英語の音声

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音声学の本をいくつか読んで自分なりにまとめました.個々の発音だけでなく,英語のアクセント,リズム,イントネーションや,比較のために日本語の音声についてもまとめました.文字化けしているときは画像にしたこちらをご覧下さい.また声の出し方について発声の基礎をご覧下さい.(不正確な記述がありましたらご指摘下さい.)

音声

音には音質大きさamplitude),長さduration),高さpitch)という特徴がある.

音質の違いは,例えば,/ɑ/と/æ/と/ʌ/の違い.大きさと高さの違いをピアノで例えると,ピアノの右側の鍵盤をパーンと叩いたときに出る音が大きくて高い音,ピアノの左側の鍵盤をそっとおさえたときに出る音が小さくて低い音.

音声(イントネーション,声の大小,速さ,休止など)を変化させることで,同じ文がさまざまな意味を持つ.音声は,言葉や,体の動き(顔の表情や,手振りなど)と同様,コミュニケーション手段の一部分をなす.

母音と子音

アメリカ英語の母音vowel)には大体次のものがある.(rが続く場合や弱母音をさらに含めるともっと多くなる.)
/ɪ/ /ɛ/ /æ/ /ɑ/ /ʌ/ /ʊ/ /i:/ /ɑ:/ /ɒ:/ /u:/ /ɚ:/ /eɪ/ /aɪ/ /ɔɪ/ /aʊ/ /oʊ/ /ə/

例: /ɪ/と/i:/は音質が異なる.長さの違いではない.同様に/ʊ/と/u:/も音質が異なる.

例: 母音の後に子音がつかないときとつくときでは,子音がつかないときの方が母音は長く発音される.また子音がつくときでも,母音の後に有声子音がつくときと無声子音がつくときでは,有声子音がつくときの方が母音は長く発音される.例えば,feefeedfeet において,/i:/は fee が一番長く feet が一番短く発音される.

英語の子音consonant)には大体次のものがある.
/p/ /b/ /t/ /d/ /k/ /g/ /f/ /v/ /θ/ /ð/ /s/ /z/ /ʃ/ /ʒ/ /h/ /ʧ/ /ʤ/ /m/ /n/ /ŋ/ /l/ /r/ /j/ /w/

例: /p/, /t/, /k/ の後に強い母音が続くと, 破裂の後に続いて強い息の音(気音,aspiration)が聞こえる.例えば,口の前に紙片をかざして,peaと発音すると紙片は振動する.一方,beeと発音しても紙片はほとんど振動しない.

例: tの発音について.アメリカ英語では強い母音と弱い母音の間に現れたtは,日本語のラ行の子音に似たはじき音/ɾ/(/ɽ/の方が正確?)で発音されることがある.例えばwaterが/wɑ:ɾɚ/と発音されることがあり「ウォーラー」のように聞こえる.

例: nの発音について. 英語のnは,舌先を歯茎につけて閉鎖して,息を鼻から出す鼻音である.一方,日本語の「ン」の発音は,「さばん」は/m/,「さだい」は/n/,「さがい」は/ŋ/,「さ」は/N/といろいろある.pensensementionなどの nでは,(日本語の「ン」の発音にひきずられずに)舌先を歯茎につけて発音する.

音の連続

子音の結合.英語では,母音を中心にとして子音が前に3つまで後に4つまで結合できる.日本語では子音はついても1つだけである.

例: spring /sprɪŋ/(CCCVC)./supuringu/ などと母音を付け加えて5拍で発音しないようにする.

例: sixths /sɪksθs/(CVCCCC).英語ネイティヴでも発音しにくく,くだけた会話では/sɪks/と発音するらしい.

例: /tn/ 舌先を歯茎につけたまま移動させずに/t/から/n/に移行する.つまり,舌先を/t/の位置につけたまま,鼻腔への通路を開いて呼気を鼻腔に送る.eaten /i:tn/.

文章中では,連結linking, liaison),同化assimilation),脱落elision)などで音が変化する.

例(連結): 句によって,子音で終わる語の次に母音で始まる語を滑らかにつなげて発音する.in an hour /inənaʊɚ/

例(同化): symphonymの音は/f/の前で唇歯鼻音/ɱ/に変わる.

例(同化): as you knowの/zj/が,/ʒ/の音に変わって発音されることがある./əzjʊn/→/əʒʊn/

例(脱落): くだけて速い会話では,/t/, /d/ などが発音されないことがある.handbag /hændbæg/→/hænbæg/

例(脱落):  くだけて速い会話では,/ə/が発音されないことがある.family /fæməli/→/fæmli/

アクセント

英語は強勢アクセントstress accent).強勢のある音節は,そうでない音節に比べて,より大きくより長くより高い(ただし,大きさの寄与はそれほどないらしい).語によってどの音節に強勢があるか決まっている.

例: 一つの語
photography /fətɑgrəfi/
photographic /foʊtəgræfik/
photograph /ftəgræf/
photographer /fətɑgrəfɚ/

例: 2つの語
the White House 米大統領官邸
a white house 白い家

例: 接頭辞(prefix)と接尾辞(suffix
object /ɑbʤɪkt/ (名詞)と object /əbʤɛkt/(動詞)
alternate /ɒ:tɚneɪt/(動詞)と alternate /ɑ:tɚnət/(形容詞)
concentrate /kɑnsəntreɪt/ と concentration /kɑnsəntrʃən/  接尾辞 -tion がつくと,アクセントはその一つ前の音節に置かれる.

日本語は高さアクセントpitch accent).語ごとに高さに関する決まりがある.なお,共通語アクセント(≒東京式アクセント)については,『日本語発音アクセント辞典(NHK出版)』『新明解日本語アクセント辞典(三省堂)』が詳しい.

例: 以下,共通語アクセントで,高いと感じられるものに●を,低いと感じられるものに○を用いる.

○●
はし(橋) 
○●
はし(端) 
●○
はし(箸) 

例: はし(橋)とはし(端)は同じようだけども,助詞「が」をつけると違うことがわかる.(「橋」のアクセントを尾高型,「端」のアクセントを平板型,「箸」のアクセントを頭高型と呼ぶ.)

○●○
はしが(橋が) 
○●●
はしが(端が) 
●○○
はしが(箸が) 

箸の(●○○)端を(○●●)持って橋を(○●○)わたる.

リズム

言語のリズムは,大きく,強勢リズムstress rhythm)と音節リズムsyllabic rhythm)の二つに分けられる.強勢リズムの言語には英語やロシア語やアラビア語があり,音節リズムの言語にはフランス語や日本語がある.

英語は強勢リズム,すなわち,強勢のある音節(強音節)がほぼ等間隔で繰り返されることによって引き起こされるリズム.

強音節の中では,最後の強音節に第一アクセントと呼ばれるピッチの急激な下降をともなうアクセントがくることが多い.これは,既知から未知の情報へという文の流れで,後ろの方に最も情報価値のある語がきやすいこと(end-weight)と関連している(と思う).

強勢を受ける語(名詞,動詞,形容詞,副詞など)は,内容語content word)としばしば呼ばれ,意味がはっきりしている.強勢を受けない語(冠詞,助動詞,接続詞,前置詞,人称代名詞など)は,機能語function word)としばしば呼ばれ,意味がそれほどない.強勢のない音節(弱音節)は短く弱く発話される.弱音節では,母音がよく/ə/など弱母音化する.

例: 次の例文([1,p177])では同じアクセント型がほぼ等間隔で繰り返される.そして,最後の強音節に第一アクセントがある.
We go to school by bus.  (弱強型が3回繰り返し)
Every girl was crying sadly.  (強弱型が4回繰り返し)
There were lots of machines in the plant.  (弱弱強型が3回繰り返し)
Some of the children were chattering merrily.  (強弱弱型が4回繰り返し)

例: 次の3つの例文([1,p176])は,音節数は異なるがいずれもほぼ同じ長さで発話される.太字で書いた音節が強音節で,最後の音節bonesに第一アクセントがくる.
Dogs | bite | bones.
The dogs | will bite | the bones.
The dogs | will have bitten | the bones.

日本語は音節リズムのタイプの拍リズムmora rhythm),すなわち,拍が等しい長さで(正確には,心理的にほぼ等しいと感じられる長さで)現れることによって引き起こされるリズム.さらにいくつかの拍がひとまとまりになってリズムを作り出しているらしい.

例: 病院は「びょ・ー・い・ん」と4泊で,美容院は「び・よ・ー・い・ん」と5泊で発音する.

例: 俳句は休止の時間も含めて8泊がひとまとまりになっているらしい.

なのはなや○○○ つきはひがしに○ ひはにしに○○○  (○は休止)
菜の花や月は東に日は西に (与謝蕪村)

例: 短歌も8泊をひとまとまりと思ってよいのかな? そういえば,三三七拍子も,休止の時間を含めると4泊か8泊がひとまとまりになっていますよね.

清水へ○○○ 祗園をよぎる○ 桜月夜○○○ こよひ逢う人○ みなうつくしき○ (与謝野晶子)

イントネーション

文や発話全体に関わる高さ(pitch)の変化をイントネーションintonation)という.英語のイントネーションとして様々な高さの変化の仕方(pitch pattern)が現れる.文法構造(平叙文・疑問文など),対比強調prominence),強度強調intensity),感情などによって高さは変化する.

例(平叙文): It's raining. ↓下降調.

例(疑問文): Can I see you for a moment? ↑上昇調.

例(対比強調): That's what he wants. What do you want?

例(強度強調): 上は「美しい」,下は「ものすごく美しい」という意味を表す.
It was beautiful. (stress for emphasis)
It was BEAUtiful! (greater stress for emphasis)

例(感情): 波打つようなイントネーションを使うことで,強い疑いの気持ちを表す.
You mean, you saw a ghost?!

イントネーションと深く関係するものに休止pose)がある.休止の働きに,発話において構文上の重要な切れ目を示す,息継ぎをするなどがある.

日本語の原則的なイントネーションでは,意味のかたまりごとに,音の高さが一度上がってからゆるやかに下がる「小さいへの字」を描き,さらに,「小さいへの字」が繰り返されて「大きなへの字」を描く.

聴解

個々の音の聞き分けができることとリスニング(音声知覚)力は異なる.リスニングは,語彙の広さ,文法・語法の運用,文脈の類推,背景知識の広さ,速さへの対応など様々なものと関わっているらしい.

例: 視覚もリスニングに関わっているらしい./ga/と発声している映像と/ba/という音声を同時に呈示されると,/da/と聞こえる人が多い(McGurk効果).

流暢さ

速さと流暢さは異なる.速く話しても途中でつまったり言い間違えが多いと流暢には聞こえない.逆に,途中でつまったり言い間違えたりしなければ,ゆっくり話しても流暢に聞こえる.

一般に,日本人が話す英語は短く切れがちと言われることがあるようだ.その理由を2つ推測してみる.(私の推測で妥当かどうか知りません.)
(1)泊リズムの日本語の発音では,声門閉鎖(声帯を閉じること)を使って,同じ長さになるように音の長さを調整する.例えば,「来る」の発音では,「ク」の長さと「ル」の長さが同じになるように,「ル」の母音/u/を適当な長さまでのばした後,声門閉鎖を使って切っている.これにひきずられて,強勢リズムの英語の発音でも,声門閉鎖を不必要なところで使ってしまい,短く切れた英語の発音に聞こえるのではないだろうか.
(2)日本語では,日常,平均して1〜2秒程度の息づかいでことばを発している.例えば,「いい天気ですね」は,だいたい1秒.「はじめまして.私は山田です」は,だいたい2〜3秒.(なお,日常会話ではなくて人前で話すときは,だいたい5〜6秒の内容(40字弱)を一つの息で話し,300字前後を1分間で話すのが適当だそうだ.)英語では,日常会話でも,もう少し長い息づかいで話すのではないだろうか.そのため,日本語の日常会話と同じ息づかいで英語を話すと,短く切れた英語の発音に聞こえるのではないだろうか.


参考文献
[1]斎藤純男『日本語音声学入門』三省堂
[2]竹林滋,斎藤弘子『改訂新版 英語音声学入門』大修館
このページを作成するにあたって主に[1],[2]を参考にしました.その他に,自分が知っていたことも含めています.

付録:音声以外も大切と思う
■上手に発音しようと意識してかえって堅くなってしまうぐらいなら,伝えたい気持ちを大切にしてとにかく話す方が(相手にとっても)良いと思う.
■職業や住んでいる場所にもよるだろうが,私も含めてたいていの日本人にとっては,英語の発音は聞き手が理解でき受け入れられる程度(英語の個々の音をある程度の発音で話して,英語のリズムなどもある程度できている程度?)で十分ではないだろうか.そして,発音以外にも大切なこと(例えば「率直さ」は入ると思う)がたくさんあると思う.

(Uploaded: July 9, 2004)
(Last modified: July 22, 2005)

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