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Ronの書評のボツ原稿
ちなみに、ボツ原稿をここに掲載します。
注:これはボツになった原稿であり、「ほん」4月号には全然別のものが掲載されています。
『萌える英単語もえたん』
三才ブックス 1143円
「本書は大学受験用の参考書です」 帯にあるこのコピーを信じる人は、まずいないだろう。単語帳の体裁だが、表紙にはかわいい女の子の絵、中にもイラストがたっぷり...。そして特徴的なのが例文。「巨大掲示板の管理人が年中訴訟を起こされているThe administrator of the huge message board is sued all the time.」から「捕らわれの身のお姫さまを楽しませるため、その泥棒はささやかな手品を披露した。The thief showed off tiny magic to entertain the captive princess.」まで、ちょっとオタクっぽい例文が並んでいる。
これが、たぶん初めて東大生協の売上ランキングにランクインした受験参考書『もえたん』である。当然疑問が沸く。入試に受かった東大生がなぜ受験参考書を買うのか。第一の仮説は「 東大にオタクが多い」である。しかし、それではなぜライトノベル等の「オタッキー」な書籍がこれまでランクインしてこなかったのか説明できない。
第二の仮説は、「英1の勉強のため」である。しかし、受験レベルの単語を覚えても英1の役には立たないだろう。
注:英1とは、東大生の必修英語のことです。こんな本を使います。
そこで、出てきたのが第三の仮説である。それが「『もえたん』は入試を対象化する役割を持つ」という仮説である。東大生はほぼ例外なく、大学入試を乗り越えるための様々な努力をしてきた。受験生時代の東大生は、「入試制度」の中に組み込まれて、その中で「一番」を目指した人だったのではないか。つまり、「二次試験会場で他人より多くの点数を取る」ということを目指して日々を生きてきたのではないか。
このような入試制度内部に組み込まれた受験生時代には、自己がその内部にいる以上、入試の相対化は難しい、いやほぼ不可能である。大学に受かってはじめて、自分が昔そこにいて、数年間を過ごした入試というものは何かという疑問が沸きうる、そして実際に沸いている。多くの東大生に家庭教師や塾講師といった形で受験に関わっているのは、金銭面以上に、その入試の対象化への願望が関係していると思う。そして、大学入試参考書の一種のパロディとして、この「もえたん」はその入試対象化願望をかなえているのではないか。
笑える例文を楽しみながら、無意識のうちに「入試」のトラウマを取り払うこともできる(そして英語力を向上させられるかもしれない)。東大生のみなさんに、そんな『もえたん』をお薦めします。(Ron)
(ISBN 4915540707)
注記:たぶんボツになった最大の理由は、萌えと正面から向き合ってないところだと思われます。 もえたん新聞へ戻る
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