EU諸国は、シェンゲン、マーストリヒト、アムステルダムと各条約で域外外国人の入国について一貫して抑圧的な条件を設けています。

 しかし、これらの政策は、西欧社会に十数年にわたって定住してきた移民が、もはや欠くことのできない社会の一員であることを前提としています。したがって、これから入国しようとする域外出身者には非常に厳しい立場をとっていますが、すでに入国している移民に関しては、その権利を段階的に拡大していくという政策の方向はもはや揺るぎないものとなっています。

 なかでも、子供の権利は、いかなる場合にも優先されます。したがって、親が非正規滞在の場合でも子供がいる場合には、親への退去強制が行われることはまずありません。仮に実施されようとしても、世論の厳しい批判から、実現に至ることはありません。フランスの場合、子供が学齢に達してフランスの学校に通っている場合(幼稚園も含めて)、子供がすでにフランスに統合している(学校教育を通じてフランス的価値観を内面化している)という事実からもフランスに滞在する権利が生じます。親のいずれかが非正規で滞在している場合も、子供が家族と生活する権利が何よりも優先されるために、親の滞在の正規化が行われています。

 EU諸国が90年代になって次々とアムネスティを実施している背景には、すでに居住の実績がある移民は受け入れていこうという姿勢の表明です(その裏には、もちろんこれからの入国は厳しく取り締まるという姿勢があります)。

 そうしたなかでフランスが93年に改定した移民法は、移民に対するその抑圧的性格から、「(ナチス協力政権であった)ヴィシー政権下で制定された法律の再来」とまでいわれましたが、その法律でさえ、「子供の権利」を何よりも優先させるという原則を崩していません。

 93年法を制定した政権は、この法律に反対する市民の50万人署名、全国での20万人デモなどの反対にあい、直後の総選挙では、この法律の廃止を公約に掲げた現ジョスパン政権への政権交代となりました。

 「グローバル化時代」をはなばなしく標榜し、その恩恵を甚大にこうむっている日本社会は、「グローバル化」が国境を越えた人の移動を当然ともなうことを認識する必要があるでしょう。そして、市民として居住の実績をつくってきた移民やその子供の滞在の権利を認めないことの矛盾した性格が、日本でも強く認識されるべきではないでしょうか。