学生短歌大会2001 シンポジウム〜学生短歌の現在〜    西之原一貴(京大短歌会)

イントロダクション

 このディスカッションの準備をはじめたころ、学生短歌の相聞作品が少ないということが指摘され、ほんとうに「相聞」というテーマでシンポジウムが成り立つのかということが危惧された。たしかに、恋愛の真っ最中幸せいっぱいなどというような歌はわざわざつくろうとは思わないし、逆に悲しみのどん底といったような歌ははるか以前より作られ続けた作品の系統でいまさらという感がある。

 しかし、われわれ同世代の相聞作品のなかにも心惹かれるものは少なくない。こうした作品の多くは、恋愛という関係のなかでの微細な違和感や齟齬を描写しようというものが多いように感じる。それは、現代の不透明な社会に対する違和感や齟齬のもっともシンプルなモデルという見方もできるかもしれない。いや、結論を急ぐことはしないでおこう。とりあえず以下で、今回応募していただいた作品について慎重に読んでいきたいと思う.

「あなた」への視線の歌

街角で匂いしていた菓子の名を 明日あなたに訊こうとおもう     齋藤岳深 早稲田大学

海のあることがあなたを(ひら)きゆく缶コーヒーに寄る波の音       澤村斉美 京都大学

ゆっくりと眉墨えんぴつちびてゆく夏休みあなたの文字にも慣れし   水野ふみ 京都大学

お風呂場で歌った声に酔うようにあなたを愛した期間があった     井上真樹 東京工科大学

「二人」という視点からの歌

五分後の予感に抗う一言を探せぬ二人に波の音近し          白水麻衣 西南学院大学

工場のありかはきっとわからない二人で座るテトラポットの      五島諭 早稲田大学

携帯の電波とぎれる一瞬をわれら無人の砂塵に立てり         小林友紀子
                               
『早稲田短歌』32号より

きわめて近い距離における「もろさ」を詠んだ歌

何度でもしたかったでもしなかったブリキの犬の目をしてたから    天道なお 早稲田大学

愛のなき抱擁を受け入れるたび脆くなりゆくわたしのからだ      三原由起子 共立女子大学

手のまわる位置にあばらが何本もあるを言われきかなしまれにき    永田紅『日輪』より

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シンポジウム当日配布された資料です。なおこの文書の著作権は西之原一貴さんに帰属し、
学生短歌大会HPの公開資料として編集し掲載いたしました。

2001 09 15 gakusei-tankna-taikai2001(C)