新大学発足に向けて、「都民の会」からの
「ハテナ・はてな・???」


 大学関係者や私たち「都民の会」の強い批判・反対を押し切って、4月から「首都大学東京」が発足します。都立四大学から新大学への移行を直前にして、あらためて、私たち「都民の会」では、都民の立場から新大学に向けての疑問点を提示したいと思います。
 新大学への進学を考えている皆さんやそのご家族の皆さん、あるいはそこで働くことを予定されている皆さん!、皆さんには、目下「首都大学東京」にはこうした課題や心配が寄せられていることをよくよく考慮いただきたいと願っています。同時に、4月以降は、この常識はずれとも言える「見切り発車」の大学を、少しずつでも都民を初めとした社会の信頼に応える大学へと近づけていくために、あらためて様々な取り組みや努力が始められなければならないと私たちは考えています。ここまで都立の大学「改革」問題に関心を寄せてきた全ての方たちや、これから新大学で学び・働くことになる方たち、そしてさらに多くの方たちと、今後あらためて、そうした「公立大学再生」の活動をともにつくっていくことを、私た ちは強く呼びかけたいと思います。

都立の大学を考える都民の会 2005年2月

1 カリキュラム・履修体系への「?」

(1)単位バンク制

 鳴り物入りで宣伝された「単位バンク制」は、その後様ざまな批判も受けるなかで紆余曲折の展開をたどり、新大学発足を目前にした今もって、その具体的内容が定まっていないと聞いています。また、一部学部のみで実施される可能性や、「学位設計委員会」「科目登録委員会」といった場が設置され、どの科目を登録科目にするか等をめぐって不透明な運営がなされかねない懸念も伝えられています。果たしてこうした現状で、進学した学生が見通しをもった学習を組み立てていけるのでしょうか。

(2)英語の外注化

 昨年末に下記のように、新大学での英語教育の約半分が、大学側で履歴の確認や面接、大学教員側との打ち合わせや助言さえ行えない、いわば「丸投げ」ともいえる形で民間の英会話学校に外注化されるとの新聞報道がされました。教育責任を全うするという点で、大学の英語教育担当者も大きな不安を抱えているとのことですが、それは学生にとっても同様でしょう。大学が責任を負いきれない仕組みのもとにある講師から、進級・卒業につながる正規の授業を受けるということは、例えば講師から不当な扱いを受けたとき一体誰が責任もってその問題に対処してくれるのか?などの点で、非常に不安で、納得の得にくいところではないでしょうか。

<朝日新聞2004年12月23日付朝刊より抜粋>
 東京都立大学など4大学が統合して来春開校する「首都大学東京」が、英語の必修授業の半分を民間の英会話学校に委託することを決めた。「ネイティブスピーカー」の授業を目玉にする狙いだが、職業安定法の規定で派遣講師と授業内容を打ち合わせることもできず、初年度は教材を含めてほとんど「丸投げ」になる。現場からは「教育に責任が持てない」との声も出ている。(中略)
 都の業務委託では、庁舎の清掃や警備などのほか、サービス部門で旅券の申請・交付業務があるが、単純作業に限っており、職安法に触れる心配はほとんどない。だが、学生の要望や学力に沿ってきめ細かな対応が必要な大学の授業は、状況が異なる。契約では学生からの質問も授業後1時間に限られ、それを超える対応を求めると法に抵触する。 (中略)カリキュラムや教材は共同開発する方針だが、開学まで約3カ月しかなく、ベルリッツのノウハウを土台に多少の注文をつける程度になる。(中略)
 英語教育に外部委託を導入した大学は、慶応大湘南藤沢キャンパスなどがある。同キャンパスでは英語力の低い学生の力を引き上げる授業を委託したが、教材やカリキュラムは専任教員が10年以上かけて開発したものを活用している。

(3)都市教養プログラム

 新大学の1・2年次の主要なカリキュラムであるという「都市教養プログラム」では、学生の自由度を高めるとの考え方から、入学時にいわゆる基礎となるクラスが設定されず、英語では能力別クラス編成がなされ、基礎ゼミナールは学部を越えたクラス編成がなされるとのことです。従来の大学で設定されてきた1年次の基礎的クラスは、小中学校でのクラスとは大きく性格が異なるもので、その拘束性は決して高くはなく、むしろ多くの学生にとっては、「自分はここで友達をつくってやっていけるだろうか」といった入学時の不安を緩和する安全弁として働いてきたと考えられます。新大学が様々な準備不足も伴いながら発足するという状況の中で、新入生の落ち着いた学習の開始を助けうる仕組みをあえて採用しないという選択は、私たちには合理的な判断とは考えられません。

(4)現行大学学生・院生の入学時に契約された教育・学習条件保障

 新大学の発足に伴って現大学の学生・院生の教育・学習の保障が十分になされるのか、という点についても、私たちには多くの懸念があります。例えば、多数の教員の転出に伴い専任教員の欠けた科目・領域について、非常勤講師の配置などを含め、十分な手だてがなされるのか?といった懸念や、もっぱら現大学の学生・院生を指導することになる現大学所属の教員に対して、研究室・実験施設・研究費などの点で差別のない条件が保障されるのか?といった懸念、それ以前にも、時間割やカリキュラムなどの面で新大学優先の運営がなされ、現大学学生・院生の教育・学習に支障が生じることはないのか?といった懸念が尽きません。現行大学の学生・院生には、入学時に契約された教育・学習条件を継続的に保障することが大学設置・管理者の責任であるはずですが、果たして4月以降もこの責任は十分に履行されるのでしょうか。

2 学生生活支援に関する「?」

(1)学生の自治活動

 学生の自治活動の保障という点では、現大学・新大学両方の学生たちの今後について懸念があります。現大学については、ここで学生・院生が自治活動上有していた学内における条件や処遇が今後も継続されるのかどうか、非常に懸念されます。とりわけ、従来学生・院生の自治活動において、責任ある対応窓口となっていた学生部長が新大学では設置されないと聞いていますが、その場合、4月以降に学生諸団体への責任ある対応はどこが担うことになるのでしょうか。
 また、新大学については、そこで学生の自治活動がどのように位置づけられ、制度的に保障されるのか、私たちには知らされていません。学生の自治的活動は、授業・カリキュラムへの要求や、サークル・大学祭といった課外活動の保証を求めることを通して、学生の声を大学に届け、反映させていく、大学運営にとっても大切なファクターです。ここまでも述べてきたように、とりわけ新大学では、発足後に学生にとって不都合なこと、やってみてあらためなくてはならないことが沢山生じるはずです。そういうことに学生が理にかなった注文をつけるためには、自治活動は欠かせません。また、学生の社会性や自律性の形成という教育的観点からも、高等教育機関である大学にとっては欠かせないものです。その点が新大学において十分に顧慮されているのかどうか、懸念されるところです。

(2)学生サポートセンター・学修カウンセラー

 新大学で設置される予定の「学生サポートセンター」については、従来の学生部における学生部長のように、大学教員が責任をもって学生の問題に対処する体制を取らず、基本的には法人職員によって運営される体制になると聞いています。履修の相談、学生の課外活動・自治活動の援助、奨学金の審査、あるいは試験時のカンニング等の学生による非違行為への対処(処分の決定)などが、教員や教授会が責任を負わない体制で十全に果たせるのか、その対応は高等教育機関としての場にふさわしい内容となるのか、私たちは非常に不安に思います。
 また、新大学には「学修カウンセラー」と呼ばれる、履修相談・指導を担当するスタッフがおかれるそうですが、これには、大学外から新規に採用された、新大学のカリキュラムに関する予備知識を全くもたない人たちがあたり、カリキュラム運営に責任を負う教員組織とも切れた立場におかれると聞いています。実際の教育活動に携わっていないスタッフが、教員との相談・合意形成ももたぬまま、学生の相談にあたる場合、そこには多くの混乱や齟齬が生じる危険性があります。新大学発足の混乱と新学期固有の混乱のなかで、こうした不安定なシステムが、混乱を更に増しかねないことを私たちは懸念しています。

(3)寮、奨学金、学費など

 学生の修学援助という点でも心配があります。授業料減免や奨学金、あるいは寮の利用等について、こうした制度の利用を学修上不可欠としてきた現大学の学生・院生が、今後も不利な立場におかれないような手だてが、ここまで十分取られてきているでしょうか。
 また新大学については、本年冒頭に下記新聞記事のように、いわゆる「効率化係数」の導入方針が報じられました。既に1%の効率化係数が導入されている国立大学では、現在、この仕組みによって、学生納付金(授業料)を据え置けば運営交付金(大学運営の財源)が削減される事態がつくり出されており、ほとんどの大学でさっそく今年から授業料が値上げされました。効率化係数の導入は、学生やその家族にとっても、授業料負担という点で非常に切実な関心事です。とりわけ新大学では国立大学のそれをも大きく上回る、2.5%の導入方針が示されており、これで入学後も安心して修学を続けられるのかどうか、深刻な不安を抱かされます。

<東京新聞2005年1月5日付朝刊>
 今年4月に東京都立4大学を統合して開学する「首都大学東京」の設置主体の公立大学法人に対し、都は、毎年一定割合で自動的に交付金を削減する「効率化係数」を導入する方針を固めた。

<東京新聞2005年1月7日付朝刊>
 また、4月開学予定の首都大学東京には、毎年一定割合で運営交付金を自動削減する「効率化係数」を2.5%にして導入する。導入は2010年度までの6年間で、削減対象から退職手当などは除いた。

3 教員・職員の体制に関する「?」

(1)教員の数的な確保、今後の勤務継続

 都立四大学から新大学への移行の過程で、数多くの教員が転出していきました。その結果、いくつかの領域では、教育・研究に大きな支障をきたすほどの教員減が生じています。そうした特に転出の多い領域について、今後、常勤・非常勤でのスタッフ確保が行われる見通しは立っているのでしょうか。また、新大学のあまりに不備の多い体制は、現在在任中の教員たちのなかからも、新大学発足後に数多くの転出者を生み出すのではないかとの懸念も聞かれます。進学する学生・院生にとって、教員が一定の時間的展望のもと安定して勤務していることが非常に重要な学習・研究条件になることはいうまでもありません。教員の勤務継続という点で、日本の大学史上前代未聞ともいえる不安定さをつくり出している新大学は、このままで、十分な研究・教育の成果を生み出すことができるとは私たちには到底思えません。

(2)職員配置の量的・質的水準の担保

 新大学の法人が新たに採用した職員(法人固有職員)は、多くの批判や疑念を押し切って、全員が1年から3年の任期制です。近年、大学運営は複雑さを増しており、多くの私立大学では、職員の専門性強化が不可欠だと認識されるようになっています。新大学の職員採用の方針は、こうした時代の流れに大きく逆行するもので、仕事に対する信頼性の確保という点で大きな疑念を抱かされるものです。数的にも質的にも十分な条件をもたない職員体制は、個々の職員の善意や熱心さが存分に発揮されたとしても、学生・院生との間に数多くのトラブルを発生させかねないと考えられます。

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