Newcastle upon Tyne大学
(医学教育振興財団のプログラムより)

報告者:匿名希望さん
(報告者の方の卒業にともない、お名前を匿名にさせていただきます。)

医学教育振興会のプログラムについて
体験記
教科書、参考書紹介

<医学教育振興会のプログラムについて>
毎年9月頃、日本の医学部5年生在籍者を対象に、医学教育振興財団が
奨学金10万円付きでイギリス医学部短期留学希望者を募集しています。
医学部のある全79大学の学生課に対し、募集要項と一年前のレポートを
送っているそうですので、見かけないようでしたら、
大学の学生課、または財団に直接問い合わせてみると良いと思います。

以下、2001年度までの内容について、ご紹介したいと思います。

選抜人数は、Newcastle, Birmingham, Southampton, Leister の4大学に
4人づつ、合計16人です。
選抜方法は、British council 主催のIELTSのスコアーによる1次試験、
および医学教育財団本部で英語・日本語での面接による2次試験。
一次審査は12月末の締め切りまでに受験して、スコアーを送るだけです。
二次審査は、書類選考通過者に対して、翌年の1月中旬に行われました。
最終的な結果発表は、一月下旬となりました。

2000年度は、希望者30人くらい、一次通過18人だったそうです。
当時は、IELTSのスコアーは、最低でも平均6.0以上は必須のような感じでした。
…が、2001年度は応募者数も昨年の倍近くになり、いろいとろ状況が
変わりつつあります。IELTSの成績も何点以上あれば大丈夫ということも
言えなくなってきたそうです。

また、先日(2002年1月下旬)財団の方から、以下のようなメッセージを
いただきました。

> 来年度以降もしかしたら、事務的な日程等変わる可能性がございますので、
> 学生の皆さんに早くからこのプログラムを知っていただき、IELTSの試験等
> 準備をしていただきたいと思っております。
> ですので、応募の意思のある学生には、HPで随時確認していただくよう
> お知らせ願います。

(URL掲載の許可をいただきました。財団のHPについては、こちらをどうぞ。)
「英国短期留学」の項に掲載されています。

(財) 医学教育振興財団   http://www.jmef.or.jp/

(IELTSについては、こちらをどうぞ。) http://www.gear.net.au/study/IELTS.htm


留学時期は、翌年の春(3月か5月)、一ヶ月間です。
御自分の大学のポリクリと重なることを懸念する方も多いと思われます。

僕(山梨医大)の場合、先に試験だけ通っておいて、
あとから学長・副学長にその旨を通知しました。
幸い、両先生とも海外病院実習を積極的に後押ししてくださったので、
大学6年次の選択実習の一環として、単位認定までしていただけました。

でも、これは割とラッキーなケースだったと思います。
某大学の友人は、単位どころか、
「大学の実習を蹴っていくとは何事!?」みたいなことを言われて、
帰国後に追加実習までさせられたそうです。
そこらへんは、教育担当の先生の御意向との交渉次第かもしれません。


<体験記>
1.Introduction
Newcastle upon Tyne大学にて、内科・外科を中心とする日本人医学生用プログラムに則り、200131日〜31日にわたって実習を行って参りました。実習は、学生2人ずつのグループに分かれて行われ、私は、日本医科大学の友人と同じグループ(Group 2)で行動しました。なお、グループによって、一部、外科系科目の内容が異なっておりましたが、基本的には日程が前後するのみでした。

2.Program
到着:01-04, March
01,March
10:30 London / King’s Cross Station集合
15:15 Newcastle Central Station到着
Dr.Snow Dr.Alexanderが、駅まで迎えに来て下さった。
そのままFreeman hospital内の宿舎に直行。今後の予定について、簡単な説明を受け、この日は終了。
02, March
10:30-12:00
Dr.Snowによる、オリエンテーション。Newcastle upon Tyne University3つの教育病院、Freeman hospital, N.G.H.(Newcastle General Hospital), R.V.I.(Royal Victoria Infirmary)を含め、市内を案内してくださった。大学では、図書館利用のためのID作成、事務手続きなどを済ませた。
この日は、昼に
N.G.H.にて解散。
03, March
19:15-
Dr.Snowのご自宅に、食事に招待される。

実習前に4日間、日程に余裕をもっていたおかげで、生活にも慣れ、翌日から良い状態で実習を開始することができた。また、この4日間はあらゆる面で、Dr.Snowにはお世話になりっぱなしでした。

当時、困っていたこと
インターネット用の回線が使えない。→第1週目に解決した。
学生との交流がない。→第2週目に解決した。

来年度以降、実習を考えているみなさんへ
他の3大学とちがい、Newcastleは早めに到着し、現地での生活にある程度慣れてからスタートできる点で、スケジュール的に助かりました。
実習病院が3つありますが、そのうちのひとつ、Freeman Hospitalの宿舎に泊まることになります。ただし、利用しているのは主に職員で、学生は、大学(R.V.I)の近くに住んでいるようです。

また、他の実習病院へは、病院専属のシャトルバスが定期的に出ており、無料で利用できます。
…が、利用時間が08:00-18:00の間に30分毎なので、図書館で遅くまで勉強して帰る時は、市営のバスや、地下鉄のほうを使うことになるでしょう。
なお、大学の図書館は、平日は夜22:00まで開いていたので、かなり助かりました。

一週:05-09, March, 2001
Department of Medicine
05, Monday
午前:History and Clinical Sign Teaching
午後:Chest Clinic
06,Tuesday
午前:Rheumatology
午後:Neurology
07,Wednesday
午前:Infectious Diseases
午後:Endocrinology
08,Thursday
Medical Emergency Admissions
09,Friday
Diabetes clinic

第一週の感想
特に印象に残った、History takingと、Neurologyの実習について、詳しく述べておきたいと思います。

まずは、History Taking.
簡単なレクチャーとシミュレーションのあと、初めて、英語で問診を取りました。
70%の患者の診断は、これで決まる。Examinationで、もう10%が決まる。」と、Dr.が言っていたように、問診を大変重視します。また、指導の時間も、History Taking & Examinationの時間と指導を、とても重視していました。最初の問診から、病歴記載、その後の鑑別を組み立てる訓練に関して、日本ではこのような時間をじっくり取ることはほとんど無かったので、大変良い経験でありました。

Neurologyの実習では、患者さんにも協力してもらって、ベッドサイドでの少人数教育が行われます(病態のレクチャーも、ときには患者さんの前で行うこともある)。患者さんも、Dr.から了承を得ているので、僕たちが外国の医学生であるにもかかわらず、快く協力して下さいました。

そしてHistory Taking & Examination を取り、患者さんにお礼を言って別れたあと、
「君は、ここまでの経過から、どのような病態を考えるかね?」
「その根拠は何かね?」
「それでは、ほかに鑑別すべき疾患は、何があるかね?」
「どのような可能性から、君はそれを考えたの?」
と、問診・診察から、病態の知識にいたるまでの論理的思考の訓練に、たっぷり時間が費やされました。だいたい議論が出尽くしたあと、初めて、画像が提示されます。

第二週:12-16, March
A&E Department,
Department of Neurosurgery,
Department of Orthopaedics,
Department of Paediatric Surgery.

第一週に比べると、「アッと言う間に終わった」というのが、正直な感想です。ここでの生活に慣れ始め、毎日、クタクタになって帰ってきますが、とても充実感があります。それと同時に、医学教育、医療システム、医療保険、見るものが何もかも斬新で、とても充実した毎日です。

他の大学のプログラムを直接見たわけではないのですが、プログラム的にはNewcastleは恵まれた環境と思われます。Newcastleに着いて、右も左もわからない頃は、Dr.SnowDr.Alexanderが、わざわざ時間を割いてFollowしてくださったし、交通面では、無料でシャトルバスも出ているし、地下鉄、市営バスも発達している。なにより普段、遅くても17:00には実習が終わるので、自分の勉強をする時間が持てます。

Newcastleでのプログラムの利点の一つに、大学(R.V.I.)の図書館・自習室が使えることがあります。
平日は09:0022:00まで、土日は- 17:00くらいまでです。
ここの図書館では、Students’ textbook collectionという、学生向けの教科書のみを扱った棚があって、ここで良い教科書をいろいろ発見する機会に恵ました。
また、大学の正面に、Blackwell’s bookshopという、大きい本屋があって、医学書を扱っています。アメリカからの教科書もあり、教材は充実している。いい教科書・参考書・教材が、たくさんある上、しかも安い。
こちらに来て、こんなに教科書を買い込むことになるとは、自分でも思っていなかった。()

平日は、病院実習のあと、R.V.I.の図書館で勉強し、夕食は病院食堂で済ませる(スタッフ・学生割引がある)。図書館が終わる頃には、シャトルバスは出ていないので、バスか地下鉄でFreeman Hospital の宿舎へ帰る。このような生活リズムが出来てきました。

今週末は、Birmingham組の皆さんのところに、Newcastle組のみんなで、遊びに行ってきました。話を聞くと、Newcastleのカリキュラムとはずいぶん異なり、1時間半くらいかけてGPを訪ねるとのことでした。Southampton組のみんなは、週末に病院に当直で、来られなかったようです。残念。
317日は、St.Patrick’s Dayといって、あちこちでお祭り騒ぎ。我々も、Birminghamの中華街とBarで楽しんできました。

第三週:1923,March
(Option curriculum)
19,Monday
Department of Infectious disease: history taking, morning round
Department of Oncology: ward round
20,Tuesday
Children’s case meeting
Outpatients
Treatment planning
21,Wednesday
AM: Outpatients
PM: (free)
22.Thursday
Outpatients
Treatment review
23.Friday
student “Resource Day”: teaching day of Oncology

3週目は、自由選択のOptionで、僕はOncologyを選択しました。
なぜOncologyにしたかと言うと、今後、日本における癌治療の重要性は、ますます大きくなるであろうと思ったことと、日本では、各科ごとに、各領域での癌治療を学んだが、Oncologyという概念で学んだことはなかったという理由から選択しました。

日程の調整上、初日の午前中は、空いた時間をDr.SnowInfectious diseaseで実習をさせてくださり、
午後、Dr.Snowから、OncologyDr.Lewcraftを紹介していただきました。
金曜日は、Stage3の友人から、臨床講義(Resource Day)だと聞いていたので、先生に頼んで、Stage3の学生たちと、講義を受けてきました。

選択科目以外の週は、基本的に、こちらの学生たちとは、完全に独立したプログラムが用意されているので、イギリスの学生たちと一緒に実習をする機会はありませんでしたが、今回は、Stage3・4の学生たちと一緒に実習をすることができました。

彼らと一緒に実習をして感じたのは、医学教育の違いによって、こんなにも差がついてしまうのか、ということです。このことについては、また後述します。

第四週:2630,March
26, Monday
Obstetrics and Gynecology:
Delivery Suite
Work Shop on Postpartum Haemorrage
Ward Round
27, Tuesday
Paediatrics
28, Wednesday
Neonates
29,Thursday
Paediatrics
30, Friday
General Practice (CruddasPark)

4週目は、なんと言っても、GPGeneral Practitioner)の元での実習が、最もインパクトがあった。
NHSについて、自分の目で、実際にイギリスのPrimaryCareを見ることが出来ました。また、現場にてGPと共に外来を経験し、そこで、さまざまな疑問をぶつけ、GPの先生は応えてくださった。
今回の実習の中でも、最高に良かったと思える実習内容であった。

GPの元には、とにかく、初診患者さんが、諸々の領域にわたって来院します。
整形外科、精神科、産婦人科、小児科、一般内科、とにかく、さまざまであるが、Newcastle近郊では、低所得者層の多い地区にあることもあり、精神疾患が結構多い、という話も伺った。

さらに、イギリスにおいても、co-medicalの人たちが多く、医師・看護婦の仕事を助け、各々の職種が、各々の仕事内容に専念でき、医療が組織的に上手く運営されているな、という印象を受けた。
(日本だと、研修医が雑用から何から、すべて行って、欧米の医師が見たら、ビックリするほど働いているが・・・働いていることの方向性はともかくとして。)
医者は、主に診断のみに専念し、看護婦にできる治療は、そちらのほうに任せていた。また、治療のみで再診の患者さんたちには、最初から看護婦の治療のみで帰宅していた。

日本と違い、イギリスでは女性の割合が多く、Newcastle大学では、60-70%が女性で、さらに、GPは、家庭との両立も出来るらしい。我々が訪ねたGP50代の女性で、「娘がNottinghamの医学部を卒業したばかりなのよ」と言っていた。彼女がこなしている仕事内容は、多岐にわたる内容なのに、家庭と両立しながら、しかも時間的にも、経済的にも余裕を持って、仕事をこなせているようでした。


Information of recommended textbooks

「これだけは知っておきたい医学英語の基本用語と表現」MedicalView  ISBN4-89553-755-2
     医学英単語の基礎を押さえるのに、お手軽です。

「プログラム学習による医学用語の学びかた 第二版」 訳・裏田武夫 医学書院
「CDによる聴診トレーニング」呼吸音・心音・小児心音 各扁   南江堂

「日本の医療を問い直す」 鈴木 厚・著  ちくま新書
「日本の医療」 池上直己/J・C・キャンベル  中公新書
     医療システムと、その問題点を理解しておくと、ものの見方が広がってきます。

「アメリカの医学教育」 赤津 晴子・著 日本評論社
「続・アメリカの医学教育」 赤津 晴子・著 日本評論社

日本内科学会雑誌 第86巻 第12号 平成9年12月10日
特集"問診・身体診察法の教育の充実を" 高久 史麿
日本内科学会雑誌 第89巻 第12号 平成12年12月10日
特集"身体診察法の感度と特異度" 黒川 清

「学生のためのプライマリケア病院実習」 若手医師の会 研修問題委員会 医学書院
     国内の学外病院実習を探すのに向いている。情報収集の参考に。

「セイントとフランシスの内科診療ガイド」  メディカル・サイエンス・インターナショナル

「Liebman's Neuroanatomy 第6版」An aspen publication
「リープマン神経解剖学 第5版」メディカル・サイエンス・インターナショナル

英語版で第6版、日本語版で第5版が出ています。福島医大で、教科書として使われているそうです。第5版の和訳は、訳者が、日本語に変に訳しすぎるきらいがある(英語を残してくれればいいのに・・・訳者の創作も多いし。)ので、あまり好きではないのですが、基本的に版での差は、大差ないので、平行して使うと、テクニカルタームも学べます。

「The ECG made easy」John R. Hampton著 Churchill Livingstone
「やさしい心電図」松村紳一郎・訳  東京:総合医学社

英語版は第5版、日本語版は第3版だったと思う。The ECG in practice, 100 ECG prollems も同じ著者、出版社で出ている。薄い本だが、大事な内容が簡潔に書いてあるので、入門書・復習用に良いかも。ポケットサイズで、10£くらいで買えます。

「Manual of English for the overseas doctor」Joy Parkinson・著 Churchill Livingstone
     イギリスのNHSから、カルテの書き方、就職の仕方まで載っています。

「Oxford handbook of Clinical Specialities」 ほか、Oxford handbookシリーズ

ご存知、イギリスの臨床テキストの、バイブル的シリーズ。一冊£16くらい。
各疾患について、細かい知識については書いていないが、各科での、Common Disease について、鑑別、禁忌、治療法について、一通り網羅してあります。
(以下は、前年度にプログラムに参加された千葉大学の先輩の受売りですが、)
日本では、病気がCommonであるか否かを、すべての医学生が、あまり気にせず教えられる。こちらでは眼科を回る学生が、みんな眼科に行くわけではないという前提で、最低限知るべきことを、よく押さえている印象を受けた。

「taking notes from lectures」Blackwell's bookshops   ISBN 1 85377 017 5

大学でのレクチャーで、ノートを効率的に利用するノウハウについて書いてある。99p で買った、薄っぺらな冊子ですが、内容的には、1万円出してもいいと思いました。

「EBMワークブック:the evidence based medicine workbook」
Robert A Dixon James F Munro Paul B Silcocks 著  野崎貞彦 横山英世 監訳   医歯薬出版

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