書籍紹介
杉浦日向子とソ連 「ソバ屋で憩う」


蕎麦屋めぐりのバイブル

「ソバ屋で憩う」
杉浦日向子とソ連編著,
新潮文庫,
1999.11.1
\590
ISBN 4-10-114914-3

ピカピカの新しい本の写真を使っても良かったんだけど、あえて私が読んでいる文庫の写真にした。
「擦り切れるまで読む」というのはまさにこういうことを言うのだろう。
私はそれほど読書が好きなほうではないし、大抵の場合一度読むとあとは本棚の奥にしまいこんでしまうのであるが、この「憩う」だけは、いつも机の脇の手の届くところに入っているのである。
カバーは既に背表紙が削れ、折り込みの部分はちぎれる寸前。痛みが激しくなってきたので、普段はカバーはかけていない。
中も、行儀悪く必要なページに折り目をつけるわ、手垢はつくわで、実際、磨り減っている。

この本は食べ歩き本であって、その域を大きく越えている。
無論、都内の美味い蕎麦屋がずらりと掲載されており、その紹介のクオリティは極めて高い。
が、それ以上のものが、ある。

後書きにて、蕎麦を愛好する人達に一石を投じる次の言葉、 この部分、実は私はショックだった。ああ、こういう楽しみ方っていいね。
私はまぎれもなく前者のみだった。つまり求道者型。
えっちらおっちらと自転車をこぎ、アメニモマケズ カゼニモマケズ トウキョウノ坂ニモ とらっくノハイがすニモマケヌ ツヨイカラダヲモチ・・・、旨いと聞いた蕎麦屋へ出かけていき、すするわけである。
もちろん、蕎麦屋に入りこめば、それなりにリラックスするわけであるが、悲しいかなソバの味や店の雰囲気を「理解」しなければ、という頭がどこかにある。
蕎麦の打ち方から、出汁の取り方から、薬味の種類、器、店の内装・・。
これらを理解しようとすれば、「湯上りのような」リラクゼーションまでをさすがに得るわけにはいかない。
大忙しである。
私の出発点は、「蕎麦」というものがどこまで美味くなれるのか、というところである。
都内のいくつかの名店を回って、いつも食べない高い蕎麦に手を出し、いままでの蕎麦と全く違う世界を見せられたとき、さらにその奥の世界を覗いてみたくなった。
突き詰めていけば、本当に蕎麦屋になってしまうかもしれない。

でもね、と、この本は、静かに私をとどめてくれるわけです。
ああ、今日はもういーや。
近所の美味い蕎麦屋で蕎麦すすってこよう。
そして、何度も通った店の扉をあけると、いつもと同じ馴染みの机に、馴染みのザルに、馴染みの蕎麦。
新進の流行りの蕎麦屋をひたすら追いかけ、言ってみれば「ハレ」を常に味わおうとする自分を休ませて、ゆったりと時間の流れるいつもの「ケ」の蕎麦屋へ。
歩いてきた道を振り返り、ちょっと寄り道をしてみる。
このバランス感覚を与えてくれるのが、まさにこの本なのでした。

・・・ということで、
私も仲間に入れてください(^_^)>ソ連の皆様



[資料] 掲載店一覧

特選五店 東京都心のソバ屋 深夜に食べるソバ屋 東京近郊のソバ屋 旅先「東」で出会ったソバ屋 旅先「西」で出会ったソバ屋 旧版のリストにはあった店

「たわごと」メニューに戻る
2000/5/20 ちゃぶち