
学生短歌大会2001 シンポジウム〜学生短歌の現在〜
「相聞」からのアプローチ 資料 小林久美子
●「相聞」の定義――『岩波現代短歌辞典』の「相聞歌」の項から
・本来「互いに相手の消息を尋ね合う」といった意味で使われた言葉。
・私的な場で想いを伝えようとする歌。
・近代短歌によって、恋愛は自我の表現の重要なモチーフとなった。
・恋愛の倫理が希薄になった現代においても、恋という特殊状況は、歌人の、一人への想いを限りなく純化する。
●相聞の表現方法
・正述心緒――思いのままを素直に述べた歌。
アメなんかいらない 私が欲しいのは 甘いクチヅケ 強いホウヨウ
猿渡亜由未
告白にOKならばすぐ僕と8番線まで走ってください
秋元 裕一
・寄物陳思――物に託して恋の思いを述べる歌。
深海で二つのコイルほどけあい雨は生まれた音は生まれた
田中 創
止められぬもどかしさなるこの時は逢坂転がる唐の鏡と
中島 裕介
●相聞の歌
▼恋のはじまり
深海で二つのコイルほどけあい雨は生まれた音は生まれた
田中 創
▼片思いのせつなさ、苦しさ
知りたくてざっくり二つに割るキャベツ君は何を考えているの
三原由起子
夜の雨は香ばかり立ちて、君のことばかりで君のことばかり、君。
福永 昭子
あの人に名前をつけた私しか呼ばない名前で独占してた
井上 真樹
紡がれぬ言葉まちたるまに真綿ちぎりては投げちぎりては投げ
橋元 優歩
▼恋の宣言
潔く目に立つ紅葉迷いなど捨てて思いなさい真紅まで
福永 昭子
直球を出すよたとえば打たれてもバットに痕を残す気迫で
木村 瑞穂
▼恋の喜び、心を贈る
町中の白い灯りを抜け出して工場で逢う蜜蜂の夜
田中 創
ゆっくりと眉墨えんぴつちびてゆく夏休みあなたの文字にも慣れし
水野 ふみ
軽やかに微分積分解く君はペンシル先端(さき)を包むように書く
白水 麻衣
吾よりも長き生命線持てる君この朝もよく笑ひをり
松澤 俊二
▼恋のさなかにあって惑う歌
始まってしまえば震えがくるほどの終わりを思う助手席の恋
福永 昭子
接続のうまくいかない月曜に会へぬメールはまだ暗き海
田中あろう
さうやつて君は笑つてくれるのになにか許せぬ蟻どもを潰す。
橋姫氷魚見
▼恋の諦念
彼女だと紹介されるときふいに菜の花いろの釦のかけら
松島 綾子
午後9時の今日のニュースの冒頭で二人の別れ報じてほしい
山根かなえ
▼恋の忘却
初恋は誰だつたろふ風に舞ふ桜はなびらもういいのです
松島 綾子
▼倒錯的な恋
ひきがえるを踏みつぶしましたまたあしたあたしの靴を君が舐めます 松島 綾子
▼拒否する歌
海を蹴る指やはらかに光りをり恋愛に生くる男は嫌ひ
石川 美南
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シンポジウム当日配布された資料です。なおこの文書の著作権はゲスト小林久美子さんに帰属し、
学生短歌大会HPの公開資料として編集し掲載いたしました。
2001 09 15 gakusei-tankna-taikai2001(C)