茶無庵の酒肴
そばがき




しっとりと滑らかなそばがきを口に含めば
ふわっと漂う蕎麦の香り

「そばがき」というのは、漢字で「蕎麦掻き」って書くのかな?
「掻く」って言葉自体最近あんまり使わないですな。爪をたてて、蚊に指されたところを掻く、って以外に、土とか砂とかを混ぜたり、粉っぽいものを混ぜたりという意味があるらしい。ちょっと田舎へ行くとまだ生き残ってる言葉です。
ということで、「そばがき」は、蕎麦の粉を熱湯で、うりゃーっと掻くという非常に単純な料理である。
単純ではあるが、蕎麦屋の品書きの中で、最も蕎麦の香りを味わうことができるものだと思う。麺状の蕎麦切りにしてしまうと、香りを感じにくい。だから、本当に上質の蕎麦粉を手に入れて(石臼荒挽きなんかだと最高ですな)、蕎麦の香りを十分に感じたかったら、そばがきにすると良い。むせ返るような蕎麦の香りとはそのことである。

蕎麦屋なんかだと、酒の肴にいいですね。ふっくらと仕上がったそばがきを箸でちょっとちぎって、ワサビを少し溶いたつゆにつけて食えば、酒が進む進む。蕎麦粉に自信を持っている蕎麦屋の基本の肴の1つである。
各店、蕎麦切り以上にバリエーションがある。荒挽きであまり練り上げないものや、更科粉でまるでムースのごとく滑らかにするものまで。
とりあえずここでは、代表的な、神田「まつや」のそばがき。比較的簡単にできる。


用意するのは雪平鍋スリコギ。鍋は別に何でもいいのであるが、柄の丈夫なのを選んでください。他のどの料理よりも柄に負担がかかる。

鍋に、160ccの水を入れて沸騰させる。沸騰したところで、火を弱火にし、蕎麦粉を180cc(大体100gくらい)を入れて、スリコギですぐにかき混ぜ始める。


えいやえいやとかき混ぜていると、そのうち粘りが出てくる。
全体がねっとりと硬くなってきたら、ダマを潰しながらそばがきに空気を混ぜ込むような感じで、えいやえいやと激しく掻き合せる。
コツと言うほどのものでもないけれど、しっかり練り上げることで、舌触りが、ふわっ、すべっという感じになる。でも、これって好き好きなんですよね。粉っぽいのが好きという人もいるし、滑らかなのが良いという人もいるし。だから好みでどうぞ。「まつや」のは比較的滑らかな方です。



滑らかにまとまったら、火を止めて、水をつけた木へらで、まとめて表面を滑らかにする。
蕎麦は水溶性であるため、水をつけるとぬるぬるになる。これを利用するわけです。

まつや流は、木の葉のように筋を何本かつける。これは飾りでもあるし、後で箸でつまむときに食べ易い。


で、この過程は無くてもよいのであるが、表面を滑らかにするためと、完全に火を通すために、熱湯でさっと茹で上げる。

98年のdancyuで、まつやの小高さんが語っているところによると、湯通しをしない掻きっぱなしが一番おいしいんだそうだ。確かに表面がねっとりしたままで、粉の香りが立つのは湯通しをしないほうような気がする(下の「椀がき」参照)

器にそばがきを移して、茹で汁をはって完成。

んー、まつやの薬味はなんだっけな?
スタンダードなのは、つけつゆ+ワサビでしょうか。
海苔で巻いて生醤油ってのもすっごく旨い。
あるいは、紅葉おろしとつゆってのも良いですねぇ。
ゆず味噌なんかもいかがでしょうか。
食べ方に関しては、何でもありなのが、そばがきである。

元ネタ:dancyu 1998.5



(付録) 「椀がき」で作るそばがき

火に直接当てながらつくる「鍋がき」に対して、お椀で熱湯を入れて作る「椀がき」がある。大量に作りにくいので、店ではあまりやられないけど、逆に家でちょっとだけ作るならこっちの方が手っ取り早い。


椀に蕎麦粉を入れる。まぁ好きなだけ。50ccも入れればいいんでないかな。
でもって、アツアツのお茶を入れる。緑茶かほうじ茶(これは岐阜の山奥出身の人から教わった。私と同じ歳だが、子供の頃の朝飯は常にこれだったらしい)。ただの熱湯でも良い。
で、全体で100ccほど入れるのであるが、硬さをみながら3回くらいにわけて入れる。えいやえいやと箸で混ぜて、纏め上げて完成。
醤油をたらして食べます。ほのかに茶の味がして美味しい。


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2000/5/23 ちゃぶち