漫研至上主義宣言前文

 全ての時代を通じてかつて人類の歴史は闘争の歴史であった。過酷な大自然と、或いは原野の野獣と、時としてしばしば対立する人間の集団と、人は戦いを繰り返し、文明を発展させてきた。かかる原始的暴力を脱却し文化すなわち芸術を創造した瞬間こそ人類が道具を使用できる動物から一歩進化した特別な存在になった瞬間であるといえよう。

 かくして手に入れた芸術はしかし、創造の神の手になるものをモチーフとした模写の域を出なかった。絵画・彫刻・写真・映画、全ては神の業を写したものである。美しい自然、奇跡的な生物の造形、天然という芸術の前では人の才能が示すものは儚い業績であった。ただひとつ、漫画芸術を除いては。

 漫画こそは人類の生み出した、人類にしか創り出せない真の意味での人類の文化である。それゆえに漫画を描く能力を有する人間こそ真に文化的な人間であると言える。これらの漫画によるコミュニケーションの可能な人間はその能力を使い世を啓蒙し、全ての人類を正しく導くという崇高な使命をすべからく背負っている筈である。だが現実には、この厳粛なる定めに背を向け、漫画を単なる暴力、性的堕落、差別意識の蔓延の為に悪用する者も少なくない。これらの過った者を淘汰して初めて漫画を描く者は優良種であると定義付けられるのである。

 人類の文明が爛熟し頽廃の兆しを見せつつある今日こそ、漫画を欲望のはけ口から脱却させ、人類共通の言語にまで高める必要がある。漫研の人間こそが愚かな民を救いうる選ばれし存在である事を示さねばならない。漫画は個人作業であるが、共通の理想実現の為に連帯しなければならない。我々はその目的を達成する為に、ここに漫研至上主義を厳かに宣言する。

 我々は描くために生まれた。あらゆる表現手段を使って。紙の上にペンで描いた枠線と吹き出しだけが漫画の定義ではない。我々の生き様すべてが漫画なのである。自分なりの人生を描く楽しさを知る場が我々の漫研、魂の故郷なのである。そして自己実現を図り、他者への好影響を与え、ひいては世界を正しく動かしていく、その原動力を信じてここに集結したのである。我々の進むべき道こそ人類の文化の先端である。その業績が永久に保存される限り、たとえ人類が滅亡したとしても、いずれ地上を訪れる次の文明人によって我々の存在は理解されるであろう。

 漫研は永遠なり。漫研万歳。


トップに戻る