滅直前の模様は、確かな文献がなく、想像するしかないようですね。

 

名誉会長 :そうですね。大聖人は、身延に入山された直後の建治年間(1275〜78年)のころから、健康を害されておられた。御書には、御自身の死期をも暗示されています。「この7、8年間というものは、年ごとに衰え、病気がちになっていましたが、大事には至りませんでした。ところが、今年(=弘安4年)の正月から体が衰弱し、すでに生涯も尽きたかと思われます。その上、年齢もすでに60歳に届きました。たとえ十のうち一つ今年は生きながらえても、あと1、2年をどうして生きながらえることができるでしょうか」(1105ページ)大聖人の御生涯は、迫害の連続であられた。特に50歳から約2年半の佐渡流罪では、想像を絶する過酷な生活を強いられた。当然、肉体的な故障や衰弱はあられたことでしょう。具体的には、「下痢」(御書1179ページ)、「はらのけ」(同1097ページ等)と記されているように、胃腸の病気を患われていたようです。

 

豊福 :大聖人の場合、それ以外に具体的な記述がありませんから、病名は断定でき

ませんが、全身の衰弱が胃腸の機能を低下させ、慢性の下痢が体力を奪っていったと

考えられます。

 

森田 :病因は、大腸にあったのかもしれませんね。

 

「かつかう」

 

名誉会長 :身延入山後の御生活も、厳しい寒さや栄養失調など、決して満足なものではなかった。長雨や降雪があれば、山中への食糧の運搬も滞り、窮乏生活を余儀なくされたでしょう。そうした状況を知る門下は、道中の不便さを乗り越えて、数々の食糧を御供養しています。

 

浅川 :なかには、大聖人の御病状を案じ、薬となる品をお届けした方々もいます。南条時光の母も「かつかう」という薬をお届けしました。

 

豊福 :「かつかう」は多分、現在でも漢方薬に使われている生薬の「かつ香」のことではないかと思われます。かつ香は、シソ科の多年草でカワミドリのことです。下痢を止める作用があり、体を温める働きもあります。胃腸症状を伴う風邪などの治療に使われます。

 

名誉会長 :大聖人は、供養されたお酒を温め、「かつかう」を口にされて、「胸は火を付けたように熱くなり、体は、まるでお風呂に入ったように温かくなりました」(同1583ページ)と仰せです。

 

豊福 :「かつかう」は、おそらく当時、民間で広く活用されていたのでしょう。

 

名誉会長 :いずれにしても、大聖人は大難を忍ばれて、生涯、広宣流布の道を生き抜かれ、末法万年の民衆の成仏のために、大法を御本尊として留め残してくださった。病を患われた後も、門下に数々のお手紙を与えられたり、また重要な相伝書をお残しになっておられます。

 

定業・不定業

 

豊福 :ところで、仏法には、定業と不定業という考え方がありますが、「寿命」は

定業と考えてよいのでしょうか。

 

名誉会長 :そう言えるでしょう。過去の行いによって、今世でどのような果報を受けるか、またいつ受けるかが定まったものを「定業」といいます。それに対して、定まっていないものを「不定業」という。

 

森田 :いかなる名医にかかっても、本質的には定業を転換することはできません。仏法でしか、それはできないのですね。

 

名誉会長 :そうです。大聖人は、定業すなわち、すでに定まった寿命でさえも、御本尊に祈ることによって、妙法の功徳力で延ばすことができると教えられています〈同985ページ〉。

 

豊福 :法華経に説かれる「更賜寿命(=更に寿命を賜え)」の功徳ですね。

 

名誉会長 :そうです。そうした例は、御書にも記されています〈同ページ〉。釈尊在世の阿闍世王も、悪瘡のため余命幾ばくもないなか、40年あるいは24年も寿命を延ばした。釈尊に帰依し、温かな慈悲に包まれ、再び生きる希望を得た。中国・天台大師の兄の陳臣は、余命1カ月と宣告されたが、天台に学び修行をして、15年も寿命を延ばしたとあります。

 

浅川 :大聖人は、御自身の祈りで母上の寿命を4年も延ばしたと仰せですね。

 

名誉会長 :これらは、すべて妙法の功力によるものです。

 

「更賜寿命」の寿命とは生命力

 

名誉会長 :死を間近にした釈尊は、遍歴修行者のスバッダを救うために、3カ月の間、寿命を延ばしたともいわれています。「一切衆生の救済への歩みを止めない」との強烈な使命感が、釈尊の生命力をわき立たせたのでしょう。「更賜寿命」とは、「更に寿命を授かる」ということですが、戸田先生はよく、その「寿命」とは「生命力」を意味すると言われていた。信心によって、生命力が旺盛になるのです。大聖人も、病を得られたといっても、胸中には、赤々と広宣流布の炎が燃えておられた。御入滅の7カ月前、大生命力で、青年門下・南条時光の病魔を打ち払う師子吼をされています。「鬼神の奴らめ!この人(=時光)を悩ますのは、剣を逆さまに飲んで、自らノドを突こうとすることだ。また、大火を抱いて大やけどをするようなものだ。さらに、三世十方の仏の大怨敵となることだ。この人の病気をたちまちに治して、かえって守護の善神となって、餓鬼道の大きな苦しみから逃れるべきではないか」(同1587ページ)こう仰せになる、わずか3日前、大聖人は筆を執ることさえ困難であられた。そのため、弟子の日朗に代筆させた書状を、日興上人を通じて時光に送られている。しかし、代書では納得されず、自ら筆を執られ全魂を打ち込まれたのが、この書です。烈々たる気迫の一節からは、病の影など微塵も感じられない。偉大な生命力に、ただただ感嘆するほかありません。

 

森田 :時光は大聖人の渾身の激励にこたえ、病に勝ち、その後、約50年も寿命を延ばします。これも「更賜寿命」の功徳ですね。

 

名誉会長 :大聖人の弟子として、師の理想をわが理想として生きる「使命感」が、時光を更賜寿命させた。御書に「法華経の行者は久遠長寿の如来である」(1136ページ)とあります。正法を弘めようという決意の人、広宣流布への使命を深く自覚した人が、すなわち「長寿の如来」になる。法のため、人々のため、社会のために尽くし、広布に生き抜く人は、生命が輝いている。強く、生き生きとしている。大聖人は四条金吾の夫人に「年はますます若くなり、福運はますます重なっていくでしょう」(御書1135ページ)と仰せになっています。尊い使命の同志の皆さまが、いつまでもお元気で、いつまでも若々しく、希望に満ちた「更賜寿命」の人生を送られるよう、私は朝に夕に祈っています。

 

◇ 健康と生命と仏法を語る 「第9回 死をどう見るか〈下〉」 2004429

 

生も歓喜 死も歓喜

「死」は新たなる「生」への旅立ち

妙法に生き抜く人生は大満足

 

充実の活動から

充実の一生が!

「臨終只今」と完全燃焼を

 

池田名誉会長 かつてフランスを訪れた際、レオナルド・ダ・ビンチが晩年を過ごしたとされる館を見学しました。ダ・ビンチが亡くなったという寝室には、彼のこんな言葉が刻まれた銅板が掛けられていました。

 「充実した 生命は長い 充実した日々は いい眠りを与える 充実した生命は 静寂な死を与える」

充実した一生を生ききった人には、何の後悔もなく、死の恐怖もないという至言です。

 

森田ドクター部長 「一生むなしく過ごして万年に悔いを残してはいけない」(御書970ページ)との御金言を思い出しました。

 

豊福ドクター部救護運営室議長 だれびとも死を免れることはできません。“自分の人生は、まだまだ続く”と思っていますが、一瞬先のことは分かりません。

 

名誉会長 だからこそ、「きょうが最期の一日であっても後悔はない」と言えるような完全燃焼の日々であり、最高に価値ある人生でありたいものです。

 

浅川白樺グループ副委員長 「臨終只今にあり」(同1337ページ)の精神ですね。

 

名誉会長 やがて来る死を、堂々たる「人生の完成」とするのか、惨めな「人生の終えん」とするかは、ひとえに生きている“今”にかかっている。これが人生の実相です。

 

森田 長年、終末医療に携わっている大阪大学の柏木哲夫名誉教授が語っています。「終末期の生き方を通して思うことは、その人の今までの生き方そのものが死に方に凝縮されるということです。ですから、人は生きてきたように死んでいく。良き生は良き死につながる」と。私も医師として数々の臨終に立ち会ってきましたが、同様のことを実感します。

 

一滴一滴に祈りを込めて

 

浅川 私もそう思います。学会員の方々の荘厳な最期の姿には、いつも感動を覚えます。白樺会(婦人部の看護者の集い)の先輩からうかがった、壮年のHさんも、そうです。Hさんは胃がんのため、先輩の勤める病院に入院してきました。当時、64歳で、入会30年。声が大きくて、生命力に満ちあふれた方でした。手術の翌日には、ベッドの上からVサインを出していたそうです。術後の痛みは軽く済み、3日目には、一人で洗面所に行くほどの回復力でした。しかし、すでにがんは肝臓に転移し、医師は娘さんに「もって、あと1年くらいでしょう」と告げていたのです。やがて抗がん剤を投与することになり、この時初めて、本人に告知されました。投与の際、先輩は「点滴の一滴一滴に、祈りを込めていきましょう」と激励しました。先輩自身も一滴一滴が、がん細胞に勝つようにと祈ったそうです。

 

名誉会長 ともすれば孤独になりがちな闘病生活のなかで、看護師さんの励ましは、本当にありがたいですね。最高の薬にもなる。

 

浅川 ありがとうございます。励ましといえば、Hさんはある日、先輩に色紙を見せて、うれしそうに語ったそうです。「これ、宝物なんです。みんなが、こんなに気を使ってくれて。でも一番うれしいね」それは、地域の同志の方々からいただいた激励の色紙でした。

 

名誉会長 励ましは力です。苦痛は薬や治療で和らげることができても、勇気と希望は、励ましでしか、わかせることはできません。

 

森田 はい。それは私も、医師として何度も感じてきました。

 

四方を見れば心楽しき寂光土

 

浅川 Hさんは「あと1年」と言われていた余命を、さらに1年延ばして亡くなりました。亡くなる1週間前のことです。Hさんはお手洗いに行くのが精いっぱいの状態でした。様子を見に病室を訪れた白樺会の先輩に、Hさんは言いました。「私は大丈夫。あなたを待っている人は、私以外にたくさんいるのだから、その人たちの所へ行ってください。最初に、あの人のところへ」そして、同室の方を指さしたそうです。同室の方は、Hさんよりも軽症の方ばかりでした。先輩は全員の容体をうかがい、Hさんの所に戻ってくると、「ありがとう」と言われたそうです。やがてHさんは痛みを訴えることもなく、安らかに旅立ちます。最後は2回、拳を振り上げ、口元で題目を唱えていました。その姿を聞いて、先輩は「Hさんは勝った!」と確信したそうです。

 

名誉会長 日ごろから学会活動で人に尽くし、人を励まし、そして最後は病と闘い抜いた崇高な生涯です。日蓮大聖人は仰せです。「退転することなく仏道修行をして、最後の臨終の時を待ってごらんなさい。妙覚の山に走り登って、目を開いて四方を見れば、何と素晴らしいことであろうか、その世界は寂光土で、地面は瑠璃でできていて、黄金の縄で八つの道の境をつくっている。天から四種の花が降り、空に音楽が聞こえてくる。諸仏・菩薩は常楽我浄の風にそよめき、心から楽しんでおられる。われらもその数の中に連なって、遊び楽しむべきことは、もう間近である」(同1386ページ)「妙なる音楽」「宝石を敷き詰めた大地」「諸仏・菩薩とともに遊ぶ遊楽の境涯」――広宣流布へと完全燃焼した生命は、このように晴れ晴れと「常楽我浄」の大勝利の境涯となっていくと説かれています。

 

「広布の使命を果たしたい!」

 

豊福 ドクター部の医師から、厳かな最終章を迎えた、女子部のOさんの話をうかがったことがあります。彼女は急性白血病でした。貧血がかなり進み、感染による発熱もあり、出血も起こしていました。治療が難しい状態でした。担当ではありませんでしたが、家族に頼まれて、その医師が病室に見舞いに行くと、彼女は言ったそうです。「私はまだ死ねないんです。広宣流布の使命を果たしたいんです」医師は重篤な病状を心配しながらも、その気迫に圧倒され、「広布のためにと祈ることが大事です。頑張ってね」と激励したそうです。1週間後、彼女の部屋に出向くと、ドアが開けっ放しに。「亡くなったのだろうか」と思って中をのぞくと、何と彼女は車いすに乗せられ、大部屋に移るところでした。

 

森田 すごいことですね。

 

豊福 その医師も回復力に驚いたそうです。しかも彼女は1カ月後に退院します。治ったわけではありませんが、通院で十分に治療可能な状態にまで回復したのです。翌年には、仕事にも復帰。休日には、必ず学会活動に励み、やがて友人に弘教を実らせます。それから彼女は寿命を3年延ばし、亡くなります。葬儀には、500人の方々が参列したそうです。

 

「千人の仏が迎えてくださる」

 

浅川 若く名もなき女性の葬儀に、多くの方が来られたのですね。

 

豊福 ご家族の方も何か深い意味を感じとられ、力強く立ち上がっておられたそうです。

 

名誉会長 立派な女性です。“この信心の素晴らしさを一人でも多くの友人に伝えたい”と、彼女は自らの使命に生ききった。そして、多くの人が感謝する、偉大な人生であった。御書には、広宣流布に徹した人の臨終について、「何と喜ばしいことか。一人や二人の仏ではない。1000人や200人の仏ではない。1000人もの仏が迎えに来てくださり、われらの手を取って霊山に導いてくださる。それを思えば、歓喜の感涙を押さえられない」(1337ページ)と記されている。多くの同志の追善の題目に包まれた生命の境涯は、まさに、この御文に通じるでしょう。

 

豊福 それにつけても思うのは、同志の方々のありがたさです。友が入院した、手術を受ける、大変な状態にあると聞けば、わが事のように真剣に祈ってくださる。

 

名誉会長 その通りです。学会の同志ほど尊く、ありがたいものはありません。真心の祈りは必ず通じていく。相手がどういう状態であれ、どんなに距離が離れていようとも、届かないところはない。それが妙法の力用です。

 

月を眺めながら唱題し霊山へ

 

森田 多宝会のKさんという婦人の話をうかがったことがあります。前年に、ご主人を亡くしたKさんは、体調の不良に気付き、看病疲れかと思いながら診察を受けたところ、胃がんであることが分かりました。当時、入会20年の70歳。それまで何一つ大きな病気もしたことのない健康な方でした。ご家族は本人に、進行していて完治が難しい、がんであることを知らせます。するとKさんは「分かった。私も一生懸命に闘うから、一緒に闘ってほしい。一家一族のため宿業を断ち切る闘いをするから」と言ったそうです。

 

浅川 病魔への「闘争宣言」ですね。

 

森田 入院するまで、圏副婦人部長として、厳として学会活動に励みました。入院中には歯医者へ行って治療を受けます。「なぜ今になって?」と聞くと「余命が長いとは思わないけど、悪いところは治しておきたくてね」と。思うところあって、一度、退院。自宅で心ゆくまで唱題し、形見分けも済ませ、家族に「仲良く」と遺言を残し、再び入院します。病室でも、許可をもらってお守り御本尊をご安置。毎日、ゆったりと唱題を重ねたそうです。最期の日も、窓を開けて月を眺めながら、唱題を重ね、霊山へ向かわれたそうです。

 

名誉会長 美事な臨終の姿です。生々世々、宇宙の仏界の生命と冥合しゆく、悠々たる境涯を楽しんでいくことを、深く確信されていたのでしょう。

 

浅川 Kさんの「宿業を断ち切る」との宣言は、「生命は永遠」という、仏法が説く三世の生命観に立たないと言えない言葉ですね。

 

名誉会長 そうです。仏法の深き生命観から言えば、本有の「生」であり「死」である。死は「終わり」ではなく新たな生への「旅立ち」です。明日への活力を得るために「睡眠」を取り、リフレッシュし「充電」する。それに似て、「死」は次の素晴らしき「生」への飛翔となるのです。かつて、「ヨーロッパ統合の父」クーデンホーフ・カレルギー博士と対談した際、博士は語っておられた。「東洋では、生と死は、いわば本の中の一ぺージです。そのぺージをめくれば、次のページが出てくる、つまり新たな生と死が繰り返される――こういった考えだと思います。ところがヨーロッパでは、人生とは一冊の本のようなもので、初めと終わりがあると考えられています」東西の生死観を端的に要約した印象的な言葉です。

 

豊福 確かに、西洋ではキリスト教でも唯物論でも、人間のこの世での生は、ただ一度と考えます。ですから、人によっては「死」への恐怖は東洋人よりも激しく、深刻

になりがちです。

 

名誉会長 博士は、こうも指摘された。「ヨーロッパ人は一生涯、死に脅かされながら、人生を生きています。たいていの人が、口にこそ出さないだけで、つねに死の観念につきまとわれて生きているわけです。東洋、とくに日本で、ヨーロッパよりも死への恐怖心が少ないのは、来世観ないし永遠の生命観をもっているからではないでしょうか」このカレルギー博士をはじめトインビー博士、マルロー博士など、私と対談した世界一級の知性は皆、仏法の生命観、生死観に注目している点で一致していました。

 

米ハーバード大学での講演

 

森田 世界最高峰の“知性の府”米ハーバード大学で93年「二十一世紀文明と大乗仏教」と題する池田先生の講演が、大きな反響を呼んだのも同じ理由ではないでしょうか。〈名誉会長は91年にも同大学で「ソフト・パワーの時代と哲学」と題する講演を行っている〉

 

浅川 「大乗仏典の精髄である法華経では、生死の流転しゆく人生の目的を『衆生所遊楽』とし、信仰の透徹したところ、生も喜びであり、死も喜び、生も遊楽であり、死も遊楽であると説き明かしております」とされた、「生も歓喜、死も歓喜」の講演ですね。

 

豊福 全米宗教学界の第一人者・コックス学部長の講評も忘れちれません。「池田氏は、『死』に対する、今までとは全く異なった観点か非常に興味深い観点を紹介してくださいました。西洋社会は、死を否定したり、死を美化したりする傾向がありますので、そこには、われわれにとって多くの学ぶべき点があると思います」と。

 

太陽が昇るが如き喜び

 

名誉会長 それはそれとして、病気になれば、だれもが不安になる。長く重くなれば、死への恐怖も生まれます。大聖人は、そうした病身の夫を案ずる女性門下を、こう励まされている。「ご主人は過去の宿習が因となって、この長く重い病気にかかられ、その病によって日夜暇なく悟りを求める心を起こされています。それゆえ、今生につくりおかれた小罪はすでに消えてしまったことでしょう。謗法の大悪もまた、法華経に帰依されたことにより、消え失せることでしょう。もしも今、霊山にまいられたならば、太陽が昇って、十方の世界を見晴らすように、うれしく、『早く死んで良かった』と、お喜びになられることでしょう」(御書1480ページ)まさに生死を超えた、悠々たる大境涯です。仏法で説く「死」は、決して苦しみの死ではない。悲しみ、絶望するものではないというのです。「楽しき死」「うれしき死」「大歓喜の死」となるさまを、大聖人は太陽が夜の闇を破って全世界を照らす壮麗な光景に例えられている。妙法に生き抜いた人は、寂しい不安と恐れの「死」ではない。「大安心」と「大満足」の荘厳な死を迎え、永遠の生命を生き抜くことができる――。これが御本仏・大聖人の絶対の御約束なのです。

 

◇ 健康と生命と仏法を語る 「第10回 住まいと健康」 2003-5-13

 

住居は健康生活の基盤

カビから肺炎、ダニ・ホコリからぜんそく・アトピーに

清潔第一の心掛けを

 

森田ドクター部長 今回から、中泉関西ドクター部長と、白樺会(婦人部の看護者の集い)の副委員長で、総埼玉委員長でもある笹川さんに加わっていただきます。

 

中泉関西ドクター部長・笹川白樺会副委員長 よろしくお願いします。

 

池田名誉会長 遠い所、また忙しい中を、ありがとう! ご苦労さまです。「53」を記念して関西ドクター部が作製された冊子『ひとくち健康アドバイス』を拝見しました。毎日の歯の磨き方から、生活習慣病やがん予防に至るまで、だれもが心身ともに健康で、長寿の人生を送れるようにとの真剣な思いが伝わってきます。「患者中心の医療を考える」と題したセミナーのビデオも、素晴らしい内容ですね。

 

中泉 ありがとうございます。関西ドクター部の中心メンバーが原稿作成に挑戦しました。

 

名誉会長 冊子には、お年寄りの家庭内での事故を防ぐ具体的なアドバイスがありました。確かに家庭内での事故はよく聞きます。

 

森田 厚生労働省の統計によると、65歳以上の高齢者の場合、交通事故よりも家庭内の転倒・転落などで亡くなるほうが2倍近くに上ります。

 

名誉会長 そんなに多いのですか。家の中も、気を付けなければいけない場所ですね。そこで、今回は「住まいと健康」をテーマにしてはどうでしょう。

 

森田 わかりました。「住まい」は健康生活の大切な基盤だと思います。

 

名誉会長 家庭内での高齢者の事故には、具体的に、どのようなものがありますか。

 

 

笹川 階段や廊下で、つまずいたり、イスやベッドからずり落ちたりするだけで、骨折することもあります。また、浴室で転ぶと大事故になりやすく、浴槽で滑っておぼれるケースも多く見られます。

 

高齢者の家庭内事故を防ぐには 

部屋の中 いつも整理整頓 じゅうたんのへりを固定する 電気コードを固定 段差をなくす スリッパを履かない 手すりを設置 

階段 すべり止めを設置 足下を明るく

玄関 マットを固定 踏み台を固定

トイレ 照明を明るく

 

勤行のあとはゆっくり立つ

 

名誉会長 そうした事故を防ぐには、どうすればよいか――関西ドクター部のアドバイスを紹介していただけますか。

 

中泉 部屋は、@日ごろから整理整頓するAじゅうたんやマットのヘリは、つまずかないように固定するB電気器具のコードは、足を引っ掛けないように固定するC敷居の段差は、くさびなどで斜面を作り、なくしてしまうD階段や廊下ではスリッパを履かない。

階段には、@手すりを付けるAすべり止めを付けるB足元を明るくする。

玄関は、@手すりを付けるA玄関マットは滑らないように固定するB踏み台は固定して使う。

トイレは、@照明を明るくするA手すりを付ける――以上です。可能な範囲で実践していただきたいですね。

 

森田 高齢になると、片足で立っていられなくなるし、体のバランスが悪くなる。ですから、例えば勤行が終わったあとも、無理して急に立ち上がらないことです。ねんざしてしまう場合がある。特に太った人は気を付けてください。呼吸を整えながら、ゆっくりと立ち上がる。とかく注意が必要です。

 

名誉会長 これは、深夜、お手洗いに行く時に、布団から立ち上がる場合も一緒ですね。ちょっとした用心、工夫で、大きな事故を未然に防ぐことができるものです。

 

「賢人は安全な時も危険に備える」

 

中泉 私の病院では、患者さんがつまずかないように床の凸凹をなくしています。また、個々の患者さんの足腰の状態をスタッフ全員が把握し、常に適切な介助ができるよう工夫しています。

 

笹川 一人暮らしのお年寄りの方も、ご自分で、いろいろと工夫されています。高い所に物を置かず、手すりは自分がつかみやすい位置に。浴室には、すのこを敷いて浴槽との段差をできる限り小さくされている方もいます。

 

森田 お年寄りの場合、急に環境を変化させると、混乱することがあります。納得してもらいながら、少しずつ変えていくことが大切でしょう。

 

名誉会長 日蓮大聖人は「賢人は安全な状態にあっても危険に備え、心の曲がった人は危険な状態にあっても、それに対処しようとせず安穏を願う」(御書969ページ)と仰せです。これは、仏法者は常に用心して悪知識を見極め退けて、正法正義を貫く賢者であらねばならないことを教えられた御文です。その上で、人生万般に通ずる道理です。長年暮らした家だから大丈夫と油断していると、防げる事故も防げなくなってしまう。必要に応じて、環境を点検し改善して、事故防止に万全を期していきたいものです。

 

小まめに換気を

 

名誉会長 ところで、「病人が出やすい家がある」と言われることがありますが、医学的にはいかがでしょうか。

 

森田 いわゆる迷信の類には、科学的根拠は一切ありませんので、信用する必要はありません。ただ衛生的な観点から言えば、換気や日当たりの悪い家にいては、やはり病気になりやすいと思います。

 

笹川 訪問看護で訪ねたお年寄りで、高いビルが家の両側に建ち、それから病気がちになった方がいました。日当たりや風通しが悪く、気持ちも沈みがちになったようです。励ましの声を掛けるとともに、小まめに換気と掃除を行い、部屋を明るく保つように心掛けるなかで、健康を取り戻すことができました。

 

中泉 病人を出さないためには、湿度も大切です。湿度が高いと体が冷えたり、壁や床、家具の裏などにカビが生えやすくなります。

 

名誉会長 そろそろカビの季節です。カビが原因となる病気には、どんなものがあり

ますか。

 

森田 カビの種類によって、いろいろですが、お年寄りや病人など、免疫力が低下している場合、肺炎を起こすことがあります。梅雨から夏にかけて増えるので注意が必要です。せき、たん、発熱、のどの痛みなど風邪に似た症状が特徴です。

 

名誉会長 薬で治りますか。

 

中泉 薬で治療できますが、原因となる家の中のカビを取り除かないと再発することがあります。夏近くになると風邪をひくという方は、一度、家の中のカビを点検するとよいでしょう。

 

森田 そのほかカビが原因で、皮膚炎や食道炎、敗血症を起こすこともあります。

 

名誉会長 カビ退治のポイントは何ですか。

 

中泉 カビは、ホコリなどを栄養にして、適度な湿度と温度があれば、どこでも繁殖します。小まめな掃除が欠かせません。

 

森田 生えているカビは、カビ取り剤でふき取ります。天気の良い日に、換気をよくしながら行ってください。

 

名誉会長 「換気」は大事ですね。ナイチンゲールは「換気の状況を本当に知るには、朝、寝室や病室から戸外へ出てみることである」(『ナイチンゲール著作集』第2巻、現代社)とアドバイスしています。帰ってきたときに、少しでも息苦しく感じたなら、その部屋の換気は不十分だというのです。

 

笹川 その通りだと思います。病棟では毎朝、窓を開け、よどんだ空気をサッと入れ替えます。眠っている間に、かなりの汗をかいて湿度が高くなっているので、短時間でも風が流れると、大きな効果があります。

 

室温で3時間、置いた料理は注意

 

名誉会長 食べ物にもカビは生えやすい。食中毒にも十分、注意したいですね。

 

中泉 ひと目で腐っていると分かるものは食べないと思いますが、食中毒菌が繁殖しても、色、味、においも変化しないことがほとんどです。

 

名誉会長 安全か危険かは、どこで判断すればよいですか。

 

笹川 調理してからの時間が目安になります。これからの季節は、肉、卵、魚を使った料理を、室温で3時間以上放置したものは、注意が必要です。夕食の残りを翌朝に食べる時などが、そうです。ちょっとでも怪しいと思ったら食べないことが原則ですが、温め直す時も、75度以上に十分に加熱してから食べるようにしてください。

 

中泉 サルモネラ中毒の発生も後を絶ちません。卵は賞味期限内でも、ひび割れがあるものは危険です。生で食べる場合は、できるだけ新鮮で傷のない卵を選ぶことが大切でしょう。

 

森田 いずれにしても湿度の高い家は、いろいろな病気を起こしやすい。換気をよくしたり、エアコンなどを上手に使って、健康的な環境を整えることが大事です。

 

布団はよく干し掃除機をかける

 

名誉会長 ほかに住環境が原因となる病気はありますか。

 

森田 最近、増えているのが、ダニやホコリによるアレルギー病です。アレルギー体質の人に多く見られるもので、ぜんそくやアトピー性皮膚炎が代表的な病気です。

 

名誉会長 子どものアトピーで悩んでいるお母さんが多いと聞きます。ダニはどうすれば防げますか。

 

森田 まず「清潔第一」です。人間の皮膚から、はがれ落ちるフケなどがダニの栄養源になりますから、小まめに掃除を行い、ダニが増える原因を減らすことです。

 

中泉 特にクッションやカーペットなどは、小さなホコリやゴミがたまりやすいので、掃除機をかけて、ダニを吸い取ってください。裏面も同じです。布団にも掃除機をかけ、天気の良い日には干すようにします。

 

笹川 忘れがちなのがカーテンです。静電気でホコリが付きやすく、特に日の当たらない窓では、細菌が繁殖しやすい環境といえます。定期的に洗濯するとよいでしょ

う。

 

名誉会長 ナイチンゲールも語っています。「ほこりは病気の温床であり、病気の前ぶれである(中略)それらに対して、どれほど清潔を心がけようと、決して心がけすぎるということはない」()と。神経質になりすぎる必要はありませんが、こうした細かいことも大事ですね。

 

森田 また、ダニは湿気のある場所を好みます。押し入れや、たんすなどの換気にも気を付け、室内の乾燥を心掛けてください。

 

笹川 実は私は、8年前、乳がんで入院したことがあります。そのとき、ベッドで横になっていることのつらさを味わいました。背中に湿気と熱がこもるのです。看護師さんに、うちわであおいでもらいましたが、それだけでも背中と布団の間の空気が入れ替わり布団が乾燥し、快適になりました。寝たきりにある方の場合も同じだと思います。布団にダニが発生しやすく、かゆみや他の病気も引き起こしかねません。また、湿気が高い場所で長時間、同じ姿勢で寝ていると、床ずれも起こしやすくなります。畳の上に布団を敷く場合は、すのこを入れて、通気をよくしてあげてください。

 

 

名誉会長 健康な人には、我慢できるようなことも、病気の人には悩みの種になることがある。そうしたことに細かく気を配り、不安を取り除き、安心と希望を与えてあげる――これがポイントですね。

 

体調の悪い時夜の勤行は?

 

名誉会長 ともあれ、どんなに健康な人でも年配の方は、無理をすると、健康を害してしまう場合がある。休養や睡眠を賢く十分に取っていくべきです。勤行も、夜遅く疲れているときや体調の悪いときは、題目三唱だけで、早めに休む。大切なのは、聡明な信心即生活です。そして、翌朝、朗々と勤行し、一日の出発をする。一日一日を、はつらつと、希望に燃えて生きていくための信心です。

 

森田 夜遅くの大きな声での勤行は、近所迷惑の原因になる場合もあり、気を付けるべきだと思います。

 

名誉会長 もちろんです。良識ある行動が大切です。戦後の青年時代、大田区の青葉荘に住んでいたころ、勤行がうるさいと隣の住人から怒られた経験があります。私も気を付けていたつもりでしたが、それほど近隣は過敏な場合がある。同じアパートの幾人かは信心しましたが(笑い)。それはともかく、御書には「智者とは世間の法以外において仏法を行ずることはない」(1466ページ)とあります。聡明にいくことです。

 

笹川 私は看護学生時代、寮生活でしたので、勤行は、近くの学会員のお宅でさせていただきました。

 

名誉会長 そうですね。どうしても小さな声では元気が出ないという場合は、会館や個人会場をお借りするなど、工夫してはどうでしょう。ただ、会館等を使用する際も、近隣へのこまやかな配慮を忘れてはならない。仏法は道理です。常識ある行動に、正しい信仰があることを銘記していただきたい。

 

シックハウス

 

名誉会長 話は戻りますが、最近よく「シックハウス」という言葉を耳にしますが……。

 

森田 住宅の改築や新築をした後に、使われた建材などから発生する化学物質によって、体調不良や健康障害を起こす化学物質過敏症のことです。

 

名誉会長 具体的には、どんな症状がありますか。

 

中泉 頭痛、のどや目の痛み、鼻炎、おう吐、息が詰まる感じ、ぜいぜいする、めまい、皮膚炎などがあります。風邪に似た症状も多く、見過ごしてしまうケースもあるようです。

 

笹川 職場や学校でも同じような症状を訴える「シックビル」「シックスクール」も問題になっています。

 

森田 問題解決のためには、何より根本原因を断つことが重要であり、一昨年7月には、2大原因とされる化学物質の使用を規制する「改正建築基準法」が成立しました。

 

名誉会長 施工者や建材メーカーが注意するのは当然ですが、私たちも意識を高め、正確な知識を得て対応していかなければなりませんね。

 

中泉 はい。その意味でも、普段と違う体の異常を感じたら、まずは医師の診察を受けていただきたいと思います。その際、家を新築したばかりであるとか、発症したときの状況を詳しく医師に伝えてください。

 

名誉会長 日常的に考えられる対策はありますか。

 

笹川 化学物質を室内にためないよう、やはり換気することです。高温多湿のこれからの季節は、化学物質の濃度が高まりやすくなります。最近の建物は気密性が高いので、冷暖房を使用していても定期的な換気を心掛けてほしいですね。

 

「家相」とは?

 

名誉会長 ところで「家相」という言葉もありますね。

 

森田 どう考えても科学的根拠の思いつかない、迷信のようなものがあるのは事実です。例えば「鬼門に玄関があると不幸になる」とか、「どの方角に何色の花が咲く木を植えるのはよくない」などは、その類でしょう。

 

中泉 「鬼門に水回りをつくると病人が出る」とか、鬼門に「道具類を置くな」「蔵を建てるとよい」というのもありますね。

 

森田 「鬼門」とは、北東の方角のことです。建物の北東側は、一般的に日当たりが悪く、湿度が高く、気温が低い。そこにトイレや風呂といった水回りを配置すると、カビや病原菌を媒介する虫が発生しやすくなり、病気になる可能性も高いと思われます。

 

中泉 北東側は道具類も錆びたり、木の部分が腐ったりしやすいですね。蔵を建てるのは冷たい北風を防ぐ意味があるのかもしれません。「裏鬼門(南西)に台所を設置するのも、よくない」と言われますが、これは日当たりがよく、気温が高くなりがちで、食べ物が腐りやすく、食中毒を起こしやすいことの言い伝えともいえます。

 

妙法の人の家は寂光の都

御聖訓「南無妙法蓮華経は獅子吼の如し」

いかなる病も変毒為薬!

 

智慧を発揮し

賢明な生活を

 

中泉 古くからの言い伝えには、暮らしの知恵が込められている場合があります。これを参考にすることは価値的なことですが、明らかに非科学的なことに紛動さ

れては愚かですね。

 

名誉会長 よく分かりました。大切なのは智慧である。聡明さですね。大聖人は「われらが住んで法華経を修行する場所は、どこであれ常寂光の都となる。われらの弟子檀那となる人は、一歩も行かずして、法華経が説かれたインドの霊鷲山を見、永遠の寂光土へ、昼も夜も往復されることは、うれしいとも何とも言い尽くしがたい。言い尽くしがたい」(御書1343ページ)と教えられている。御本尊を御安置した、わが家は、福徳に満ちあふれた宝処であり、寂光の都となる。その使命の舞台で聡明に智慧を発揮し、賢明な生活のリズムを刻みながら、法のため、人々のため、社会のために行動していくことです。

 

笹川 訪問看護をすると、そのことを実感します。病気で寝たきりでも、学会員の方は本当に元気があり、こちらが励まされることのほうが多いぐらいです。

 

名誉会長 もちろん、生身の体です。だれでも時には体調を崩したり、思わぬ病気を患う場合がある。仏でさえも、自ら「少病少悩」と言われています。いわんや、われわれは凡夫です。病気になったり、人生に悩みがあるのは当然です。大切なのは、それらに負けないことです。題目をあげて、満々たる生命力で乗り越えていくことです。大聖人は、病気の家族を抱えた南条時光を、こう励まされています。「あなたの家の内に病気の人がいるというのは、まことでしょうか。もしそれが本当であったとしても、よもや鬼神の仕業ではないでしょう。十羅刹女が、信心のほどを試しておられるのでしょう」(同1544ページ)何も心配いらない。強い信心を貫けば、必ず乗り越えていけるとの仰せです。妙法は、生命の大良薬です。すべてを変毒為薬できる。「南無妙法蓮華経は師子吼のようなものである。どのような病が、障りをなすことができようか」(同1124ページ)との御金言を確信し、朗らかに前進していきましょう!

 

◇ 健康と生命と仏法を語る 「第11回 疲労回復のカギ 1」 2004-5-20

 

 朝の勝利は一日の勝利!!健康の勝利!!

 行動は精神を快活に

 カントソローの自覚最も優れた思想は歩いた時に現れた

 

森田ドクター部長 前回、「夜遅くの勤行」など、日ごろ注意すべきことが話題になりました。今回は、それに加えて、「個人会館や個人会場を使わせていただく際は、最大の礼儀と感謝と配慮を」ということを確認しておきたいと思います。

 

池田名誉会長 以前にも申し上げましたが、会場として使用される同志の家は、仏道修行の宝処です。また人材育成の道場でもある。地域広布の灯台であり、民衆勝利の大法城です。どれほど尊いか、また、ご苦労も多いか。私は深い感謝を込めて、会場提供者の皆さま方に、日々、題目を送らせていただいています。

 

森田 学会本部では@担当幹部は会場提供者に最大の礼を尽くしていくA夜の会合は「午後8時30分終了」を厳守。その後の打ち合わせも、できるだけ短時間でB禁煙を励行し、終了後の清掃などを徹底するC未入会のご家族がおられる場合は、最大の感謝をD病気の方や乳幼児、受験生などがいる場合は、細心の配慮を、など徹底して

います。

 

笹川白樺会副委員長 一つ一つ大事なことですね。

 

中泉関西ドクター部長 夜の会合が終わった後など、路上で声高に話したり、タバコを投げ捨てたり、車のエンジンを一斉にふかしたりして、近隣のひんしゅくを買い、拠点のお宅に迷惑が掛かるようなことがあっては絶対にならないと思います。

 

 会場の定員は絶対に厳守!

 

名誉会長 会場の定員も絶対に厳守していただきたい。学会の会館も同じです。今はそういうことはないが、昔、行ったお宅の会合で、人が集まり過ぎて、会場の床が抜けてしまったことがあった。幸い、ケガ人もなく済んだが、定員は絶対に守る、これが鉄則です。無理をして大勢の人を入れ、事故を起こすようなことがあってはならない。御聖訓には「以前よりも百千万億倍、用心していきなさい」(御書1169ページ)とあります。お互いに注意し合いながら、中心者は「無事故こそ勝利」と強盛に祈り、配慮していくことです。

 

 テンポ良く、手を振って歩く

 

名誉会長 前置きが長くなってしまいましたが(笑い)、今回のテーマに入りましょう。

 

森田 これから梅雨時に入りますので、心身ともに、はつらつと生活できるよう、「疲労回復のカギ」についてです。

 

笹川 夏バテをしないためにも、今から疲れをためないような工夫や準備が大事です。でないと、暑い夏が来ると、疲労困ぱいしてしまいます。

 

名誉会長 疲労回復といえば、やはり基本の食事や運動、そして睡眠が大切ですね。

 

 

森田 はい。以前(第2回)も取り上げましたので詳細は省きますが、健康のためには、まず適切な運動や食事が欠かせません。

 

中泉 「歩くこと」など適度な運動は、疲労を取るためにも必要です。運動後は筋肉の緊張がほぐれ、高血圧の人は血圧も下がります。また血の巡りが良くなって、肩凝りや頭痛も和らぎ、不安や憂うつな気分も解消されます。

 

森田 脳の活動も高まります。

 

名誉会長 ドイツの哲学者カントは、毎日、必ず決まった時刻に散歩をしていたことで有名ですが、彼の最も優れた思想は、「座っている時」でなく、「歩いている時」に現れたという。当然、日ごろから思索し抜いていたからでしょうが、一日に4〜5時間歩くのが普通だったアメリカの思想家ソローも、「一番良い作品」は、「一番よく歩いていた時のもの」と言っています。頭にいい歩き方というのはありますか(笑い)

 

森田 そうですね。テンポ良く、手を振るなどして歩くと、血液の循環が良くなり、脳に適当な刺激を与えます。体がポッポッと温かくなる程度が目安です。

 

笹川 ただし、年配者は決して無理な運動は、しないでください。買い物に行ったりとか、家の掃除をするなど、日常生活そのものが「運動」です。寝たきりにある方は、例えば、膝を曲げたり伸ばしたり、体を起こすだけでも運動になっています。

 

中泉 私の場合、通勤電車の中で座らずに、立って聖教新聞を読むようにしたり、病院内では階段を使い、エレベーターには、できるだけ乗らないようにしたりしています。ちょっとした運動につながっています。

 

名誉会長 ガンジーも記している。「どんなに忙しく仕事に追われていても、食事をするのと同じように、運動をする時間はとらなくてはなりません。それは仕事の余裕をなくするどころか、反対に余裕を生み出す」(岡芙三子訳)と。その点、学会活動には常に「行動」がある。ともに勤行する。会合に参加する。同志の元へ激励に出掛ける。友好活動に励む――動いた分だけ、充実があり、向上がある。心も体も生き生きとする。これほどの健康法はありません。

 

 朝食は金の価値

 ウィルソン大統領「勝利の第1の秘訣は早起き」

 3食を規則正しく取る

 

 肥満防止に朝食は重要

 

名誉会長 ところで飲み物や食べ物で、ストレス解消にいいようなものはありますか。

 

森田 例えば、緑茶やイチゴ、キウイ(ビタミンC)、アーモンドに大豆、卵(ビタミンE)、豚肉、牛レバー、うなぎ(ビタミンB1)、牛乳、チーズ、ひじき(カルシウム)、リンゴやバナナ(カリウム)、こまつ菜やノリ()などが挙げられるでしょう。いずれも摂取が足りないとストレスに弱くなったり、ストレスが続くと不足しやすい栄養素を含んでいます。

 

名誉会長 毎日3度の規則正しい食生活も大切ですね。

 

中泉 はい。疲れやすい人の中には、食事の内容が偏っていたり、食事を抜いている人が多いようです。特に朝食ですね。

 

森田 朝食は、昼食までの活動を支えるエネルギー源を供給します。エネルギー源となる血液中のブドウ糖が不足すると、脳の働きが鈍くなり、集中力が欠けたり、

ボーッとしたりします。

 

名誉会長 「朝食は金の価値がある」と言いますが。

 

森田 はい。朝食を取らない人を調べてみると、前日の夕食時間が不規則だったり、夜遅く食べたりするケースが目立ちます。眠っている間も、胃や腸が働いているので、目覚めても食欲が出ず、朝食がおいしく食べられないのです。

 

中泉 朝食をきちんと取ることは、肥満防止にも重要です。同じ物を食べる場合は、夜食べるより朝食べたほうが太りにくいといわれています。

 

笹川 食事も「朝が勝負!」ですね。

 

名誉会長 「朝の勝利」が「一日の勝利」であり、「健康の勝利」です。その積み重ねが、人生全体の勝利となっていく。アメリカの大統領ウィルソンも「勝利の第一の秘訣は早起きだ」と語っています。

 

 睡眠は最上の薬

 充実した活動から快眠は生まれる!

 

 眠り始めが熟睡のポイント

 

名誉会長 その意味でも、「睡眠」が大事ですね。戸田先生も「あらゆる工夫をして寝なさい」と言われていた。また「真夜中以前の1時間の眠りは、以後の2時間分に値する」という言葉もある。多忙な現代人には、難しいかもしれないが、時間を価値的に使うことです。そして朝を、さわやかに出発する。信心即生活の智慧が、自分自身を守っていくのです。

 

笹川 特に年配者は、疲れをためないようにすることです。睡眠に勝る薬はありません。

 

名誉会長 そうですね。「ナポレオンは毎日3時間しか寝なかった」という伝説があります。発明王エジソンも短眠だったといわれる。若いころは、そうした気概も欲しい。だが、年配になると、そうもいかない。病気の場合もある。人それぞれ体力も違う。賢明に考えなくてはならない。

 

笹川 私は寝る前に、よく眠れるように御本尊に祈ってから布団に入ります。時間も大事ですが、翌日、目覚めた時、そう快感や満足感が得られる睡眠ができたかどうかも問題なんです。

 

中泉 睡眠は、眠り始めの3時間が、最も深く眠っていると言われます。この時の眠りの深さが、熟睡の大きなポイントです。

 

名誉会長 なるほど、それで「寝る前に食べると良くない」わけですね。

 

中泉 そうです。睡眠中には、成長ホルモンが分泌されますが、これには疲労回復や細胞を修復する働きがあります。寝る前に食べると、成長ホルモンが分泌されにくくなります。実は、このホルモンは、寝付いた直後に訪れる深い眠りの時に、一番多く分泌されるのです。

 

名誉会長 「疲労は最善の枕である」(フランクリン)という言葉もありますが、やはり、日々の充実した活動、価値ある生活であってこそ快適な眠りとなり、そう快な朝を迎えられる。これこそ心身ともに健康な生命の土台でしょう。

 

枕や布団は?

 

名誉会長 ところで、寝る前にお酒を飲むのはどうですか。

 

中泉 少量であれば寝付きを良くし、深い眠りを誘う効果があります。ですが飲み過ぎると、のどが渇いたりトイレが近くなったりし、眠りを妨げてしまいます。コーヒーなどのカフェインの取り過ぎも要注意です。

 

名誉会長 熟睡できる姿勢というのはありますか。

 

森田 一晩中、同じ姿勢で寝ている人は、まずいません(笑い)。自分が一番楽な姿勢で休むのがいいと思います。

 

名誉会長 枕や布団は、どうですか。

 

笹川 一般に、@柔らか過ぎる敷き布団A重過ぎる掛け布団B高過ぎる枕は、寝にくいものです。特に枕は、高過ぎたり、片寄りがあると、頸椎を圧迫したり、肩凝りやいびきの原因になります。また、頭だけを枕に乗せるのでなく、圧力が分散するように、首までを枕に当てるようにしてください。

 

森田 ベッドや布団も同じですJ柔らかすぎても硬過ぎてもいけません。硬過ぎると一点に圧力がかかり、腰痛の原因になります。圧力が分散されるような、ほどよい硬さが大事です。

 

 高齢者の浴室での事故を防ぐには

 ・家族に一声掛けて入浴

 ・コップ1杯の水分補給

 ・脱衣所をよく暖める

 ・風呂の温度は38〜40度

 ・入浴時間は5〜7分

 ・半身浴を心掛ける

 ・浴槽から急に立たない

 

 寝る直前に熱い湯は控える

 

名誉会長 快眠のポイントとして、入浴も挙げられますね。

 

中泉 はい。ただし、寝る直前の熱い湯への入浴は控えてください。一度上がった体温が下がるまでに時間がかかり、寝付きが悪くなるからです。

 

森田 反対に、寝る30〜60分前の、38〜40度のぬるま湯はお勧めです。ちょうど寝るころに、上がった体温が下がってきて、気持ちよく眠ることができます。

 

名誉会長 湯船に入ってる入浴時間は、どれくらいが目安ですか。

 

中泉 10〜20分でしょう。

 

笹川 入院されている患者さんの中には、一日中、ベッドの上にいるので、就寝時間が来ても、なかなか寝付けず、つらい思いをしていることがあります。そんな時、足を湯に漬ける「足浴」だけでも緊張感を解きほぐすことができます。また、パソコンなどのOA機器に長時間向かっている方は、同じ姿勢を続けているので、肩凝りなど、疲れを感じやすいと思います。そういう時は、首を蒸しタオルなどで、温めるのもい

いですね。

 

 いきなり湯船には入らない

 

森田 入浴は、血行が良くなって、疲れや筋肉の凝り、痛みを和らげてくれます。

 

中泉 尿や汗が出やすくなり、体内の老廃物も排泄されやすくなります。血圧を下げる効果もありますし、ストレスも解消されて、気分も新鮮になりますね。

 

名誉会長 仏典にも、入浴の効能が記されています(「増一阿含経」)。この「入浴」には現在の蒸し風呂(サウナ)も含まれているようですが、@呼吸を楽にするA病の平癒を得るBゴミや垢を除去するC疲れを取り、体を軽快にするD肌をきれいにする、というものです。最近、入浴剤も流行しているそうですね。

 

笹川 はい。入浴剤は、保温効果のほかに、香りなども楽しめ、気分もリフレッシュされます。ゆず湯やしょうぶ湯は有名ですが、ミカン、レモンなど、かんきつ系の皮や大根の葉っぱなども保温効果があります。

 

名誉会長 入浴を避けたほうがいいのは、どんな時ですか。

 

森田 食事の前後、運動の直後、お酒を飲んだ後は避けてください。もちろん、風邪などの病気の場合も控えたほうがいいと思います。

 

名誉会長 ほかに入浴で注意すべき点はありますか。

 

笹川 いきなり湯に入らずに、足先から「掛け湯」をして、お湯の温度に体を慣らしてください。その後、ゆっくりと湯船に入る。急に肩までつかると、心臓や肺に負担が掛かります。

 

中泉 先ほども言いましたが、熱い湯だけは避けてください。湯船につかると、急激な熱さで血管が収縮し、血圧が上がり、脳出血を起こすことがあります。また、汗も出やすくなり、利尿効果で脱水ぎみになり、血液が固まりやすくなります。血栓ができて血管を塞いでしまうと、心筋梗塞、脳梗塞などを起こすことがあります。

 

 激しい温度差には要注意!

 

森田 前回、家庭内の事故が意外に多いという話をしましたが、そのうち、お風呂での死亡事故は交通事故死よりも多く、年間1万5000人とも言われています。

 

笹川 特に高齢者は要注意です。体力が落ちているため、若い人が山に登った時と同じくらいの疲れを感じるといわれています。

 

名誉会長 お年寄りを浴室での事故から守るためのポイントは、どうでしょうか。

 

笹川 脱衣をした時、湯船に入った瞬間、風呂から上がった時の三つに注意してください。

 

中泉 具体的には、@家族に一声掛けてから入るA入浴前後にコップ1杯の水分を補給B冬期間は脱衣場、浴室をよく暖めておくC風呂の温度は38度から40度D入浴時間は5分から7分E半身浴で心臓に負担を掛けないF浴槽から急に立ち上がらない――以上になるでしょうか。

 

名誉会長 どれも大切です。たかが入浴と油断すると大変な事故になる。

 

森田 特に「激しい温度差」は注意が必要です。寒いというだけで血圧が上がりますから。

 

名誉会長 確かに、浴室から温度差のある脱衣場に急に出た時に、倒れる場合が多いですね。

 

中泉 そうなんです。ですから、浴室と脱衣場との温度差を小さくするなどの工夫が必要です。心臓病や高血圧の人も十分な注意が必要です。

 

名誉会長 それと台所やお手洗いなど、家の中で寒い所は、できるだけ暖かくすることですね。

 

笹川 はい。特に、足元は意外に冷たいことが多いので、厚い靴下をはいたり、じゅうたんを敷いたり、いろいろと考えてください。トイレに電気ストーブを置いて使う人もいるようです。

 

名誉会長 寒い時に外出する際には、「これから寒い外に出るんだ」と、はっきり意識してから出ることですね。そうすれば、体が寒さに対して準備する。意識せず、ぼんやりしたまま、ぱっと出てしまうのが危ない。また、浴槽から出る時もそうですが、勤行が終わった後も、体温や脈拍が上がっているので急に立ってはいけない。呼吸を整えながら、ゆっくりと立ち上がることです。

 

笹川 先ほどもあったように、声掛けも大切だと思います。家族の知らないうちに浴室で倒れ、大変、危険な状態に陥ったというケースをよく聞きます。

 

名誉会長 その通りですね。いずれにしても、長い人生です。一日一日、賢明に、生き生きと働き、はつらつと毎日を生きていきたい。何となく惰性と習慣で夜更かしし、朝も寝坊してしまう。それでは悪循環である。疲労も取れないし、正しい信心即生活のリズムとはいえない。「健康」になるための信心です。「価値ある人生」のための仏法です。朗々たる唱題で智慧と生命力をわかせ、「さあ、きょうも働こう」と、さわやかな朝の出発ができるよう挑戦していきたいものです。

 

◇ 健康と生命と仏法を語る 「第12回 長寿の秘訣」

 

 学会活動こそ長寿の軌道!!

 香港の高名な画家 方召りん先生

 「多忙こそ長生きの道」

 パグウォッシュ会議名誉会長 ロートブラット博士

 「大目的へと常に前進」

 

 長生きのコツ

 ・くよくよしない

 ・愉快な心で進む

 ・生きがいを持つ

 ・皆のために生きる

 

池田名誉会長 日本人の平均寿命は毎年延びていますね。

 

中泉関西ドクター部長 国によって、調査期間の違いがあり、比較できないところもありますが、男性、女性を合わせた平均寿命で、日本は今、世界のトップにあります。

 

笹川白樺会副委員長 今後も、わずかずつでも、平均寿命は延びていくと思われます。

 

森田ドクター部長 昨年、発表された長寿番付によれば、100歳以上のお年寄りが2万人に達したということです。そこで今回は「長寿の秘けつ」について語り合いたいと思います。

 

名誉会長 分かりました。法華経薬王品には「不老不死」とありますが、これは、もちろん「年を取らない」「死なない」ということではありません。永遠の生命観を説いたものであり、その上に立って、生き生きとした若々しい生命、はずむような勢い、生命の輝き――そういう「生命力」を常に発揮していくことです。

 

人は120歳まで生きられる!

 

名誉会長 そこで、医学的には、人間は一体、何歳まで生きられると考えられていますか。

 

森田 生理学者などは、120歳あたりと考えているようです。

 

名誉会長 そうですか。仏典でも120歳まで生きられると説いています。中国の天台大師は「人の寿命には3種類ある。早くて40歳、中ほどで80歳、最高は120歳である」(「金光明経文句」)と、120歳を不老不死に匹敵する長寿の最高峰としています。

 

笹川 不思議な一致ですねね。40歳、80歳という年齢も、人生の節目の一つではないでしょうか。

 

名誉会長 ポーリング博士、カズンズ博士など、私が対談した世界の最高峰の識者も、人間は110〜120歳まで生きられると指摘されていた。ヨーロッパ科学芸術アカデミー会長のウンガー博士も同じ意見でした。博士は、その理由として「人間の細胞は、120歳までは何らかの形で再生が可能だと言われているのです。120歳を超えると、再生能力がなくなると考えられています」と語っていました。このこと

については、どう思われますか。

 

中泉 120歳が限界かどうかは分かりませんが、私たちの体を構成している細胞のDNA(デオキシリボ核酸)の末端には、その細胞の分裂回数を決める情報が組み込まれています。その回数以上に細胞が分裂し成長することはありません。

 

森田 もちろん、人間の寿命を決める要因は、これ以外にも、生活習慣や環境など、さまざまあると思います。

 

長寿村の特徴

良質な自然水

動物性脂肪は控えめ

魚、大豆を多く取る

バランスの取れた食事

清らかな空気

適度な運動を心掛ける

安らかな睡眠を取る

入浴を心掛ける

 

世界の長寿村

 

名誉会長 当然、そうでしょうね。また、寿命が長いかどうかで人生の幸不幸が決定するわけではない。短命のようでも、何倍も価値ある人生を生きた人もいる。これは、だれもが実感していることです。その上で、長寿について語っていきたいのですが、世界には、多くの高齢者が健康で若々しく生活する長寿村がありますね。

 

中泉 黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方、パキスタンのフンザ地方、南米エクアドルのビルカバンバなどが有名です。日本では、沖縄県玉城村や長野県喬木村などが知られています。

 

名誉会長 沖縄は日本一の長寿県で有名ですね。そこで、はつらつと広宣流布に戦っている、わが多宝会の友は、まさに長寿社会の鑑です。またコーカサスは、ロシアの文豪トルストイが滞在していたところです。ゴルバチョフ元ソ連大統領の出身地でもあり、私との対談でも、「個性豊かな美しい土地です」と語っていました。

 

笹川 コーカサス地方では、100歳を超えた高齢者も背筋をしゃんと伸ばし、軽快なステップでダンスを楽しむといった話を聞いたことがあります。

 

森田 もう30年近く前になりますが、学術部・ドクター部が中心になって、長寿村の調査を行いました。静岡県賀茂郡南伊豆町伊浜区に在住する高齢者の方を対象にしたものです。

 

名誉会長 そうでしたね。現在、この地域でも多くの学会員が活躍しており、その様子を私も、うれしくうかがっています。

 

森田 伊浜区は温暖な気候と清浄な空気、海や山の美しい環境に恵まれた地域です。そうした豊かな自然が生んだ、良質なわき水や、魚、ノリ、ワカメ、緑黄色野菜を中心に、栄養のバランスの取れた食事が、高齢者の健康を支えていることが分かりました。

 

中泉 そうした点は、世界の長寿村にも共通しています。

 

名誉会長 塩分や動物性脂肪の少ない料理や、ヨーグルトなどの発酵食なども、世界の長寿村の特徴だと聞いたことがありますが。

 

森田 伊浜区では、海の幸が豊富なこともあり、6割もの人が肉より魚が好きと答えていました。また、植物性タンパク質源である大豆製品も多く摂取されており、6割もの人が毎日3杯のみそ汁を飲んでいました。

 

笹川 魚類から動物性タンパク質を、大豆製品などから植物性タンパク質を、バランスよく摂取していたのですね。

 

中泉 魚類の脂肪は、動脈硬化の予防に効果があります。

 

森田 同様にコレステロールの増加を防ぎ、動脈硬化を予防する食品にゴマがあります。この地域では、各家庭でゴマを栽培し、ゴマダレなどに利用し、ふんだんに食べていたことも分かりました。

 

高齢者は頻繁に水分の補給を!

 

名誉会長 先ほど、良質の水も伊浜区の長寿の要因に挙げられていましたが、よく高齢者にとって水分の補給は大切といいますね。

 

笹川 はい。脱水症状で入院される方を何人も見てきました。

 

中泉 高齢者はもともと、成人に比べ体内の水分量が少ないのです。その上、のどが渇くといった自覚症状が少ないので、知らないうちに脱水症状を起こしていることがあります。

 

名誉会長 一日どのくらいの量の水分を補給すればよいでしょうか。

 

森田 1日2リットルといわれますが、なかなか大変です。1・2〜1・5リットルは取ってほしいですね。大きな湯飲み茶わんだと、5、6杯になります。

 

笹川 食事の際には必ずコップ1杯分の水分を取り、食間にも工夫して取ってください。もちろん、お茶でも大丈夫です。

 

名誉会長 話は伊浜区に戻りますが、食生活以外に目立った点はありましたか。

 

森田 はい。伊浜区は、三方に迫る山々と、海に囲まれた傾斜地にあります。ですから、農作業で畑に行くのにも、坂道を上っては下るの繰り返しです。

 

名誉会長 長寿で知られる地域は、山坂が多いと聞いたことがあります。伊浜区も、坂道を歩くことが自然と健康の維持・増進につながっているわけですか。

 

森田 はい。調査に同行した若いメンバーは、70歳代の方が、坂道をスタスタと上っていくのに驚いていました(笑い)。その他、生活面の特徴としては、「安らかな睡眠」「入浴を心掛ける」などがありました。

 

「過去を追うな未来を憂うな」

 

名誉会長 長寿には、一般的に、心の持ち方も大きく関係しているといわれますね。

 

森田 そうです。伊浜区の各家庭には「老人八訓」というのが掲げられていました。そこには「くよくよするな」という項目がありました。

 

中泉 確かに、長生きされている方は、だいたい楽天的な方が多いようです。

 

名誉会長 いい意味での楽観主義ですね。仏典には、こう説かれています。「過去を追うことなかれ。未来を願うことなかれ。過去は捨て去ったもの。未来はいまだ来ていない。ならば、現在することを、おのおのよく心得て、揺るがず、動ぜず、それを正しく実践せよ。ただ、きょう、まさに、なすべきことを熱心になせ」(「中部経典」から)いつまでも過去にとらわれて悩んだり、今から心配してもしょうがない未来のことで苦しんだりするのは愚かである。大事なことは、「きょう」という一日を、いかに価値あるものとするかです。そのために一生懸命に、そして丁寧に生きることです。

 

笹川 その積み重ねが、人生の勝利に通じますね。

 

名誉会長 それが道理です。私の大切な友人の一人に、香港の高名な画家・方召りん先生がおられます。90歳になられた今も、日々、生き生きと美の創造に挑戦されている。本年、方先生からは「松濤」、そして「正義感」と認められた書をいただいた。どちらも、あふれんばかりの若さが躍動していて感動しました。

 

笹川 私も展覧会を拝見しましたが、その生命力には圧倒されました。

 

名誉会長 方先生は語っておられる。「多忙こそ長寿の道です。忙しく働いていれば、あれやこれやと、くだらないことを考えずに済みます。くよくよしないで、心に、わだかまりが残りません」と。誠に至言です。方先生は、若くして夫君に先立たれ、8人のお子さんを女手一つで立派に育て上げられながら、画業を貫き、偉大な仕事をしてこられた。その波乱万丈の人生を考えれば、この言葉は万鈞の重みをもって迫ってくる。まさに達観した楽観主義であり、模範の長寿の人生の軌跡といえるでしょう。

 

「不機嫌は怠惰の一種」

 

中泉 「くよくよしない」ためには、「ユーモア」や「笑い」も大切だと思います。

 

笹川 学会の会合、特に婦人部や多宝会の皆さんと、にぎやかに語り合っていると、会合に来る前にあった悶々とした悩みも吹き飛んでしまいます。笑いがあふれ、これこそ健康の源という感じがします(笑い)

 

名誉会長 「笑いは最上の医薬」という言葉もあります。どんな時も「愉快な心」をもって生きたい。そのためには、日々、自分に勝ち、人生に勝つことです。満々たる生命力で、前へ前へと進むことです。そのための私どもの信仰です。

 

森田 伊浜区の高齢者の性格や特徴を調べたところ、「明るい人柄」の方が圧倒的に多いことが分かりました。

 

名誉会長 確かに、そういう例は多いようですね。反対に、「不機嫌は怠惰の一種」(笑い)とゲーテは論じています。

 

中泉 確かに怠け者は、すぐに不機嫌になりますね。「大変だ」「ああ、いやだ」と、すぐに文句が顔に出る(笑い)

 

名誉会長 私のお会いした多くの世界のリーダーの方々を見ても、偉大な人格の人は、打てば響くような朗らかさがある。生き生きと前進している。若々しい。

 

笹川 ゴルバチョフ元大統領や南アのマンデラ前大統領も、笑顔が印象的でした。

 

社会に関われば健康に!

信心に定年はない!広宣流布に引退はない!

人に尽くせば新しい生命力がわく

 

「いつまでも前進いつまでも希望」

 

森田 長寿者には、「目標をもって生きる」方が多いです。生きがいもなく、毎日を漫然と過ごすのでは、心にハリがありません。

 

名誉会長 大事なことです。目標を見失い、惰性に流されるだけの人生であっては、むなしい。トルストイの「戦争と平和」には、ある伯爵夫人が、運命にほんろうされて生きる意味を見失った姿が描かれています。「彼女(=伯爵夫人)は自分が偶然この世におき忘れられた、もう一さい目的も意味も持たぬ人間のように感じた。彼女は食い、飲み、睡り、醒めていたが、しかし生活してはいなかった。もはや人生は彼女に何の印象も与えなかった」(米川正夫訳)自分が生きる意味、存在する価値を見失うことほど、人間にとっての悲劇はない。

 

森田 本当にそう思います。何かに依存する生き方は、それがあるときはいいですが、失うとガックリくるものです。

 

名誉会長 その意味でも、大きな目的のために貢献していく生き方は強い。私の尊敬する友人である、ノーベル平和賞受賞者のロートブラット博士(パグウォッシュ会議名誉会長)は現在、95歳。1989年10月、大阪で初めてお会いし、2000年2月、沖縄で再会しました。今もなお、平和のために、正義のために戦い続けておられる。

 

中泉 核兵器の廃絶を訴えた「ラッセル・アインシュタイン宣言」の11人の署名者のなかで、唯一の生存者ですね。

 

名誉会長 「健康長寿の秘けつ」を聞かれて、博士は語っておられる。「一つの大きな目的に向かって、わき目も振らずに進んできました。それが生きがいになっていると思います」私との対談の際も、「私は『疲れる』ことを自分に許さない」と意気軒高に語っておられた。博士に比べれば、私どもは、まだまだ若い。まして、信心に定年はない。広宣流布の舞台に引退はない。ゆえに、戦って戦って戦い続けることです。

 

笹川 入院患者さんを見ていても、明確な目標を持って、「生き抜こう」「病気を治そう」と取り組んでいく方は、回復や社会復帰も早いです。

 

名誉会長 中国の文豪・魯迅は、つづっています。「自己満足しない人間が多くいる種族は、いつまでも前進し、いつまでも希望をもつ」(増田渉訳)と。自分に勝とう、自分を乗り越えていこうとする人には、前進があり、希望がある。そして、若々しい。いつも、はつらつとしている。いわんや、「広宣流布」という永遠の希望に進む私たちには、大いなる目的があり、生きがいがある。これほどの幸福はない。

 

日々、新しい一日

 

笹川 生きがいと聞いて、白樺会(婦人部の看護者の集い)の先輩を思い出しました。埼玉県所沢市に住む白樺会の新井麗子さんは、現在74歳。現役の助産師さんです。これまでに取り上げた新生児は12000人を超え、親子2代にわたって取り上げた方もいます。

 

名誉会長 白樺会の模範の方ですね。

 

笹川 新井さんのモットーは「だれかのために尽くすところに、新しい生命力がわく」というものです。新生児を取り上げることは、自身の中に喜びと新たな力を生むのだそうです。

 

名誉会長 どういうきっかけで助産師になられたのですか。

 

笹川 実は新井さんは、長男を出産わずか4時間後に、二男を生後4日後に病で亡くされています。三男こそ、やっと無事に育ちましたが、新井さんは「私と同じような悲しみを味わう人が出ないように、少しでも力になれれば」と、本格的に助産師として生きる決意を固められたのです。

 

名誉会長 そうしたご自身の体験があればこそ、多くの人を支え、勇気づけてこられたのでしょう。偉大な勝利の人生です。人のために、わが身をなげうって働く――多宝会そして白樺の友は、まさに「健康の世紀」をリードしておられる。

 

中泉 これまで数多くの入院患者さんと接してきましたが、学会の中で広宣流布のために戦ってこられた方は、皆さん、入院してからも同じ姿勢を貫いています。自分自身が一番、大変な状況に置かれていても、「どうやって、みんなを激励しようか」と考えています。本当にすごいことだと思います。そういう方は、病に対しても強いのです。

 

名誉会長 パグウォッシュ会議の会長であるスワミナサン博士も語っていました。博士は現在、78歳です。高齢者が、健康長寿で生き生きと暮らしていくために何が大事か――。それは「『自分のため』だけではなく『他の人々の助けになりたい』という目的です」。そして「『ただ生きている』以上のことをすれば、毎日が楽しくなります。毎日が『新しい一日』になります。毎日が『新しい夜明け』になります」と。「人のために生きる」ことこそ、真に健康な生命であり、最高の長寿の秘けつというのです。

 

「生き生きと!永遠に前へ前へ」

 

森田 「人のために生きる」といえば、伊浜区の高齢者に、どんな生きがいを感じているのか尋ねたところ、女性で一番、多かった答えは「公共物の掃除」でした。老人クラブの建物などを掃除するのを楽しみにして、満足感を味わっていたのです。こうした傾向は、女性ばかりでなく、この地域の長寿の方に共通した生活感と考えてよいと思います。というのは、先ほど述べた「老人八訓」に「役に立て」という項目もありました。さらに各家庭には「日常の五心」というのも掲げられていて、そこには「ワタシガシマスと言う」とありました。いずれも「奉仕の心」を表した標語だと思います。

 

名誉会長 沖縄の高齢者の調査からも、社会に積極的にかかわっていくことが、長寿の要因であることが分かっていますね。

 

森田 高齢化がさらに加速する21世紀には、皆が生涯にわたって元気で働き続けられる社会環境を整えていくことも不可欠です。

 

名誉会長 いずれにせよ、学会員の皆さまは、広宣流布という「大目的」に向かっている。真実の「楽観主義」で進んでいる。エゴと独善がはびこる、社会の現実の真っただ中で、法のため、人のため、社会のために尽くし、自ら「生きがい」と「希望」をつくっている。どれほど尊い人生か。これ以上の健康長寿の軌道はない。ホイットマンは歌っています。「永遠に生き生きと、永遠に前へ前へ」(木島始訳)と。だれもが生き生きと生きられる「長寿社会」の真髄は、日蓮仏法にあり、創価学会にあることを確信して、生涯、希望に燃えて前進しましょう! (完)

 

 

 

 

 

 

 

 

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