「資料部だより」
「資料部だより」は、日仏女性資料センターの『女性情報ファイル』に
年に4回、掲載しています。センターへの入会は
http://cdfjf-fr.blogspot.com/2006/05/pour-nous-joindre.html

目次
no.1(1)  −日仏女性資料センター所有の定期刊行物のバックナンバー情報
      −フランス語で出版されている主な女性研究誌のサイト紹介
no.1(2)  −Francoise Heritierの紹介
no.2  −Le Monde diplomatiqueのサイトで見る女性関連情報
no.3  −フランス政府の女性情報サイトの紹介
no.4 −職業名の女性化に関連する情報
no.5 −EU憲法条約と男女平等政策について(1)
no.6 −EU憲法条約と男女平等政策について(2)
no.7 −フランスの子育て支援政策
no.8 −雇用機会均等法(日本)の改正と男性へのセクシュアル・ハラスメント
no.9 −シモーヌ・ド・ボーヴォワール(1908-1986)関連情報
no.10 −3月8日・国際女性デーについて
no.11 −母親休暇 conge materniteと父親休暇 conge paternite
no.12 −Le 19eme Forum 《Le Monde − Le Mans》, Femmes, hommes : quelle difference ?
no.13 Femmes et Hommes, Regards sur la parite, Edition 2008, INSEE
no.14 −EU 27ヵ国で女性の権利の観点から最も進んでいる「法の花束」(1)
no.15 −EU 27ヵ国で女性の権利の観点から最も進んでいる「法の花束」(2)
no.16 −EU 27ヵ国で女性の権利の観点から最も進んでいる「法の花束」(3)
no.17 −EU 27ヵ国で女性の権利の観点から最も進んでいる「法の花束」(4)
no.18 −EU 27ヵ国で女性の権利の観点から最も進んでいる「法の花束」(5)
no. 19  −EU 27ヵ国で女性の権利の観点から最も進んでいる「法の花束」(6)

(文責:資料部/井上たか子)
リンクのURLはそれぞれの号の日付のものです


資料部だより

no.19

2

EU 27ヵ国で女性の権利の観点から
    最も進んでいる「法の花束」(6)
 
(14) 政治:ベルギー
 人類の半分を占めている女性と男性が対等に政治に参加する機会をもつことは当然であると思える。しかし、そうではなかったことは歴史が物語っている。
 ヨーロッパで女性が男性と同じ条件で選挙権・被選挙権を獲得したのは1906年のフィンランドが最初であり、フランスで1848年に男性だけの「普通」選挙が制定されてから半世紀以上も後である(ご存知のように、フランス女性の参政権獲得は1世紀遅れの1944年である)。ポルトガルで女性にのみ課せられていた学歴条件(高等教育修了免状)が廃止されたのはようやく1975年であり、スペインでは1931年に一度獲得していた選挙権が1939年にフランコ将軍により廃止され、復活したのは1976年である。一方、初めての女性首相が誕生したのはイギリスの1979年、欧州委員会に女性委員が入ったのは1988年である(2007年1月のEU拡大の結果、現在の委員は27名。うち女性は8人)。今後、女性の政治参画を推進していくためにはどのような方法があるだろうか。
 紙幅の都合上、国会議員にしぼって見てみよう。EU27カ国の下院(または一院制)での女性議員比率 (2008年8月現在)は、スウェーデンの46.7%から最下位のマルタ8.7%まで幅がある。こうした違いは、宗教や文化、フェミニズム運動の影響など種々の要因によって説明されるが、各国の選挙制度を見ると、平均(23.6%)以上の国−スウェーデン、フィンランド、オランダ、デンマーク、ベルギー、スペイン、ドイツ、オーストリア、ポルトガル−では、いずれも比例代表制が採用されている。もちろん比例代表制だけでは十分でなく、候補者名簿において女性も選出される位置に置かれていなければならない。そのために、1) 政党による自主的なクォータ(割当)の導入、2) クォータ導入を規定する法律の制定、3) 憲法へのパリテ原則の記載などの方策が取られている。

 1) EU諸国に存在する76政党のうち、35政党がクォータ制を用いており(2001年)、そのうち24政党は女性議員割合が24%を超えている。スウェーデン、フィンランド、オランダ、デンマーク、ドイツなどで女性議員の比率が高いのは、こうした政党による自主的なクォータ制導入の効果といえる。たとえばドイツでは、緑の党が1986年にクォータ制を導入して、候補者名簿での順位を男女交互とし(いわゆるジッパー制)、しかも女性に奇数順位を割り当てる。これを受けて、SPDとCDUの二大政党もそれぞれ1988年と1996年の党大会でクォータ制の導入を決定した(*1)。
 (*1) この結果、ドイツ連邦議会の女性議員比率は飛躍的に増加し、1987年には15.4%となり、初めて1割を超え、1990年には2割を、1998年には3割を超えた。現在は32.8%で、世界187カ国中18位である。詳しくは、「諸外国における政策・方針決定過程への女性の参画に関する調査−ドイツ共和国・フランス共和国・大韓民国・フィリピン共和国−」(平成20年3月)を参照されたい。_ http://www.gender.go.jp/research/sekkyoku/h19shogaikoku.html

 2) スペイン、ポルトガル、それにイタリアでは、法律でクォータ導入が規定されている。スペインでは、2007年3月15日に可決された女性差別是正のための法律(*2)により、政党は人口5000人未満の町村を除いて、候補者名簿の少なくとも40%を女性に割り当てることが義務づけられた。現在の女性議員比率は36.3%で、世界187カ国中13位である。
 (*2) この法律の短報として、http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2006_4/spain_01.htm
 
 3) パリテ原則は、フランスでは1999年に、ベルギーでは2002年に憲法に記載された。
しかし、フランスの例でも明らかなように(*3)、パリテを実現するためには、それに伴う積極的な法的措置が不可欠である。
 (*3) フランスの女性下院議員の比率は2002年の改選で、パリテ前の10.9%からわずか1.2%増の12.1%にとどまった。2007年の改選後も18.5%で、現在EU27カ国中19位、世界187カ国中76位である。最大の理由は、フランスの下院選挙は女性にとって不利な小選挙区制であることにある。また、男女同数の候補者を立てなかった政党に対する財政的ペナルティが軽すぎることもあげられる。このため2007年1月31日法による改正では、候補者にパリテを遵守しなかった政党および政治団体に対する公的助成金の最大減額率が50%から75%まで引き上げられた (2008年1月1日以降の下院選挙に適用される)。

 Choisirは、政治に関して、ベルギーを模範的な国として選ぶ。
 ベルギーでパリテへの道が始まったのは、1994年のSmet-Tobback法による。この法律は政党に対して、すべての選挙において、一方の性が3分の2以上を占める候補者名簿を提示することを禁じている。したがって、少なくとも候補者の3分の1は女性ということになる。 この法律は1999年6月の下院選挙に適用され、女性比率は12.7%から23.3%に増加した。
さらに2002年には憲法にパリテ原則が明記される。すなわち、憲法10条には「男女平等が保証されること」が、憲法11条の2には「法律・デクレ・規則は男女の権利および自由の平等な行使を保証し、とりわけ選挙により選ばれる公職への男女の平等なアクセスを促進すること」が定められている。同条はまた、連邦政府の内閣、共同体政府、地方政府における(*4)女性の参画を保証する。
 (*4) ベルギーは連邦制で、ブリュッセル首都圏地域、フランデレン地域、ワロン地域の三地域と、フラマン語共同体、フランス語共同体、ドイツ語共同体の三つの言語共同体の二層、計六つの組織で構成される。ただし、フラマン語共同体とフランデレン地域は、ブリュッセル首都圏を除き領域が重なっているので、フラマン語共同体政府がフランデレン地域政府を吸収するかたちで統合され、統合された自治体はフランデレンと呼ばれている。つまり、現在のベルギーの連邦構成体は憲法上は六つ存在するが、実際上は五つである。(ウィキペディア「ベルギ_」の項目より)

 これを受けて、あらゆる議員選挙において絶対的パリテが課される。2002年6月17日法はEU議会選挙の、2002年7月18日法は連邦議会下院選挙およびドイツ語共同体議会選挙の、2002年7月18日特別法はブリュッセル首都圏地域、フランデレン、ワロン地域の地域議会選挙の、それぞれ候補者名簿における男女同数を定めている。これらの選挙は、いずれも非拘束名簿式(政党が作成した名簿順を変更して投票できる)の比例代表制であるが、各名簿の上位2名はかならず男女1人ずつでなければならない。
また、選挙法の第119条5において、男女のパリテが遵守されていない名簿は受け付けられないことが定められている。ベルギーの女性下院議員比率は、2008年10月31日現在、35.3%で187ヵ国中、12位である。ちなみに、日本は11.3%で119位である。

関連文献として、Senac-Slawinski R., "Des quotas legaux et partisans a la parite:panorama des strategies en Europe", Informations sociales 2009/1, N。 151 _http://www.cairn.info/article.php?ID_REVUE=INSO&ID_NUMPUBLIE=INSO_151&ID_ARTICLE=INSO_151_0030

(私の担当は今回で終わります。愛読くださった皆様、ありがとうございました。井上たか子)

資料部だより

no.18

2009. 9.18.

EU 27ヵ国で女性の権利の観点から
    最も進んでいる「法の花束」(5)
 
(12) セクシュアル・ハラスメント:リトアニア
一般にセクシュアル・ハラスメントは、被害者の尊厳を侵害したり、被害者の環境を害する攻撃的かつ不適切な、望まれない行為として定義され、身体的行為だけでなく言語的表現も対象となる*1)。しかし、EUの大部分の国 (オーストリア、フランス、チェコ、スロベニアなど)の法律は、主として職場でのセクシュアル・ハラスメントを対象にしており、女性が毎日のように受けている職場以外での被害は除外されている。セクシュアル・ハラスメントを女性に対する暴力の一環として、ジェンダー平等に関する法律によって裁いているのはベルギー、デンマーク、アイルランド、スウェーデンである。
Chosirがリトアニアを選んだのは、この二つの観点が組み合わされていること、すなわち、労働法とジェンダー平等法の両方による対策が取られていることによる。
ちなみにEUでのハラスメントの被害状況は、2005年に平均して20人に1人となっており(イタリア2%、ベルギー8.5%、フィンランド17%)、女性は男性の3倍である。

*1) EUのセクシュアル・ハラスメントの規定については、「資料部だより No. 8」を参照ください。

(13)労働:フランス
Choisirは、経済的自立こそはあらゆる自由の基盤であり、その意味で男女の均等待遇 (職種、職階、給与)が肝要であると考える。
1980年代以降、いわゆる情報産業の時代になり、技術的=男性的と見なされる職業が増えたが、EUでは女子学生の大半が相変わらず文学や芸術を専攻し、情報科学、理科、数学などには37%しかいない。社会職業カテゴリーにおいても、女性の60%が5つのカテゴリー(家事・育児・介護などの個人向け支援サービス、事務、販売、保健、教育)に集中し、性による職業分化が進んでいる。また、同じ職業でも、たとえば教員の大半は女性であるのに、高等教育では男性教員が圧倒的に多くなる。
2005年に、EU加盟国で高等教育課程に在籍する学生の55%は女性で、彼女たちは学歴的には劣っていない。しかし、トップ企業の幹部の女性割合は10%にすぎない。EUで最も女性労働力率の高いデンマーク(70.8%)でも、管理職の女性割合は23%にすぎない。女性の就業年数が最も長いスウェーデン(女性労働力率70.5%)でも、管理職の女性割合は29.8%。フランス(女性労働力率57.9%)では、37.1%である。
一般に正規雇用率は学歴に比例して高くなっている。子どもがいる女性でも、学歴が高い場合は正規雇用が多いが、大半の女性は子どもの養育のために職業を中断したり、パートタイム雇用にあまんじている(2005年にEU15ヵ国でパート雇用が占める割合は、男性では8%に対し女性では36%)。
結果、2006年にEUでの男女の賃金格差(時給)は男性100に対して女性85である。フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシア、オランダ、スペイン、ポルトガル、イタリアでは憲法に賃金格差の禁止が明記され、「男女同一賃金原則に関する」EU指令(1975年)もすべての加盟国に導入済みであるにもかかわらず、格差は依然として存在する。フランスは11%*2)

*2) 以上のデータについて、詳しくは Rapport sur l'egalite entre les femmes et les hommes, Commission des Communaute europeennesを参照ください。<http://europa.eu/legislation_sum maries/employment_and_social_policy/equality_between_men_and_women/index_fr.htm>
フランスでは、2006年の男女賃金平等法(Loi no 2006-340 du 23 mars 2006)により賃金平等を目指している。この法律の特徴は、男女の賃金格差の是正を国が上から定めるのではなく、2010年12月31日という期限を設けたうえで、産業別・企業別の労使交渉により、その是正策を個別に策定するように求めていることである*3)。Choisirが特に注目しているのは、その第5条で、企業の長は、毎年、L432-3-1(2008年5月1日から用いられている新構成の労働法では、L2323-57〜59)に規定されている報告書を交渉の場である企業委員会に提出することが義務づけられている点である。この報告書では、格差解消を可能にする措置を計画・決定する労使交渉に不可欠な、企業内での男女の比較状況を分析する数値指標を示さねばならない。賃金に関しては、1) 男女別の報酬対照表、2) 月収の平均および中央値、3) 報酬の上位十等級に含まれる女性の人数についての指標が求められている*4)

3) 鈴木尊紘「フランスにおける男女給与平等法−男女給与格差の是正をめぐるフランスの試み−」、『外国の立法 no 236』、国立国会図書館、2008 <www.ndl.go.jp/jp/data/publication/ legis/236/023615.pdf>
4) もともとL432-3-1は1983年の男女職業平等法(ルーディ法)第11条で挿入されたもので、2001年の職業平等法で補強された。したがってこの報告書に含まれるべき指標は賃金だけでなく、職業教育や職業と家庭の両立に関するものなど多岐にわたる。示されるべき指標の詳細については、労働法のD.2323-12を参照ください。

EUでも出生率の低下、寿命の伸長、ベビーブーム世代の年金支給開始など、非労働者人口の増加により、年金制度の財政立て直しが緊急の政治課題になっている。フランスでは2003年に、年金水準の維持と財政均衡を目指した年金改革が行われたが、そこでは、受給開始時期や年金の種類についての個人の選択の自由の保障による「被保険者の分化」の動きが見られる*5)。公的年金を補足する企業年金(PERCO年金貯蓄プラン、など)の奨励もその一つである。しかし、この制度は女性雇用者の多い部門では採用されてない場合が多いこと、また、女性のほうが寿命が長いことから、給付水準を同じにするためには、同じ給与の男性より保険料負担が高くなるといったデメリットがある。
 Choisirは、年金問題解決の糸口の一つとして、女性の就労の促進をあげる。それにより、フランスでは労働力率の15%増が見込まれ、非労働者人口との割合も是正されるだろう。女性が育児や家事のためにキャリアを犠牲にせず、フルタイムで働けるようになれば(さらに賃金の平等が達成されれば)、収入も増え、全体として保険料収入も増える。老齢女性の貧困が問題になっている現在、男女の年金格差の解消は重要である*6)。遺族年金は、現状では女性の生活水準維持のために必要な面もあり、直ちに廃止するのは難しいとしても、伝統的な性別分業から女性を解放し、職業における平等を獲得することによって、改革する必要があるだろう*7)

5) 嵩さやか「フランス年金制度の現状と展望」『海外社会保障研究 no 161』、国立社会保障・人口問題研究所、2007 < http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/sakuin/kaigai/161.htm >
6) 年金受給額などの男女比較については、『女性空間』22号、p.128〜131を参照ください。
7) 2006年にフランスの遺族年金支給額は年金支出の14%を占めている。<http://www.ined.fr/ fr/ressources_documentation/publications/pop_soc/bdd/publication/1438/>

フランスを選んだ理由としては次の3点があげているが、やや抽象的に思われる。
社会的事実に基づいた具体的概念を法的に理論化した労働法典
連帯の論理に基づく年金制度
戦後、あらゆる女性に保障された経済的・社会的権利 


資料部だより

no.17

2009. 5.18.

EU 27ヵ国で女性の権利の観点から最も進んでいる「法の花束」(4)
 
(10) レイプ:フランス
レイプの被害はすべての社会階層、年齢、出身地に及んでいる。2000年の調査では、加害者の98%が男性で、50%が婚姻あるいは同棲の相手であった。70%は計画的なもので、精神異常者によるものは3%である。被害者の年齢は2ヵ月から90歳で、5人に1人の女性が性的攻撃を受けた経験がある。しかし、被害の申立ては少ない。例えば、ギリシアでは、毎年約4500のレイプ被害があるが、そのうち警察への申立ては270件、容疑者の逮捕に至るのは183件、裁判にかけられるのは40件、有罪となるのは20件、5年以上の懲役に処せられるのは10件未満である。
こうした状況から被害者を救済するために、例えばベルギーでは、SAS(Set Agression Sexuelle)が司法手続きの手助けをしたり、警察や裁判所での二次被害を防ぐ対策を取っている。また、重罪裁判所には少なくとも1名の女性判事が席を占めていなければならないと定められている。

Choisirは、次の理由でフランスを選んだ。
1) 1980年12月23日の刑法改正により、レイプを犯罪として規定し、「他者に対して、暴力・強制・脅迫あるいは不意打ちによって行われたあらゆる種類の性的挿入」と定義した。被害者の同意なしに行われた肛門あるいは膣への指や道具を用いた挿入、強制的な口淫も含まれる。
ヨーロッパでのレイプの法的定義は徐々に拡大されている。しかし、例えば、ラトビアでは、膣への性行為のみが対象とされる。ギリシアでは、婚外の行為のみが対象。マルタでは、異性による行為のみが対象(つまり、同性によるものは除かれる)。スロベニアでは、暴力あるいは脅迫による行為のみを対象(被害者が障害などのために抵抗する力がなかった場合が除かれることになる)。
同意の欠如が推定される年齢は、スペインの12歳からイギリスの16歳まで幅がある。

2) 傍聴禁止の決定は、加害者の意向とはかかわりなく、被害者の要請による場合に限られる。
3) レイプ被害の当事者だけでなく、被害女性の擁護を目的とするアソシエーションも原告団に加わることができる。
デンマーク、フランスの刑法では、性暴力は身体的暴力にかかわる刑事犯罪であり、その訴追は国家の担当機関の管轄であり、被害者の申立てに従属するものではない。

4) 1998年6月17日の性犯罪の防止・処罰および未成年者保護に関する法により、未成年者へのレイプに対する時効について、被害者が成年に達するまでの年数は計算に入れないことが導入された。
ドイツ、ベルギー、デンマーク、スペインでも同様。ちなみに、レイプの時効は、フランス・ベルギー・イタリアでは10年、ドイツ・オランダでは20年。
量刑が最も軽いのはドイツで1年から10年の刑。最も重いのはベルギーで、被害者が10歳未満のときは無期懲役を科すこともできる。フランスでは15年以下の刑。
5) 2006年4月4日法により、夫婦間レイプが明文化され、夫・同棲者・民事契約Pacsの相手によるレイプの加重情状が適用される。

(11) 買売春と人身売買:スウェーデン
国際移住機関IOMによると、2002年に50万人の女性が性的搾取を目的とする人身売買の犠牲になっている。
買売春への対処の仕方は国によってさまざまであるが、大きく三つに分けられる。
1. 規制主義・・・ドイツ、オランダ
 買売春を国または地方自治体が法的に規制することによって、買売春を管理する。
2000年に買売春を合法化したオランダでは、人身売買も増加している。とりわけ子どもの買売春は1996年から2001年にかけて約4倍(4000人から15000人)に増加、うち5000人はナイジェリアからの少女たちである。
ILOによると、1989年のベルリンの壁の崩壊後、東欧の貧国や、EU内ではリトアニアなどから多くの女性が西欧の「豊かな国」に流動し、人身売買の犠牲になっている。
2. 禁止主義  買売春を法的に禁止するが、現実的には寛容。
3. 廃止主義 買売春の廃絶をめざす。

1949年に採択された「人身売買および他人の売春からの搾取の禁止に関する国連条約」には、売春およびこれに伴う人身売買は「人としての尊厳および価値に反するものである」と明記され、「本人の同意があった場合でも、その者の売春からの搾取は処罰される。」言い換えれば、強制売春と自由売春の区別はしていない。EU27ヵ国中、17ヵ国が批准しているが、この条約には違反を取り締るためのメカニズムが備わっていない。
 現在では、「強制された売春」と「自由な即ち選択による売春」という概念区分がなされ、1998年にはILOも、性産業を規制して課税することを提案するにいたった。人身売買は議論の余地なく処罰するべきであるのに対して、売春は正当化されるというパラドックスが支配している。

Choisirは、自らの身体を客の性的満足のために売ることを余儀なくされることは、女性全体の尊厳を侵すものであるとの立場から、次の理由によりスウェーデンを選んだ。
1) 買売春の実質的廃止を目指していること。
2) 客を処罰する。
3) 売春婦は処罰しない。
4) 売春婦の社会復帰のための支援センター、とりわけ人身売買の犠牲者や不法滞在外国人への配慮。
5) 保健省、内務省など関係省庁との連携による買売春の告発キャンペーンや情報伝達におけるメディアの協力。
6) 買売春の仲介者や人身売買を告発する売春婦の保護。

1998年の「女性の平和」法(1999年施行)によって、性的サービスを買う、あるいは買おうとする行為には罰金または6ヵ月以下の懲役が科せられる。2005年からは、売春婦が未成年の場合は、2年以下の懲役が科せられる。法の施行により、売春婦は目に見えて減少した。2002年の調査ではスウェーデン人の80%がこの法に賛成している。
      


資料部だより

no.16

2009. 1.18.

EU 27ヵ国で女性の権利の観点から最も進んでいる「法の花束」(3)
 
(8) 親権
 
Choisirは、親権制度においては何よりも子どもの利益が最優先されねばならないのと同時に(*1、男女の平等が探求されねばならないと考える。西欧現行法では、両親による共同親権coparentalit獅が推進される方向にあるが、これは、これまで子どもの教育に関しては母親に優先権が与えられてきた傾向を改め、父親の役割を認めることに寄与している。父親の役割を認めることは、家庭生活と職業生活の両立という見地から、女性にとってもプラスである。
 (*1国連・児童の権利に関する条約 (1989.11.20)でも、次のように定められている。
第18条[父母の共同責任]1. 締約国は、児童の養育および発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。父母または場合により法定保護者は、児童の養育および発達についての第一義的な責任を有する。児童の最善の利益は、これらの者の基本的な関心事項となるものとする。

 EUでの共同親権は、
@ 両親が結婚している場合にのみ認められる(未婚の場合の親権は母親にのみ認められる)・・・ギリシア、フィンランド、ルクセンブルク
A 結婚していない場合も、申告によって認められる・・・オーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデン、イギリス
B 結婚していない場合も、同居していれば認められる・・・ベルギー、スペイン
C 法的親子関係に基づいて認められる・・・エストニア、ハンガリー、リトアニア、チェコ、スロバキア、フランス(*2
 
(*2)フランスでは、2005年7月4日の政令により2006年7月1日以降、未婚の父親も、子どもの誕生前、誕生時あるいは誕生後に認知することにより、法的親子関係が成立する。また、これにより自然子enfant naturelと嫡出子enfant legitimeの区別も廃止された。
  → http://vosdroits.service-public.fr/particuliers/N15660.xhtml

 離婚する場合、ベルギー、ドイツ、フランス、エストニア、イギリスでは、子どもの利益に反さないかぎり、共同親権が維持される。他の国では、協議により決定する。(*3
 
(*3)日本では、民法第819条により、どちらか一方を親権者と定めなければならない(離婚届には親権者を記載する欄があり、記載してない場合は、受付けられないとのこと)。

 再婚に際しては、該当する親だけに親権があるとき、デンマークでは、再婚あるいは同棲相手にも申告により親権が認められる。ただし、同性カップルは排除される。オランダでは、再婚あるいは同棲相手が子育てに参加していると裁判所が判断したときに認められる。同性カップルも排除されない。

 Choisirがエストニアを選んだのは、結婚・同居・父親の性的指向の如何にかかわらず、共同親権が認められ、離婚の場合にも維持されることによる。これは、親権は、子どもの利益に反さないかぎりにおいて、法的に親であることにのみ関わっているとの考えに基づいている。
(9) カップル間暴力(DV
 
DVの根底にはつねに男性支配が存在する。それはまさにジェンダーによる暴力である。1993年にローマで開催された欧州評議会の第3回「男女平等に関する」閣僚委員会も、この考えを次のように宣言している。「女性に対してなされる暴力は、避妊や中絶への自由なアクセスを拒否するのと同様に、未だに存続する男女間の不平等な権力関係に根ざす女性を支配するための手段として分析されるものであり、男女間の実際上の平等の実現への障害をなしている。」
●「民主的ヨーロッパにおける女性への暴力に対する政治のための宣言」第13条
http://www.coe.int/T/E/Human_rights/Equality/PDF_MEG3_decl_res_F.pdf

 EUにおけるDVの実情を総合的に示す資料は驚くほど少ないが、欧州評議会が2006年に発表した研究によると、成人女性の5人ないし4人に1人が少なくとも一度は身体的暴力の被害を受けており、加害行為の大半は、配偶者や元パートナーといった身近の男性によるものである(*4
Combattre la violence a l'egard des femmes, Etude du bilan des mesures et actions prises dans les Etats membre du Conseil de l'Europe, p.7
http://www.coe.int/T/E/Human_Rights/Equality/PDF_CDEG(2006)3_F.pdf

(*4Le Monde diplomatiqueの2004年7月号、Ignacio Ramonetの記事 "Violences males" によれば、ヨーロッパでのDV被害は、交通事故や癌さえも抜いて、16〜44歳の女性の身体障害や死亡原因のトップになったという。
http://www.monde-diplomatique.fr/2004/07/RAMONET/11299

 DVへの対策は国によって大きな隔たりがある。欧州評議会の上記調査(2005年)では、エストニア、イタリア、ブルガリア、マルタには行動計画さえも存在しなかった。何らかの対策を取っている国の例を見ると、オーストリア、ドイツ、ルクセンブルグ、スペイン、ポーランドでは、被害者を新たな被害から守るために加害者に退去を命じることができる。日数は10〜14日、更新も可能。ドイツ、オランダ、フィンランドをはじめとする北欧諸国では、保護センターが発達している。
 Choisirがスペインを選んだのは、2004年12月28日の基幹法(2005年施行)により、次のような改革がなされ、早くも2005年にはカップル間暴力による死者が減少し、暴力被害の届出数が増加するという効果があらわれていることによる。
−学校教育において、子どもたちに早い時期からジェンダーによる暴力への注意を喚起し、広告やメディアにおける性差別的なイメージを見抜くことを教える。
−DV被害者を早期に発見し、警察や受入センターに導けるように、公的サービス機関の人材を養成する。
−被害者を緊急・迅速に保護し、加害者の接近禁止措置をとる。
−被害者および必要な場合はその子どもへの心身のケアをすると同時に、生活の建直しのための職業や住宅を斡旋する。
−加害者男性を厳しく罰すると同時に、更正のためのプログラムを充実させる。
−主要都市17カ所にDVのための特別裁判所をつくり、DV専門に養成された判事を配置する。


資料部だより

no.15

2008. 12. 8.

EU 27ヵ国で女性の権利の観点から最も進んでいる「法の花束」(2)
 
 今号も、La Clause de l'Europeenne la plus favoriseeEd. des femmes, 2008から「法の花束」の紹介を続けます。この花束がどのようにして選ばれたのかは前号で記しましたが、何をもって「最も進んでいるles lois les plus avancees」と考えるかは、異論があるかもしれません。私自身は「最も革新的な」と解していますが、「最も公正な」とか「最もフェミニスト的な」と解しても、同じ問題が残るでしょう。あるいは又、一律に同じ法を定める「平等」よりも「多様性」を尊重するべきだという考え方もあるでしょう。議論の端緒になれば幸いです。

(5) 離婚: EUではほとんどの国で合意離婚が認められている。しかし、日本とは異なり、裁判官の審判が必要である。これは当事者の真意の確認や、たとえば養育費といった離婚にともなう諸問題の裁定のために不可欠であると考えられている。
 配偶者の一方が離婚に同意しない場合は、主として2つの要因(別居期間(1)と、共同生活の維持を困難にする危険な言動)が判断基準となる。しかし、スペイン、スウェーデン、フィンランド、ハンガリーでは、個人の自由の観点から、当事者の離婚の意志が最優先される。
 (1) フランスでは、合意離婚の場合でも、冷却期間として最低2ヵ月の別居が要請される。

 スペインが選ばれたのは、当事者の一方であれ、結婚を解消したいと望めば(ただし、結婚後最低3ヶ月を経ていなければならない)、特定な理由や別居期間なしに、離婚が認められる点にある(2005年6月8日法)。ただし、養育費の義務は維持されている。これは、個人の自由の尊重という観点からは矛盾しているが、現状では男女の経済力に大きな違いがあることを考慮したものである。

(6) Contrat dunion civile結婚制度によらない、民事カップル契約。
@ 同性カップルにのみ認めている国:さきがけは、1994年に定められたスウェーデン
のパートナーシップ契約(2002年からは養子の権利も認められている)。デンマーク、イギリスでは、養子の権利を除けば、結婚に匹敵する契約が認められている。他に、ドイツ、フィンランド、スロベニア、チェコ、ポルトガルなど。
A 異性カップルにのみ認めている国:ハンガリー
B 異性・同性を問わない国:ベルギー、オランダ、フランス(いわゆるPACS)、ルクセンブルク。

 ベルギーが選ばれたのは、1998年11月23日法により、結婚に匹敵するカップル契約が異性・同性を問わず認められているためである。

(7) 育児休暇:1996年6月3日理事会指令(96/34CE)により、27ヵ国すべてに育児休暇制度がある。この指令は、男性および女性労働者が、子ども(誕生または養子縁組による)の世話をするために、8歳になるまでに、少なくとも13週間の育児休業の権利を有すると定めている。この指令にはまた、休暇後の職場復帰の保証も明記されている。
 問題は、休暇中の給与についての規定が欠けている点である。
@ 多くの国で休暇中は無給:キプロス、スペイン、フランス(2)、ギリシア、アイルランド、オランダ、ポルトガル、イギリス。
  (2) 労働法典により定められている育児休暇は無給であるが、これを補うものとして、社会保障法による就業自由選択補足手当(CLCA、COLCA)がある。ただし、両者の取得資格は異なっており、育児休暇は取れても手当はもらえないケースもある。
A 定額支給(一般に小額):オーストリア、ベルギー、チェコ、スロバキア。
B 給与に比例して支給:フィンランド(給与の60%)、ドイツ(67%、上限1800euros)、スウェーデン(80%)、エストニア(100%、期間は3ヵ月)、スロベニア(100%)、デンマーク(100%)、ノルウェー(100%)。

 給与補償が低い国では休暇の取得率も低い傾向にある。しかし、オーストリアのように、保育制度を不十分なままにして、母親に休暇取得を余儀なくさせるケースもある。
 根本的な問題は、休暇の取得者が女性に偏っていることである。父親の取得率を上げるためには、給与補償が絶対的に必要だが、それだけでは不十分である(3)
  (3) たとえば給与の100%が補償されているデンマークでも、育児休暇をまったく取らない父親が40%いる。2002年には母親の平均取得数が25.1週に対して、父親の平均取得数は2.6週であった。

 父親の育児休暇取得率が高いスウェーデンやノルウェーでは、父母のそれぞれ一方しか利用出来ない期間(現実には、父親取得部分)が定められおり、これが父親の休暇取得率の上昇に貢献している。
 スウェーデンが選ばれたのは、480日間の休暇中、休暇前の給与の80%が保証されること、不可譲の日数が定められ、60日ずつが父母にそれぞれ与えられることによる。休暇は子どもが8歳になるまでに継続して取っても、断続的に取ってもよい。
==========
父親の取得率を上げる方法として、次の文献は4つの条件をあげている。
 ● Antoine Math, Christele Meilland, "Les conges aux parents : contre l'egalite entre femmes et hommes?", Revue de l'IRES, n.46, 2004
@ 十分な賃金補償:賃金補償の影響が大きいことは、フランスの父親休暇の取得率が高いことからも言える(初年度から、予想を上回って3分の2の父親が取得した)。
A 取得時期の柔軟性:継続的かつ長期の休暇は復職を難しくする。
B パートタイムを認めるなど、育休中の労働形態の多様性
C 不可譲分があること(4)
 
(4) スウェーデンでは、1974年から両親ともに取れる育児休暇制度がスタート。1995年1月には30日の不可譲日数の導入にともない、手当は給与の90%から80%に減ったにもかかわらず、育休取得0の男性は54%から18%に減少、父親の平均取得日数も29日から44日と、15日も増加した。一方、女性の平均取得日数は324日から299日と、25日減少。2002年から不可譲日数は60日に延長された。2006年の男性取得率は約80%。ノルウェーでは1993年に4週間の不可譲日数が導入された後、1〜2%だった男性の取得率が1995年には70%、2001年には85%に上昇した。

 なお、スウェーデン、ノルウェーと並んでオランダの父親の取得率が高いことにも言及しておきたい。これは、ワッセナー合意(1982年)による改革で、パート勤務とワークシェアリングが促進され、労働時間が短縮された成果といえよう。 


資料部だより

no.14

2008. 8.18.

EU 27ヵ国で女性の権利の観点から最も進んでいる「法の花束」(1)
 
「情報ファイル」No.92に掲載のジゼル・アリミの記事で言及されていた「最も有利なヨーロッパ女性の条項」について、ご記憶の方もおられると思います。そのままのタイトルの本が出版されました。

Gisele Halimi他、La Clause de l'Europeenne la plus favorises, Ed. des femmes, 2008

ジゼル・アリミが、「EUという同じ一つの政治体に属している女性が異なる扱いを受ける不平等をなくして、加盟国で最も進んだ法的ステータスを適用できるようにしたい」という、いわば「最恵国条款」の考えを思いついたのは、欧州議会の第1回普通選挙が行われた1979年でした。そして、ようやく2005年から、ショワジ−ルChoisirが中心になって具体的な取組みが進められてきました。
法律家、経済専門家、社会学者、組合活動家などからなる研究グループは、まず、EUの女性たちの現状分析と各国の法律に関する資料収集を行い、次に、女性の権利にとって最重要の5つのテーマを軸にこれらの情報を整理し、最終的に14の項目について、EU27国で最も進んでいる国を選び、それを「法の花束 bouquet legislatif」としてまとめました。
現在、この計画は、欧州委員会のヴラジミール・シュピドラ雇用・社会問題・機会均等担当委員など多くの要人の支援を得て、実現に向けて動いているということです。

これまでの道程について、より詳しくは、次のサイトを参照ください。
● <http://www.choisirlacausedesfemmes.org/LaClause/specialclause.htm >
また、Le Monde diplomatiqueの5月号に関連記事が掲載されています。
<http://www.monde-diplomatique.fr/cartes/bouquet>

5つのテーマと「法の花束」
1.産む選択 (1) 性教育:デンマーク (2) 避妊:オランダ (3) 中絶:スウェーデン
2.家庭生活 (4) 結婚:オーストリア (5) 離婚:スペイン (6) Contrat d'union civile:ベルギー 
       (7) 育児休暇:スウェーデン (8) 親権:エストニア
3.女性への暴力 (9) カップル間暴力:スペイン (10) レイプ:フランス
     (11) 買売春:スウェーデン (12) セクシャルハラスメント:リトアニア
4.女性労働 (13) 労働:フランス
5.女性と政治 (14) パリテ:スペイン

次に、14の「法の花束」の概要を見てみましょう。
(1) 性教育:現在、学校での性教育が義務化されているのはオランダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、ハンガリー。他の国では保健・家庭・市民生活などの科目で教えられているが、ばらつきが大きい。また、メディアによる性情報の影響力にも注意しなければならない。デンマークが「花束」に選ばれたのは、性教育が小学校から導入されていること、国営テレビ番組や家族計画センターのサイトで性教育のための情報提供がなされていることによる。

● ヨーロッパの性教育の現状を知るための参考文献:Wellings K., Parker R., Sexuality Education in Europe A reference guide to policies and practises, IPPI European Network, 2006

(2) 避妊:現在も避妊方法が制限されている国がある(エストニア、アイルランド、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキア)。キプロス、マルタ、ルクセンブルクのように避妊政策が取られていない国と合わせて、皮肉にもこれらの国の出生率は概して低い(平均1.40/2002年)。避妊政策を進めている国でも避妊費用の負担方法はさまざまで、たとえば、フィンランドでは、医者の処方による場合は無料だが、ピルやコンドームを直接購入する場合は有料で、社会保険の対象にならない。スウェーデンでは、20歳未満の若者には50%までの補助があるが、その割合は地域によって異なっている。オランダが選ばれたのは、未成年者も成人も避妊手段を直接、自由に入手でき、無料であること(社会保険により返還)、国がそうした情報を公開していることによる。

(3) 中絶:現在も非合法の危険な中絶が原因で、世界中で毎日227人の割で女性が命を落としているという報告があるが、産む選択の自由は女性にとって基本的な権利である。欧州議会は2002年7月3日に「性と生殖の権利と健康に関する決議」を採択しているが、まだ中絶が禁止されている国が残っている。EUの中絶に関する法制は大きく4つのタイプに分類できる。
@ 中絶は認められない。(マルタ、アイルランド)
A レイプの被害者、あるいは母親の健康・生命の危険があるときに限って、女性の申請により中絶できる。期間は12週まで。(ポーランド、キプロス)
B 社会的理由に限って、女性の申請により中絶できる。期間は22週まで。
C 合法期間(国により妊娠12週から18週)であれば、女性の申請により中絶できる。
スウェーデンが選ばれたのは、1974年以来、妊娠18週以内の中絶が合法化され(中絶用ピルも認可されている)、社会保険でカバーされていることによる。

(4) 結婚:当事者の意志を尊重し、強制婚を避けるために、結婚最低年齢は大体において成人年齢の18歳と定められている。しかし、国によっては宗教婚が民事婚と同じ法的価値をもち、必ずしも民事婚を必要としないため(デンマーク、ギリシア、フィンランド、イタリア、ノルウェー、スウェーデン)、花嫁の同意の確認を困難にしている。他の国では原則として民事婚が必要で、特にオーストリアとフランスでは宗教婚より優先される。
同性婚が認められているのは、オランダ(2001年)、ベルギー(2003年)、スペイン(2005年)の3ヵ国だけである。なかでもスペインの2005年6月30日法は同性婚と異性婚をまったく同等なものと定めている点で画期的である。

(5) 離婚:離婚が認められていないのは、カトリックの影響が根強いマルタのみである。現在では、ほとんどの国で合意離婚が認められ、有責離婚(不貞、重度の精神障害、改宗、子どもをつくることの拒否など)はキプロスだけである。しかし、最低婚姻期間が定められていたり(ブルガリア/3年、チェコ/1年)、一定の別居期間が必要な国も多い。

                          続きは次号に。 (資料部:井上たか子)


資料部だより

no.13

2008. 5.18.

Femmes et Hommes, Regards sur la parite, Edition 2008, INSEE
 
 フランス社会における女性の現状に関する統計資料をまとめたシリーズ『女と男、パリテへの視点』の2008年版が出版されました。(旧2004年版については『女性空間 21号』でも紹介しましたので、あわせてご利用ください。)
 
 今回の改訂でも、第1章(1.人口、2.家族、3.健康)、第2章(4.教育、5.労働、6.収入)、第3章(7.家庭と職業生活の両立、8.社会との関係、9.余暇、10.権力)という構成は引き継がれていますが、巻頭に各章を概観する解説が置かれ、さらに、近年増加している移民女性の問題、女性労働者の職業病、男女のアルコール・マリファナ・向精神薬等の消費にそれぞれ焦点をあてた3つの論文が掲載されています。また、巻末の女性の権利に関する年表も更新されました。これらはすべてINSEEのサイト上で参照できます。
<http://www.insee.fr/fr/ppp/publications/ficref_frame.asp?ref_id=FHPARIT08>
 
 統計資料も、従来どおりサイト上で順次更新されていく予定で、既に作業が終わった箇所(全体の約3分の1)については上記のアドレスで参照できます。

 今号では、第1章3.健康 から「避妊と人工妊娠中絶(IVG)」の項を紹介します。
2008年版では、2004年版の1.主要な避妊法、2.中絶数の変遷(1990〜2001)に替わって、1.主要な避妊法、2.Norlevo販売数、3.年齢別IVG数の三つの図表が掲載されています。

1.主要な避妊法について

   図表 [略]

 女性(20〜44歳)の72.2%が何らかの方法で避妊している。避妊していない女性は、パートナーがいない・妊娠したい・妊娠中・不妊などの場合を除くと、2%弱。
 44.5%が用いている経口ピルを筆頭に、IUDが17.0%。3位のコンドームは、1990年代に感染症予防の目的で普及したが、避妊のための使用は2000年来、7%前後で推移している。2004年版にはなかった新たな避妊法(肌に貼るpatchや 膣に挿入するanneau vaginal)が1.1%である。具体的な避妊の仕方については、INRESによる説明が分かりやすい。
<http://www.choisirsacontraception.fr/post/index.php>

2.Norlevo販売数の変遷

   図表 [略]

 Norlevoは、性交後72時間以内に用いる緊急ピルで(効果は24時間以内で95%、48〜72時間では58%)、日本でも翌日ピルの名前で知られている。フランスでは、1999年6月から処方箋なしでも購入できる(その場合は保険による払戻しは受けられない)。また、2002年1月9日法により、未成年者への薬局での無料配布も合法化された(中学・高校での看護師による無料配布も例外的に認められている)。
2005年には女性(15〜54歳)の 99.8%がこの緊急ピルについて知っており、13.7%が利用した。2006年の販売数は110万錠。利用理由としては、コンドームのトラブル32.5%、ピルのトラブル24.9%、避妊してなかった21.8%があげられている。

3. 女性の年齢別・2005年の人工妊娠中絶数(IVG)と出産率

   図表 [略] 

 避妊が普及しても、自分の意志に反して妊娠してしまうリスクがゼロということはない。2005年のIVGの総数は20万5000件にのぼり、2004年(21万664件)とほぼ同じ。これは出生数(80万7787人)の約4分の1にあたる。
IVGには手術によるもの(2001年6月の「IVGと避妊に関する法律」により、合法期間が妊娠10週から12週に延長された)と、薬によるもの(無月経7週まで可)がある。後者は、2004年7月から、病院と協定した個人開業医(婦人科医・一般医)でも行えるようになった。2005年には、薬によるものがIVG全体の44%を占めている。しかし、手術はするが、薬によるIVGは行わない病院が17%ある(ちなみに、10年前の1995年には、41%であった)。
より詳しい情報については、次の文献を参照されたい。
Annick Vilain,“Les interruptions volontaires de grossesse en 2005”, Etudes et Resultats, no.624, fevrier 2008, Drees
<http://www.sante.gouv.fr/drees/etude-resultat/er-pdf/er624.pdf>

 IVGの状況は地方によっても差が大きい。L’Humanit_(2007.12.17)の記事によると、中絶件数がフランス全体の4分の1をこえるイル・ド・フランスでは、手術を行う病院が1999年から2005年に176から 126に50箇所も減少した。中絶は利益がうすいことが原因だ。中絶方法の選択権も侵されている。局所麻酔が可能であるにもかかわらず、公立病院の6分の1、民間の11分の9が全身麻酔しか採用していない。薬による中絶も、リベラルな少数の医師しか行っていない(2007年には一般医・婦人科医20196人のうち230人)。
中絶の権利は単に黙認されているだけで、まだ本当に尊重されているとは言い難い。
<http://www.humanite.fr/2007-12-17_societe_contraception-la-longue-marche-du-droit-au-choix > (資料部:井上たか子)



資料部だより

no.12

2008. 1.18.

Le 19eme Forum 《Le Monde − Le Mans》
Femmes, hommes : quelle difference ?

 今回は少し趣向を変えて、2007年11月16-17-18日にフランスのルマンで開催されたフォーラムについて紹介します。このフォーラムは、ルモンド紙・ルマン市・メーヌ大学の共催で、1989年以来、毎年一つのテーマを定めて、第一線の研究者と一般聴衆との討論の場を提供しています。
 19回目の今年のテーマは「女・男、差異は何か」で、午前と午後に3時間半ずつのセッションに加えて、2日目は夜も映画上映とデバがあり、「24時間レース」なみの耐久力を問われる3日間でした。詳しくは、 <http://forumlemans.univ-lemans.fr/>

あいにく国鉄ストと重なったにもかかわらず−ちなみに、私がパリからルマンに移動した15日には、フランス全土で700本のうち150本のTGVが運行したとのこと−、約千名を収容する会場は連日、ほぼ満席の盛況でした。フォーラム友の会も作られていて、パリなどフランス各地からの常連もいるようです。初日の金曜日は地元のリセの最終学年生も参加して、文字どおり老若男女の熱心な質問が交わされました。

 プログラムの概略と参加パネラーは、次のとおりです。
La difference des sexes, un alphabet universel?
 Irene Thery(社会学)、Elisabeth Roudinesco(精神分析史)、Maurice Godelier(人類学)
 Reza Mir-Samii(言語学)
Faire la difference : La construction du genre au miroir de l'histoire, du droit et de la science
 Catherine Vidal(脳生物学)、Laura Frader(歴史)、Daniele Lochak(法学)
Brouillard dans le genre : Vers l'indifferenciation sexuelle?
Clarisse Fabre(ジャーナリスト)、Patrice Maniglier(哲学)、Laure Murat(文化史)
Michel Schneider(精神分析/欠席)
Devant les cameras, sur scene, a meme le papier : L'ecriture des differences
Elisabetta Rasy(小説家)、Patrice K残hichian(ジャーナリスト)、Daniel Mesguich(演出家)、
 S暫astien Lifshitz(映画監督)
Soiree Cinema-debat anime par Isabelle Regnier(ジャーナリスト) en presence de S. Lifshitz
Wild Side(2004) :ベルリン映画祭でクイア−映画に与えられるTeddy Award受賞作品
Islam, christianisme, judaisme : Le partage des sexes a l'epreuve des monotheismes
Christian Jambet(哲学/イスラム教)、Olivier Boulnois(哲学/キリスト教)、
 Catherine Chalier(哲学/ユダヤ教)
Vous avez dit "egalite des sexes"? Actualites politiques et enjeux d'avenir
Sylviane Agacinski(哲学)、Elisabeth Badinter(哲学)、Elsa Dorlin(哲学/欠席)

 どの報告も、それぞれの学問分野での研究成果、あるいは文学・映画・演劇などの創作活動に基づいた密度の高いもので、活動家的なアジテーションは一切なかったことを特筆したいと思います。

 当センターの20周年記念シンポジウムに参加くださったIrene Theryさんと再会できたことも思いがけない喜びでした。彼女は、入院のため参加をキャンセルせざるを得なかったFrancoise Heritierに代わって、急遽、初日のトップバッターとして登壇しました。
6年前から取組んでおられるという社会学と人類学の視点を共有する立場から、彼女はまず、性の区別 distinction de sexeは固定的・実体的なものではなく動的・関係的なものであり、すべての社会に普遍的なカテゴリーではないことを示します。男・女 un homme/une femmeという単に性の区別だけを表わす語をもたない言語はたくさんあって、そこでは親としての父・母、子のなかの息子・娘、あるいは男の祭司・女の祭司というように社会的な役割のもとでの区別にすぎないというのです。Th屍yさんは「社会の劇作法 dramaturgie sociale」という表現を用いて、私たちは集団的にしろ個人的にしろ一つの固定的なアイデンティティに支配されているのではなく、社会というそれ自体が固定的なものではない演劇のなかで複数の役割・関係性を生きていることを喚起しました。
要するに、その舞台裏に、あるいは被っている仮面の下に隠れている真実があるかのように男女の差異 difference des sexesを探しても、そんなものはないということでしょうか。

 過去18回のフォーラムのテキストはすべて刊行されており、今年のテキストもPresses Universitaires de Rennesから1年後に刊行される予定です。また、Le Mondeのサイト、Savoirsで講演音声を聴くこともできます。このサイトには他にも、2000年以降に行われたl'Ecole normale superieure、la Cite des sciences、l'Universite de tous les savoirsでの2000を超える講演が収録されています。ジェンダー関係のものもかなり含まれていますので、アクセスしてみてください。
< http://www.lemonde.fr/web/sequence/0,2-3328,1-0,0.html >

 また、期間中、地元の書店 L'herbe entre les dallesが会場ロビーに出店して、関連書籍を販売しました。その中から、主な最近の著作をピックアップして、紹介します。

Irene Thery : La distinction de sexe. Une nouvelle approche de l'egalite, Ed. Odile Jacob, 2007
Catherine Vidal : Feminin/masculin. Mythes et mythologies, Coll. Belin, 2006
Daniele Lochak : La liberte sexuelle (avec Daniel Borrillo), PUF, 2005
Clarisse Fabre : Liberte, egalite, sexualites. Actualite politique des questions sexuelles
 (avec Eric Fassin), Belfond/Le Monde, 2003
Patrice Maniglier : Antimanuel d'education sexuelle (avec Marcela Lacub), Breal, 2005
Laure Murat : La loi du genre. Une histoire culturelle du "troisieme sexe", Fayard, 2006
Elisabetta Rasy : La science des adieux (roman), Seuil, 2007
Olivier Boulnois : La revue Communio の特集号 "La difference sexuelle", 2006 (共同編集)
Catherine Chalier : Des anges et des hommes, Albin Michel, 2007
Sylviane Agacinski : Metaphysique des sexes. Masculin/feminin aux sources du christianisme,
Seuil, 2005
Elisabeth Badinter : Passions intellectuelles, Fayard, 2007
--------------
Michel Schneider : La confusion des sexes, Flammarion, 2007
Elsa Dorlin : La matrice de la race. Genealogie sexuelle et coloniale de la nation,
La Decouverte, 2006

なお、Elisabeth Roudinescoが報告の中でボーヴォワールのフロイト批判に触れていましたので、もっと詳しく知りたいと思って質問しましたら、春に出る Les Temps modernesのボーヴォワール生誕百周年特集号*に書く予定とのことでした。(資料部:井上たか子)

Les Temps modernes, janvier-mars, 2008, nos 647-648, "La Transmission Beauvoir"
                      


資料部だより

no.11

2007. 9.18.


母親休暇 conge materniteと父親休暇 conge paternite

 30年前に出産を経験したとき、産後休暇がもう少し長いと助かると思った。現在、日本の出産休暇は、産前6週(多胎の場合14週)+産後8週で、フランスの産前6週+産後10週に比べて2週間短い。さらにフランスでは、2007年3月7日から、本人の希望により(診断書が必要)、産前休暇のうち最長3週間を産後に移行することが可能になった(1)。個人差もあるだろうが、否、まさに個人差があるからこそ、こうした柔軟性は羨ましい。
(1) Loi r伺ormant la protection de lユenfance article 30/Code du travail article L.122-26

 他にも、3人目の子どもや双児の場合に、産後休暇をそれぞれ最長2週と4週、産前に移行することが認められている。また、早産の場合や産婦が病気の場合など、多様なケースが勘案されている。

フランスの母親休暇(出産休暇)
1〜2人目の出産 (3〜)6 +(13〜)10 =16週
3人目以上の出産 8(〜10 )+ 18(〜16)=26週
双児       12(〜16) + 22(〜18)=34週
三つ子以上    24 + 22 =46週
予定日より遅れたとき 産後の休暇はそのまま
早産のとき     早産日数を産後に加算(全体の長さは同じ)
母親が病気のとき 産前2週間/産後4週間までの病気休暇をプラス

ちなみに日本では 
何人目かにかかわらず  6 + 8 =14週
双児以上        14 + 8 =22週
予定日より遅れたとき  産後の休暇はそのまま
早産のとき       加算しない

 法定より長い休業期間が、労働協約によって定められる場合もある。たとえば、銀行業ではプラス45日(給料の100%)または90日(給料の50%)の休暇を選択できる。
 しかし、2004年にDREESが母親休暇の期間に関して、産後4〜6ヵ月の母親に行ったアンケートが示しているように、ほとんどの母親が休暇の延長を希望している。特に、1〜2人目の出産では87%が希望し、実際に、他の休暇(年休、病気休暇、労働協約)との組み合わせで合計平均150日の休暇を取得している。
● Sophie Penet, "Le conge de maternite", Etudes et Resultats, no.531, DREES, 2006
  <http://www.sante.gouv.fr/drees/etude-resultat/er531/er531.pdf>

 母親休暇中の賃金については、健康保険地方金庫(CPAM)から、出産保険の名目で100%保証される (2)。ただし、休業期間が8週未満の場合は保証されない(母体保護の観点から、産前2週+産後6週の休業が義務づけられている)。
また、給与所得者以外についても、農業の場合は臨時要員の給与が補助され(90%)、商業や自由業の場合は定額の手当が支給される。
 母親休暇についての詳細は、以下のサイトを参照されたい。
● Grossesse et conge maternite : un guide en ligne (20/06/2007)
  → < http://www.service-public.fr/actualites/00567.html >
 
(2) 日本では、出産休暇中の賃金は法的には無給。健康保険から日給の60%の出産手当金が保証される。厚労省の平成16年度女性雇用管理基本調査では、給与の100%を支給する事業所は14.9%で、71.4%が無給である。
   < http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/08/h0808-2c01.html >

 EUでは、1992年10月19日の産前産後の労働者の安全と健康に関する理事会指令(92/85/CEE)により、連続14週の出産休暇(最低2週間の強制休暇を含む)が保証されている。
 産後休暇は、母体保護だけでなく、生まれた子どもの世話のためにも重要である。しかし、子育ては女性だけのものではない。EUでは、男女平等に親としての責任を分かち合うという観点から、1992年3月31日の勧告(92/241/CEE)によって、伝統的に女性だけに与えられてきた産後休暇を男性にも与える方向を示した。さらに、2002年9月23日の改正・雇用職業における均等待遇原則に関する理事会指令(2002/73/CE)でも、父親休暇が奨励されている。

EUにおける法定父親休暇の状況(2003年末)
父親休暇のない国 オーストリア、ドイツ、アイルランド
妻が養育できないなどの特殊な場合 イタリア、ポーランド、スロバキア
2日 スペイン、ギリシア、ルクセンブルク、オランダ
5日 ハンガリー、ポルトガル
約2週間 ベルギー、デンマーク、フランス、スウェーデン、イギリス、スロベニア
3週間以上 フィンランド、ノルウェー

 EUの状況については、次の文献が参考になる。
● Antoine Math et Christele Meilland, "Un etat des lieux des conges destines aux parents dans vingt pays europeens", La Revue de l'IRES, no.46, 2004
  → <http://www.ires-fr.org/files/publications/revue/R46/R465.pdf>

 フランスでは、2002年1月1日から、それまで父親に与えられていた子どもの誕生休暇3日に11日を加えて、最長2週間(子どもが複数のときは3週間)の父親休暇が制度化された。この休暇は、取得希望日の1ヵ月前に申請すれば、子どもの誕生(または養子縁組)から4ヵ月以内のいつでも取得できる。休業中の賃金は、母親休暇の場合と同様、CPAMから支払われる。取得状況などの詳しい情報については、次の文献を参照されたい。
● Denise Bauer, S. Penet, "Le conge de paternite", Etudes et Resultats, no.442, DREES, 2005
→ <http://www.sante.gouv.fr/drees/etude-resultat/er442/er442.pdf>

 日本では、男女平等というよりも、平成15年7月16日の次世代育成支援対策推進法で、国や地方団体、事業所などに、子育て支援対策の推進努力が義務づけられたのにともなって、父親休暇の導入が進められている。模範を示す立場にある内閣府では、出産に付添うための配偶者出産休暇(2日)と出産後の退院の世話や育児参加のための休暇(5日)を定めて、それぞれ100%、80%の取得数値目標を立てているそうだ。
  → < http://www.cao.go.jp/kanbou/i/200608/2/syokubanojyoshiki.html >
 厚労省の平成17年度女性雇用管理基本調査によると、配偶者出産休暇制度のある事業所は33.0%で、取得可能日数は1日〜5日が94.6%を占めている。そのうち有給休暇は84.7%(平成14年度92.6%)、休暇取得者の割合は55.6%(平成14年度61.6%)である。それにしても、平成14年度より減少しているのは何故だろうか。
  → < http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/08/h0809-1/01.html >
                      



資料部だより

no.10

2007. 5.10.


3月8日・国際女性デーについて
 日仏女性資料センター(日仏女性研究学会)は、今年初めて、3月8日の国際女性デーを祝うイベント (日仏会館主催)に協力しました。当日、会場の入り口には男性の姿が目立ち、一瞬、会場を間違えたのかと思うほどでしたが、彼らは来場者にミモザの花束をプレゼントしていたのでした。これはイタリアの習慣で、男性も一緒に女性デーを祝うのだそうです(*1)。花の香りのただよう和やかな雰囲気のなか、「政界と女性」をテーマに、勝間和代さん(ウェブサイト麦畑主宰)の進行でフランソワーズ・バレ=デュクロ(フランスの女性研究機関エミリー・デュ・シャトレ研究所所長、パリ第7大学教授)と福島瑞穂(参議院議員、社民党党首)両氏による討論が行なわれ、会場からの質問もまじえて、充実した2時間を過ごすことができました。 
(*1) 今年イタリアで話題を呼んだ3月8日の行事は、40名近くの与野党の男性国会議員がモデルをつとめたチャリティー・ファッションショー。女性への暴力をなくす世論の喚起を目的とするNPOの企画で、50〜100ユーロの入場料をはらった約1000人の会場いっぱいの観客をわかせたということです。→日経新聞、2007/03/29

国際女性デーの起源
 フランスのSdfe (女性の権利と平等局)のサイトによると、国際女性デーは1910年にコペンハーゲンで開催された女性社会主義者の国際会議で、ドイツ人のジャーナリスト、クララ・ゼトキンが、女性の参政権へのアクセスを促進する目的で提案し、採択されました。しかし、日付については未定で、3月8日に定着したのは、1921年にレーニンが、ロシア革命の口火となった1917年3月8日 (ロシア暦2月23日)のペトログラードの女性労働者によるストライキを称える公式祝典を行なって以来とされています。1924年には中国が、1946年からは他の東欧諸国もこの祝日を採用します。
 フランスで最初の行事が行なわれたのは1914年ですが、1948年には共産党の呼びかけで、各地で大勢の女性 (パリ10万人、マルセイユ3万人) が行進したそうです。1982年には、社会党政権下で女性の権利省がつくられ、毎年この日を公式に祝うことが決定されました。
<http://www.femmesegalite.gouv.fr/se_documenter/les_reperes/accueil/8_mars_historique.htm >

 国連では、国際女性年の1975年に初の国際女性デーを迎え、1977年に公式に記念日として定めました。以来、世界中で記念イベントが実施されてきましたが、日本では、婦人週間(*2)が毎年4月に実施されてきたせいか、ようやく2002年から毎年3月8日に、日本にある国連機関の共催による公開フォーラムがUNハウスで開催されています。
(*2) 初めて女性が参政権を行使した1946年4月10日を記念して、1949年以来、4月10日に始まる一週間を女性の地位向上のための婦人週間と定めた。1998年からは女性週間に改称。
 2001年から男女共同参画週間にバトンタッチ。男女共同参画週間は、1999年6月23日に男女共同参画社会基本法が公布施行されたのを機に、基本法の目的及び基本理念に関する国民の理解を深めるために、毎年6月23日からの一週間、実施されている。→男女共同参画局サイトhttp://www.gender.go.jp/

 2006年の3月8日には、連合が国際女性デーを春季生活闘争のなかに位置づけて、「つくろう!男女雇用平等法!」をテーマとする全国統一行動を展開しました。ところで、この日の集会アピールによると、「国際女性デーの歴史は、150年ほど前に遡ります。1857年にニューヨークで起きた工場火災で多くの女性たちが亡くなったことに端を発して、低賃金・長時間労働に抗議する集会が3月8日に開かれました。その後、この日は女性たちの政治的自由と平等のために闘う記念日と位置づけられるようになり(...)」と説明されています。
<http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/rengonews/2006/20060310_1141958983.html >

冷戦と国際女性デー
 
この1857年説は、1955年3月5日付のユマニテ紙(フランス共産党機関紙)に掲載されて以来、通説になっていましたが、1982年にリリアンヌ・カンデルとフランソワーズ・ピックが、そうした事実は存在しなかったことを論証しました。
Liliane Kandel et Francoise Picq, "Le mythe des origines, a propos de la Journee internationale des femmes", La revue d'en face, n.12, 1982

 1857年3月8日にアメリカで行なわれた女性労働者によるストライキという神話がつくられた背景には東西の冷戦がありました。すでに1910年当初から、同じ社会主義者ではあっても、闘争方針については、ゼトキンを中心とする階級闘争派と、必ずしもマルクス主義に与しないグループの対立があったのですが、1921年にレーニンにより公認されてからは、次第に共産主義の祭典という色彩を強めるようになりました。冷戦が激化するにつれて、とりわけフランス共産党は、この祝日がソヴィエト共産主義のために利用されることは危険であると判断して、神話がつくられたのです。この神話は、1964年3月に創刊されたCGT (フランス労働総同盟)の女性誌アントワネットや、レ・ペトロルーズ (パリコミューンのとき、火災瓶を投げた女性闘士たちに因む)など1970年代のフェミニズム誌にも採用されます。また、ル・マタンやフランス・ソワールなどの一般紙にも掲載され、普及しました。リベラシオン紙は1993年にもまだこの説を載せています。それにしても何故、1857年なのかという疑問が残りますが、この年はクララ・ゼトキンの生まれた年であり、彼女へのオマージュではないかという穿った説もあります。

Archives du feminisme
 1982年秋に発表された、この1857年説を覆すカンデルとピックの研究はフェミニズム資料センターのサイトに公開されています。
<http://www.archivesdufeminisme.fr/rubrique.php3?id_rubrique=61>

 
フェミニズム関係の資料を蒐集・保存・公開することを目的に、2000年に発足したアソシエーションが運営するこのセンターは、アンジェ大学図書館に置かれ、パリのマルグリット・デュラン図書館と連携して、蔵書の充実に努めています。大部のコレクションは主としてアンジェに保存されており、そのなかには人民戦線内閣で初の女性副大臣になったセシール・ブランシュヴィクの寄贈コレクションをはじめ、フランス女性全国評議会(1901年創設)の資料など貴重な文献が含まれています。
 また、現存する女性解放に関する文献をほぼ網羅した案内書も出版しています。
 Guide des sources de lhistoire du feminisme, sous la dir. de Christine Bard, Annie Metz, Valerie Neveu, Presses universitaires de Rennes, coll. Archives du feminisme, 2006





資料部だより

no.9

2007. 1.8.


シモーヌ・ド・ボーヴォワール(1908-1986)関連情報
 
昨2006年はボーヴォワール没後20周年に当たり、日仏女性研究学会でも4月と11月に記念行事を行ないました(※1)。本号では、ネットでアクセスできる情報を中心に紹介したいと思います。

ボーヴォワール関連の映像
● INA(仏国立視聴覚研究所)がアーカイブテレビ番組10 万本のオンライン提供をしています.これらの番組は、無料もしくは数ユーロで視聴できます。ボーヴォワール関連のものは長短あわせて62本あります。
<http://www.ina.fr/archivespourtous/index.php?full=Simone+de+Beauvoir&action=ft>
例えば、ボーヴォワールの逝去を伝えるA2の番組DECES Simone de Beauvoir(1986.4.14放送、44分)は無料で視聴できます。11月の記念行事で上映したジョゼ・ダイヤンとマルカ・リボウスカの Simone de Beauvoir(※2)もFR3の番組Temoins(1984.1.15放送、58分)のバージョンをレンタル(48時間)1.50ユーロ、購入4.00ユーロで視聴できます。一見冷徹な知識人のイメージの裏に、生きることを愛したボーヴォワールの楽天的で親しみ深い人柄が偲ばれます。

(※1)11月10日の講演、Le Deuxieme sexe : une fable mondiale (par Christine Faure) は、
『女性空間』24号に原文と翻訳を全文掲載の予定。
(※2)Simone de Beauvoir, un film de Josee Dayan et Malka Ribowska, Gallimard, 1979
『ボーヴォワール、自身を語る』(朝吹三吉、朝吹登水子訳)、人文書院、1980

● ケベックのテレビ局制作のSimone de Beauvoir: tout un h屍itage...(2002.3.10放送、53分)も次のアドレスで無料で視聴できます。マリ=ブランシュ・タオンら4人のカナダ人研究者による非常に充実した内容の座談会です。
<http://telequebec.tv/sites/idees/archive.asp>
 この番組にはかなり長い解説(写真入り)も付されています。
<http://telequebec.tv/sites/idees/archives/20020310/index.asp>

ボーヴォワール関連の文献
● ボーヴォワールの作品やボーヴォワールの研究書については、マルグリット・デュラン図書館(パリ)の蔵書をリストアップした次のページが便利です。ただし、このリストは1999年の『第二の性』出版50周年のために作成されたものですので、新しいものは含まれていません。
<http://www.penelopes.org/archives/pages/sdb/Referenc/mdfond.htm>

● 以下に、このリスト以降の主な文献を補足しておきます。(網羅的なものではないことをお断りいたします。)
− CHAPERON Sylvie, Les annees Beauvoir, Fayard, 2000
− DELPHY Christine, CHAPERON Sylvie dir., Cinquantenaire du Deuxieme sexe, Syllepse, 2002.
− GALSTER Ingrid dir., Le Deuxieme sexe de Simone de Beauvoir, Presses de l'Universite de Paris Sorbonne, 2004
− GALSTER Ingrid dir., Simone de Beauvoir : Le Deuxieme sexe, le livre fondateur du feminisme moderne en situation, Ed.Honor Champion, 2004
− GOTHLIN Eva, Sexe et existence. La philosophie de Simone de Beauvoir (traduit de l'anglais par KAIL Michel et PLOUX Marie), Ed. Michalon, 2001
− KAIL Michel, Simone de Beauvoir philosophe, PUF (coll. philosophies), 2006
− MONTEIL Claudine, Les amants de la libert. L'aventure de Jean-Paul Sartre et Simone de Beauvoir dans le siecle, Editions no1, 1999
− RETIF Francaise, Simone de Beauvoir, L'autre en miroir, L'Harmattan, 1998
− RODGERS Catherine, Le Deuxieme sexe de Simone de Beauvoir, un heritage admire et conteste, L'Harmattan, 1998
− ROWLEY Hazel, Tete-a-tete, Beauvoir et Sartre, un pacte dユamour (traduit de lユanglais par DEMARTY Pierre), Grasset, 2006
− CODERRE Cecile et TAHON Marie-Blanche, dir., Le Deuxieme sexe, une relecture en trois temps, 1949-1971-1999, Les ed. du remue-menage, 2001
− BONAL Gerard et RIBOWSKA Malka, Simone de Beauvoir, Seuil (coll. Jazz Editions), 2001 [写真集]

● 他に、Les Temps modernesの次の号にもボーヴォワール関連の特集があります。
− No 619, Juin - juillet 2002、特集“Presences de Simone de Beauvoirモ
− No 624, Mai - Juin - juillet 2003
KAIL Michel, Simone de Beauvoir, philosophe politique
LE DOEUFF Michele, Pour une critique amicale et transatlantique du Deuxieme Sexe

● アメリカに本部のあるSimone de Beauvoir Societyのサイトも紹介しておきます。
<http://simonedebeauvoir.free.fr/index_fr.htm>
 昨年9月には、この学会の主催で、没後20周年記念のシンポジウムがローマで開催されました。また、1983年以来、毎年1号、機関誌 Simone de Beauvoir Studiesが発刊されており、次のアドレスで目次を見ることができます。
<http://simonedebeauvoir.free.fr/studies.htm>

● 最後に日本語で読める最近の文献を2册。
− トリル・モイ『ボーヴォワール、女性知識人の誕生』(英語から翻訳、大橋洋一+片山亜紀+近藤弘幸+坂本美枝+坂野由紀子+森岡実穂+和田唯)、平凡社、2003
− クローディーヌ・セール=モンテーユ『世紀の恋人、ボーヴォワールとサルトル』(仏語から翻訳、門田眞知子+南知子)、藤原書店、2005

新潮文庫『決定版 第二の性』(全3巻)、2001もまだ在庫がありますので、是非お読みください。                       



資料部だより

no.8

2006. 8.8.



 雇用機会均等法(日本)の改正と男性へのセクシュアル・ハラスメント
 
雇用機会均等法が改正されて(6月21日公布)、2007年4月1日から「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律」が施行される。今回の改正では、限定的とはいえ「間接差別」の禁止、妊娠中や産後1年未満の女性の解雇の原則無効、ポジティブ・アクションの推進など、大きな進展があった。また、性に基づく差別の対象が「女性労働者」から「労働者」に拡大され、男性に対する差別も禁止される。1985年に雇用機会均等法が制定されたのは、国連・女性差別撤廃条約(1979年採択)の批准に際しての法整備の一環であった。20年を経てもなお、性差別の対象は一般には女性であるという現実をどう考えるのか、疑問に思わないでもない。もっとも、これにより、1997年の改正で導入されたセクシュアル・ハラスメントが男性にも適用されるなど、性差別問題への男性の共感を得るのにプラスになるかもしれない。なお、これまでセクシュアル・ハラスメント防止に関して事業主に求められていた雇用管理上必要な「配慮」は、相談窓口を設置するなど具体的な体制の整備その他の雇用管理上必要な「措置を講ずる」義務となる。是正指導に応じない場合は企業名公表の対象にもなる。
● 詳しくは、厚生労働省のサイトを参照されたい。新旧対照条文および改正のポイントを解説したパンフレットも掲載されている。
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/kaiseidanjo/index.html

 ところで国家公務員については、人事院規則10-10(1997年4月1日から実施)で、すでに男性に対するセクシュアル・ハラスメントも対象になっていたことを、不明にも、この記事を書いていて知った。均等法と対比すると、他にも以下の点が違っている。
均等法の指針では「性的な言動」とはセクシュアルなことに限定され、性差別的な言動は含まれないのに対して、人事院の指針では、例えば「男の子、女の子」「おじさん、おばさん」などの人格を認めないような呼び方、女性へのお茶くみ・掃除・私用の強要なども性別に基づく差別として認めている。
均等法の指針では「職場の範囲」を職場内に限定しているのに対して、人事院の指針では「職場の人間関係がそのまま持続する歓迎会の酒席のような場などのアフター5」も含めている。
「行政サービスの相手方など職員がその職務に従事する際に接することとなる職員以外の者」にも注意を払うよう求めている。
●人事院規則10-10および関連の指針は次のサイトで参照できる。
http://www.campus.ne.jp/~labor/wwwsiryou/messages/56.html

 フランスでは、セクシュアル・ハラスメントは社会近代化法(2002年1月17日法)の第2編第4章「職場での精神的ハラスメントに対する闘い」の179条で定められており、対象は男女の給与生活者 salarieである。公務員権利義務法(1983年7月13日法)も私企業と同じ原則に即している。詳しくは『女性空間』20号の「特に女性に関わる法律」、セクシュアル・ハラスメントの項(林瑞枝)を参照されたい。 
 なお、法令について検索したいとき、日本の場合は
●法令データ提供システムhttp://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi
がある。条件指定画面の法令用語検索で「セクシュアル・ハラスメント」と入力すると上記の人事院規則10-10が出てくる(セクシャルでは出ない)。現行の均等法21条は「性的な言動」と入力しないと出ない。このサイトは更新間隔も2〜3ヶ月と長く、今回の改正法はまだ掲載されていない。
● フランスの場合、Legifranceが便利。 http://www.legifrance.gouv.fr/
このサイトは毎日更新されるだけでなく、Acces thematiqueから、例えばsexuelと入力するだけでも、harcelement sexuelに関するすべての条文(刑法222-33、労働法L.122-46、公務員法6条-3)が出てくる。
● 他に、次のページも参考になる。http://www.harcelement.org/article2.html

 EUでセクシュアル・ハラスメントの規定が導入されたのは2002年9月の「改正・雇用職業における均等待遇原則に関する指令」(200273/CE)においてである。この指令は「雇用、職業訓練および昇進へのアクセスならびに労働条件についての男女均等待遇原則の実施に関する指令」(76/207/CEE)を全面的に改正したもので、加盟国内の法制度への導入義務の最終期限は2005年10月5日である。
● この指令はJ.O. des CE 269 du 05 oct.2002, p.15-20に掲載されているので、上記LegifranceからJournal officiel de l'Union europeenneに入り、次のアドレスで参照できる。   http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/site/fr/oj/2002/l_269/l_26920021005fr00150020.pdf
● なお、この指令を始め、EUの男女均等関連の基本指令について知るには、次のページ(日本語)も役に立つ。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/kyoudousankaku.html

 EUでもセクシュアル・ハラスメントの対象については、人 personneと表現されている。また、性別に基づくハラスメントとセクシュアル・ハラスメントの両方が規定されている点など、日本の人事院規則と似ている。
ハラスメント:人の性別に関連した望まれざる行為が、人の尊厳を侵害するとともに、脅迫的、敵対的、冒涜的、屈辱的または攻撃的な環境を作り出す目的あるいは結果を伴って生じる状況(第2条第2項−3)
セクシュアル・ハラスメント:身体的、言語的または非言語的であれ、セクシュアルな意味をもつ望まれざる行為が、人の尊厳を侵害するとともに、とりわけ脅迫的、敵対的、冒涜的、屈辱的または攻撃的な環境を作り出す目的あるいは結果を伴って生じる状況(第2条第2項−4)
 このように、本指令でいう意味でのハラスメントおよびセクシュアル・ハラスメントは性別に基づく差別と見なされ、禁止される(第2条第3項)。
 また、この指令は改正前の76/207/CEEに代わり、1997年の「性差別訴訟における挙証責任に関する指令」(97/80/CE)の適用範囲に入るので、ハラスメントおよびセクシャル・ハラスメントに関する訴訟においても被告に挙証責任が求められることになる。


資料部だより

no.7

2006. 5. 20

フランスの子育て支援政策
フランスの出生率は1994年に1.68まで下ったが、その後は徐々に回復して、2005年には1.94に達し、EUの中でもアイルランドに次いで上位を占めている。しかも、女性労働力率も03年の調査で63%に達し、25〜49歳に限ると80%を超えている。出生率と女性労働力率の向上は相容れないどころか、統計的には正比例さえしている。
こうした状況を踏まえて、日本でも最近、少子化対策の観点からフランスの家族政策への関心が高まっている。今号では、日本語で読めるサイトも交えて紹介します。

●『平成17年版 少子化社会白書』、内閣府
  http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2005/17WebHonpen/index.html

●『子ども・子育て応援プラン』厚生労働省(2005.11.30)
 → http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/jisedai22/pdf/data.pdf

後者は、昨05年の家族会議(※1)で採択され、今年7月から新たに設けられる育児休業手当、COLCA(※2)についても、いち早く取り上げている。すなわち、第三子以降の場合、育児休業の期間 (最長3年)を1年に短縮することで、従来の就業自由選択補足手当CLCA(※3)の約5割増しの手当 (月750ユーロ)を受け取れるという選択肢の導入である。 
他に、この家族会議では、3人以上の子どものいる家族への大家族カード(従来の鉄道運賃、映画、美術館などに加えて、家電製品の購入、ホテルにも拡大)の支給や、2001年から導入されている看護休暇中の親付き添い手当APPの改革(※4)などが提案された。

(※1) Conference nationale de la famille. ミッテラン大統領の提案により1982年に第一回会議が開催されて以来、毎年開催されてきたが、1994年の家族に関する法により定期開催(年1回、首相が主宰)が義務付けられた。関連省庁の大臣、国民議会および上院の専門委員会委員長、全国家族協会連合UNAF、社会保障制度機関、労使団体、市町村連合会長など家族問題の主要な関係者が一堂に会して、家族政策の方針を協議する場になっている。2005年の家族会議は、1)家族が家庭生活と職業生活をよりよく両立するための支援策、2)子どもがインターネットを利用しやすい環境の整備、という2つのテーマをめぐって開催された。
(※2) COLCA=Complement optionnel de libre choix d'activite
(※3) CLCA=Complement de libre choix d'activite 2004年1月1日以降に生まれた3歳未満の子どもを対象とする乳幼児迎え入れ手当PAJE=Prestation d'accueil du jeune enfantの一つで、父母のどちらかが子育てのために職業活動を一時停止(または縮小)する選択をした場合に、子どもが3歳になるまで毎月最高521.85ユーロが支給される(2004年1月1日より前に生まれた子どもには従来の育児休業手当APEが適用される)。いずれの場合も、結婚か非婚かを問わない。また、養子(16ヵ月未満の子)にも適用される。
育児休業制度は、100人以上の従業員のいる会社に義務づけられており、復職も保証されている。適用対象は1985年の創設当初は第三子からであったが、1994年7月から第二子に、2004年1月からは第一子まで拡大された。
(※4)06年5月からAJPP=Allocation journaliere de presence parentaleに移行。日額38.91ユーロ(単親には46.23ユーロ)の手当が最高310日分まで支給される。

フランスの家族政策が子育て支援に重点をおいてきたことは否めない。公的な家族給付制度の歴史は1938年の政令までさかのぼるが、現在は4つのカテゴリーに分類されている。家族を唯一のモデルに閉じ込めず、多様なあり方を容認していることが分かる。
1. いわゆる扶養手当で、子育て費用を補うことが目的。
 ・家族手当(第2子以降、20歳まで支給)
          子ども2人で117.14ユーロ、3人で267.21ユーロ
 ・家族補足手当(所得条件に応じて、第3子から支給)
 ・新学期手当(所得条件に応じて支給)
2. 乳幼児迎え入れ手当:上記のCLCA/COLCAの他に、次の手当が統合されている。
 出産手当 Prime a la naissance ou a l'adoption(所得制限有り)
          妊娠7ヵ月目に支給 840.96ユーロ/養子の場合は1681.91ユーロ
 基礎手当 Allocation de base(所得制限有り)
          誕生月から3歳になる前の月まで3年間168.20ユーロ
 保育方法自由選択手当 Complement de libre choix du mode de garde(所得制限有り)
          両親が保育所や保育アシスタントに子どもを預ける場合の保育費用を補助する手当で、6歳まで支給。
          (2004年1月1日より前に生まれた子どもには従来どおりAFEAMA、AGEDを適用)
3. 単親家族援助:
 単親手当(原則3歳まで、所得制限有り)
 孤児養育を対象とする家族支援手当(20歳まで)
4. 障害児・疾病児に対する援助:
 特別教育手当
 親付き添い手当

より詳しくは家族手当金庫のサイトを参照されたい。
  → http://www.caf.fr/catalogue/

●家族政策の全体像を知るためには、「資料部だより No.3」でも紹介した次のサイトが役に立つ。
  http://www.vie-publique.fr/dossier_polpublic/famille/

●日本労働研究機構欧州事務所の特別レポート vol. 5「フランスの家族政策、両立支援政策及び出生率上昇の背景と要因」は、このサイトの情報を豊富に活用している。
 → A HREF="http://www.jil.go.jp/mm/kaigai/pdf/20030305a.pdf

●意外なところで、在日仏大使館の次のページ(日本語)にも、コンパクトにまとめられている。
 → A HREF="http://www.ambafrance-jp.org/article.php3?id_article=478

こうした家族政策に当てられるコストの対GDP比率は約3%で、EU諸国のなかで突出しているわけではない(北欧3国とルクセンブルクは約3.5%、ドイツとオーストリアも約3%、日本0.6%)。フランスの特徴は財政面もさることながら(運営は家族手当全国金庫CNAFに委託され、各地の家族手当金庫CAFが支給する)、家族政策を担当する公的組織が整備されていること、UNAFのような発言力の大きい家族団体が存在することにあると言われている。
------------------
●次の文献も具体例が豊富で参考になる。
中島さおり『パリの女は産んでいる』、ポプラ社、2005 



資料部だより

no.6

2005. 11. 11

EU憲法条約と男女平等について (2)
5月29日のEU憲法条約批准のための国民投票ではフェミニストたちもOuiとNonに分裂しました。前号ではOuiの立場から、この憲法がEUの男女平等政策を推進するものであることをまとめましたが、今号ではNonの立場から見てみたいと思います。
● 反対派の中心になったのは、2004年10月に発表された「200人のアピール」(クリスティーヌ・デルフィもその1人)に端を発し、2005年2月に結成された「Nonのためのフェミニスト連絡会議」で、国民投票の後も「フェミニストによるもう一つのヨーロッパ」建設のための活動を続けています。
 → <http://www.appeldes200.net/article.php3?id_article=1126>
● 「連絡会議」に参加した主なグループ名は、Le Mondeの記事(19/mai/05)、"Dans le traite, la place de l'IVG et de la laicite divise les feministes", par Isabelle Mandraudにも載っていますが、そのうちのGenre et Mondialisation d'AttacとLes Penelopesのサイトから、関連記事をピックアップしておきます。
 "Egalite hommes/femmes dans la Constitution europeenne : un affichage
mensonger", par Christiane Marty
  < http://www.france.attac.org/a4043>
 "Je suis femme, je suis feministe. Je vote "Non" au projet de constitution
  europeenne", par Marie-Victoire Louis
 → < http://www.penelopes.org/xarticle.php3?id_article=6109>
● 反対派の理由は大きく三つに分けられます。第一はEU憲法の自由競争や市場メカニズムの偏重、言い換えれば経済のグローバル化に対する警戒ですが、男性よりも不安定な状況に置かれている女性がまずその犠牲になる危険があります。実際、パートタイマーの81%は女性であり、失業率も男性より3ポイント上回る13%に達しているのです。
 第二はライシテ[政教分離]の問題。EU憲法ではライシテという言葉は一度も使われておらず、前文での「宗教的継承財産」への言及はフランス憲法第1条に定められているライシテ原則と相容れません。特に70の「この権利[宗教の自由]は、宗教や信条を個人としてまた集団として、礼拝、教育、信仰実践、儀式などによって、公然とあるいは私的に表明する自由を含んでいる...」という規定は、フランスの公立小中高校でのスカーフなどを禁じた「宗教シンボル禁止法」が欧州裁判所に提訴される可能性を含んでいます。スカーフ問題についてもフェミニストの意見は割れていますが、スカーフによって象徴される家父長制的な伝統が女性の権利を抑圧する側面を否定することはできません。
 そして第三は、妊娠中絶の権利の問題です。
● 元女性の権利大臣イヴェット・ルーディが Non!の意思表示をしたのは、意外でした。1983年以来、欧州憲法制定をフランスの使命として掲げていたミッテラン前大統領の側近であり、彼女自身欧州議会議員として、女性の権利委員会委員長を務めたこともあるルーディですから、EUが男女平等のために果した功績は十分知っているはずです。
彼女の反対声明 "Cette fois ce sera non!" は、社会党の反対派のサイトに掲載されていましたが、このサイトそのものがなくなってしまいました。検索した結果、今のところ次のサイトに収録されています。
  <http://www.franceradicale.org/pageactualite3.htm>
彼女の反対理由は、フェミニストとしてよりも社会主義者としてのもので、主として上にあげた第一の理由によるものです。また、憲法条約と欧州議会の関係、憲法草案作成者は誰に任命されたかといった民主主義の本質にかかわる疑問や、憲法条約の内容は不十分であるにも拘わらず、改正は全会一致でなければならず、事実上不可能であるといった問題も提起しています。さらに、フランス流のライシテの擁護もこの憲法条約に反対する理由としてあげられています。
社会党内の賛否両論については、国会図書館の「外国の立法」no.223に掲載の福井千衣「欧州憲法条約をめぐるフランス社会党内の賛否両論」も参考になります。
 → <http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legislation2005.html>
● 最後に、チュニジア出身の弁護士G・アリミの反対意見も見ておきたいと思います。
彼女もまた、EU憲法は女性に何も新たにもたらさないと言っています。()
 ・"Un piege encore plus enorme et redoutable pour les femmes" (l'Humanite, 24/mai/05)
  → <http://www.humanite.fr/journal/2005-05-24/2005-05-24-634934>

 なおl'HumaniteのEU憲法条約関係の記事は、次のアドレスにまとめられています。
  <http://www.humanite.fr/journal/dossiers/62/debatsurlaconstitution
europeenne/>
 ・" Le traite constitutionnel, une menace pour les femmes" (Le Monde, 19/mai/05)
G・アリミは、1970年代初めの第二波フェミニズムの中心課題であった中絶合法化運動のリーダーの一人であり、有名な「343人宣言」の後、署名者を法的に保護する目的でChoisirを結成しましたが、このアソシエーションは現在も活動を続けています。避妊および中絶の権利は女性にとって最重要の基本的人権であり、それが脅かされることを何としても防ごうとすること、そしてヨーロッパのすべての女性にこの権利を広げたいと願うことは、当然であると理解できます。
問題になっているのは、62、第1項の「人は皆、生命への権利を有する」という規定です。アリミはこれに「すべての女性は生命を与えることを選択する権利がある」という条文を付け加えることを提案しています。どこまで胎児の生命権を認めるかは大きな課題ですが、EU加盟25ヵ国のなかには、中絶の権利が認められていない国がまだ5ヵ国(アイルランド、ポーランド、ポルトガル、キプロス、マルタ)もあるのです。
中絶とEU憲法条約については、次の記事も参考になります。
 ・" Le traite en 40 questions : 2. Le droit a l'avortement est-il menace?", par Henri de Bresson (Le Monde, 12/avril/05)
------------------
() EUの女性政策については、以下の文献があります。
柴山恵美子、中曽根佐織『EUの男女均等政策』、日本評論社、2004
林瑞枝他「ヨーロッパ統合とジェンダー」『時の法令』no.1520〜no.1574 の偶数号に掲載


                          

資料部だより

no.5

2005. 8. 7

 
 今号では、EU憲法条約と男女平等の問題について取り上げます。
 ご存知のように、5月29日のEU憲法条約批准のための国民投票で、フランス人の55%がNonという答えを出しました。10人に7人という投票率の高さ、そしてその結果としてのNonには複雑な要因が含まれていることはもちろんですが、世論調査機関TNS sofresの分析によると、EU憲法そのものよりも、グローバル化やEU統合のなかで深刻になっている社会格差、国内政治に対する不満が大きく反映されたようです。
 たとえばNonと投票した人を職業別に見ますと工場労働者の81%に対して管理職・知識層は38%、Nonの理由では「失業が増える」46%、「現状にうんざりしている気持ちの表明」40%となっています。支持政党別では、共産党と極右FN(国民戦線)のそれぞれ95%と96%、緑の党などのエコロジスト64%、社会党59%、与党UDF/UMP(フランス民主主義連合/民衆運動連合)24%がNonに投票しています。
詳しくは次のサイトをご覧ください。
 <http://www.tns-sofres.com/etudes/pol/290505_referendum_r.htm>
 <http://www.tns-sofres.com/etudes/pol/290505_teinturier.htm>

 今回の国民投票では社会党がOuiとNonに分裂しましたが、女性では元女性の権利大臣のイヴェット・ルーディやショワジールのジゼル・アリミが反対派でした。(反対派の意見については、紙面の関係上次号で扱います。)
 ここでは、EU憲法そのものについて知るためのサイト紹介から始めます。
 <http://europa.eu.int/constitution/index_fr.htm>
 とはいえ、前文に続く4部448条(および36の議定書と50の追加宣言)からなるEU憲法の全体を読むのは容易ではありません。(駐日欧州委員会代表部から出ている広報紙『ヨーロッパ』が241号、2005年春号から6回シリーズの予定で、その骨子を連載中。)
 特に女性の問題に関わっている条文はどれなのかを知るためには、欧州委員会の次のサイトがあります。
<http://europa.eu.int/comm/employment_social/gender_equality/legislation/ectreaty_fr.html#jud>
 また、欧州女性ロビーの次の記事も比較的コンパクトで参考になります。
<http://www.womenlobby.org/Document.asp?DocID=873&tod=161821>
また、緑の党のアラン・リピエッツのサイトに掲載されているフランシ−ヌ・コントによる「Nonに投票するのはフェミニストにとって過ちである」は、賛成の立場からですが、問題点の指摘も忘れずに、公平に解説しています。
<http://lipietz.net/article.php3?id_article=1503>
 
 これらを参考に、EU憲法条約と男女平等について少しまとめてみたいと思います。
 ●この憲法は、男女平等の領域における既存の規定をすべて維持しており、後退はない。
 (ちなみにこの憲法では、男・女はすべて女・男の順で表記されています。)
男女平等をEUの目的 objectifの一つとして-3条に明記。[cf.アムステルダム条約第2条、]
この目的がお題目に止まらないように、「EUは第。部(「EUの政策および機能」)において求められているすべての行動のためにあらゆる不平等を排除し、男女平等を促進するべく努めること」が。-116条に明記されている。[cf.アムステルダム条約 第3条2項]
・。-124条[第。部第2編「非差別および市民権」]には「憲法の他の条項を侵害することなく、憲法の適用の範囲内において、欧州法あるいは基本法は、性、人種または民族的出身、宗教または信条、障害、年齢あるいは性的志向に基づくあらゆる差別と闘うために必要な措置を定めることができる。EU理事会は欧州議会の賛同を得た後、満場一致でこの法を採択しなければならない。」ことが明記されている。[cf.アムステルダム条約 第13条]
男女の賃金の平等原則に関する規定[cf.アムステルダム条約 第141条]は、第3項の文言が「欧州法または枠組法は、同一労働または同一価値に対する賃金の平等原則を含め、雇用および職業の問題における男女の機会均等および均等待遇原則の適用を保障するための措置を定めなければならない。この法は、経済社会委員会との協議後に採択されねばならない」と若干変更されているだけで、すべて。-214条に組み込まれている。
 ●男女平等に関する改良点
・-2条において、平等がEUの価値 valeurの一つとして掲げられ、さらに男女平等が多元主義、非差別、寛容、正義、連帯と並んで、EU加盟国の社会モデルの特徴として明示されている。EUの価値は、とりわけ、EUへの加盟[-58条]あるいは一時的資格停止[-59条]の基準として参照される。
第。部第1編「一般適用条項」、。-118条において、「第。部で求められている政策および行動の定義および実現のために、性、人種または民族的出身、宗教または信条、障害、年齢あるいは性的志向に基づくあらゆる差別のために闘うべく努めること」が規定されている。これは上記。-116条とともに、EUの政策一般に適用されるという意味で、男女平等政策のメインストリーミング(主流化)であると言える。
・-9条によって、従来は加盟国間の政治的宣言であった「EU基本権憲章」が法的拘束力をもつ基本権として第部に挿入された。とりわけ、第3編「平等」の-81条[非差別]、-83条[男女平等]は重要である。
 -83条では、「男女平等は、雇用、労働、賃金に関する領域を含むすべての領域において保障されねばならない。/ 平等原則は、過少代表の性sexe sous-repr市ent獅に有利となる特別の利益を規定する措置を維持あるいは採択することを妨げない」としてアファーマティブ・アクションを認めている。
・。-267条では、欧州法または枠組法によって、人身売買、特に女性や子どもの売買に対して闘うための措置を定めることが規定されている。
さらに。-271条では、国境を越えた犯罪を取り締まるための枠組法について規定し、女性や子どもの性的搾取はこれらの犯罪に当たることを明記。



 

資料部だより

no.4

2005. 5. 16

 
 今号では、「職業名の女性化 feminisation」についての情報を集めてみました。といっても、十分なものではありませんので、皆様からも補足いただければ幸いです。その他、「資料部」へのご要望・ご意見もお待ちしています。

 きっかけは、ルモンド紙に掲載された「私たちは女性作家であることに誇りをもっているEcrivaines et fieres de l'etre」という記事(05.2.16)でした。フロランス・モンレノ、ブノワット・グルー、アニー・エルノー、マリーズ・ウォランスキーという錚々たる「女性作家」が共同署名したこの記事は、月刊誌『読む Lire』の2月号に掲載されたフレデリック・ベグブデールの「僕の初めての反動記事」というコラムへの反論ですが、ベグブデールは、ecrivaineやauteureといった語には、「身体的に」我慢できず、ジンマシンが出るそうで、こうした「下品な」語が流通し、ジャーナリストや批評家までもがケベックから輸入された偽フェミニズムの罠に陥っていると嘆いているというのです。これに対してモンレノたちは「目を覚ませ」と呼びかけ、いまはもう、大臣 ministreや、理工科学校生 polytechnicien、アカデミ−・フランセ−ズ会員academicienに女性形のなかった20世紀ではない、いわんや、Camille Claudelの両親が娘に男性形しかない彫刻家 sculpteurになることを禁じた19世紀でもなく、残rivaineは、女性主権者 souveraineや女性城主 chatelaineと同様に、ケベック、スイス、ベルギーなど、良識あるフランコフォヌが共有する正統なフランス語であると主張しています。
 女性に理工科学校の受験が許可されたのは1972年、マルグリット・ユルスナールが最初のacademicienneになったのは1980年。そして、1997年のジョスパン内閣の女性大臣たちが自らをMadame la minitreと称するようになったのは、まだ記憶に新しい出来事です。
 ところで、このルモンド紙の記事は、「私たちはいまでもフェミニスト」というグループ <http://encorefeministes.free.fr/> の活動の一環として書かれたもので、2001年の3月8日(国際女性デー)に誕生したこのグループは、フェミニストであり続ける 20の理由をあげて、賛同署名を募りました。33ヵ国2070名の署名者のなかには、ミシェル・ペロー、フランソワーズ・エリティエ、ジュヌヴィエーブ・フレス、イヴェット・ルーディ、そして・・・なんとフレデリック・ベグブデールの名前もあるではありませんか!
 これはただの「40歳にして老いぼれた不平家」ではないかもしれません。彼のコラムも読まなければ片手おちでしょう。幸い、『Lire』のサイトに全文が掲載されています。 <http://www.lire.fr/chronique.asp/idC=48007/idR=142/idG >
 彼は、女性小説家romanciereには拒否反応がないようですが、女性教授 professeureや女性大臣ministresseは駄目なようです。なぜministreではなく、あまり使われていないministresseを問題にするのかは不明ですが。[『小学館ロベール(1988)』のfeminisation の項にも、例としてministresseがあげられています。]
 彼によれば、ecrivaineは蔑称であり、ヴァージニア・ウルフやコレットをecrivainesではなく、偉大な作家 de grands ecrivainsと見なすことこそ、男女平等のために闘う最上の方法であるというのです。日本語で女流作家とか、わざわざ女性知事という感じなのかもしれません。
 しかし、1984年、女性権利大臣イヴェット・ルーディによって構成された「職業名の女性化に関する委員会」の委員長も務めたブノワット・グルーにしてみれば、黙っているわけにはいかないコラムであったことも理解できます。
 ちなみにボーヴォワールは、『第二の性』で、「どんな女も、自分の性を無視して自分を位置づけようとすれば、自己欺瞞に陥るのは明らかだ」と記して、男性と同列に並べてもらいたくて、女性作家femmes ecrivainsだけを対象にした写真シリーズに掲載されるのを拒否した女性に言及していますが、ecrivaineという語についてはどう考えたか、興味のあるところです。
 ==================================
<http://www.ciep.fr/chroniq/femi/femi.htm>
 Madame la Ministre : La femnisation des noms en 10 questions (1998) [pdf] を
ダウンロードできます。論争の起源、1986年のローラン・ファビウス首相の通達に始まるフランス政府やアカデミ−・フランセ−ズの見解などが10項目にわたって、要領良くまとめられています。また、文献リストも役立ちます。
 なお、この他に、アカデミ−・フランセ−ズの見解、政府の通達およびそれを受けた報告書については、それぞれ次のサイトを参照ください。
 <http://academie-francaise.fr/actualites/feminisation.asp>
<http://www.culture.gouv.fr/culture/dglf/cogeter/feminisation/accueil-feminisation.html>

<http://atilf.atilf.fr/gsouvay/scripts/feminin.exe>
l'InaLFのBernard CerquigliniらがまとめたFemme, j'ecris ton nom...., La documentation francaise, 1999 [pdf]をダウンロードできます。巻末には女性形のリストGuide d'aide a la feminisation des noms de metiers, titres, grades et fonctionsがあります。なお、女性形の規則Les regles de feminisationの章は次のサイトでも参照できます。
<http://atilf.atilf.fr/gsouvay/scripts/feminin.exe?REGLE=S>

他に、次のサイトも参考になりました。
 <http://www.langue-fr.net/d/feminisation/feminisation.htm>
 ==================================
その他の文献:比較的最近のものをピックアップしておきます。
Edwige KHAZNADAR, Le Feminin a la francaise − Academisme et langue francaise, illustrations d'Alf, L'Harmattan, Paris, 2002
La feminisation des noms de metiers en francais et dans d'autres langues, (sous la dir. d' Anne-Marie HOUDEBINE-GRAVAUD), Paris, L'Harmattan, 1998
 この本をめぐっての"Controverses" [評者4人と著者の回答], Travail, genre, societes, no. 3, L'Harmattan, 2000, p.169-189
Nouvelles questions feministes, vol. 20, no. 1 [特集Sexisme et linguistique], 1999


資料部だより

no.3

2004. 12. 24

 今号では、フランス政府の情報サイトについてお知らせいたします。
                
・女性の権利・平等局(Sdfe)は、すでに皆様ご存知だと思います。「情報ファイル No.73」でも取り上げられていますので、そちらもご覧ください。<http://www.social.gouv.fr/femmes/>

・首相府のサイト <http://www.premier-ministre.gouv.fr/>
女性に関する情報が意外と豊富なのが、首相府のサイトです。トップページの上の帯のGOUVERNEMENTから入って、Ameline Nicole (パリテと職業平等担当相)をクリックすると、関係の最新ニュースが掲載されています。この記事を書いている11月24日のトップニュースは、Violences conjugales : 10 mesures pour l'autonomie des femmesです。
 また、左側のテーマ別分類 (Education、Emploi、Europeなど16の項目) の欄から、たとえばSoci師t獅を選びますと、さらに Citoyennete、Discrimination、Droits de l'homme、Egalite hommes femmes、Famille、Handicapes、Immigration、Jeunes、Personnes ageesなどの小項目が現われ、それぞれの項目に関する最新ニュースを見ることができます。
 このテーマ別分類欄の下方にあるARCHIVE 1996-2004も便利です。1996年のA.Jupp肢以後の歴代の首相府のサイトがすべて保存されていますが、試みに2002年の第三次Jospin内閣をクリックしますと、左側に項目が現われますので、そのなかのImages de la Franceを選択してみてください。60項目にわたってフランスのさまざまな側面が、それぞれの専門家によって紹介されています。そのうちの5項目をピックアップしてみます。
La laicite, par Jean Bauberot
Le Pacs, par Frederic Martel
La parite hommes/femmes en politique, par Janine Mossuz-Lavau
Le travail des femmes, par Dominique Meda
La politique de la famille (fiche d'information)

・パリテ監視委員会
<http://www.observatoire-parite.gouv.fr/>
1995年につくられたパリテ監視委員会も首相付きの機関です。2002年に改組され、現在の委員長は国会議員のMarie-Jo. Zizermannで、各界の有識者からなる32人のメンバーとともに男女間の平等のために働いています。(「情報ファイル No.77」にZizermannのインタビューが掲載されています。)
ページの上の帯から、La Parite : enjeux et reformesを選びますと、パリテについての統計資料や委員会の勧告/報告書のリストが掲載されており、これらはすべてサイト上で読めます。他にも、パリテについての詳細な文献リストはもちろん、フェミニズムの歴史やヨーロッパの女性運動に関する(1999年までの)基本文献も紹介されています。(最新の文献の検索は、冒頭に記したSdfeのサイトのLes nouveautesが便利です。トップページのLe centre de documentation du SdfeからLes Nouveautesをクリックしてください。)
 政府関係の情報や出版物を検索したいときは、La Documentation francaise <www.ladocfrancaise.gouv.fr/>が提供している次の二つのサイトも便利です。
 
・Vie publique .fr
<http://www.vie-publique.fr/ >
トップページ左側の見出しから、Dossiers Politiques publiquesをクリックしますと、22項目の政策項目が示されますので、そのなかから、たとえばLa poltique de la familleをクリックしますと、左側に家族政策に関する新たな見出しが出てきます。試しにLa statut civilを選びますと、今度は右側に、Mariage et divorce、Le Pacs、Le Cocubinage、La parentalite、L'acces aux origines、Le nom patronymique、L'adoptionといった新たな目次が出てきます。これらが総合されてフランスの家族政策についてのほぼ完璧な資料が構成されています。
また、トップページの右側にあるテーマ(44項目)のなかから、Femmesを選びますと、サイト上で読める資料や報告書のリストと関連サイトのアドレスが出ています。スペースの関係上、それぞれ一つだけあげておきます。
Dossiers : Nommer et compter les violences envers les femmes
Rapport : Femmes - hommes, les inegalites qui subsistent
    (これは、Inseeの出版物Insee premiereのno.834ですが、他の号にも
関心のある方は、Inseeのサイト <http://www.insee.fr/> のホ
    ームから、Publicationsをクリックして入れます。)

・Service-public .fr
<http://www. service-public.fr/ >
こちらは、上記のサイトよりも実用的な内容になっていて、特に、トップページの右側にあるActualitesには、市民への最新のお知らせが掲載されているのが特徴です。これらのニュースはどんどん更新されますが、Actualitesの欄の下方にあるToute l'actualite des particuliersをクリックしますと、最近1ヶ月分が保存されています。現時点のトップニュース A la uneは、2005年1月1日から施行される子どもの姓に関するもので、実用的な説明(*)と合わせて、右側の欄には根拠となる法律が記され、クリックするだけで法文にアクセスできるようになっています。
=================================
(*) 2005年1月1日以降に誕生する子どもは、父親の姓または母親の姓のどちらか一方、または両方(両親の姓から一つずつ、合計2つ)を受け継ぐことができます。ただし、最初の子どもに与えられた姓は、共通の両親から生まれるすべての子どもに適用されます。
2005年1月1日より前に生まれた子どもについても、2006年6月30日までに手続きすれば、適用されます。その場合、長子が2003年9月1日の時点で13歳以上の場合は、子ども本人の同意が必要になります。
また、両親が合意に達さなかった場合は、父親の姓を受け継ぎます。
 →2002年3月4日法の適用に関する2004年10月29日のデクレ
<http://www.legifrance.gouv.fr/WAspad/UnTexteDeJorf?numjo=JUSC0420812D >



資料部だより

no.2

2004. 7. 27

 記録的な暑さが続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回の「資料部だより」は、日刊紙Le Monde <http://www.lemonde.fr/> の関連会社が編集している月刊誌Le Monde diplomatique(フランス語版)を中心にお知らせします。なお、日本語版 <http://www.diplo.jp/>、英語版 <http://MondeDiplo.com/>のサイトもあります。いずれも、メールの配信登録をしておくと毎号の案内が届き、とても便利です。また、毎号1論文が『世界』(岩波書店)に上記日本語版のスタッフの翻訳で掲載されています。
 ===================================
 ご存知のようにLe Monde diplomatiqueはフランスだけでなく世界の幅広い地域のさまざまな分野の問題を扱う国際的な論説紙ですので、毎号かならず女性に関する記事が載っているというわけではありません。
 しかし、たとえば最近届いた7月号の案内メールを見ますと、目次のなかの"Violences males"(par Ignacio Ramonet)という記事が目につきます。しかも最新号では唯一、無料で読めます(最新号以外の記事は過去2年分がすべてWebで読めます)。さらに、関連記事として、5月号掲載のChristine Delphyの"Retrouver l'elan du feminisme" も紹介されています。

"Violences males":
     <http://www.monde-diplomatique.fr/2004/07/RAMONET/11299>
     ☆この論文は上記日本語版サイトに早くも掲載されています(森亮子訳)☆
"Retrouver l'elan du feminisme":
  <http://www. monde-diplomatique.fr/2004/05/DELPHY/11173>

 過去の記事を検索するためにはLe Monde diplomatiqueのサイトを開いてください <http://www.monde-diplomatique.fr/>。左上に「日付」「国名」「テーマ」別の検索がありますので、たとえば、「テーマ」をクリックして「Violence」や「Femmes」などの項目から調べることができます(この場合は時系列で新しい順に並んでいます)。また直接、調べたい項目を打ち込む方法もあります(この場合は関連度の高い順に出てきます)。ちなみにViolenceと打ち込みますと、過去の論文や書評など100本もヒットしました。そのうち3つだけ引用しておきます。

Elisabeth Kulakowska, "Brutalites sexistes dans le huis clos familial", juillet 2002
Gisele Halimi, "Le 'complot' feministe", aout 2003
  ☆『世界』2003年11月号、「情報ファイル no.78」で日本語訳が読めます☆
Marie Durousset-Tillet, Mettre fin a la violence contre les femmes. Un combat pour aujourd'hui, mai 2004
 これはAmnesty International が出した「女性への暴力」に関する『報告書』の書評ですが、ついでにその他、最近出された『報告書』のいくつかを記します。

Les violences envers les femmes en France. Une Enquete nationale, l'equipe ENVEFF, La Documentation francaise, Paris, 2002
Rapport mondial sur la violence et la sante, Organisation mondiale de la sante, Geneve, 2002
Rapport Marcovitch remis a madame Nicole Pery, secretaire d'Etat aux Droits des femmes et a la Formation professionnelle , Le systeme de la prostitution : une violence a l'encontre des femmes, 2002
Rapport Henrion, Les victimes de violencs conjugales, le role des professionnels de sante, ministere de la sante, Paris, 2001

 Le Monde diplomatiqueのサイトに戻りますと、その月の主な雑誌や催し物(Agenda)の情報も見逃せません。ちょっと覗いてみましょう。今月はChoisirが面白そうですね。

Choisir, no.90:Les femmes dans la publicite (Gisele Halimi), la parite l'epreuve d'une loi paradoxale (Mariette Sineau), George Sand etait-elle feministe?

 今月のAgendaには、めぼしいものは見当たりませんでしたが、以前に、Francoise Heritier(「資料部だより no.1」を参照)の主宰する連続セミナーが載っていて、聴きに行けないのを残念に思いました。Masculin/Feminin:la loi du genreと題して、4月から6月に6回にわたってパリの科学都市ヴィレットで開かれたものです。ところがなんと、このセミナーを聴きに行った在パリの友人から、インターネットで講演のビデオが見られるという情報をいただきました。皆様も是非ご覧になってみてください。
 Viletteのサイト <http://www.cite-sciences.fr/francais/indexFLASH.htm> から入って、Conferencesをクリックすると出てきます。
 Heritierを中心に、文化人類学、生物学、動物行動学、遺伝学、精神医学、統計学など、さまざまな分野の研究者11名が「アマゾネスの神話の由来」から「私たちの性的アイデンティティを形成するのは配偶子?、ホルモン?、社会?、家族?」「もし男女の差異が人間の思考を構成しているのだとしたら、私たちは男と女の関係性を変えることができるのだろうか」などのテーマをめぐって、熱く語っています。
===================================
定期刊行物 到着のお知らせ
  ☆予約購読を再開したCIDF infosが、 no.59 (mai 04) まで届いています☆



資料部だより

no.1(1)

2004. 3. 7

 
 日仏女性資料センターが発足して20年が経ちました。その間、情報の種類も量も大きく変化し、資料センターとしての在り方も問われています。また、日仏女性研究会の副称が加わったこともあり、必要とされる情報の性質も微妙に変化しています。
 これから掲載する「資料部だより」は、予算や場所の制約のあるなかで、資料センターとしてなにが可能かを模索する試みでもあります。皆さまからのご意見・ご要望をお待ちしています。
======================================
定期刊行物 現在、日仏会館510号室のロッカーに保管されている資料を整理しました。主な定期刊行物は以下のとおりです。ご利用になりたい方、もっと詳しい情報の必要な方は資料部にお問い合わせください。

Actes (Cahiers d'action juridique trimestriels)no.9 (1975)〜no.79/80 (1992)
Bulletin de l'ANEFno.12 (1993)〜no.28 (1998)
Cahiers du feminismeno.62 (1992)〜no.81 (1998)
CIDFno.113 (1992)〜no.190 (1998)
CIDF infono.2 (1999)〜no.42 (2002)
Flora Tristanno.2 (1982)〜no.33 (1989) 欠番あり
Cahiers du GEDISSTno.8 (1993)〜no.17 (1996) 貸出中
Lunesno.1(1997)〜no.21 (2002)
Nouvelles Questions Feministesvol.13-no.1 (1992)〜vol.20-no.3 (1999)
Paris feministesno.80 (1989)〜no.175 (1996) 欠番多数

以下に、主な女性研究誌のサイトにリンクをはっておきます。
毎号の目次を検索することができます。

CLIOhttp://clio.revues.org/
Les Cahiers du Genre (anciennement Cahiers du Gedisst)
    http://www.iresco.fr/revues/cahiers_du_genre/numeros_parus.htm
Nouvelles Questions feministes
    
http://www2.unil.ch/liege/nqf/Nnumeros.html
ProChoixhttp://www.prochoix.org/frameset/fst_revue.html
Recherches feministeshttp://www.fss.ulaval.ca/lef/Revue/
Travail, genre, societes
   
http://www.iresco.fr/revues/tgs/sommaires.htm
======================================
会員の皆さまの著作・論文などの情報をお待ちしています。保管場所の関係から、ご寄贈の受け入れには限界がありますが、情報をホームページ等に掲載していく予定です。

資料部だより

no.1(2)

2004. 4. 17

 「資料部だより no.1(1)」で紹介したTravail, genre, societe は、CNRSの研究グループ Mage[労働市場とジェンダー]が年に3回発行している雑誌です。グループのリーダーは、雇用や組合運動など、労働問題に詳しい社会学者 Margaret Maruaniで、毎号、興味深い記事が満載されています。
 10号(nov.2003)を例にしますと、まず、"Dossier" ではProstitutionに関する特集が組まれています。書評 "Critiques" では、Elisabeth Badinterの Fausse Routeがまな板にのせられています(評者は昨年11月に来日したJanine Mossuz-Lavau)。また、話題の1册をめぐる数人の論評と著者自身の反論で構成される "Controverse" も毎号の楽しみで、今回は Francoise HeritierMasculin/feminin の第巻が取り上げられています。

 Heritierは、クロード・レヴィ=ストロースの後継者として、コレージュ・ド・フランスの教授をつとめた構造主義・人類学者で、現在は「生命科学のための倫理諮問委員会」委員もつとめるなど、フランスの精神的権威として知られています。主な研究対象は親族関係、近親相姦、暴力、身体の象徴体系など。ブルキナファソ(旧オートボルタ)での主にサモ族の親族関係や男女関係についての6年におよぶ現地調査の成果が彼女の研究の土台になっているようです。
 日本では、彼女の著作の日本語訳がないせいもあり、専門家以外にはあまり知られていないのは残念です。この秋に日仏会館の招きで来日し、講演のほかに、上野千鶴子氏との対談も予定されていますので、彼女に関する主な文献をあげておきます。
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Francoise Heritier(1933-) 文献リスト

L'exercice de la parente, Seuil-Gallimard, 1981
De l'inceste, avec Boris Cyrulnik, Aldo Naouri et al., Ed. Odile Jacob, coll. "Opus", 1994
Les deux soeurs et leur mere, Ed. Odile Jacob, 1994[英訳あり]
Masculin/feminin . La pensee de la difference, Ed. Odile Jacob, 1996
De la violence, Ed. Odile Jacob, coll. "Opus", vol., 1996/vol., 1999
Masculin/feminin . Dissoudre la hierarchie, Ed. Odile Jacob, 2002

雑誌記事:
 《Entretien》, avec Julie Chupin, Le Monde de l'Education, no.282, juin 2000
 Interview in《Prostitution:peut-on l'abolir》, L'Express, 8 mars 2001
 《Privilege de la feminite et domination masculine. Entretien avec Francoise Heritier》, in L'un et l'autre sexe, Esprit, mars-avril, 2001
     
ネットで読める記事:
 Compte-rendu du Masculin/femininpar Agnes FINE, dans Clio, no.8, 1998
 《La domination masculine est encore partout》, propos recueillis par Emilie Lanez, Le Point, no.1572, 2 nov. 2002
   →日本語試訳

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