活メイン・ロブスター Live Maine Lobster 〜 アメリカンロブスター Homarus americanus

・心の始末
 料理をするにあたって、これほど生きることの罪深さを考えさせられる食材は、なかなかありません。料理人自らが、その命を奪うからです。
 米国人が家庭で料理するときは、湯が沸騰している鍋に活きたまま入れてボイルするのが一般的なようです。私も初めてロブスターに挑んだときは熱湯に入れました。が、必死にもがく姿と音に、あたかも自分が煮られているような思いがして、あまりの残酷さに、もう二度と料理すまい、と思いました。しかし、人間は元来、他の動植物の生を奪いながら生きるものなのですから、ロブスターだけに感傷を抱くのは、他の食材に対して不公平というもの。ベジタリアンだって、野菜は殺す。虫も殺さぬお嬢さんだって、切り花のブーケを持つ。人間、そんなものです。

 紆余曲折を経た今は、「スマヌ」と一言詫びてから、包丁で一気にとどめをさしています。自分が釜茹でにされるか、斬られて死ぬか、を考えたら、後者の方がまだマシなような気がして。。。ロブスターを仰向けにひっくり返し、上半身に布巾を被せ、迷いを捨てて、一気に腹をかき捌く。自分が武家の血を引いていることを考える、生涯唯一の瞬間です。もっとも、“切腹”を選ぶのは、ボイルだと折角の旨みがある程度お湯に逃げるのはやむを得ないのに対し、切ってからソテーすると旨みを逃がさず封じ込め、香りも引き立つし、火の通り具合が分かりやすい、という理由もあります。せめて、隅々まで無駄なく美味しく感謝して食べることが、食材に対する供養だと思うことにして、ストックも取らせて頂いています。


・ロブスターとは
 オマールとロブスターは同じもので、単に仏語か英語かだけの違いです。ザリガニ下目アカザエビ科ロブスター属に属し、ヨーロピアンロブスター(ヨーロッパウミザリガニ)Homarus gammarus とアメリカンロブスター Homarus americanus の2種がいます。なお、伊勢海老は、イセエビ下目イセエビ科に属し、エビの中では遠い仲間です。


Live Maine Lobster (アメリカンロブスター Homarus americanus
どんな海老?


  • エビ亜目ザリガニ下目アカザエビ科ロブスター属
  • 味は、伊勢海老に較べて、身がゴムのようにブリブリして大味だと思われている傾向がありますが、それはレストランで出されるものが大抵加熱し過ぎだから。 レアにソテーしてみましょう。その甘みは伊勢海老に勝るとも劣りません。ただ、ミソについては、生だと風味が薄いので、加熱調理したほうがお勧めです。
  • アメリカでは、ボイルの他、グリルやスティームが一般的。ニューヨークの日本食レストランには、ロブスター鍋を出すお店もあります。
  • 活ロブスターの値段は、Citarellaでは、smallが1匹$12前後、largeが$35前後。
料理方法 
  • どうしても自分でとどめをさしたくない方は、魚屋さんで殺して貰うことも出来ます。
  • ハサミは危険でないようゴムバンドでとめてあるので、完全に動かなくなるまでこのバンドは外さないこと。
  • 共通下処理 → 日本のレストランでは、殺す前に腹部を押さえ、放尿させるようです。アメリカではしません。
  • ボイル → 熱湯の煮えたぎった鍋に入れるだけ。暫くシャカシャカ音がしますが、すぐに静かになります。私のような、変な感傷の持ち主&ダシを惜しむけちん坊でなければ、最も簡単な方法です。溶かしたバターにレモンなどを添えて。
  • 切腹 →
    1. ロブスターを仰向けに置き、脚やハサミを覆うように布巾をかけて押さえ、一気に腹に包丁を突き立て、尾部の中心線を腹から尾に向けて切る(殻まで切らなくても、身さえ切れればよい)。 布巾をかけるのは、脚やハサミを暴れさせないため。恐る恐るゆっくりやっては海老が苦しんで暴れるだけなので、心を決めてひと思いに殺るのがコツです。尾から切るのは、私の自己流ですが、 尾部が一番激しく暴れる部分なので、ここから先に退治してしまえば、あとは落ち着いて作業することが出来ます。
    2. ロブスターがあまり動かなくなったら、尾部と頭胸部を持って、尾部をねじって引っ張るように頭胸部からもぎ取る。切っている最中に出た汁は、ソースやストックに利用。
    3. 尾部は、あとは肉と殻だけ。普通の海老と同様に、好きなように調理して下さい。
    4. 頭胸甲からは、まずハサミを外す。ハサミに関しては、ボイルやグリルしてから殻を割った方が、料理がしやすいです。
    5. 残りの頭胸部は、腹側から正中線にそって、左右に切り分けます。ミソと、雌の場合は卵も見えるので、これを掻き取り、残りはぶつ切りにして、ストックなどに。
    6. ミソは、残念ながら、伊勢海老のような美味ではないので、スープストックなどで軽く煮るなどして食べた方がお勧めです。

  • ロブスターストック → ロブスターを捌いて出た殻や脚などを、強火で炒める。殻が赤くなり良い香りがしてきたら、ブランデーがあればフランベし、白ワイン・香味野菜(適量乱切り)・トマトペースト・ひたひたにかぶるくらいのフィッシュストックを加え、40分くらいアクを取りながら煮る。漉して、なるべく早く冷まして、冷蔵庫に保存。
  • アメリケーヌソース → ロブスターストックを半分くらいの量にまで煮詰める。小麦粉25gとバター25gを練り合わせて、少しずつ加えながら混ぜてとろみをつける。生クリーム・塩・胡椒・ハーブ(タラゴンやチャービルなど)などで、味を調える。取ったミソがあれば、最後にこれで湯がいてから漉すと、ソースの風味付けにもなり、ミソにもソースの味が移って生で食べるよりずっと美味しい。
殻まで無駄なしレシピ:ロブスターソースとキノコのリングイネ

この料理は、わざわざ作るというより、お客様をロブスターテイル(尾)やハサミでおもてなしした翌日に残り物で作る、いわば賄い料理です。

[材料(2人分)]
ロブスターストック 400ml、赤唐辛子1本、リングイネ 200g、好みのキノコ 2個(写真では、Portabello Mushroom の軸2本を使用)塩・胡椒 適量、ブールマニエ(バター・小麦粉を等量練り合わせたもの) 適量、 好みでタラゴン1枝分(みじん切り)
  1. ロブスターストックを中火にかけ、煮詰めていく。キノコを薄切りにして、鍋に加える。6〜7割程度に煮詰まったら、赤唐辛子の種を除き、皮をクラッシュして鍋に加える。ブールマニエを少量ずつちぎり入れて混ぜ、とろみをつける。塩・胡椒で味を調える。
  2. 別の鍋に湯を1.5Lほど沸かし、塩を大さじ1入れ、リングイネを茹でる。
  3. リングイネがかなり堅めのアルデンテになったら、ソースの鍋に移し、全体を混ぜて、弱〜中火で煮ながら、再度味見、塩胡椒で味を調える。
  4. アルデンテになったら、皿に盛り、好みでハーブのみじん切りを散らす。
※ 写真では、エンダイブのサラダを添え、養殖キャビアをリングイネ上に飾っています。

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