クマラのファイル集   スパイスアイランド 2

Chilli  Cabai チャベ 唐辛子


  最近、ハーブといえばヨーロッパの香り、優雅でなんといい響きなんだろう。それに引き換え、スパイスとか香辛料と聞けば即、「辛い」と連想してしまう。近頃では「激辛」とまで発展してしまうほどである。しかしながらインドネシアの香辛料、特にジャワではどちらかと言えば「香」が主であり、「辛」は従である。というのも、「辛」といえばコショウと唐辛子、ショウガぐらいで「香」は何十種類とあるのだ。だから「香」を忘れないでと言いたいのだが、今日は唐辛子の話、主役を「辛」に譲りましょう。「辛」といっても、ショウガは日本でもありあふれているし、コショウをいっぱいかけてもそれほど辛くは無い。しかしたった一粒の唐辛子でヒーイヒーイ言わされた人も多いのではなかろうか。中には涙が止まらない、鼻水が止まらない、汗が止まらない、‥‥‥が止まらない人まで出る始末。

日本人の常識として「赤は辛い」「緑は辛くない」が働くが、日本の常識が通じないインドネシアでは唐辛子も同様、はそれほど辛くない」 である。そして注意しなければならないのが、わずか2〜3cmと小さい緑色の唐辛子である。

それは料理に刻んで入っていたりもするが、堂々と単独でナシゴレンの端に構えていたりするのだ。添えのキュウリとトマトの輪切りを向こうに回して、キリリと鮮やか、艶のある緑色をしている。先ずは目で食べる国民性の日本人に挑戦するかのように、真っ先に目に飛び込んでくる。そして頭の中で知らずと計算が始まるのである。キュウリ、トマトは途中の箸休め(本当はスプーンなのだが)として残しておこう。ナシゴレンの上に乗っかっているクルプックは湿気てしまわないうちに真っ先に味見をしよう。問題は主役であるナシゴレンを2番手にするか、はたまたこの緑の小粒から手にしようか。でも主役のナシゴレンを先にもってこないのでは本末転倒、そこで一匙、二匙、ではおもむろに緑をつまんで口に。

どう口を動かしても、どう舌を動かしても、にっちもさっちもならず、口の中で舌が舞うだけ。いそいで手はコップの水に伸びるのだが、ちょっと待て!! ここはインドネシアだ!!生水要注意の国、落ち着いた判断に自分を誉めてやる。生水の変わりにさっき注文した紅茶の大きなグラスも控えている。氷も危ないので熱くて砂糖抜きにしてある。そこでまだ暖かいのを一口、この一口こそが主人を裏切り、緑の造反は激しさを増すばかり、辛さが熱によって増長される。こうしてハヒホヒの世界は小一時間続くのである。これを経験して初めて南国体験第一歩、学習というやつである。

これがナシゴレンの世界であればまだ納得いくのだが、なんとこの緑の単独犯はデザートの分野にまで侵略しているのである。インドネシアのとてつもなく甘いお菓子の横に見張り番よろしく鎮座しているのである。だが一度学習すれば人間も賢いもの、今度は敵を見方にして、あのさわやかなピリッ辛を楽しんでしまうのである。それは噛みかたであったり、舌使いであったり、他の料理や菓子とのコーディネートであったりする。さらに最高なのは、誰か未経験者を見つけ出してはその悲劇を楽しんでしまおうと言う、ちょっと危険な輩もいるから始末悪い。

私なども放し飼いのニワトリに餌らしきものを与えながら、なれたところでこの唐辛子を小さく切ってひょいとあげれば、これもくちばしでつつくのだが食べはしない。しかしとってもどころか辛そうな仕草もしないので、唐辛子に慣れているのか、はたまた辛さを感じる器官は発達していないのかは定かではない。そして口にしないということは、美味しくないのかもしれないし、食べてはいけないと、既に学習済みなのかもしれない。インドネシアのニワトリが唐辛子を食べたら「さすが」と、私の期待も満たされただろうに。とっても辛そうな表情だけでもうれしいのである。さらに小さな舌をヒーイ、ヒーイ、動かそうものなら、感極まるかもしれない。そして犬や猫はどうなんだろう。次回はちょっと試してみる価値がありそうだ。

東南アジアの料理は辛いものが多いので、唐辛子もこの辺りが原産かというとそうでもない。多くの野菜同様、これも新大陸発見、コロンブスがもたらしたものである。栽培種の起源地はメキシコであると考えられる。考古学的資料でも、メキシコ中部のテオティワカン谷の紀元前6500〜前5000年の地層から栽培種の原始的なものが発見されている。

ヨーロッパにはコロンブスによって1493年にスペインに入った。その後は種子の発芽保存期間が長いこと、容易に運べることなどから、瞬く間に世界中の熱帯、亜熱帯に広まり、16世紀のアジア各地で栽培されるようになった。これはスペイン人とポルトガル人によるところが大きい。彼らはコショウを求めていたが、それよりも辛いこの新大陸の作物に関心を持ち、コショウに先駆けて世界に広めた。日本へは1542年ポルトガル人によって伝来した。南蛮船が中国の港を経て長崎にこれをもたらしたということで、唐の芥子と呼ばれ、また南蛮ともよんだ。一説には秀吉の朝鮮出兵の際に兵士が持ち帰ったとも言われ(1605)、高麗コショウの名もある。その後、明治初年には欧米から甘い唐辛子など多くの品種が導入された。トウガラシは「唐枯らし」に通じるとして、長崎では嫌われた。渡来初期は鑑賞用としても栽培されたりもした。渡来した時期にさほど差が無いのに、どうして韓国と日本では唐辛子の使用にこれほどの違いが出たのか不思議なほどである。

唐辛子は変異に富む草木で、茎は直立多枝、高さ0.5〜1.5mに達し、基部は木質化して潅木状となる。通常 1年生として栽培される。花は8mm〜15mm、白又は緑色を帯びる。果実は垂下または直上して単生し、袋状で多くの種子を含み、形状は線形、円錐形、球状などがあって、長さは1〜30cmにおよび、未熟果は緑色またはがかっているが、熟して黄白紫色、そして辛味にも各種程度がある。

唐辛子には大きく分けて2種類あります。トウガラシとキダチトウガラシである。現在、乾燥唐辛子商品として販売されているのは前者であり、後者は多年生亜潅木で、果実は小さく円錐状、先端尖り、長さ2〜3cm、通常赤色で極めて辛味が強い。

インドネシアでは唐辛子、チャベには普通3種類あります。チャベメラ、チャベヒジョウ、そしてチャベラウィ、またの名をロンボク、チャベクチィールといいます。チェベメラは大きめのしし唐の赤いものです。いろいろな料理に刻んだり、つぶしたり、他のチャベとあわせてよく使われます。辛さはたいした事は無く、どちらかと言えば赤い色を利用しているようです。チャベヒジョウはこれのまだ若い緑色のもののようです。これまた各種の料理に使いますが、赤ほど頻度は高くありません。そして辛さではダントツのチャベラウィはこれまた色々な料理に使われ、特に辛さ調節の役目を果たします。通常は緑色をしていますが、熟れてくれば赤くなります。

従って緑色のロンボクをたくさん使えば色は赤くないのに滅茶苦茶辛い料理ができるわけです。ことにスープなどに入れて後でロンボクを取り出しておけば、まったく見た目には普通なのだが、非常に辛いスープができあがります。そういった料理を口にすれば、あまりの辛さに、「ウーン、これは本物のインドネシア料理だ」と合点がいきますが、実はインドネシア料理は地方によって違いますが、それほど辛くはありません。観光客として訪問すれば、注文しない限り出てこないのも事実です。そして素人にも親切なように、辛い料理は大体色も赤くしてあり、騙されるようなことはありません。パダンとかメナード地方は全体に辛い料理が多いといわれていますが、ジャカルタで食べるそれらの料理はかなり辛さが抑えてあります。というのもジャワ人などは甘い(とっても)料理が好きなので、彼らが辛い、辛いと強調するほど辛くはなく、すでに民族のルツボ、ジャカルタに同化した辛さになっているようです。ジャワのど真ん中、ジョクジャカルタで食べるパダン料理などは全く辛くないというか、甘く感じるくらい、別の料理のようです。

チャベを使った料理といえば、まずサンバルを忘れてはいけません。これは卓上の調味料と言ったものですが、料理の数だけ、家庭の数だけ存在するもので、サンバル上手は料理上手、ひいては、いい奥さんでもあるわけだ。チャベの種類、分量、他の材料との組み合わせで自由自在である。

食品として、また調味、香辛料として用いられる唐辛子類をカプシカムペパー、またはレッドペパーというが、国や地方によって呼び名や種類も様々である。チリは一般に辛い品種の総称と考えられているが、メキシコでは辛味種、甘味種いずれもチリと呼ばれる。カイエンペパーは非常に辛い種類を言い、タバスコはアメリカのルイジアナ州で独占的に栽培されているタバスコソース用の小型で赤い色の強烈な辛味を持つ品種、パプリカはハンガリーやスペインで産する甘いトウガラシ、ギニアペパーはギニア産の辛い品種である。ピーマン、ピメント、シシトウガラシなどの変種も多いが、これら甘味種はおもに野菜として食され、香辛料として用いられるのは辛味の強い品種である。密植して葉を茂らせるハトウガラシは、葉を甘辛く炒め煮して食用にする。

日本産の唐辛子は世界で最も品質がよく、辛味、風味、色調ともに優れ、本鷹、鷹の爪、三鷹、八房などの品種は有名である。

辛味の主成分はカプサイシンで、唾液や胃液の分泌を促し、食欲を増進させる作用があるほか、昔から薬用効果もあるとされて、皮膚引赤薬や健胃駆風剤として用いられてきた。調味料としてはウスターソース、ペパーソース、タバスコソース、七味唐辛子に配合されており、カレーの辛さの強弱も唐辛子の配分量の多少によってつけられる。朝鮮料理のキムチや、メキシコ料理のチリコンカルネ、タコス、エンティラーダに、中国では特に四川料理に代表される各種肉料理や漬物に多く用いられる。ラー油やチャーツァイの辛さもこの唐辛子である。世界の広い範囲の国々の料理に用いられている数少ない香辛料の一つである。

薬用としては、辛味成分であるカプサイシンを約0、2%含むため、非常に辛いが、漢方では肺炎、リウマチ、神経痛、筋肉痛などの皮膚引赤薬として使用するほか、健胃駆風剤としてとくにアトニー性消化不良の治療に使う。赤色はカロチノイド色素によるものであるが、その他の成分としてビタミンC、有機酸、脂肪油を含むので、食品としての価値も高い。以前激辛の流行ったときの新聞記事に、食用増進、痩せる効果もあり、などとあり、その時の食物科の先生は、辛さ以外に別にビタミンもありませんし、‥‥‥と答えていました。この先生、唐辛子は乾燥したものと考えていたようで、インドネシアのように「生」での利用は頭に無かったようです。

以前はしし唐を買うと必ずといって良いほど辛いのが混入していました。 「なんだこれは、こんなに辛いのが入っていてはダメじゃないか」なんて思っていたのだが、さすがに日本の農業、消費者ニーズに答えてこのところ辛いのはとんと口にしなくなりました。そこでB級品を買うと、いびつなしし唐の中に何と懐かしの辛いのが混入しているではありませんか。きっと近くで鷹の爪でも栽培しているのではないかと推測するのですが、以前なら怒られてきたことも今では、ついでにインドネシアも味わえると喜んでしまう有様。それ以来なんとB級品を探す目つきになってしまいました。先日などは田舎の温泉場、いわゆる100円の無人販売でのしし唐、これが辛いの何の。今度またイコッ!

日本の空港の植物検疫ではチャベは持ち込み禁止です。それを知らないインドネシア人は空港で抜き取られて「どうして?」。

食事中、何か物足りなさを感じたら、あなたはチャベ中毒症にかかったようです。インドネシアのおみやげにはチャベの種なら大丈夫、じっくり育てて、じっくり楽しんでください。

.クマラのファイル集 02/09/20  

 

 

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