「学生短歌の現在〜相聞からのアプローチ」資料
 
相聞歌の変容・共同性という視点    國學院大学 / PUNCH-MAN // 松澤俊二
 
そう‐もん【相聞】サウ‥

(消息を通じ合う意) 万葉集の一部の巻に見える和歌の分類の一。
広く唱
和・贈答の歌を含むが、恋愛の歌が主。
「あいぎこえ」ともよむ。  『広辞苑』


※相聞とは概括していへば、往復存問の意なるを見るべし。
 而してその文字の面を以って推すに相は交互の意にして聞は以聞の聞にして、
 意思を伝達する義なり 

    山田孝雄「万葉集考叢」大正13『心の花』

☆相聞歌の変容

・万葉相聞の「表現」=共同性を基底になりたつものが多い。

Words/  歌垣 、下紐・眉根・橋占・横言・中言・人言、妹・背、夢、類型的表現

暇なく人の眉根をいたづらに掻かしめつつも逢わぬ妹かも 

眉根掻き下いぶかしみ思えりし妹が姿を今日見つるかも

妹が門行きすぎかねて草結ぶ風吹き解くなまた返り見む

白妙の君が下紐我さえに今日結びてな逢わむ日のため  

汝をと我を人ぞ離くなるいで我が君人の中言聞きこすなゆめ 

垣穂なす人の横言繁みかも逢わぬ日多く月の経ぬらむ 

あしひきの山より出づる月待つと人には言いて君待つ我を 

人言の繁くしあれば君も我も絶えむと言いて逢いしものかも

人言を繁み言痛みおのが世に未だ渡らぬ朝川渡る  

→「共同性」を利用して抒情詩としての共感を誘う。 

      現代相聞の「表現」=多様化=人称、ツール、場面etc、観照的

※非常にプライベートな「物語」を歌歌が孕む傾向 

たんねんにプリンを匙で削り取る(先に倒した方がいうこと)柳谷あゆみ・慶応義塾大学

連鎖する動き それのみ意をそそぐ ただ寧猛な君のバタフライ 斎藤岳深・早稲田大学

海のあることがあなたを展(ひら)きゆく缶コーヒーに寄る波の音 澤村斉美・京都大学

[1/20秒 f値4.5]ヒフの裏まで見つめてあげる 間崎和明・早稲田大学

もう戻れないんだってさ封筒の表にするすると描く黄金の蛇 水野ふみ・京都大学

大学の果樹園の梨ただひとつ農学学ぶ君の冷蔵庫(フリーザ)天道なお・早稲田大学

軽やかに微分積分解く君はペンシルの先端を包むように書く 白水麻衣・西南学院大学
 
→他人では取替えのきかない「物語」→作品としてのかけがえのなさ

     展望

・「相聞」の持つ共同性 ⇔ 「近代」の自我」、「個人」「個性」などの概念
・「相聞」の対象の変容 「共同体」→「二人」→「個人」

「己」との相聞歌:観照化
→ 完全なる「相聞」の喪失 :「恋歌」へ


HOME


シンポジウム当日配布された資料です。なおこの文書の著作権は松澤俊二さんに帰属し、
学生短歌大会HPの公開資料として編集し掲載いたしました。

2001 09 15 gakusei-tankna-taikai2001(C)