第一内科 必勝400字

第T音、U音、大動脈圧、左室圧、左房圧、大動脈弁開閉、僧帽弁開閉との心電図との時相関係

心音(TUVW)発生機序  ( )

第T音:僧帽弁、三尖弁の閉鎖音と大動脈弁、肺動脈弁の開放音である。僧帽弁閉鎖⇒三尖弁閉鎖⇒肺動脈弁開放⇒大動脈弁開放の順で開閉する。収縮期の初期に聴取され、低調で幅の広い音となる。
第U音:U音は収縮期の末期に聴取され、通常、高調で幅の狭い音である。Ua音、Up音にさらに分けられる。Ua音は大動脈弁閉鎖音であり、Up音は肺動脈弁閉鎖音である。Ua音がUp音に先行して生じる。U音が分裂する場合は呼吸性分裂(生理的分裂:吸気時にのみU音が分裂する←静脈潅流量の増加による)、病的な呼吸性分裂(吸気時、呼気時にU音が分裂する←右脚ブロック、肺動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全)、固定性分裂(吸気時、呼気時にU音が分裂しその間隔が変化しない←心房中隔欠損症)、奇異性分裂(吸気時に比べ呼気時のほうが分裂が著明、Ua音とUp音の順序が逆になる←左脚ブロック、大動脈弁狭窄症)がある。
第V音:V音は拡張早期に聴取される心音で、心室の急速な拡張に対し心室の血液が急速に流入する時に生じる低調で小さな心音である。30歳以下では約半数に聴取されると言われているが、高齢者で聴取された場合は病的であると考える。病的な場合として、心筋症、心筋炎、心筋梗塞などの他、僧帽弁閉鎖不全、大動脈弁閉鎖不全、心室中隔欠損などが挙げられる。
第W音:拡張後期に心房が収縮した際に、血液が心室に流入し、心室壁を振動させ生じる低調で小さな心音である。W音の聴取は病的意義を有し、心室の圧負荷(高血圧、大動脈弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症、肥大型心筋症など)の存在や、陳旧性心筋梗塞、拡張型心筋症の存在を疑う。

心雑音記載法  ( )

 心雑音の記載は雑音の性状、強さ、時相、最強点で表現する。
性状には漸増型、漸減型、ダイアモンド型、一様、などと表現する。強さはLevineの基準が設けられており、T度は聴診器を当ててもすぐには聞こえず注意して聴診してはじめて聞こえるほどの小さな音である。U度は聴診器を当てるとすぐに聞こえるが非常に小さい音である。V度は明らかに聴取される中程度の音である。W度はかなり強い雑音である。X度は非常に強い雑音で聴診器の一部を胸壁から離しても聴取できる。Y度は胸壁から聴診器を離しても聴取できる非常強い雑音である。時相は収縮期に限定されるのか、拡張期に限定されるのか、それとも連続性に聞こえるのかが重要であり、第一音、第二音との時相関係から判断できる。最強点は原因となる弁によって位置が違う。僧帽弁なら心尖部領域に最強点があり、三尖弁は第5肋間胸骨右縁から胸骨下縁にかけて聴取される。また、大動脈弁は第2肋間胸骨右縁に、肺動脈弁は第3肋間胸骨左縁に最強点があるのでそれを表記する。

機能性心雑音  ( )

 弁膜に器質的変化があり、その結果生じる雑音が器質性雑音であり、弁膜の器質的変化なしに生じる雑音を機能性雑音と呼ぶ。機能性雑音の多くは無害性雑音である。
 機能性雑音の特徴としては、
@ 聴取される場所が限局性であり、肺動脈弁領域(第3肋間胸骨左縁)に多く、ついで心尖部に多い。
A 一般に短く柔らかい。
B 吸気で柔らかく呼気で高い音となる。
C 体位により変動し、臥位で強くなり、時には臥位でのみ出現する。
D 不安定で運動により出現し、数分後に消失する。
E 心拡大や心疾患の徴候がない。
ことなどが挙げられる。

心臓超音波検査法の原理(Mモード法、断層法、ドプラ法)を述べる

 心臓超音波検査法には断層法、Mモード法、ドプラ法がある。
 断層法とは、探触子から出た超音波パルス波心臓にぶつかって反射し、探触子に戻って来る。この戻ってきた超音波エコーの振り幅の程度に応じて輝度の強弱を表示したのがBモードであり、この輝度表示をもとにして超音波ビームを放射、走査させ心臓の形態をや動きを二次元で描出したのが断層心エコーである。
 Mモードでは、反射して戻ってきた超音波エコーの強さを輝度変調して表示するのはBモードと同じであるが、この各輝点をパルスの方向と直角方向に一定の速度で移動させてえられる図がMモードである。
 ドプラ法は、運動する物体に反射された音波は、その物体の運動速度に比例して周波数が偏移する(近づく場合は周波数が増加し、遠ざかる場合は周波数が減少する)というドプラ効果を利用して血液(赤血球)の流れる速さを計測する方法である。この血流速度を色で示したのがカラードプラ法であり、パルス状の超音波を出しある一点の血流速度を計測するのがパルスドプラ法である。連続した超音波射出により直線状すべての点での血流速度を表示したのが連続波ドプラ法である。


経胸壁心エコー法(Mモード法、断層法、ドプラ法)による心臓画像を説明する。

何を書いたらいいのでしょうか???


心エコー法による心機能の評価を述べる  ( )

 心エコー図では、剖検心を手にとってその断面像を観察するような静的な形態診断(壁厚、心内腔の大きさ、弁の肥厚など)のみならず、心筋や弁などの動きがリアルタイムに描出でき、心機能も定量的に評価できる。また、カラードプラ法により、心内の血流の方向、速度、流量などが分かり、弁逆流、短絡の有無や、圧較差から心内圧の推定まで可能である。
 エブスタイン奇形、心室中隔欠損、心房中隔欠損、大動脈ニ尖弁などの先天性心疾患や閉塞性肥大心筋症などは、心エコーでかなりのところまで診断がつく。また、マルファン症候群が疑われる症例では心エコーが適応で大動脈瘤、僧帽弁逸脱、僧帽弁逆流などが判断でき、かつ予後判定に重要な冠状動脈肺動脈瘻などの異常短絡が、カラードプラ法で見つかることがある。また、心エコー図で経過を追って検査することで、心筋梗塞で動かなかった心筋壁が徐々に回復する様子や、逆に心拡大が悪化して行く様子が観察される。

心エコー法による弁膜症の診断を述べる

(授業では僧帽弁狭窄症を取り上げたのでとりあえず………)

 僧帽弁狭窄症は僧帽弁の肥厚や石灰化などが起こり、十分に弁が開かない状態である。このため特徴的な血行動態を示す。
 胸骨左縁左室長軸像では房室弁の正常がよく観察できる。弁の動きは軽症のものであれば保たれているが、重傷の例では可動性が消失する。特徴的な弁の運動として僧帽弁前尖のドーミングである。僧帽弁の開放に異常があるため、拡張期に前尖が心室方向に向かって凸面を形成する。重症の例では弁尖が塊状を示し、高度の器質的変化の存在を示している。また、中等症から重症の場合では、弁の石灰化を認め、交連部や弁全体に輝度の強い石灰化所見がみられる。僧帽弁レベルでの短軸断面像では僧帽弁の狭窄が認められる。僧帽弁の弁口面積は正常で4.0?以上であり、重症例では0.8?以下となる。更に、Mモードでは弁の動きがより鮮明に描出される。軽症例では前尖のEFスロープの傾斜が緩やかになり、重症例ではそれに加えて前尖と後尖の動きが平行している。また、僧帽弁狭窄症では左心房内に血栓が形成されやすく、しばしば左房内に巨大血栓が認められる。



心筋梗塞の心エコー所見を述べる  ( )

 心筋梗塞部では、障害の程度に応じて低収縮、無収縮あるいは収縮期外方運動などの壁運動異常とともに、収縮期の壁厚増加が認められる。また、心筋の線維化の結果、壁の菲薄化、エコー輝度の上昇がしばしば認められる。左冠動脈前下降枝の閉塞では、通常左室前壁、前方中の異常壁運動が認められ、異常壁運動は心尖部にまで及ぶ。前下降枝末梢部での閉塞の場合は、心尖部のみに認められる。右冠動脈の閉塞では左室下後壁及び心室中隔の後方に異常壁運動が生じる。右心梗塞を合併する場合もあり右室の異常壁運動や拡大などが認められる。左冠動脈回旋枝の梗塞では、左室側壁、後壁に異常運動が認められる。その他にも、心破裂、心室瘤、左室内血栓などの特殊な心筋梗塞後合併症が見られることがある。


肺高血圧の心エコー所見を述べる

 高血圧による慢性的な圧負荷が続くと、心臓のポンプ機能保持のため代償的に個々の心筋細胞が肥大し、心肥大(左室肥大)に至る。また、収縮能の低下に先行して拡張能の障害がしばしば認められ、臨床的に心不全症状を示す症例もある。
 心エコーでは、左室肥大は左室壁の12mm異常の肥厚として定義されている。高血圧に伴なう典型的な肥大様式は左室の拡大を伴なわず左室に均等な壁肥大が生じた求心性肥大であり、この所見が胸骨左縁からの短軸断面図にて観察できる。肥満を伴なう場合は圧負荷だけでなく容量負荷も加わるため左室は拡大し、遠心性左室肥大症を呈することがある。同時に、高血圧に伴ない心室中隔の肥大が早期に出現するため、非対称性中隔肥大が観察されることもまれではない。
 また、左室の拡張機能障害に伴ない、Mモード心エコー図では僧帽弁後退速度の低下、急速流入期における左房径の短縮率及び左室充満率の低下が認められる。


感染性心内膜炎の心エコー所見を(増殖症、ゆうぜい、弁破壊)述べる  ( )

 感染性心膜炎は、後天性弁膜疾患や先天性心疾患において弁や心膜に傷があり抜歯、外傷などで一過性の菌血症が生じ、弁や心膜の障害部位に付着した感染巣が原因となり発症する。心エコー図上の診断には、感染巣として疣贅と炎症による弁組織の変化を検出する。
 疣贅は弁表面に付着した集塊状もしくは遊離したひも状構造物として観察できる。断層像では2mm程度のものまで検出が可能であり、淡いエコー像が特徴である。弁の変化としては弁瘤、弁穿孔が観察されることがある。Mモード法にて弁の異常運動、ドプラ法にて逆流が観察されうる。腱索の断裂がある場合は断層法及びMモード法により収縮期に過剰に翻転するflail valveが観察される。カラードプラ法では同部に逆流が観察される。


心膜疾患(心膜液貯留、収縮性心膜炎)の心エコー所見を述べる  ( ) 

 心膜液貯留とは、心臓周囲の心膜腔内に生理的状態以上の心膜液が貯留した病態をいう。心膜液は、エコー図においてエコーフリースペースとして検出され、左室後壁または右室前壁と壁側胸膜間に観察される。重傷度別にこの心膜液の貯留を評価すると、軽症でごく少量の心膜液貯留がある場合では、左室後壁のエコーフリースペースが収縮期にのみ観察される。少量から中等度の心膜液貯留がある場合では、全心周期にわたりエコーフリースペースが左室後壁に見られる。心膜液が300ccを越えると、エコーフリースペースは心臓全周にみられ、心臓は振り子運動を呈するようになる。
 収縮性心膜炎の病態は心膜硬化による心室拡張障害であり、拡張早期に急激な心室拡張及び拡張停止が観察される。Mモード法において、拡張中期から後期にかけて左室後壁の平低化が心膜硬化による拡張障害を反映している。断層法では、急速流入期に心室中隔壁運動の異常として、心室中隔の急激な偏移が観察される。

肥大型心筋症の心エコー所見を述べる  ( )

 肥大型心筋症とは、原因となる基礎疾患が無く、心筋の肥厚をきたす疾患である。この肥厚は左室壁、特に心室中隔から前壁に限局(非対称性肥大)することが多く、心筋肥厚による心室の拡張障害が病態の中心である。断層心エコー法による肥厚部位の観察から病型分類が可能であり、T型からW型に分類されている。また、心尖部にのみ肥厚が限局するものを心尖部肥大型心筋症という。
 断層心エコー像で見られる所見は、第一に心室壁の肥厚、非対称性肥大(ASH)である。これは多方向からの断層像で観察できる。左室のMモード心エコー図からは心室壁の非対称性肥大が容易に観察される。非対称性肥大(ASH)とは心室中隔のへ期圧が心室自由壁の壁圧と比較して1.3倍以上のものをさす。進行した症例では、カラードプラ法で拡張初期左室流入血流が急速に加速された後、直ちに減速するため左室壁の伸展性の障害が指摘できる。
 肥大型心筋症の特殊な型として、閉塞性肥大型心筋症があり、心室中隔左室流出部の肥厚によって左室の流出障害を生じている。この場合の心エコー所見は、Mモードで収縮期に僧帽弁の収縮期前方運動(SAM)と収縮中期半閉鎖が観察される。
 また、比較的まれにみられる所見として、断層心エコー像で肥厚した心筋内にspecklingと呼ばれる高輝度の塊状あるいは線状のエコーがみられる。これは心筋線維の錯綜配列あるいは間質の繊維化が原因と考えられる。

拡張型心筋症の心エコー所見  ( )

  断層心エコー図において、左室長軸断層像では左室の内腔の拡大、左室の後壁・中隔の菲薄化、左室運動性の低下、左室腔内の血栓(運動性が低下し血液が滞るため生じる事がある)が認められる。
 Mモードでは壁運動の経時的変化や僧帽弁、大動脈弁の運動が観察され、僧帽弁でB-B'ステップが形成されている。また、左室壁の壁厚、中隔の壁厚、心室腔の大きさが計測できる。拡張型心筋症では心拡大に伴ない心室の運動が低下している事がわかる。また、心室腔の大きさが拡大するため拡張末期の心室中隔と左室後壁の間隔は広くなる(57mm以上)また、収縮末期と拡張末期の左室内径を計測し左室内径短縮率(FS)を求める事が可能である。本症では壁運動の低下が見られるために左室内径短縮率は低下し、これは収縮能の低下を意味する。
 カラードプラ法では左室の拡大により僧帽弁の閉鎖不全が生じるため僧帽弁逆流が認められることがある。また、左室の血行動態の変化を知ることが可能で、急速流入血流速度の低下と、心房収縮期流入速度の代償的増加が認められる。


心不全の定義  ( )

 心不全とは心臓が本来のポンプ機能を十分に果たせなくなった状態である。すなわち、十分な静脈還流があるにもかかわらず、心臓が全身の組織代謝の需要(主に酸素の需要)を満たすのに十分な血液を駆出できない状態である。全身に十分な血液を供給できなくなる病態には心拍出量の低下と、全身の組織での代謝が亢進している場合が考えられる。前者は低心拍性心不全、後者は高心拍性心不全と呼ばれている。
 また、心不全には右心不全、左心不全、うっ血性心不全がある。左心不全では、左心系の拍出が低下するため肺高血圧をきたし、肺うっ血、肺水腫となる。右心不全では、右心系の拍出が低下するため静脈に血液がうっ滞して、肺を除く全身性の浮腫や胸水の貯留、肝腫大をきたす。うっ血性心不全はこの2つの病態を合わせたものであるといえる。


0心不全の分類






心不全の症状   ( )

 心不全の症状を左心不全と右心不全にわけて考える。
 左心不全では、左心拍出量が低下するため、心室内に残る血液の量(残血量)は増加するので、左房から左室へと血液が送り出されにくくなる。その結果、左房圧、更に逆行性に肺静脈圧が上昇して肺の毛細血管圧が高まり、血管から水分が滲出して肺うっ血、肺水腫となる。よって、左心不全の症状を考えると、心拍出量低下によって全身倦怠感、易疲労感、チアノーゼ、動悸などが生じる。呼吸困難症状として起坐呼吸や夜間発作性呼吸困難、労作性呼吸困難などが生じうる。また、肺うっ血や肺水腫の存在により桃色泡沫状喀痰や咳嗽、喘鳴などを生じる。肺水腫のため肺湿性ラ音が聴取される。
 右心不全では、右心拍出量が低下するため左心不全の場合と同様に右房圧が上昇し、その結果、全身の血液がうっ滞するため、肺を除く全身性の浮腫や胸水・腹水の貯留、肝腫大が起こる。その結果、頚静脈怒張や肝頚静脈反射が陽性になる。また、肝臓と消化管粘膜のうっ血のため食欲不振、悪心、便秘、腹部膨満感などの消化器症状が出現し、肝臓のうっ血が長期間にわたると黄疸、うっ血性肝硬変をきたす。


心負荷について  ( )

 心負荷には前負荷と後負荷が存在する。前負荷は心室筋が収縮する直前からかかっている負荷である。逆に後負荷は、心室筋が収縮した後にかかってくる負荷である。
 前負荷には拡張末期心室内血液量(心室拡張末期容積)によって規定される。心室拡張末期容積が大きければ心筋の初期長が大きくなり、心室の収縮能は増大する。さらにこの心室拡張末期容量は静脈還流量と心房収縮力によって規定されている。静脈還流量は体位の変化(臥位では静脈還流は増加する)、胸腔内圧(陰圧で静脈還流は増加する)、などで規定される。
 後負荷は末梢血管抵抗によって規定される。すなわち、右心系の場合は肺動脈圧であり、左心系の場合は血圧(大動脈圧)である。

 それぞれに関するファクターを整理すると、前負荷に関するファクターは循環血流量、体位、胸腔内圧ある。循環血流量が増加すれば、拡張末期の心房内の容量は大きくなり前負荷も増大する。体位の変化に関しては、臥位では全身の血液が心臓とほぼ同じ高さにくるので静脈還流量が増加する。このため心室の拡張末期の容量が増加するため前負荷が大きくなる。このため、心臓は心拍数を減少させることによって心拍出量を保つが、還流量が減少しなければ前負荷は続いたままである。また、胸腔内圧が陰圧になれば静脈還流が増え、同様に前負荷が増大する。
 後負荷に関するファクターは末梢の血管抵抗である。オームの法則(電流×抵抗=電圧)と同様に、心拍出量×末梢血管抵抗=血圧であるといえる。故に、末梢の血管抵抗の増大は血圧の上昇、または心拍出量の減少を意味し、後負荷となりうる。


NYHA心機能分類について   ( )

 心不全の重傷度判定にはNYHA(New York Heart Association)分類がよく用いられる。これは患者の自覚症状を中心とした分類でありT度からW度まで分類されている。
 NYHAT度では心疾患はあるが通常の生活では無症状のものであり、実際、普通の身体活動で疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛を伴なわない患者が当てはまる。
NYHAU度では、通常の身体活動がある程度制限されるものであり、実際、普通の身体活動で疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛を伴なう患者が当てはまる。
NYHAV度では、通常の身体活動がかなり高度に制限され、実際、普通以下の身体活動で愁訴が出現する患者が当てはまる。
NYHAW度では、安静時でさえ心不全症状が出現する。実際、安静時にも起坐呼吸などの強い呼吸困難を示す患者が当てはまる。


心不全の理学所見 ( )

 心不全では、左心の1回拍出量が低下するため心室に容量負荷がかかり左室拡大をきたし、続いて左心房の拡大をきたす。これは胸部X線撮影において心拡大の所見が見られる。(右2弓、左3,4弓の突出、鈍角の縦隔横隔膜角)また、心エコー図において左心室内腔の容積の拡大がみられ、心拡大を指摘できる。
 次に、心拍出量が低下するため逆行性に肺静脈圧、肺毛細血管圧が上昇するため、肺うっ血、肺水腫をきたす。その結果、胸部X線撮影では、肺血管陰影は明瞭になり、特に上肺野では血管は怒張、蛇行する。また、肺うっ血、肺水腫の所見として肺胞に滲出した水分によって初期には下肺野が暗くなり、最終的には全肺野が暗くなる。(X線写真には白く写る。)他にも、葉間胸水が存在する場合にはKerley B lineが認められる。胸水の貯留がある場合は、肋骨横隔膜角が鈍角になる。
 更に、右室圧、右房圧の上昇をきたした場合、静脈に血液がうっ滞し、下腿浮腫、腹水貯留、肝腫大、消化管うっ血による食欲不振などのうっ血による所見が見られ、頚静脈怒張や肝頚静脈反射が陽性になる。(右心不全症状)
 呼吸機能に関する所見は血中酸素分圧と二酸化炭素分圧の低下である。肺胞の表面に滲出した水分によって酸素の拡散障害が生じるため過換気となる。その結果、拡散能の高い二酸化炭素は排出され、二酸化炭素分圧が下がる。また、肺胞内に水分の貯留した肺は拡張できないので、静肺コンプライアンスは低下し、拘束性障害をきたす。


心原性ショックの診断

 心原生ショックは重篤な心筋障害が原因となって起こり、心拍出量が低下する。その結果、左室拡張末期圧の上昇をきたし、肺うっ血・肺水腫をきたし動脈血酸素分圧が低下するため全身の血液の還流が変化するため様々な症状を示す。
 臨床症状では蒼白、虚脱、冷汗、脈触知不可能、呼吸不全の5徴候が認められる・
 血圧:収縮期血圧90mmHg以下、または正常時よりも30mmHg以上の低下を示す。末梢の血管が収縮しているため聴診による測定が不可能な場合がある。
 尿量:膀胱内にカテーテルを留置し時間尿をみる。時間20ml以下の時は腎血流量の低下を示す。
 


うっ血性心不全の代償機序  ( )

 うっ血性心不全の基礎疾患として心筋障害があり、この心筋障害が心不全の悪循環を招く原因となる。
 心不全で心拍出量が低下するため心臓の代償機序として心筋の収縮力増加(心拍数増加)を促し心拍出量を維持しようとする。また、循環不全により神経体液性因子(R-A-A系、交感神経)が活性化する。レニンアンギオテンシンアルドステロン系の活性によって末梢血管収縮を促し、近位尿細管でのナトリウム再吸収を促進して水分の貯留を行なうことで循環血流量を増加させる。また、交感神経系の興奮によって心筋収縮力が高められる。
 急性期にこれらの機序により心拍出量の低下を補うが、心不全が長期間にわたるとこの代償機構が破綻する。過度に増加した体液によって浮腫、胸水、腹水が生じる。また、末梢血管抵抗の増大と循環血液量の増大が心負荷となり心筋の酸素消費量を増加させ心筋障害を悪化させる事となる。循環血液量の増加は静脈還流量の増加をきたすこととなり、左室に容量負荷をかけ左室腔の拡大をきたす。この様に、心不全は悪循環を経て次第に悪化して行く。
 また、心臓の代償機構のほかに、心拍出量の減少によって末梢組織はチアノーゼをきたす。その結果呼吸数を増加させることによってチアノーゼを解消しようとする。しかし、過呼吸にかかわらず、肺水腫の存在によって酸素のガス交換がうまくいかず二酸化炭素のガス交換のみが亢進し動脈血酸素分圧の低下と動脈血ニ酸化炭素分圧の低下をきたす。


0心血管撮影、心エコー図の心機能評価

0Swan-Ganzカテーテルによる圧測定、心拍出量測定

心不全の治療薬の特徴と使い分け  ( )

 心不全の医療には利尿薬、血管拡張薬、塩酸モルヒネ、強心薬、心房ナトリウム利尿ペプチドが用いられる。
 利尿薬には即効性で強力なループ利尿薬が用いられる。利尿によって循環血液量を減少させ、後負荷を軽減する目的で用いられる。
 血管拡張薬には、心不全では硝酸薬とACE阻害薬が用いられる。硝酸薬の舌下投与や点滴静注を行なうと静脈ばかりでなく動脈の拡張が生じ心臓の前負荷と後負荷の軽減が可能であり、即効性があるため急性心不全の治療として用いられる。また、ACE阻害薬は降圧作用があり心筋への負荷を軽減するため用いられるが、効果が出るまで時間がかかる為、急性心不全には用いられずに慢性心不全に用いられる。しかし、Ca拮抗薬も血管拡張作用を有するが心筋の収縮力を抑えるために心不全では用いられない。
 塩酸モルヒネは、麻薬の一種であり患者の不安感を取り除き、過呼吸を抑制する事が可能であり酸素消費を軽減させる作用がある他に、血管拡張作用があるので静脈還流量が減少し前負荷が軽減する。
 強心薬として、カテコールアミンやジギタリスが用いられる。特にカテコールアミンは治療に第一選択でありβ1刺激作用のあるドブタミン、ドパミンが用いられる。また、ジギタリスは心筋収縮力の増強と迷走神経緊張亢進による徐脈か作用を介してうっ血性心不全の治療に有効である。
 心房性ナトリウム利尿ペプチドはナトリウム利尿作用と血管拡張作用を有する。
 
 Forrester分類でU度では血管拡張薬と利尿薬が用いられる。V度では輸液と強心薬の投与が必要となり。W度となるとその両者が必要となる。


高血圧の診断基準  ( )

 高血圧の診断基準は様々な基準値が存在する。ここでは、1997年にJNCにて設定された「18歳以上と高齢者における高血圧の分類」を以下に示す。
収縮期血圧 拡張期血圧
至適血圧 <120 または <80
正常血圧 <130 または <85
正常高値血圧 130〜139 または 85〜89
高血圧ステージ1 140〜159 または 90〜99
高血圧ステージ2 160〜179 または 100〜109
高血圧ステージ3 180< または 110<
収縮期高血圧 140< かつ <90
この時収縮期と拡張期が異なるステージに該当する時、高いほうのステージに分類される。
以前は収縮期血圧140以下、拡張期血圧90以下を正常血圧としてきたが、近年、血圧が低いほど脳、心血管合併症の発症頻度が低い事が証明され、より低い治療開始血圧と低い降圧目標値をおいている。逆に、糖尿病などの合併症の存在によっては正常血圧でも治療が必要な場合もある。
 また、診断の際には血圧の測定方法も問題となる。白衣性高血圧などの可能性があり、初診時に血圧が高いからといって容易に高血圧と診断してはならない。初診時に高血圧が指摘された場合、まず経過観察と生活改善を行なうべきであり、それでも高血圧が続くのであれば理想的には24時間血圧計での血圧測定が望ましい。

R-A-A系について  ( )

 レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系は血圧上昇にとって重要な役割を果たす。腎臓は絶えず大量の血液が還流する必要があるので、腎血流量が低下すると腎臓の傍糸球体装置においてレニン分泌がおこる。レニンは血漿中のアンギオテンシンノゲン(レニン器質)をアンギオテンシンTに分解する。このアンギオテンシンTは肺においてアンギオテンシン変換酵素(ACE)の働きでアンギオテンシンUとなる。アンギオテンシンUは心筋、細動脈の平滑筋、交感神経などに作用し血管抵抗を上昇させると共に、副腎皮質球状層細胞からのアルドステロンの分泌を促したり近位尿細管でナトリウムの再吸収を促したりして体液量を増加させる。末梢血管抵抗増加と体液量増加の相乗作用(血圧=末梢血管抵抗×循環血液量)で血圧を上昇させる働きを持つ。
 このようにR‐R‐A系ではアンギオテンシンUとアルドステロンのみが血圧上昇作用を持ち、レニン、アンギオテンシンT自体には血圧上昇作用はない。
また、アンギオテンシンにはレニン分泌を抑制する作用がありフィードバックに関係しており、血圧が下降しすぎないように調整している。

高血圧症の臓器合併症  ( )

臓器障害の程度による高血圧の病期分類には第T〜V期まである。T期は臓器障害の他覚的所見が認められない場合で、V期は重症例である。U期はその中間である。
高血圧の臓器への影響を述べる。
 脳への影響として高血圧性脳症が挙げられる。脳血管は特殊な構造をしておりある程度の血圧上昇が起こっても血圧を一定にする働きを持っている。しかし、急激な血圧上昇が起こり、脳動脈の制御範囲を超えると、脳動脈が押し広げられ脳浮腫が起こる。その結果、激しい頭痛、悪心、嘔吐、意識障害、麻痺などを起こす。
 眼底では網膜血管の変化、うっ血乳頭などの高血圧による血管病変が見られる。
 心臓では、圧負荷により代償的に求心性肥大が起こったり、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患のリスクファクターとなる。
 腎臓では硬化性病変により小葉間動脈や輸入細動脈の肥厚が生じる。
 血管では動脈硬化や動脈瘤、大動脈解離などが生じる。


本態性高血圧の治療   ( )

 高血圧の治療には高血圧の診断が不可欠であり、重症度、臓器障害の有無、心血管系の危険因子の確認が重要である。
 治療の原則は臓器障害発症阻止とその進展の防止および生命予後の改善である。高血圧緊急症など直ちに降圧が必要な場合を除き一般には緩徐に行なうべきである。
 高血圧の治療法の選択には高血圧のステージと危険因子、合併症の程度によって決定される。危険因子が無ければ血圧がある程度高くとも(ステージ1:140〜149/90〜99mmHg)生活習慣の改善を行なう。しかし糖尿病などの合併症が存在すればたとえ軽度の血圧の高血圧でも薬物療法を開始するべきである。
生活習慣の改善として、減量、喫煙、禁酒、食生活の改善、有酸素運動、ストレスの解消などが必要である。薬物療法は合併症の存在、臓器障害の有無によって変わる。合併症の種類によって使用する薬剤も異なる。使用する薬剤には利尿薬、β遮断薬、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、α遮断薬、アンギオテンシンUレセプター拮抗薬などが用いられるが、例えば通風、糖尿病などの合併症がある場合には利尿薬は用いられないし、気管支喘息の既往があればβ遮断薬は用いない。

降圧剤の作用機序と副作用

作用 副作用
利尿薬(サイアザイド系) 利尿効果により循環体液量を減少させることで、降圧する。しかし、R-A-A系が活性化されるため血管抵抗が上昇し、血圧の上昇が起こるが、数週間後には全身血管抵抗の減少に転じて血圧は再び低いレベルで維持される。 高尿酸血症、低K血症、糖代謝異常、高脂血症(K保持性利尿薬では高K血症)<禁忌>糖尿病、高脂血症
β遮断薬 β1遮断:心臓のβ1受容体に作用すると心拍出量低下を促し、傍糸球体細胞の受容体に作用するとレニン活性を抑制するため血管抵抗低下を促す。β2遮断:気管支収縮や末梢動脈の攣縮を引き起こす。 徐脈、気管支喘息誘発、心不全増悪、冠動脈攣縮、心ブロック悪化、四肢冷感<禁忌>急性心不全、気管支喘息、閉塞性動脈疾患、(安静狭心症、徐脈性不整脈)
Ca拮抗薬 動脈中膜平滑筋の弛緩による血管抵抗の低下を促し、特殊心筋の脱分極を抑制するため抗不整脈薬としても用いられる。 頭痛、便秘、浮腫伝導障害、肝障害、徐脈
ACE阻害薬 アンギオテンシンUへの転換を阻害し、血管拡張作用を示すとともに、ブラジキニンの分解を抑制する。(慢性心不全、糖尿病性腎症を合併する場合の第一選択薬) 高K血症、空咳(ブラジキニンの作用)<禁忌>AS、閉塞性肥大心筋症、心タンポナーデ、腎機能低下、妊婦
α遮断薬 α1遮断:α1受容体による血管収縮を阻害し、血管拡張作用によって血圧を低下させる。 起立性低血圧

適応する合併症 禁忌
利尿薬 心不全、浮腫、腎不全 糖尿、高尿酸血症、低K血症
β遮断薬 労作狭心症(治療薬)心筋梗塞、頻脈 気管支喘息、心不全、安静狭心症
Ca拮抗薬 労作狭心症、安静狭心症、糖尿病 房室ブロック
ACE阻害薬 糖尿病、心不全 腎不全、腎動脈狭窄症、妊娠高血圧
α遮断薬 排尿障害、高脂血症 起立性低血圧


二次性高血圧の原因、特徴的な症候、検査所見  ( )

 二次性高血圧はその原因疾患が明らかになっているもので、本態性高血圧をのぞくすべての高血圧をさす。全体として頻度はそれほど高くなく、高血圧全体の5〜10%である。
 原因疾患別に分類すると、大きく分けて腎性高血圧、内分泌性高血圧、心血管性高血圧が挙げられる。腎性高血圧には、腎機能低下により糸球体ろ過量の減少をきたし、細胞外液量の増加による腎実質性高血圧とレニンアンギオテンシン系が関与する腎血管性高血圧がある。特に多いのは腎実質性高血圧で糸球体腎炎、腎盂腎炎、糖尿病性腎症などで腎不全を起こす疾患で起こりうる。そのため糸球体腎炎の場合には蛋白尿、血尿、尿円柱などが出現し、腎機能検査ではクレアチニンクリアランスは低下する。腎盂腎炎は逆行性感染によるものが多く、発熱、腰痛などが現れ、腎機能は低下する。また、腎血管性高血圧は腎動脈の狭窄によって生じる。そのため、腎血流量が低下するためレニン活性が認められる。
 内分泌性高血圧の内、原発性アルドステロン症が原因疾患となるものは、多飲、多尿、筋力低下などが生じ、血液検査では血中アルドステロン値が上昇している。クッシング症候群が原因疾患となる場合は、中心性肥満や満月様顔貌などの特徴的な身体所見を示し、血液検査所見ではコルチゾールの増加とその日内変動の消失が認められる。また、褐色細胞腫では血中カテコールアミンが増加するため高血圧をきたす。
 心血管性高血圧の原因疾患として大動脈炎症候群(高安氏病・脈なし病)や大動脈縮窄症などの動脈管の病変や収縮期性高血圧が挙げられる。前者は、特徴的な身体所見として血圧分布の不均一や血管雑音が現れる。後者は、原因疾患に特有な症状である、拡張血圧の低下、頻脈(甲状腺機能亢進症、貧血)、徐脈(房室ブロック)、雑音(AS、動脈管開存症、動静脈瘻)を示す。


カリクレイン‐キニン系、プロスタグランジンと高血圧との関係  ( )

 カリクレインは唾液腺などの分泌線の機能亢進で分泌されるもので、キニノゲンをカリジンとブラジキニンに分解する働きがある。この時、生成されるブラジキニンは血管拡張作用を有し、血管抵抗を低下させるため血圧低下の方向に働く。同時に、ブラジキニンの生成は、プロスタグランジンやNOの生成を促し、これらの血管拡張作用と合わさって血圧を低下させる。
 また、ブラジキニンはアンギオテンシン変換酵素によって分解される。よって、高血圧の時に降圧剤として用いる、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)はブラジキニンの分解を抑え、血管拡張を促進する作用と、アンギオテンシンTからアンギオテンシンUへの変換を阻害し、血管収縮を抑制する作用の両面をもつ。

  キニノゲン―――→カリジン + ブラジキニン   ←(分解)―ACE    
        ↑            ↓            ↑
      カリクレイン      PG、NO産生         阻害
                     ↓          ACE阻害剤
                  血管拡張・降圧 

二次性高血圧の治療  

 二次性高血圧は原因が明らかになっている高血圧であり腎性(腎実質性、腎血管性)、内分泌性(Cushing症候群、褐色細胞腫、原発性アルドステロン症など)、心・血管性などの基礎疾患を有する。腎実質性高血圧を除く二次性高血圧はそれぞれの基礎病変の修復により完治しうる。問題は腎実質性高血圧で、この治療には腎機能の保持を常に勘案しながら降圧を行なう必要がある。
 このため二次性高血圧の治療には原因疾患の鑑別が重要である。



悪性高血圧、高血圧緊急症の病態  ( )

 悪性高血圧とは、高血圧の合併症として脳、心臓、腎臓などの臓器障害は急速に進行して最も悪性度の高い高血圧である。定義としては以下の4条件を満たすものであり、
1. 拡張期血圧130mmHg以上
2. 眼底所見においてKeith-Wagener分類でW度の乳頭浮腫
3. 腎機能障害が急速に進行し腎不全に至る。
4. 体重減少、脳症状、心不全などが急激な増悪
 この病態はでは、まず細動脈の壊死性変化に対し、血管のリモデリングが起こり血管の平滑筋が過形成される。その結果、血管内腔が狭窄するため血管抵抗が増大しますます血圧が上昇する。更に、腎臓では腎血流量を確保するため、レニン活性が起こり続発性アルドステロン症を引き起こし、高血圧を増悪させる。

 高血圧緊急症とは、血圧の急激な上昇によって脳、心臓、腎臓などの臓器障害が急速に引き起こされ、生命維持に危険をもたらす状態である。このような状態になると直ちに降圧治療をする必要があり、即効性の薬剤が静注される。原因疾患としては高血圧性脳症、肺水腫を伴なう急性左心不全、頭蓋内出血などが挙げられる。


合併症のある高血圧での降圧剤の適応

適応する合併症 禁忌
利尿薬 心不全、浮腫、腎不全 糖尿、高尿酸血症、低K血症
β遮断薬 労作狭心症(治療薬)心筋梗塞、頻脈 気管支喘息、心不全、安静狭心症
Ca拮抗薬 労作狭心症、安静狭心症、糖尿病 房室ブロック
ACE阻害薬 糖尿病、心不全 腎不全、腎動脈狭窄症、妊娠高血圧
α遮断薬 排尿障害、高脂血症 起立性低血圧



心筋疾患の分類  

 特発性心筋症を分類すると、拡張型心筋症と肥大型心筋症(さらに閉塞性心筋症、非閉塞性心筋症に分類される。)、まれに拘束型心筋症などがある。拡張型心筋症は心室腔の拡大が認められるため心拡大となり、肥大型心筋症では心室壁の求心性肥厚が生じ求心性肥大を呈する。
 また、特発性心筋症には特定心筋症という分類項目もある。特定心筋症には@心筋炎(ウイルス、リケッチア、細菌、真菌、原虫による)A内分泌・代謝疾患によるもの(甲状腺機能亢進症および低下症、褐色細胞腫、糖尿病、アミロイドーシスなど)B全身性系統疾患(膠原病、サルコイドーシスなど)C遺伝性変性性神経筋疾患(筋緊張性ジストロフィーなど)D過敏反応・薬物中毒・物理障害(アルコール中毒、放射線障害など)などが挙げられる。

特発性心筋症を分類する  ( )

 特発性心筋症は、現時点では原因が明らかでない心筋症である。特発性心筋症を分類すると、拡張型心筋症、肥大型心筋症(閉塞性肥大型心筋症、非閉塞性肥大型心筋症)、まれに拘束型(収縮型)心筋症に分類される。
 拡張型心筋症は、原因となる疾患が多様であり、心拡大が認められる。左心機能は収縮能、拡張能がともに低下しているため全体としてポンプ機能が低下し、左心不全となり、最終的には肺高血圧を経由して右心不全に至る。このため様々な理学所見(肺ラ音、肺うっ血、浮腫、体重増加、肝腫大、V,W音聴取、収縮期雑音などの心不全症状)が認められる。
 肥大型心筋症は、遺伝が原因と疑われており、心筋の求心性肥大が認められる。左心機能は拡張能が低下しているだけでポンプ機能はある程度保たれるため、無症状のこともある。肥大型心筋症は、更に肥大の部位によって閉塞型と非閉塞型に分類される。前者は左室流出路が心室中隔の肥厚によって狭窄した場合で、特異な血行動態を示し、大動脈弁半閉鎖などのエコー所見を認める。後者は左室流出路の狭窄が認められない場合で、心尖部肥大型心筋症などがある。


心筋炎の原因、徴候、診断   ( )

 心筋炎の原因のほとんどはウイルス感染である。ウイルスに感染した心筋細胞は、ウイルス抗原を提示するためキラーT細胞によってアポトーシスする。アポトーシスの結果、好中球やマクロファージが集まってきて更に炎症反応が拡大する。その他に、リケッチア、細菌、真菌、原虫などが原因となり心筋に炎症を起こす。
 症状としては循環器症状として動悸、息切れが生じ、炎症が心膜に波及すると急性心膜炎となり胸痛を示す。また、刺激伝導系に炎症が波及すると不整脈が出現する。炎症が慢性化すると拡張型心筋症に移行することもある。拡張型心筋症に至ると、肺うっ血、肺水腫などが生じ左心不全症状が出現する他、肺高血圧を経由して最終的には右心不全をきたし、下腿浮腫、頚動脈怒張、肝腫大、消化管うっ血など様々な徴候を呈する。
 心筋の炎症によりX線写真では心拡大が認められ胸部X-P上では右2弓、左3・4弓の突出が出現する。また、心筋障害によって様々な異常心電図所見(ST変化、不整脈など)が冠動脈潅流領域に関係無く出現するが、特異的なものではない。血液検査では、心筋の傷害を反映してCK、GOT、LDH値の上昇が認められ、炎症により血沈亢進、CRP値上昇、白血球増多が見られる。


拡張型心筋症の症候  ( )

 拡張型心筋症は心室の拡張により収縮能、拡張能が傷害され心臓のポンプ能が低下した状態である。原因は多様であり遺伝性のものや心筋炎の慢性化などが考えられている。
 症状は、心室の収縮能が障害されるので心拍出量が減少し、左室圧、左房圧が上昇するため肺静脈還流が低下し、うっ血性心不全を来し、労作時の息切れから始まり左心不全症状(起坐呼吸、易疲労感など)を呈し、進行すると右心不全症状(全身浮腫、頚静脈怒張、肝腫大、腹水など)を自覚する様になる。聴診ではV音、W音が聴取される。
 検査でも、胸部X線写真で著しい心陰影の拡大所見と肺うっ血所見が指摘され、心エコー図でも同様に心室内腔の拡大所見が認められる。心カテーテル検査では、左室の拡張末期圧の上昇が顕著である。心電図においては、ST変化やQRS延長、異常Q波、電気軸偏移などの様々な異常所見が見られる。更に、心室性期外収縮、心室頻拍、心房細動、心房粗動などの不整脈も出現することがある。


拡張型心筋症の心エコー図  ( )

  断層心エコー図において、左室長軸断層像では左室の内腔の拡大、左室の後壁・中隔の菲薄化、左室運動性の低下、左室腔内の血栓(運動性が低下し血液が滞るため生じる事がある)が認められる。
 Mモードでは壁運動の経時的変化や僧帽弁、大動脈弁の運動が観察され、僧帽弁でB-B'ステップが形成されている。また、左室壁の壁厚、中隔の壁厚、心室腔の大きさが計測できる。拡張型心筋症では心拡大に伴ない心室の運動が低下している事がわかる。また、心室腔の大きさが拡大するため拡張末期の心室中隔と左室後壁の間隔は広くなる(57mm以上)また、収縮末期と拡張末期の左室内径を計測し左室内径短縮率(FS)を求める事が可能である。本症では壁運動の低下が見られるために左室内径短縮率は低下し、これは収縮能の低下を意味する。
 カラードプラ法では左室の拡大により僧帽弁の閉鎖不全が生じるため僧帽弁逆流が認められることがある。また、左室の血行動態の変化を知ることが可能で、急速流入血流速度の低下と、心房収縮期流入速度の代償的増加が認められる。


肥大型心筋症の症候  ( )

 肥大型心筋症は心筋が求心性に異常に肥大した状態で、その結果、拡張障害が生じた状態である。心筋の肥大は心室自由壁よりも心室中隔で強く起こるため、非対称性中隔肥大(ASH)が生じ、自由壁との厚さの比が1.3以上となる。この中隔壁の肥厚が高度となると心室から大動脈への左室流出路の狭窄が生じる。この狭窄が高度ものでは、心室壁によって左室流出路が遮断され、閉塞性肥大型心筋症となる。
 原因疾患は様々であり、遺伝性(常染色体優性遺伝)、感染症、などが挙げられる。
 症状は、無症状の場合もあるが、多くは学童期の定期健康診断で発見され、20〜30歳で動悸、息切れ、胸痛、めまい、失神などが生じ、突然死の可能性も否定できない。
 聴診所見では、V音、W音がともに聴取される。閉塞性肥大型心筋症の場合には、左室流出路狭窄による収縮期駆出性雑音が聴取される。この雑音は、静脈還流量の増加(下肢挙上)で減弱し、静脈還流量の減少で増強する。また、心筋の収縮力を高めるβ受容体刺激薬やジギタリスの投与によって雑音は増強する。
 X線写真では、左室は求心性肥大を示すので、原則として心拡大は見られない。

肥大型心筋症の心電図所見

 肥大型心筋症では左室肥大の所見が見られる。しかし、肥大型心筋症の肥大は非対称性であるため、V1誘導からV6誘導にかけての連続性変化は認められず、前後の誘導からは考えられないほどの大きな変化が認められることがある。また、心室中隔の肥大が著明であるため、この部分で脱分極が強くなりV5,V6,T,aVL誘導で遠ざかる波である異常Qはが認められる。更に、肥大した心筋細胞が脱分極するのに時間的ばらつきが生じるため、ST-T変化が起こり、また、心室中隔の肥大が著明な場合には、巨大陰性T波が認められる。


肥大型心筋症の血行動態  ( )

 肥大型心筋症では拡張障害が病態の本体であり、収縮能は保たれている。そのため1回拍出量が減少する。
 閉塞性肥大型心筋症の場合は、左室流出路が肥大した心室中隔によって狭窄するため、乱流が生じ、カラードプラ法で狭窄部位以降でのモザイク像が認められる。収縮の中期に左室流出路が閉塞するため、Mモードでは僧帽弁の収縮中期半閉鎖や収縮期前方運動(SAM)が認められる。
 また、閉鎖性の場合、頚動脈波がニ峰性を示す。これは、収縮中期で左室流出部の狭窄(閉塞)によって大動脈弁半閉鎖が生じて血圧が急激に下降するが、その後大動脈弁が再度開放してゆっくりと血液が駆出されるため圧が再上昇するために生じる。
 心カテーテル検査を行うと、左心室の狭窄部前後での圧較差が認められる。この圧較差はβ刺激薬やジギタリスなどで心収縮力を増強させると大きくなる。更に、心室性期外収縮後の左室圧の著明な上昇に対し大動脈圧が低下すると言うBrockenbrough現象と呼ばれる特徴的な所見を示す。これは心収縮力の増強によって左室流出路の狭窄が増強され、かえって大動脈圧が減少するために生じる。

肥大型心筋症と拡張型心筋症の治療薬のちがい  ( )

肥大型心筋症の病態は心室の拡張障害であるため、治療には心筋の収縮力を弱める薬剤が用いられる。具体的には閉塞性肥大型心筋症に対しても、非閉塞型心筋症に対してもβ遮断薬が用いられる。β遮断薬は心筋のコンプライアンスを増加させ心室の拡張障害を改善し、さらに体動時の心拍出量の増加を抑制するため治療に有効である。またCa拮抗薬も心筋のコンプライアンスを増加させる作用があり有効である。逆に、β刺激薬、ジギタリスは心筋の拡張能を悪化させるため禁忌となっている。
 一方、拡張型心筋症の病態は心筋の収縮力低下が原因となっているため、治療には心筋の収縮力を高める薬剤が用いられる。具体的にはジギタリス、利尿剤、ACE阻害剤が用いられる。ジギタリスは心筋の収縮力を増大させる作用があり、利尿剤は利尿により循環血液量を減らし、ACE阻害剤により末梢血管抵抗を現象させることにより後負荷を減少させ、心筋の収縮を助ける。


急性心膜炎の症状、診断、治療  ( )
 
 急性心膜炎の原因のほとんどは感染によるものであり、心膜の炎症が病気の本態である。症状は胸痛と呼吸困難、咳であり、胸痛は突発性で鋭い痛みがあり、頚部、背部、左肩に放散することもある。3〜4日間持続し、体位変化で変動する。(深呼吸、臥位で増大、座位、前屈位で軽減)
 検査所見として、胸部X線写真では心胸郭比の増加が認められるが、これは心拡大によるものではなく、心嚢液の貯留によるものである。しかし、胸部X線写真では両者を鑑別するのは不可能であるため、鑑別には心エコーを使用する。エコー図ではエコーフリースペースの拡大が認められ、心嚢液貯留を示す。心電図変化では、冠動脈の走行に合致しない誘導パターンのST上昇が認められる。診断には心膜穿刺において心嚢液を採取し、心嚢液について細胞学的、細菌学的、生化学的検査をする必要がある。
 治療はその原因となる疾患に対するもので、細菌感染の場合は抗生物質の大量投与が必要であるし、腫瘍性の場合は抗がん薬の投与は必要であり、特発性の場合はステロイド、利尿剤、鎮痛剤の投与がおこなわれる。


慢性収縮性心膜炎の臨床症状、聴診所見、検査所見、診断  ( )

 慢性収縮性心膜炎は慢性心膜炎の代表的なもので結核性の場合が多く、慢性的な心嚢液の貯留や、急性心膜炎の治癒過程での瘢痕化によって、心膜の硬化や石灰化をきたす病変である。
 心膜の硬化のため、心室の拡張障害が右室にも左室にも生じる。このため、右室の拡張障害の結果として慢性右心不全様症状(肝頚静脈逆流現象、Kussmaul徴候、早期腹水、浮腫、肝腫大など)が出現する。左室の拡張障害では1回拍出量低下、収縮期圧低下、脈圧現象などが見られる。
 聴診所見では心室の急速充満期に心膜ノック音が聴取される。これは、心室壁が硬化した心膜にあたり、拡張が急激に妨げられたため生じ高調性である。心尖部から第4肋間にかけてよく聞こえる。
 胸部画像所見では、心拡大は見られないが、心膜の石灰化が認められる。(特に側面像)また、左心不全のような肺うっ血所見は認められない。
 心電図所見は1回拍出量の低下を反映してlow voltageになる。また、心房細動もしばしば認められる。
 心エコー図では、心膜の肥厚が認められ、石灰化によるエコー輝度の増加が認められる。
 右心カテーテル検査において、右室圧曲線で拡張期にdip and plateauが認められる。これは、拡張期に心室の拡大が心膜によって制限されるため、心房内圧が上昇せずplateau(平らな部分)が生じるためである。
 治療としては、硬化または石灰化した心膜の切除が行なわれる。


感染性心内膜炎の臨床症状、検査所見、診断  ( )

 感染性心内膜炎は主に緑色連鎖球菌や黄色ブドウ球菌が原因菌となって起こる。これらの原因菌が心臓の弁尖やその周囲に損傷があると、その部位に付着、増殖し疣贅を形成する。基礎疾患として先天奇形の内VSD,PDA,TOFなどや、僧帽弁逸脱症、MR、AR、肥大型心筋症などが挙げられる。誘引としては、抜歯、分娩、手術など一過性の菌血症が挙げられる。
 症状は、全身の感染症なので発熱、関節痛、筋肉痛などが出現する。心臓では、弁の損傷により心雑音が出現し、狭心症を思わせる胸痛が生じる。また、疣贅は容易に剥がれるため、遠方に飛んで行き血管塞栓症を引き起こす。末梢の血栓症の臨床所見は皮膚の点状出血や爪下出血、Janeway斑点などが見られる他、脳梗塞や心筋梗塞、腎梗塞を生じる事もある。
 検査所見として、血液検査では感染症による血沈亢進やCRPの上昇、白血球増多が認められる。血液培養では原因菌のほとんどが同定される。また、心エコー図では、弁膜に付着した疣贅が可動性の異常エコー像として観察される。
 本症は自然治癒する可能性は皆無なので、積極的に治療する必要がある。そのため、診断では原因菌の同定が不可欠であり、治療には原因菌に対する抗生剤の長期間大量投与を行なう必要がある。


感染性心内膜炎の内科的、外科的治療  

 感染性心内膜炎は放置しても自然治癒することはなく、放置すればそれは死を意味する。よって、積極的な治療が求められる。
 内科的治療は抗生物質の大量投与である。起炎菌は疣贅の中が多く、抗生物質がなかなかとどきにくいので、抗生物質の血中濃度が最小発育阻止濃度の5〜10倍を静注、または点滴にてゆっくりと投与する。起炎菌の種類によって多少の差は存在するが、最低でも4週間以上で保存する。使用する薬剤は主にペニシリンGであり、起炎菌に対して感受性のある抗生物質の選択が大切である。
 外科的治療は主に弁置換である。内科的治療で心不全をコントロールできない場合、血管塞栓症を頻発する場合、弁輪舞に膿瘍を形成する場合などは、外科的療法を積極的に行なう。

肺循環障害の分類

原発性肺高血圧:発生機序の不明な肺高血圧をさす。多数の原因からなる一つの症候群と推定される。二次性の肺高血圧のほとんどは左心不全である。
肺塞栓症:静脈系に生じた血栓や脂肪塊、腫瘍、異物、空気などが肺動脈を閉塞した状態である。また、肺塞栓症に伴ってその末梢に出血壊死を生じた場合を肺梗塞と呼ぶ。
肺性心:肺、肺血管、肺ガス交換を1次性に障害して肺高血圧をきたす疾患があり、その過程で右室の拡大(拡張・肥大)や右室不全が生じる疾患である。
肺水腫:肺血管外における異常な水分の貯留によりガス交換が著しく障害される。貯留する部位によって実質性と間質性に分けられ、成因によって血行動態性と透過性亢進性に分類される。

原発性肺高血圧症の主要徴候と心電図所見

 原発性肺高血圧は発生機序の不明な肺高血圧である。
 臨床症状はかなり進行するまで自覚症状は生じない。初発症状は体動時呼吸困難、易疲労感、体動時胸痛、失神などが生じる。また、肺動脈圧の上昇によってUp音の亢進、分裂が肺動脈弁領域(第3肋間胸骨左縁)で聴取される。
 検査所見では、胸部X線で左右肺動脈幹の突出、拡大が認められる。また、末梢肺動脈陰影の細小化がみとめられ肺野透過性亢進、心陰影拡大などが認められる。肺高血圧の結果、右室に圧負荷が加わり右室拡大が生じ、心エコー図で心室中隔が左心室側に突出しているのが観察される。また、カラードプラ法によって三尖弁の逆流が観察されることもある。重症例では心嚢液貯留をきたす。
 心電図所見は右軸変位、肺性P、右室負荷・肥大の所見が現れる。

肺梗塞の症状、検査所見、治療

 肺梗塞は肺に血栓ないしは空気、脂肪組織、骨髄組織、菌塊、外来異物などが肺動脈を閉塞する事によって生じる。特に深部静脈血栓症が血栓の原因となることが多く、エコノミークラス症候群などが有名である。
 症状は無症状の場合もあるが、呼吸困難、胸痛を訴える事が多い。呼吸困難は突発性で漸増性である。最もよくみられる徴候は多呼吸であり、肺にラ音を聴取する事もある。肺高血圧が存在するためUp音の亢進が肺動脈弁領域(第3肋骨胸骨左縁)で著明である。また、発汗、浮腫、心雑音、チアノーゼの存在が約1/4の患者で認められる。
 検査所見は、肺血流シンチグラムにおいて区域または肺葉に一致する欠損がみられる。心電図では洞性頻脈を呈し、右軸偏位、肺性P、右室負荷などの肺高血圧性変化と右心不全の所見が現れる。動脈血ガス分析では、過呼吸のためPaCO2が減少し呼吸性アルカローシスを呈する。
 治療は、呼吸 循環動態の回復と血栓・塞栓子の除去である。内科的には酸素吸入、昇圧剤、鎮静剤の投与による対症療法と組織プラスミノゲンアクチベーターによる血栓溶解療法である。外科的には血栓子除去術が行なわれる。

0心臓腫瘍の分類

0左房粘液種の症状、心エコー所見

 左房粘液腫は左房に最も多く発生し通常単発性である。良性の粘液腫で平滑な被膜に被われており有茎性のものもある。腫瘍が成長すると拡張期に左室に向かって貫頓するため、僧帽弁狭窄症類似の症状を示す。僧帽弁狭窄のため拡張期に心室に血流が流入しにくく、そのため拡張期雑音が聴取される。また、腫瘍の貫頓音であるプロップ音が聴取される。血栓を生じる事が多く、末梢に飛ぶと様々な血栓症症状を呈する。
 心エコー図では左房粘液腫は左房腔内に可動性の塊状エコー像としてみとめられ有茎性の場合には茎の存在も確認できる。僧帽弁レベルの胸骨傍短軸断面では拡張期に僧帽弁に腫瘍が貫頓している像が観察できる。Mモード心エコー図では前尖の拡張期後退速度が低下し、拡張期に僧帽弁前尖下に層状の多重エコー(腫瘍エコー)が認められる。

心筋活動電位、心臓の刺激伝導系について

 心筋の静止膜電位は−90mVである。心筋を刺激すると脱分極(+30mV)をおこし再び再分極し静止膜電位に戻る。この脱分極から再分極に至るまでを活動電位と呼ぶ。心筋の活動電位は骨格筋のそれよりも持続時間がはるかに長い。これは、心筋のCaチャネルが関与している。心筋は長時間脱分極し長いプラトーを形成する事によって、長い不応期を得ている。
 心臓には刺激伝導系が存在しそのため心臓には自動能が存在する。刺激伝導系は洞房結節に起始し3本の結節間心房内伝導路を伝わり、心房を興奮させながら房室結節に伝わる。房室結節に刺激が伝わると、刺激は一旦結節内でとどまり(房室結節は刺激伝導が極めて遅いため)ついでHis束、左脚・右脚、プルキンエ線維へと伝えられ心室を興奮させる。房室結節以下の刺激伝導速度は早く、His束で毎秒1m、プルキンエ線維では毎秒4mとなる。

心電図の誘導法について

双極誘導と単極誘導がある。
双極誘導(標準肢誘導)はT.U.V.誘導でありT誘導は左手(+)と右手(−)の電位差であり、U誘導、V誘導はそれぞれ左足(+)と右手(−)左手(−)の電位差を示したものである。
単極誘導は単極肢誘導でありaVF.aVR.aVLで現される。これは不関電極との電位差を示したものである。aVF誘導は不関電極と左足との、aVR誘導は不関電極と右手との、aVL誘導は不関電極と左手との電位差をとったものである。以上標準肢誘導と単極肢誘導は心臓を前額断で観察した場合の波形が計測される。
また、この他に単極誘導には胸部誘導がありV1〜V6誘導で示される。この誘導も同様に不関電極との電位差を示したものであり、心臓の水平断で観察した場合の波形が計測される。V1(第4肋間胸骨右縁)V2(第4肋間胸骨左縁)V3(V2とV4の中間)V4(第5肋間鎖骨中線上)V5(V4と同じ高さで前腋窩線上)V6(V4と同じ高さで中腋窩線上)

心電図各波の名称

例えばU誘導の波形で最初に見られる小さな陽性波がP波である。これは心房筋の脱分極によるものである。P波の次に示される陽性波がR波であり、R波の直前に見られる陰性波がQ波、直後に見られる陰性波がS波である。このQRS波は心室筋の脱分極を示す。QRS波の後に見られる陽性波がT波である。T波は心室筋の再分極を示している。この後にまれに異常U波が検出されることがあるが成因は不明である。
U誘導以外ではP波、T波については陰性波であったり、2相性を示すことがある

心拍数、QRS前額面平均ベクトル電気軸を判読できる

心拍数=1500mm/R-R間隔mm
   =300マス/R-R間隔マス
   =50〜100(正常)
QRS前額面平均ベクトル電気軸はEinthovenの三角形を変形させた6軸系を用いる。


右房肥大(右房負荷)と左房肥大(左房負荷)の心電図波形

心房に負荷がかかると心房筋の興奮を示すP波に変化が現れるため、右房負荷ならびに左房負荷の判断にはP波を用いて検討する。
正常ではU誘導でP波はニ峰性(単一の波形に見えることもあるが)を示し、V1誘導ではP波はニ相性を示す。この時、前半の波形は興奮の起始部である洞房結節の存在する右房の脱分極であり、後半の陽性または陰性の波形は反対側の左房の脱分極を示している。
右房負荷では、右房の興奮が大きくなるためU誘導ではP波が先鋭、増高して0.25mV以上となる。但し、P波の時間は延長しないのが特徴である。V1誘導においても同様に前半の陽性波が先鋭、増高する。
左房負荷では、左房の興奮が大きくなるためU誘導では後半の陽性波が遅延し、ニ峰性が顕著に見られ、P波の持続時間が0.10秒以上となる。V1誘導では後半の陰性波が深くなり、時間も延長する。

右室肥大の心電図診断基準

心室の肥大は心室筋の脱分極を増大させるためQRS波においてその評価を行う。このQRS波は胸部誘導のV1誘導とV5誘導を用いる。というのも心臓の水平断では右室が腹側に位置し左室が背側に位置するため、V1誘導が右室側の電位変化を最もよく示し、V5誘導が左室側の電位変化を最もよく示すからである。
以上のことをふまえると、右室肥大では右室の脱分極が増大するのであるからV1誘導で陽性波であるR波が増高する。同時に、V5誘導にでは陰性波であるS波が深くなる。診断基準としてはV1誘導のR波とV5誘導のS波を加えた値が10mm以上となれば右室肥大とする。また、QRSの電気軸が右軸に偏位していることが多い。

左室肥大の心電図診断基準

心室の肥大は心室筋の脱分極を増大させるためQRS波においてその評価を行う。このQRS波は胸部誘導のV1誘導とV5誘導を用いる。というのも心臓の水平断では右室が腹側に位置し左室が背側に位置するため、V1誘導が右室側の電位変化を最もよく示し、V5誘導が左室側の電位変化を最もよく示すからである。
以上のことをふまえると、左室肥大では左室の脱分極が増大するのであるからV1誘導では、左室側へ向かう電流が増強し、陰性波であるS波が深くなる。逆に、V5誘導では陽性波であるR波が増高する。診断基準としてはV1誘導のS波とV5誘導のR波を加えた値が40mm以上となれば左室肥大とする。


房室伝導障害について

房室伝導障害は心房と心室間の刺激伝導が遅延したり、途絶した状態である。この病変の責任領域は心房内の伝導路、房室結節、His束、左右両脚であり、このいずれかに障害が生じたときに起こりうる。
房室伝導障害はその程度によってT度からV度に分類される。
第T度房室ブロックは房室間の伝導が遅延した状態で刺激伝導の途絶は存在しない。よって、心電図ではPQ間隔の延長がみられるがQRS波の脱落は認められない。心拍のリズムも整である。
第U度房室ブロックは心房の興奮の一部が心室に伝えられない状態であり、MobitzT型とU型に分類される。T型は別名ウェンケバッハ周期とも呼ばれ、心電図所見では、PQ間隔が徐々に遅延し、ついにはQRS波が脱落する。責任領域は房室結節内にある事が多く、一過性で病的意義は少ない事が多い。U型の心電図所見ではPQ間隔の遅延は見られず突如QRS波が脱落する。QRS波の脱落はP波2個、3個または数個に対し一つ脱落する。この時PR間隔は一定である。責任領域は房室結節以下である事が多く、重症であることが多い。第U度房室ブロックは第T度房室ブロックと異なり不整脈を生ずる。
第V度房室ブロックは心室からの刺激が心房にまったく伝わらない状態で、完全ブロックと呼ばれる。この場合、心室はブロックされた部分より下位の部分で起こる補助収縮によってリズムを刻む。ゆえに、心電図ではP波とQRS波のリズムが一致せずに房室解離を示す。責任領域が洞房結節から遠くにあればあるほど心拍数は低下する。

WPW症候群について

心房と心室の間はHis束によって刺激の伝導が行われており、このHis束によって刺激の遅延が行われることで心房と心室が交互に収縮することができる。
WPW症候群とは心房と心室間に、His束以外に刺激を伝導するバイパス路が形成される疾患である。このバイパス路をKent束または副伝導路という。Kent側が左房―左室間に存在するのがA typeであり、V1誘導で高いR波を示すのが特徴である。)逆に、Kent側が右房―右室間にあるものが B typeであり、V1誘導でS波が著明である。また、このKent側は刺激伝導にNaを用いているためCaを刺激伝導に用いているHis側よりも刺激の伝導速度が速いため心室筋が本来の時期よりも早期に興奮してしまい、その結果不整脈が起こる。心電図上ではP−Q時間の短縮、QRS波の延長や特徴的なδ(デルタ)波が観察される。

脚ブロックについて

脚は刺激伝導系の一部をなし、右脚を左脚の前枝と後枝の3本からなる。この3本のうち1本ないしは2本の伝導が障害された病態である。脚に伝導障害が生じると、障害された領域の興奮は正常な部分の興奮の伝達によって起こるのでワンテンポ遅れる。この遅れが心電図にも反映されQRS波の幅が広くなる。QRS時間の延長が0.12秒を越えるものが完全脚ブロックで0.12秒未満のものが不完全脚ブロックである。
右脚ブロックの心電図変化は、QRS時間の延長とV1誘導でrSR'波がみられ、V5,V6誘導では幅の広いS波がみられるのが特徴である。
左脚ブロックの心電図変化は、QRS時間の延長とV1誘導での深いQSとV5,V6誘導でニ峰性のR波や幅の広いR波が見られる。


上室性期外収縮、心室性期外収縮の心電図波形

期外収縮とは洞房結節以外からの刺激の発火によって起こる不整脈の一種である。洞房結節の刺激よりも早期に収縮するので早期収縮とも呼ばれる。
上室性期外収縮は心房性期外収縮と房室結節性期外収縮に分けられる。心房性期外収縮では、心房ないに異所性興奮源が存在するためP波は生じるが、正常より早期に現れ正常に比べ変形しているためP'波と呼ばれる。しかし、心室への興奮の伝導は正常であるのでQRS波は正常であることが多い。房室結節性期外収縮では洞房結節が異所性興奮源となる。このため変形したP波と正常なQRS波がみられる。しかし、同時に房室結節の刺激が心房を興奮させるため、下方からのU、V、aVF誘導では陰性P波となり、心房と心室の興奮の順序が逆になりQRS波が先行したり、P波と重なり合うことがある。また、RR間隔は短縮する。
心室性期外収縮は心室内に異所性興奮源が存在するために生じるもので、この興奮の多くはHis束を逆行することができないため心房は興奮せずP波は欠如する。心室の興奮は正常の刺激伝導路を通過しないので興奮の伝導は遅延しその結果QRS波は幅広く変形する。また、RR間隔は不定である。

心房細動、心房粗動の心電図波形

心房細動は心房が細かく震え、収縮性が失われた状態であり、原因は複数の興奮波のrandom reentryである。心電図所見は心房の細かい振れが、基線の揺れとして記録さる。f波はV1誘導で最も良く検出され、その回数は毎分300〜600回になる。心房は収縮しないためP波は観察されない。心室筋の収縮は心房の収縮とは関係無く、心筋の不応期が終わると収縮が開始する。よって心室筋の収縮は不規則となりR-R間隔は一定でない。これを絶対的不整脈という。
心房粗動は心房が実際に毎分250〜300回という高頻度で規則的に収縮する状態である。心房が実際に収縮するためP波の代わりに鋸歯状のF波が観察される。U、V、aVF
誘導で陰性のF波を示すのがcommon type であり、陽性のF波を示すのがuncommon typeである。心室は正常に規則正しく収縮するのでQRS波の形状は正常であり、R-R間隔は一定である。心室の収縮は規則正しく行なわれるのは、不応期の存在によって房室間の興奮の伝導は2:1伝導または4:1伝導となるためである。伝導が1:1となるとAdams-Stokes発作となり心拍出量は激減する。

洞不全症候群について

洞不全症候群は洞房結節やその周辺に生じた病変の結果、洞房結節のペーシングに異常が生じ、洞性徐脈や洞停止、洞房ブロックが生じた状態である。原因としては、約半数の症例は特発性で器質性疾患は存在しないが、残りの約半数の症例では虚血性心疾患や心筋症などの基礎疾患が存在する。加齢、サルコイドーシスなど
分類としては、T型は持続性の洞性徐脈でP‐P時間は常に長く脈拍は50以下である。U型は一過性または持続性の洞停止または洞房ブロックで突如P波とそれに続くQRS波の欠如がある。洞結節の回復に時間がかかると房室結節以下で補充収縮が起こり心筋を収縮させる。V型は徐脈頻脈症候群で徐脈と頻脈が相互に繰り返される。
心拍出量の著しい減少を示すため、中枢系への酸素供給が不十分となり、めまいやAdms-Stokes発作などを示すと同時に全身性の酸素不足により心不全症状(易疲労感、息切れ)を示す。様々な薬剤(β刺激薬、副交感神経遮断薬)が用いられるが治療の第一選択は人工ペースメーカーの埋め込みである。

発作性上室性頻拍の心電図波形

 発作性上室性頻拍は主にリエントリーに起因し、房室回帰性頻拍と房室結節回帰性頻拍が代表的である。前者はWPW症候群に合併する事が知れられている。
 心電図波形は頻拍を示し、脈拍数は140回〜240回であることが多い。WPW症候群に伴なう房室回帰性頻拍ではP波の逆転(U・V・aVF誘導)が認められる。房室結節回帰性頻拍では心房と心室の収縮が同時に起こるのでP波は消失する。QRS波は原則として正常である。


心室性頻拍の心電図波形

心室性頻拍はHis束よりも遠位部の心室起源の収縮(心室性期外収縮)があり、それが3拍以上連続する不整脈である。心拍数は通常100回/分以上で幅の広いQRS波(0.12秒以上)が出現する。このQRS波は心房の興奮に由来しないのでP波を伴なわない。しかし、心房は独自の周期で興奮し、収縮しているため原則としてはP波は存在するが変形したQRS波に埋もれて判別が困難である。また、幅の広い変形したQRS波の間にP波の興奮が心室に伝わり、幅の狭いQRS波を生じることがあり、これを心室補足という。
これらの心電図変化を伴なう心室性頻拍は特発性のものもあるが、多くは心筋梗塞などの虚血性心疾患や心筋症などの重症心疾患に伴なって起こる。

心室細動の心電図波形

心室細動は心室筋の興奮性が異常に高まり、個々の心筋細胞が無秩序に興奮した結果、心室が細かく震えるだけで全体としての収縮ができなくなった状態である。このため、心拍出は行なわれなくなり事実上心停止状態となる。心電図上でこの変化を観察すると、規則性がまったく見られない。P波、QRS波、T波は形成されず、振幅がばらばらで幅の広い周波数が短い波が連続性に出現し、基線は常に変動している。
以上のような心電図波形を示す心室細動は虚血性心疾患や心筋炎、心筋症などの心筋病変のほかに、低体温、ジギタリス中毒、電解質異常などが原因疾患として挙げられる。心房細動は自然に改善することはまずありえないので心肺蘇生が必要であると共に、電気ショックによる徐細動が必要である。

動悸、呼吸困難、胸痛の自覚症状について

動悸:心拍数の増加、1回拍出量の増加、不整脈が原因
原因となる心疾患―高血圧、不整脈、心不全、心筋症、弁膜症、各種先天性心疾患
心疾患以外では―運動、心因性、甲状腺機能亢進症
呼吸困難:組織の酸素需要に対して肺からの酸素供給が追いつかなくなり呼吸に努力が生じた状態。
原因となる心疾患―左心不全による肺鬱血⇒起坐呼吸、泡沫状喀痰、喘鳴
胸痛:持続時間、痛みの特徴、痛みの範囲、前兆の有無、などに注意して鑑別を行なう必要がある。
胸痛を示す疾患―循環器系⇒心筋梗塞、狭心症、心膜炎、弁膜症、大動脈解離。
呼吸器系⇒肺梗塞、自然気胸。
消化器系⇒胃潰瘍、胆石、膵炎、食道炎など。


浮腫、チアノーゼ、肺ラ音、肝腫大の理学的所見について

浮腫は間質に液体が異常に貯留した病態で、血管外に出る力である静水圧と血管内に引き戻す力である膠質浸透圧に加え、毛細血管の透過性によって決まる。循環器疾患における浮腫は右心不全に起因するものである。右心不全によって右心系のポンプ力が減退し静脈に血液が鬱滞することで静水圧が上昇し浮腫となる。この場合、夕方から夜にかけて下腿の浮腫が著明となり明くる朝には浮腫は軽減する。一日中臥位の患者では背中に浮腫が出現する。
チアノーゼは末梢血中の還元ヘモグロビンの量が5mg/dlを越えた時に皮膚、粘膜が青紫色に変色する。この場合、患者の総ヘモグロビンは関係が無い。
左心不全の時の肺ラ音は湿性肺ラ音である。これは肺鬱血によって肺胞内に滲出液が出現し、吸気時に水泡がはじける音が聞こえる。初期には下肺野で湿性ラ音は聴取されるが、症状が進行し重症となると全肺野で聴取される。乾性ラ音は肺線維症の時などにられ、ベルクロラ音とも呼ばれる。
肝腫大は右心不全の時に見られる所見である。右心のポンプ力が減弱するため、静脈に血液が鬱滞することによって肝腫大が起こる。腫大した肝臓は右悸肋下に触れ、その下縁は鈍角で硬い。患者は腹部膨満感を訴える。

起坐呼吸、Cheyne-Stokes呼吸について

起坐呼吸とは左心不全の時などに生じる呼吸形式である。この状態にあるとき、臥位では静脈還流量が増加するため右心系の拍出量が増加するが左心系の拍出量は増加できないため肺うっ血が増悪し、肺胞内に滲出液が貯留するため呼吸困難が生じる。しかし、座位では重力によって静脈還流量が減少するため、肺うっ血は軽減され呼吸困難が消失もしくは軽減する。このため患者は臥位をとることができず、睡眠時も座位をとらざるをえない。
Cheyne-Stokes呼吸とは、うっ血性心不全患者によくみられる呼吸で、呼吸がだんだん浅くなり消失した後、深く激しい呼吸が出現しまた浅くなっていくという一連のサイクルが睡眠時にみられる睡眠時無呼吸症候群の一つである。これは肺から脳への血液循環の時間延長によって起こりうる。過換気により肺で血中二酸化炭素分圧が低下してもそれが脳の呼吸中枢で感知されるまでに時間がかかるため呼吸は抑制されず過換気が続くが、時間がたって二酸化炭素分圧の低い動脈血が脳を潅流するようになってはじめて呼吸抑制が起こる。これが周期的に起こることによってCheyne-Stokes呼吸が生じる。

鬱血性心不全の胸部X線像

鬱血性心不全は心筋梗塞、狭心症などが原因で左心室の収縮力低下によって起こる。このため心臓は拡大し心胸郭比が上がる。左心系のポンプ力が低下するため肺静脈圧が上昇しその結果肺鬱血となるため、X線像では肺鬱血の所見が見られる。肺鬱血所見としては、肺胞に滲出液が溜まりX線象では肺野が暗く(白く)ぬける。この陰影は肺門部を中心に左右対象に広がるために、蝶形陰影と呼ばれる。この肺水腫が軽度の場合、浮腫は間質のみにとどまる。その結果、気管周囲に鬱滞する血液量の増加を反映してcuffing signがみられる。また、微量の葉間胸水を伴なうことがありKerley B signを認めることが多い。

心カテーテル検査法について

心カテーテル検査は末梢血管から心臓内にカテーテルを挿入する侵襲的な検査である。右心系には静脈より、左心系には動脈よりカテーテルを挿入する。
カテーテル検査では内圧測定、血液ガス分析、心拍出量の測定、選択的冠動脈造影などを行ない、更に、心生検、His束の心電図測定、血管内超音波検査、カテーテルアブレーション治療、心筋梗塞の治療としてPTCA、冠動脈血栓溶解療法が可能である。
検査の合併症として、動脈内膜の損傷による動脈塞栓症、内膜剥離、仮性動脈瘤、出血などや、心臓及び大血管の穿孔、ショック、感染、発熱などがある。
検査の禁忌は、絶対的禁忌として、判断力のある人間が検査に同意しなかった場合である。相対的禁忌としては、コントロールできない心室興奮性の亢進、低カリウム血症、ジギタリス中毒、管理されていない高血圧など。造影を行なう場合は、造影剤に対するアレルギーを持った患者や高度な腎不全である。

右及び左冠動脈の走行、潅流領域について

心筋を支配している冠動脈は、右冠動脈、前下降枝、左回旋枝の3本である。これらは機能的終動脈であり、正常では吻合は見られない。
右冠動脈は大動脈起始部の右バルサルバ洞(右冠尖)より起始する。右冠動脈は右室に枝を出しながら、右の房室間溝に沿って後方に回り込み後方の室間溝を下降し後下降枝となる。
左冠動脈は大動脈起始部の左バルサルバ洞(左冠尖)より起始し、左の房室間溝を走行するがすぐに分枝する。この間の短い間(約1cm)を主幹部と呼ぶ。主幹部より分枝した冠動脈の内、右室自由壁と心室中隔に枝を出しながら前室間溝を下降する枝が前下降枝であり、房室間溝を走行するのが回旋枝である。心臓は主にこの3本の冠動脈によって養われている。
右冠動脈は主に右心室と心室中隔の後1/3を潅流する。また、右冠動脈は洞房結節や房室結節にも血液を供給している。左冠動脈前下降枝は左心室の前壁と心室中隔前2/3及び心尖部を潅流する。左冠動脈回旋枝は左心室の側壁と後壁を潅流する。

心筋酸素消費量の規定因子

収縮能:心筋の収縮には大量の酸素が必要である。特に心室の等容収縮期(特に左心房圧が上昇しはじめ大動脈弁が開放するまでの間)に心筋の仕事量は増加する。この時期の心筋の収縮を収縮能と呼び、収縮能が高いほど酸素消費量は上昇する。カテコールアミンの投与でこの収縮能は上昇し、プロプラノールの投与で低下する。
心拍数:心拍数の上昇によって酸素消費量は上昇する。収縮期の頻度が上がるのでそれに比例して酸素消費量は上昇する。
張力(血圧×容積):心筋壁の張力によって酸素消費量は増加する。心筋張力には心室内の圧力や心室の容積が関係する。(ラプラスの法則)すなわち大動脈弁狭窄症などで左室圧が上昇した時や心室拡大時には酸素消費量が大きくなる。
 心筋量:心筋量が多いほど酸素消費量は上昇する。求心性心肥大の場合などが例として挙げられる。

心筋酸素消費量と心筋虚血との関係

心筋の酸素消費は他の組織よりも激しく、心臓を栄養する動脈と静脈の酸素較差はきわめて大きく、静脈血中の酸素ヘモグロビンからこれ以上酸素を得ることができない。このため心筋の酸素需要を満たすには冠動脈の血流量を増加させなければいけない。すなわち心筋の酸素供給は冠血流量に依存しているといえる。
よって心筋虚血は冠血流量の相対的あるいは絶対的な不足によって起こりうる。例を挙げると、運動などで心筋酸素消費量が上昇してにもかかわらず冠動脈の硬化、プラーク形成などの血管病変のために血管径が広がらず冠血流量が増加しなければ、心筋の酸素需要を満たすことができないので心筋は虚血におちいる。また、高度の狭窄や塞栓などで冠血流量が減少し、心筋酸素消費量を満たすことができなくなれば心筋は虚欠におちいる。
狭心症の場合、前者は労作時狭心症と呼ばれ、後者は安静時狭心症と呼ばれる。

心筋虚血の発生機序

心筋の栄養血管は冠動脈であるので酸素供給の不足ということを考えると、責任病巣は血管である。
第一に、冠動脈に生じた動脈硬化病変が挙げられる。コレステロールの蓄積によって粥腫が形成され血管の器質的な狭窄が生じる。この狭窄が75%以上で労作時に酸素供給が不足する様になり、90%以上の狭窄では安静時にも酸素供給が不足する。
第二に、冠動脈の攣縮が挙げられる。心筋表面の太い血管が攣縮を起こすことで機能的狭窄を生じるために心筋は一過性の虚血におちいる。
また、冠動脈の血管自体は正常でも,大動脈弁狭窄症のように大動脈圧が低下し、冠血流量が維持できなくなった場合も心筋の虚血は起こりうる。
もう一つ考えねばならないのが心筋酸素消費量の過度の上昇である。心拍数、収縮能、心筋張力が上昇し冠動脈からの酸素供給を超えた場合に心筋は虚血に至る。

心筋虚血時の心筋内層と外層の血流の関係

 心筋の酸素供給を行なう血管は左右の冠状動脈であり、これらは心筋の最外層を走行する。冠状動脈の枝は心筋の外層から内層に向かって走行し心筋を栄養している。外層から内層に向かうにつれて血管は細くなり、心筋収縮時に組織の圧も高くなるため、血液は流れにくい。
 このため、冠状動脈の閉塞ないし狭窄が生じると、心筋は最初に内層から傷害されてゆき、次第に外層まで傷害が波及する。この現象をWave-front現象と呼ばれている。この事は、虚血時のごく初期にSTの下降が観察され傷害が全層に渡るとSTが上昇が観察されることで証明される。

冠側副血行路について

 心臓はバルサルバ洞から起始する左右の冠動脈によって栄養されており、この冠動脈は機能的終動脈で基本的に大きな血管同士の吻合は認められない。しかし、末梢動脈レベルでは多くの血管吻合が認められる。
 主冠動脈に急性梗塞が生じると、末梢レベルの血管吻合である側副血行路が拡大し梗塞を生じた冠動脈域を栄養する。しかし、この微小な側副血行路からの栄養では心筋の酸素需要をすぐには満足する事ができない。時間の経過と共にこの側副血行路は拡大し、約1ヶ月で虚血心筋への血液供給は正常化する。このような側副血行路の発達によって心筋梗塞より回復する例も多い。また、動脈硬化が徐々に進行する症例では側副血行路が徐々に発達するため、心筋虚血が急激に発症する事は無い。
 しかし、側副血行路にも狭窄ないし閉塞が生じた場合は心筋は虚血に陥る。

運動負荷心電図

 狭心症は普段の心電図では特別な異常は認められないので、人為的に運動負荷を加えて発作を誘発し、その心電図の波形の変化を正常と比較検討する事で診断を行なう必要がある。また、運動負荷を加える事で運動耐用能の評価、不整脈の誘発試験などが可能である。
 この時に加える運動負荷には何種類かありそれぞれ特徴がある。
マスターステップ法:ニ段の階段を昇降する運動負荷を行ない、その前後で心電図の計測を行なう。どの施設でも簡単に行なえるが運動中の心電図を計測できず、老人や障害者には行なう事が出来ない。
エルゴメーター負荷試験:自転車による負荷を行なう。座位、臥位での計測が可能であり、運動負荷中の心電図測定が可能であり、監視下で行なうため急激な心電図変化に対応して運動の中止が可能である。このため運動耐用能の評価が同時に可能である。また、臥位での計測が可能なので、同時に心エコーを施行する事が出来る。
トレッドミル負荷試験:ランニングマシーンによる運動負荷を行なう。運動中の心電図測定が可能であり、運動耐用能の評価も可能である。エルゴメーターと同様に急激な心電図変化に対応して負荷を中止することが可能である。
 狭心症の場合、運動負荷により虚血部位に対応する誘導に心電図変化が現れ、STが水平下降する。

心筋梗塞発症時から陳旧化までの心電図変化

発作直後にT波増高-->ST上昇-->異常Q波の出現とT波終末の陰性化--->STは基線に戻るとともに冠性T波の出現

 急性期の心電図変化は、ST変化、T増高、異常Q波である。冠動脈が閉塞し虚血が起こると心筋は内膜側から傷害される。この時、心筋収縮時に正常心筋から障害心筋に向かって障害電流が流れるためSTの下降が観察される。心筋の障害が貫壁性に完成すると、T波の増高が観察される。次に、周囲の正常部から収縮期に傷害電流が流れ込み、STが上昇する。続いて、発作後24時間以内に異常Q波が出現し、ST波下降し始める。(異常Q波:0.03秒以上でR波の4分の1以上の高さを有するQ波、または長さが0.04秒以上のQ波をさす。)
 心筋梗塞が陳旧化すると心電図波形はQSパターンと陰性の冠性T波が出現する。冠性T波は時間がたつと改善されるが、Q波は最後まで残存する。

狭心症の分類

冠動脈の病変によって分類すると、器質的狭窄によるものと冠攣縮性狭窄によるものとに分類される。
前者は粥腫が形成されたため血管内腔が狭窄し心筋酸素消費量を満たすだけの血流が維持できなくなり心筋の虚血を招いた状態である。血管径の75%以上の狭窄が生じ運動負荷を加えると心筋の酸素需要量が供給量を上回ってしまい虚血におちいる。この状態が労作狭心症である。器質的狭窄によるもののほとんどが原則として労作狭心症である。しかし、器質的狭窄が進行すれば、後述する安静狭心症となりうる。
後者は何らかの原因で冠動脈に攣縮が生じ冠血流が制限された状態である。この場合、一挙に90%以上の狭窄をきたすため、安静時にも心筋の虚血症状が出現する。この状態が安静狭心症(異型狭心症)である。冠攣縮性狭心症のほとんどが原則としてこの安静狭心症である。

次に、症状の進行から分類すると、安定狭心症と不安定狭心症に分けられる。
安定狭心症は狭心症の発作の頻度、強度、持続時間などが安定していて症状の進行が見られない場合をいう。
不安定狭心症は更に新規発作型と増悪型に分けられる。前者は新たに狭心症発作が起こった場合である。この中には6ヶ月以上無症状で発作が再発した場合も含まれる。また、後者は元来の労作狭心症発作の頻度、強度、持続時間などの症状が増悪したものをさす。この不安定狭心症は心筋梗塞に移行する危険性が極めて高い状態にある。

不安定狭心症の定義

不安定狭心症は心筋梗塞に移行する危険性が高い狭心症であり、心筋梗塞との連続性を重視し、両者を併せて急性冠動脈症候群と呼ばれることがある。
アメリカ心臓学会による定義は、発作が3週間以内に始まり、最後の発作が一週間以内に起こり、しかも急性心筋梗塞を示す心電図変化や血清酵素の上昇が無い場合で以下の3項目の内一つでも満たすものをいう。
1) 初発労作狭心症:発作が初発もしくは6ヶ月以上も無症状期の後に発作が再発したもの。
2) 増悪型:もともと労作狭心症があり、その発作の頻度、強度、持続時間、易誘発性、放散、及びニトログリセリンに対する反応が増悪したもの。
3)初発安静狭心症:新規初発の安静狭心症であり、発作が15分以上持続したり、ニトログリセリンの効果がないこともある。

労作時狭心症と異型狭心症の発作時の心電図変化

労作時狭心症では冠動脈の狭窄は75%〜90%であるので、心筋の虚血は心内膜側に限局する。このため収縮期には健常部から傷害部方向に、すなわち心外膜側から心内膜側方向に傷害電流が流れるため電極方向から遠ざかる形になり心電図上では一過性にSTが低下する。
一方、異型狭心症では冠動脈の攣縮による狭窄は90%をこえて時には完全に閉塞する。そのため安静時にも発作が生じ、完全閉塞の場合には心筋の虚血は貫壁性のものとなる。貫壁性虚血に至れば、収縮期には活動電流が周囲の健常部から傷害部に向かってくるので電極方向への傷害電流として観察されるため、心電図ではT波の増高、ST上昇と言った急性心筋梗塞の急性期変化が認められる。また、冠動脈が狭窄ですんだ場合は労作狭心症と同じ心電図パターンを呈する。

心筋虚血の診断法(運動負荷心電図、RI、PET)

 狭心症は普段の心電図では特別な異常は認められないので、人為的に運動負荷を加えて発作を誘発し、その心電図の波形の変化を正常と比較検討する事で診断を行なう必要がある。この時に加える負荷には何種類かありそれぞれ特徴がある。
マスターステップ法:ニ段の階段を昇降する運動負荷を行ない、その前後で心電図の計測を行なう。どの施設でも簡単に行なえるが運動中の心電図を計測できず、老人や障害者には行なう事が出来ない。
エルゴメーター負荷試験:自転車による負荷を行なう。座位、臥位での計測が可能であり、運動負荷中の心電図測定が可能であり、監視下で行なうため急激な心電図変化に対応して運動の中止が可能である。このため運動耐用能の評価が同時に可能である。また、臥位での計測が可能なので、同時に心エコーを施行する事が出来る。
トレッドミル負荷試験:ランニングマシーンによる運動負荷を行なう。運動中の心電図測定が可能であり、運動耐用能の評価も可能である。エルゴメーターと同様に急激な心電図変化に対応して負荷を中止することが可能である。
 RI検査は心筋の代謝を利用してラジオアイソトープ(RI)によって病巣の血流分布、代謝、交感神経機能分布などの評価が可能である。RI検査には代表的なものとして201Tlシンチであり、201Tlの集積は血流の存在を示すため、集積しない部分は虚血を意味する。
 PETはブドウ糖代謝を利用した方法である。通常心筋はブドウ糖をエネルギー源としており積極的にブドウ糖の取りこみを行なっているため、標識されたブドウ糖を取りこむ。傷害された心筋はこのブドウ糖取りこみを行なえないため、病巣はColdとなり心筋の壊死を意味する。


無症候性虚血性心疾患

 無症候性心筋虚血(SMI:Silent Myocardial Ischemia)とは、狭心痛などの自覚症状がみられないものの、負荷心電図、負荷心筋シンチグラフィー、負荷心エコーなどで心筋の虚血を示す病態である。自覚症状を欠くだけで通常の狭心症と病態は同じである。
 本症は、高齢者、糖尿病や陳旧性心筋梗塞の患者に多くみられる。狭心痛は虚血によって生じた代謝産物が求心性交感神経を刺激するために生じるため、求心性交感神経が侵される疾患を合併すると虚血が生じても症状は出現しない。余分な異常が加わる上に、無症状の患者は服薬指導、生活指導に従わないため通常の狭心症に比べて予後は悪い。

冠動脈血栓と急性冠症候群

 急性冠症候群の原因は冠動脈の血栓形成である。冠動脈血栓症は動脈硬化によって形成された粥腫プラークの崩壊によって形成される。プラークの崩壊が生じるとプラーク内容物が凝固系を亢進し血栓を成長させる。この血栓に対し線溶系が更新し血栓溶解を行なう。しかし、凝固系が優位になると冠動脈は狭窄ないし閉塞に至る。冠動脈が狭窄すると、心筋は酸素需要を満たすことが出来ずに虚血におちいる。この状態を不安定狭心症と呼ぶ。また、冠動脈が閉塞し、線溶系によって比較的短時間に再潅流があると心筋障害は内層に限られ非Q波梗塞が生じる。線溶系が亢進せず再潅流が遅れると心筋の障害は貫壁性のものとなり、Q波梗塞となる。また、貫壁性虚血により不整脈や心室細動が生じ心臓突然死を起こすこともある。
 これらの不安定狭心症、心筋梗塞(Q波梗塞、非Q波梗塞)、心臓突然死を合わせて、急性冠症候群と呼ぶ。


冠危険因子について

冠動脈病変をおこす危険因子のうち、5大リスクファクターといわれているのが、高血圧・高脂血症・糖尿・肥満・喫煙である。そのほかにも、家族歴・高尿酸値・年齢(40代)・心電図異常・ストレスなどが関係している。

心筋梗塞治療薬

労作狭心症と異型狭心症では治療薬が異なる。
労作狭心症に対しての薬物投与は、狭心症発作予防としてβ遮断薬、Ca拮抗薬が用いられる。作用機序は、β遮断薬は心拍数、血圧、収縮能を抑制することによって心筋酸素消費量を減少させる。Ca拮抗薬は冠動脈を拡張させることで心筋への酸素供給量を増加させると同時に、大血管を拡張させることで後負荷を減少させて心筋の酸素消費を押さえる。また、結節の脱分極抑制や心筋へのCa流入抑制を行ない血圧、収縮力を低下させる。硝酸薬は静脈拡張による前負荷の軽減と冠動脈拡張による心筋酸素供給量の増加に作用するが耐性が付きやすいため狭心症予防には用いられない。しかし、発作時には硝酸薬であるニトログリセリンの舌下投与が即効性の観点から有用である。
心筋梗塞への移行を防止するために、プラークの安定化をはかる必要がある。このため、β遮断薬、アスピリン、高脂血症治療薬であるHMG(CoA還元酵素阻害薬)が用いられる。β遮断薬の作用機序は不明であるがストレスに対する反応性の低下が証明されている。アスピリンには血栓の形成を防止する作用があり、HMGにはコレステロールを減少させプラークの退縮を促す作用がある。
異型狭心症に対してはCa拮抗薬が第一選択でβ遮断薬は使用しない。Ca拮抗薬は冠動脈の平滑筋収縮を抑制して、冠動脈攣縮を防止する働きがある。β遮断薬は、β受容体を抑制することにより相対的にα受容体を優位にし血管の収縮作用によって攣縮を誘発するため用いない。

心筋梗塞の発生機序

心筋梗塞の原因の多くは動脈硬化の粥腫プラークの破綻による。粥腫プラークが何らかの原因で破綻すると粥腫内容物であるlipid coreが血管内腔に露出する。この露出した部分で凝固系が活性化し血小板やフィブリンが集まって血栓を形成する。この血栓に対し線溶系が働き血栓溶解が行なわれるが、凝固系が優位にあると血栓が成長し血管内腔を完全に閉塞してしまう。この場合心筋の虚血は壁全層にわたり(貫壁性虚血)異常Q波が出現する事からQ波梗塞と呼ばれる。この血栓が比較的短時間の内に線溶系により溶かされ、再び血液が流れると心筋の障害は内層のみにとどまり異常Q波は出現しない。この梗塞を非Q波梗塞と呼ぶ。また、血栓によって管腔が完全に閉塞しなかった場合は、安静狭心症となる。
他にも、冠動脈の攣縮により血管内皮細胞が障害され、障害部分で凝固系が活性化することもある。

狭心症と心筋梗塞の発生機序の違い

狭心症発作の発生機序を述べると、労作狭心症では冠動脈の75%以上の狭窄が存在し、運動の負荷によって心筋の酸素需要が増加し、この増加に対して冠血流が酸素供給を満たすことができなくなって心筋が一過性に虚血状態となる。また、異型狭心症(安静狭心症)では冠動脈の攣縮により冠動脈の90%以上の狭窄が起こり、安静時にも心筋酸素消費量を満たす冠血流量を維持できなくなり心筋が一過性に虚血状態となる。
一方、心筋梗塞の発生機序は冠動脈の血栓による完全閉塞である。血栓の形成には動脈硬化による粥腫プラーク形成や血管攣縮による内皮細胞の障害が考えられる。この血栓が線溶系によってすぐに溶かされず、一定時間以上の血流の遮断が続いた場合に心筋に虚血が起こり、ついには不可逆性に壊死に至るのである。血流の遮断が短時間であった場合、心筋障害は内膜側にとどまり非Q波梗塞と呼ばれるが、虚血が長時間に及んだ場合貫壁性の心筋障害が生じQ波梗塞となる。

発生時の臨床症状

狭心症の約半数は突如発生するが、約半数の症例では前駆症状として狭心症発作を伴なう。例えば、狭心症発作の頻度上昇、増悪、持続時間延長、あるいはニトログリセリンに対する反応の低下などが見られることがある。
発作時の症状は狭心症と同様に虚血によって産生された代謝産物が交感神経の求心性線維を刺激し、左腕や背部に放散する胸痛を示す。この胸痛は漠然とした範囲で、決して一点で感じられることはなく、狭心症の胸痛に比べはるかに強く、冷汗をかき、顔面蒼白となり強い不安感を感じる。また、悪心、嘔吐などを伴なうことがしばしばある。発作は30分以上持続し、ニトログリセリン舌下投与を行なっても消失することはない。
しかし、高齢者や糖尿病患者などでは、自覚症状を伴なわない無痛性の心筋梗塞発作であることがしばしばある。この場合には無症候性心筋虚血(無痛性梗塞)と呼ばれるが決して軽症と言うわけではない。


講義10 ――――――――――

発症時の血液検査所見の特徴とその経過について

血液検査所見として白血球数の増加、血清ミオグロビンの増加、逸脱酵素の増加が認められる。
白血球(特に好中球)の増加が最初に認められる。発症後2〜3時間で増加が始まるが、この白血球は心筋由来の血中の崩壊産物を貪食するためで心筋梗塞に特異的な変化ではない。同時に、心筋に豊富に含まれるミオグロビンが血中に逸脱し、血清ミオグロビン値の上昇が見られる。しかし、ミオグロビンは骨格筋にも豊富に含まれるため、心筋梗塞に対して特異的な変化ではない。心筋壊死に特異的なものはトロポニンTであり、発作後4〜6時間で上昇する。
逸脱酵素としてtotal CK(クレアチンキナーゼ)、CK-MB、LDHの上昇が認められる。total CK、CK-MBは発症後4〜6時間で認められ、12〜24時間でピークに達し、2〜3日で消失する。これに遅れてLDHが発症後12時間ごろより上昇し始め、2〜3日でピークに達し、10日間ほどかけて徐々に減少する。CKは他の細胞にも含まれるので心筋梗塞に対して特異的ではないが、CK-MBは心筋に特異性のある分画であるため、心筋梗塞に特異的である。LDHにも心筋に特異的な分画があり、心筋梗塞に対する特異性が比較的高い。

胸痛を来す疾患を列挙し、心筋梗塞を鑑別する

狭心症:発作の持続時間が短く、ニトログリセリンの舌下投与が有効
心膜炎:ウイルス感染によるものであるため感染が続く限り胸痛は持続する。心電図では冠動脈責任領域に係らず、すべての方向から異常な波形が観察される。
乳頭筋腱索断裂:心筋梗塞の合併症でもあるが胸部強打によってもおこりうる。症状として、急性僧坊弁閉鎖不全症を引き起こし、胸部X線写真では左房拡大と肺鬱血の所見がみられる。
大動脈解離:前兆の無い解離による痛みがある。大動脈から分枝する動脈枝の圧迫により血圧の左右差、冷感などの合併症をきたす。
肺塞栓症:肺動脈に血栓、脂肪滴、空気が詰まることで生じる。呼吸困難、血痰を伴なう。
自然気胸:気管または肺胞に穴が開き、胸膜腔内に空気が入った状態。病側の肺野で呼吸音が聴取されない。胸部X線写真では、病側の横隔膜低位、縦隔偏位、虚脱肺の3徴候がみられる。

重症度分類

 Killip分類ではT〜W度に分類されW度が最も死亡率が高い。
T度:心不全所見なし
U度:軽〜中等度の心不全(湿性ラ音を全肺野の50%以下で聴取、V音聴取、静脈圧上昇)
V度:重症心不全(湿性ラ音を全肺野の50%以上で聴取)
W度:心原性ショック
 Forrester分類では心係数(l/min・u)と肺動脈楔入圧(mmHg)によって分類される。
T度:心係数2.2以上肺動脈楔入圧18以下。心不全無し。
U度:心係数2.2以上肺動脈楔入圧18以上。左心不全(肺うっ血、肺水腫)
V度:心係数2.2以下肺動脈楔入圧18以下。末梢循環不全(脱水、右心不全)
W度:心係数2.2以下肺動脈楔入圧18以上。左心不全と末梢循環不全

心筋梗塞合併症

 自由壁破裂 心室中隔穿孔、乳頭筋断裂、乳頭筋機能不全が挙げられる。
自由壁破裂:前壁のQ波梗塞に多く、心タンポナーデを引き起こす。blow-out型(突如破裂型)oozing型(緩徐破裂型)仮性心室瘤の3型に分類される。外科的修復が必要である。
心室中隔穿孔:前壁のQ波梗塞に多い。心尖部に多い。外科的修復が必要。
乳頭筋断裂:下壁のQ波梗塞に多い。外科的修復(弁置換術)が必要。
乳頭筋機能不全:一過性の事が多い。虚血、繊維化・萎縮、左室拡大、左室異常運動などが原因となる。内科的に治療する。
 その他、急性大動脈解離、急性心膜炎、不整脈を合併することがある。
心筋梗塞に対する再潅流療法について

心筋梗塞の予後を規定する最大の要因は心筋壊死の範囲であるので、梗塞巣の拡大を防ぐのが初期治療の最大の目的である。よって、できるだけ早期に血流を再開させる再潅流療法を行なう必要がある。再潅流によって再潅流障害が生じる可能性があるが、再還流しなければ不可逆的な心筋壊死は避けられない反面、再潅流障害は必ず起こるとは限らないため、積極的に再潅流療法を行なう必要がある。
再潅流療法にはPTCAと血栓溶解療法がある。PTCAは経皮経管的冠動脈形成術であり、大動脈を通じて冠動脈にバルーンカテーテルを挿入し再開通を行なう。再狭窄の恐れがある場合はステントを留置し再狭窄を防ぐ。一方、血栓溶解療法はUK(ウロキナーゼ)やt-PA(組織型プラスミノーゲンアクチベーター)の投与により血栓を溶解させる方法である。副作用として出血傾向を示すことから出血性の病変を持った患者には禁忌である。
地方などPTCAを行なうことのできる施設が遠くにあり移動に時間がかかるときなど、この血栓溶解療法を病院搬送前の処置として用いることがある。

心筋梗塞に対する血栓溶解療法の概念について

心筋梗塞の多く粥状プラークの破綻による血栓の形成が原因となっている。故に、この血栓を溶解することで再潅流が可能となる。現在UK(ウロキナーゼ) t‐PA(組織型プラスチノーゲンアクチベーター)を用いている。t‐PAはフィブリンの存在かのみで活性を発揮するので経静脈的に投与が可能である。これらの薬剤は線溶系のプラスミノゲンを活性化しプラスミンにする。このプラスミンがフィブリンを溶解するので血栓が溶解し血流が再開する。
適応として、70歳未満で急性心筋梗塞を疑わせる胸痛があり、ST上昇を伴ない、発作後6時間以内の患者には積極的に施行される。
また、この血栓溶解療法では線溶系が活性化するので出血傾向という副作用が伴なう。よって脳出血や糖尿病性出血性網膜症などの出血性病変が存在する患者や救命処置を受けた患者、大動脈解離の合併の可能性のある場合、妊娠している場合や梗塞が起こってから長時間が経過した患者に対しては禁忌である。

IABPについて

適応:人工心肺からの離脱が困難、切迫心筋梗塞、重症心室性不整脈、心梗塞領域の縮小など
禁忌:AR、大動脈瘤、大動脈解離。
合併症:バルーン破裂による広範囲塞栓、下肢虚血、大動脈穿孔

心筋梗塞予防

 心筋梗塞の危険因子として高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙の5大リスクファクターに加え、痛風(高尿酸血症)、運動不足、ストレス、A型性格、高カロリー食などがある。心筋梗塞の予防にはこれらの危険因子を除去するのが効果的である。
 予防薬として高脂血症薬、高血小板薬、β遮断薬などが用いられる他、食事制限、禁煙などの生活改善が必要である。