初心者にもわかる競輪講座


ここでは、競輪の競走形態について説明します。

 競輪競走は、初心者から見ると、大層変わっていて、
不思議なものにみえるようです。スタートのピストル
が鳴っても、一斉にスタートを切る訳でもなく、どち
らかというと、ゆっくりと走り出し、しばらくすると、
一列の棒状になって、相変わらずゆっくりのスピード
で周回を重ねていく・・・といった競輪独特のレース
形態が非常に理解しづらいでしょう。

 ここでは、なぜすぐに飛び出さないのか?なぜ一列 棒状になってゆっくりとしたペースで進むのか?とい った疑問に答えるべく、その独特のレース形態につい てお話したいと思います。
 競輪競走は、現在、一周が500メートル・400 メートル・333.3メートルのいずれかの競走路を 使っていて、いずれの競走路においても、約2000 メートルの距離で行われています。  競輪競走を理解するために、まず挙げられるのは、 2000メートルという距離を、『最初から最後まで 全速力(それぞれの選手の持つ最高速度)で走ることは 無理』であるという事と、『タイムを競う競走ではな い』と言う点が挙げられます。  そういう訳で、競輪競走の展開を大きく左右するの は、個人の能力やペース配分(脚力温存や、スパート する場所やタイミング)が展開を左右するということ になります。  では、その展開を左右する、ペース配分について、 もう少し詳しく説明してみましょう。  競走をする選手にとって、脚力をロスする最大の原 因に、空気の抵抗(風圧)が、あがるでしょう。  たとえば、同じ人が同じ距離を、自転車に乗って、 全力で走った時、風圧を受けながら走った場合と、風 よけとなって走る人の後ろに付いて行った場合とでは、 ゴールする時間や、身体の疲労度合に著しい差が出る ほど、空気抵抗は、走行する選手にとって大きな敵と なっています。  したがって、走行する選手は、まず、いかに空気の 抵抗から身を守るかということを考えます。もちろん 一番効果的な方法は、前述したように、風を切って走 るものの後ろ、すなわち走路の中では他の選手の後ろ について走るということです。  しかし、全ての選手が脚力の温存を必要としている 訳ですから、普通に競走を行ったのでは、スタートし ても誰も積極的に飛び出す事もなく、他車の後位を狙 っての牽制が起こって、かなりスローペースで、混沌 とした競走になることが予想されます。  もちろん、それでも純粋に競技としては十分に成り 立ちますが、通常開催されている競輪は、大衆娯楽を 目的として行われていますので、競走をより面白く、 かつ見やすいものにするために、特別なルールを採用 しています。  そのルールの大きな特徴は、選手たちが風圧を避け るために過度の牽制をしなくてもすむように、競走が ある程度進行するまで、集団の先頭で風よけ役として 走る選手を用意して行うというものです。  道中、先頭に立って走る者が存在すれば、あとは、 個々の選手が一本棒状を形成して続くことにより、先 頭に立つ者以外、全ての選手が風圧から身を守ること が可能になり、先頭に立つ者がテンポ良く走行すれば 競走自体もスムーズに進み、見る者にとっても競走の 流れがつかみやすいものになります。  このようなルールを採用している大きな理由はまだ ほかにもあるのですが、それについては後述します。  では、もう少しこの『先頭で走る選手』について説 明をします。  先頭に立って走る選手の形態には、二種類のパター ンがあり、その一つは、『先頭誘導員』と呼ばれる、 競争とは無関係の選手がレシーバーを内蔵したヘルメッ トをかぶり、審判団の走行指示(走行速度や、コース から退避するタイミングなど、、)をうけながら走る 『先頭固定競走』。もう一つは、競争参加選手の一人 が事前に申し出て、誘導員の代わりに周回中の風よけ 役を務めながら走る『普通競走』です。この選手は一 応、競走に参加している訳ですから、指示を受けなが ら走るという事はなく、あくまで自分の判断で進行役 を勤め『トップ引き』と呼ばれています。  さて、このトップ引きの選手は、脚力の温存を全く 出来ずに競争をする訳ですから九分九厘、最終着とい う結果になります。にもかかわらず、なぜトップ引き を申し出るかというと、通常の着に対する賞金にプラ スして誘導手当を受け取ることが出来るからです。九 着の賞金と誘導手当で、概ね5着位の額になるので、 普通に競走してもまず勝ち目がないと判断した選手が、 少しでも多くの賞金を獲得するための手段として、こ の方法を選んでいるのが一般的なパターンです。 しかし、勝利を得る闘志を持たずに走るこのトップ引 きの存在は、ある意味では、あきらかにルール違反な のですが、競輪が誕生してから暫くの間は、先頭誘導 員を用意する方法が採用されておらず、競走を円滑に 進めるためには、出場選手のいずれかが風よけ役を務 めるほかはなく、そのような形を取り、また、その形 が現在まで残っているという訳なのです。現在あまり 見られる事の無くなった、この形の競争が『普通競争』 と呼ばれるのも、元々はこの形が一般的であったから です。  それでは、ここでもう一度、なぜ一本棒を形成して 走る競走形態が望ましいのか、に戻ります。  前述したように、テンポ良く見やすいということも 大変重要なのですが、競輪は普通、賭けの対象として 行われているので、何と言っても大切なのは、いかに 推理しやすいかということです。  牽制の激しい混沌とした競走だと、当然のことなが ら、1・2着の選手を推理するのはとても難解な作業 になります。そかし、一本スタイルの競争だと、かな り推理しやすくなるのです。  競輪競走が、最終的に一番有利な展開は、もちろん 最後の直線に、前団に位置して突入してくることです。 さて、各選手、脚力温存のために道中、一本棒で周回 を重ねる訳ですが、いつまでもそのままという訳には いきません。もしそのままの状態で、先頭(誘導員や トップ引きの後ろ)にいる選手が、そこからスパート してゴールまで十分、脚勢がもつ地点にまで競争が進 んでしまったら、後方にいる選手は余程の脚力がない 限り、まず勝利のチャンスはありません。したがって、 前団以外の選手は、先頭選手がスパート可能な地点に 到達する前に、先頭(前団)の位置を奪い取る必要が あります。しかし、選手達は、それぞれ脚質(持久力・ ダッシュ力・最高速等)が違います。もし持久力の劣 る選手が、早めに仕掛けて先頭の位置を獲得しても、 ゴールまで脚勢がもたなければ、結局、後続の選手に 次々と追い抜かれてしまうことになります。となると、 当然、先頭の位置を目指して早めに動き出せる選手は、 メンバーの中で、持久力に長けた者となります。  それでは、持久力の劣る者はどうすれば良いのでしょ う。ここで、競輪競走独特の競争スタイルともいえる 『並び』が出現します。それは、一本棒の隊列の中で、 先に動いて勝負しようとする者の後ろに仕掛けをギリ ギリまで待ち脚勢をタメておいて勝負しようとする者 が続くといった形の、概ね2〜3名ずつのグループ編 成のことです。  このようなグループを『ライン』と呼ぶのですが、 このラインを作ることにより、たとえ競走の序盤戦で、 一本棒の後方に位置していたとしても、ラインで動き、 勝負所で前団の位置を獲得できれば、勝利のチャンス が得られるのですから、すなわち選手全員が勝利の可 能性を持つことが出来る訳です。そしてまた、このラ インの編成が、競輪の推理をも、たいへんしやすくす るのです。  選手がラインを作って競走するということは、当然、 同じラインの者同士でゴールする可能性が高くなり、 また、ラインの中で前にいる者から順に入線の可能性 が高くなるといった具合で、1・2着の組み合わせが 非常に絞りやすくなります。また、競走全体の展開を 考える上でも、個人個人云々ではなく、ライン同士の 争いという点から進めていけるので、選手の基本的な 戦法などをマスターすれば、スタートからゴールまで の流れを専門家でなくてもたやすく推理できるのです。 (もちろん、その推理が当たっているかどうかは別の 問題ですが…)  という訳で、競輪のレース形態についての説明は、 以上で終わりです。一本棒の理屈がおおよそ理解でき れば、競輪競走自体の理屈を覚えていくのも、たいへ んたやすくなるかと思います。  ぜひチャレンジしてみてください。


参考文献:
ギャンブルレーサー16巻『初心者のための競輪講座』より

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