折々の妄言


2011/06/25  「狹き門」再讀

「狹き門 (A. Gide)」を 40 年振りに再讀してゐる。

ほとんど、始めて讀むやうなものだが、記憶に殘る物語と隨分印象が違ふ。

「狹き門」の中には、何人も氣が附くであらう如く、二つの惱める魂の對立がある。其處には、戀の成就に於てのみ安心の境を見出すことを信じかつ願ふジェロームと、戀をも捨てて偏に狹き門に入らうとするアリサとが居る。それは、アリサさへ手を伸ばせば容易に遂げられる戀である。アリサはその戀を捨てる。そして犧牲に惱む。彼女の行爲には何の目的もなく何の效果もない。彼女は、ひとは幸福のために作られてゐないと信ずる。

人の世に幸福を求めない彼女は、何處にそれを求めようとするのか。何處にも求めないのである。天上の大歡喜に浸らうともしないのである。彼女は犧牲の悦びさへも感じようとしない。人は最後まで、心の底からほほ笑む彼女の面を見ない。彼女は當てもなく身を鞭うつて苦しむ。... (石川淳, 1929)

そんな物語だと思ひこんでゐたわけだが、石川淳がさういつてゐるのだから、必ずしも誤解といふわけでもないのだらう。

しかしながら、これでは Alissa が可哀さうすぎないか。 錯亂の A. は次のやうに訴へないだらうか。

Jerome の視線が、私を石像にかへてしまつたのです、徳と純潔の化身といふ石像に。

私は、J. が求める聖女といふ役割を演じ續けてきました。

あまりに彼を愛してゐたから、彼の期待を裏切ることなどできませんでした。

そんな苦行にどんな意味があるのか、恐ろしい疑念を抱いたまま、 それでもあの人のためにその理想像を最後まで演じ切るつもりです。

Gott helfe mir!

無論これはこれで、A. の勝手な言ひ分である。

ではあるが、二人の共犯關係において、J. を主犯と考へないとこの物語、腑に落ちないのではなからうか。


2011/06/19  Vada Sultenfuss と Thomas J. Sennett、11 才

「My Girl (1991, Howard Zieff)」を YouTube で視聽。

Vada: Why do you think people wanna get married?

Thomas J: When you get older, you just have to.

Vada: I'm gonna marry Mr. Bixler.

Thomas J: You can't marry a teacher, it's against the law.

Vada: It is not.

Thomas J: Yes it is, 'cause then he'll give you all A's and it won't be fair.

Vada: Not true [Pause] Have you ever kissed anyone?

Thomas J: Like they do on TV? No.

Vada: Maybe we should,, just to see what's the big deal.

Thomas J: But, I don't know how.

Vada: Practice on your arms.

Thomas J: Like this? [They practice kissing on their arms]

Vada: OK, now practice. [to Thomas J] Close your eyes.

Thomas J: But then I won't be able to see anything,

Vada: Just do it.

Thomas J: OK, OK. [He closes his eyes]

Vada: OK, on the count of three. [Leans over] One, two, two and a half, three [Vada and Thomas J kiss] Say something, it's too quiet.

Thomas J: Umm, Ummmmm...

Vada: [agitated] Just hurry.

Thomas J: I pledge allegiance to the flag of the United States of America...

Vada and Thomas J: ...And to the republic for which it stands, one nation, under God, indivisible, with liberty and justice for all.

Wikiquote

に笑つて、
His face hurts. And where is his glasses; he can't see without his glasses! Put his glasses on! Put on his glasses! He was gonna be an acrobat!
で泣くのは、20 年前と同じ。


「Pans Labyrinth (2006, Guillermo Del Toro)」が結構面白い。 傑作との世評の高い「The Shining (1980, Stanley Kubrick)」と比較しての話だから、多分本當に面白い (だから Stephen King は怖くないんだつて、といふのは割り引いて)。 いづれも獨語吹き替へ版しかみつけられなかつたのだが、無問題。i.e. 英獨どちらだらうが、どうせ聞き取れやしなひわけだから同じこと。


さすがに飽きてきて、「The Changeling (1980, Peter Medak)」は、また今度。


2011/06/16  Stephen King なんか怖くない

恐怖小説を書ける作家つて、稀少である。

宮部みゆき、H. P. Lovecraft、そして、狹義の作家ではないけれど Alfred J. Hitchcock くらゐか。

Daphne du Maurier, Henry James, 鈴木光司, ... は讀んでないので、論評不能。


2011/06/12  大阪府民はその知的水準にふさはしい知事を推戴してゐるのか

Joseph de Maistre (1753-1821) wrote in 1811: “Toute nation a le gouvernement qu’elle merite.” ("Every nation has the government it deserves.") De Maistre was credited with the saying in the 19th century, but it became popular in the United States in the 20th century, frequently without credit to De Maistre.

A popular version is “In a democracy, the people get the government they deserve,” with an incorrect credit to Alexis de Tocqueville (1805-1859), author of Democracy in America. (www.barrypopik.com)

といふことなのだけれど、フォースの暗黒面に墮ちてしまつてはいけない。

Many have questioned the statement, arguing that it “blames the victim” (citizens/voters) for bad regimes that cannot easily be voted out―even in a democracy. (ibid.)

との異論を提示すべきなのだ。

とはいへ、私に何ができるのだらう。


2011/06/11  Dune (1984, David Lynch)

「Dune (1984, David Lynch)」、折り紙つきの失敗作ださうだが、私は好きだな。 他方、「Starship Troopers (1997)」の方は、何この凡作、といふ感じ。


John Carpenter の「Prince of Darkness (1987)」と「In the Mouth of Madness (1995)」: いい仕事をしてますね。

「Dawn of the Dead (1978, George A. Romero)」: 面白いかと問はれれば、あへて否と答へる積極的理由もないのだが。


2011/06/05  二つの何故

「星の王子さまで學ぶ〜」みたいな學習書が出版されてゐるのだから、さういふ (無味乾燥な例文ばかり讀まされるのはかなはんといふ) 需要がないわけでもないのだらうが、それにしては用例の適切さといふ視點での語學教科書の評價をみかけた覺えがない。

語學教科書の出來の良し惡しの一半はここにかかつてゐると思ふのだが、何故ない。


「新フランス文法事典」。layout が貧弱 (左揃へのみで, indent なし; 改行が少なく, 空白行は皆無; 全て同じ font size で, 文字種別は bold/非 bold と, roman/italic のみ) で、讀み通すのに難澁した。

その評判の高さにもかかはらず、禮贊の表現がどことなく冷淡なのはこんなところにも原因があるではと思ふのだが、何故誰も指摘しない。


2011/04/17  思ひつくままに

03/11 以來、日本人の涙腺は緩くなつたか。 私のそれは確實に緩くなつた。

04/11 の TV の映像: 廢墟となつた故郷を眼前に母親に背負はれた多分就學前の男の兒。その頬に一筋の涙が流れてゐた。この子は何を失つたのだらう。


相變はらずだなあと感じたのがこの間再選された東京都知事。人の神經を逆撫でするのが好きだしうまいし。 その演技に喝采を贈る多くの petits 石原たちのことを考へると氣が滅入る。


原子力安全委員會委員長の herzlos (heartless、冷酷) 振りも印象不快。大切な心臟はきつとどこかの耐震・耐放射線金庫に大切に保管されてゐるんだらう。


「原子力安全・保安院は 13 日夕の記者會見で、東京電力に對して、福島第 1 原子力發電所 1 〜 4 號機の原子爐建屋の耐震安全性を評價し、補強工事が必要ならば檢討するやう指示した」だつて。 餘震で建屋が壞れても私に責任はありません、といふわけだ。 東京電力の不手際振り、世間を舐めたやり方もどうかすると霞んでしまふ。


「想定を越えた。」 同じ「想定」といふ言葉を使ひながら同床異夢。

例へばクラウンのオーナーなんて大概 5 年で買ひ替へるんですよ。ならば 5 年持てば十分でせう。過剩品質については徹底的に見直し、コストの適正化に務めます。(奧田碩)

原發の建設 cost の適正化に努めた結果を今更とやかくいはれても、が本音とはわかつてゐても、それはいはない、いへない。だとすれば、原因究明も再發防止もただの掛け聲。


2001/09/11 と 2011/03/11。どちらが重いとかいふ話ではないが。


2011/02/19  「サヨナラ」ダケガ人生ダ

「翻譯佛文法」を讀んでゐる。

翻譯調を避けて、自然な日本語に譯しなさい。といつても清涼飮料水のやうに喉越しがよければ、それでいいといふものでもない。原文が定位する言語水準が適切に反映されてゐなければいけない。例へば、W. チャーチルの演説と、G. ブッシュ Jr. の演説が、同じ格調、同じ品位の日本語に寫像されてゐたら、そりや、をかしいでせう。

といふやうな哲學で、こなれた譯作成の手法のあれこれが説かれてゐる。

別に異議はないのだけれど、一つだけひつかかることがある。

君に勸む金屈巵
滿酌辭するを須ゐず
花發いて風雨多し
人生別離足る
あるいは、
年寒くして松柏の凋むに後るるを知る。
は翻譯臭く、當時の人々に感じられたのだらうか。

漢文訓讀體がなければ、和漢混淆文もなく、從つて、日本語はその自在な表現力を獲得することはなかつたであらう。

とすれば、佛文訓讀は論外にしても、新しい日本語を創出するのだといふくらゐの氣概をもつて翻譯に當たつてもいいのではないのか、といふ氣がする。

それとも、言語創出の幸福な時代は一回きりしか許されないのだらうか。


2011/02/11  不實な美女

サン-テクジュペリ といふ作家がいて、その代表作の一つに「人間の土地」がある。新潮文庫に收められてゐる邦譯は堀口大學の手になるもので、この人は「月下の一群」といふ高名な譯詩集を上梓してゐる。

この譯 (人間の土地の方ね) が相當杜撰な譯らしいといふことで、「星の王子さま」に續いて、「「人間の土地」よ、お前もか」と言ひたい氣分になつてしまつた。

光文社の古典新譯文庫の品質に問題あり、と知らされても驚いたりはしないが、それなりのブランドであると信じてゐた新潮社と堀口大學の取り合せでこの體たらくだとしたら、あれが面白くなかつたのも、これがよく分からなかつたのも、私の頭のせゐではない、譯が惡いんだ、と言ひたくなつてくる。

内藤濯譯、堀口大學譯を絶讚する人もゐるのだけれど、彼らの譯、果たして、les belles infidèles の名に値するのであらうか。


2011/01/10  「アメリ・プラン」

正月休みの間に、これまた豫ねてから懸案だつた 2001 年のフランス映畫 「アメリ・プラン (Le Fabuleux destin d'Amélie Poulain)」をみる

まるで聞き取れない。字幕はスペイン語だし。

で、今週末、英語の字幕のそれ (畫像が粗かつたので、前回は敬遠) で再挑戰するも、多少はましといふ程度のこと。

それはさうと、ジェームズ・キャメロン (James Francis Cameron) の「タイタニック」つて、おもしろいのかね。



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