6月24日 君がブログに書いてくれたこと

久しぶりに何かを書こうと思ったのは、映画監督をしている友人が、彼のブログの中で僕の文章について触れてくれていたからだ。
彼は監督業の他に映画評の連載などを雑誌に持つ、色々とこなす言わば文章のプロだ。プロが僕の文章について何らかのコメントをしてくれるというのは単純に嬉しいものである。そして僕を、またこうしてPCに向かわせる活力を与えてくれた事に感謝したい。

彼のブログの中でTと書かれているのが僕のことだ。僕はTなのだ。野村秀雄というのが僕の名前なのに、なぜTなのだろうかとお思いの方もいるかもしれないので説明しておこう。T=トルネードの頭文字から来ている。僕はかつて球界で旋風を巻き起こしたこともある腕の良いピッチャーだったのだ。僕の投球フォームがトルネードに似ているという事から、トルネード投法などと騒がれた時期もあった。
話はそれたが、僕の球界時代を語るにおいて最も重要とされるあの事件に触れてくれた事が僕は嬉しかった。
以下、彼のブログより。
「まさかTがあの瞬間、あの大事な9回裏、ツーアウト満塁のあのシーンで、下半身丸裸でマウンドに上がってくるとは思わなかった」と、過去にあった「野村フリーダム事件」の事を書いてくれるとは思わなかったので僕は嬉しかった。
球界史上最悪の事件として誰にも触れられず闇に葬られたあの事件。テレビは元より、新聞や専門誌などのメディアがまったく無視したという極めて珍しい事件だった。彼がその事に始めて触れた存在となってくれた事が僕にはありがたかった。彼の文章はこう続く。
「…上がってくるとは思わなかった。まるで干し柿の様な彼のイチモツに、球場にいる誰もが皆震撼した。彼が球界から姿を消すきっかけとなった事件である」
そう、僕はあの事件が元で球界を干された。干し柿出して干されるなんて、笑っちまうぜ、と当時は強がっていたが、変わってしまった僕の人生を後悔しない日はなかった。公開するんじゃなかったゼ、この腐れ干し柿、この馬鹿干し柿め!などと干し柿を攻めてみるが、僕は打ちひしがれ、そして全てに意欲を失った。
「…きっかけとなった事件である。その時の様子を、覚えている範囲で記しておこうと思う。
マウンドに上がった彼のキャップは、チーム名が入ったいつものベースボールキャップではなく完全に、紛うことなく雄大なナポレオン帽であった。彼の姿はすでにピッチャー野村秀雄という存在を超え、皇帝ナポレオオン一世、ボナパルトそのままだったのだ。
彼は唖然とする皆を横目に下半身丸裸のまま投球モーションに入った。身体を大きくねじり足を上げる。大きな帽子がゆっくりとその頭からずり落ちる。まるでスローモーション再生されているかのようだった。股間からだらしなくぶら下る干し柿がブラリブラリと、振り子の様に時を刻んだ。私は一瞬田舎に住む祖母の事を思い出した。田舎を持つ者なら誰もが重ねていたに違いない。彼のペンデュラムと軒先にぶら下ったあのしわしわのスウィーツ<干し柿>を。
彼がボールを放とうとした瞬間、Tはボールボーイに取り押さえられていた。結局彼のボールは放たれることはなかった。あの時、ナポレオンとなった彼が投げようとしたものが本当にボールだったのか、今となっては確かめるすべも無い。ただ私の視力2.0の先に映った彼の手の中には、表面をびっしりと毛の様なもので覆われた何か違う物体があったような気がしてならない。そして彼が、なぜチームメイトでもなく、審判でも無く、ボールボーイに取り押さえられたのか。それは最早言わなくても理解して頂けるだろう。なぜならわたしたちもまた、ボールボーイだから、なのである」

彼のブログhttp://blog4.fc2.com/chiripro/
(2008年6月19日の項です)

 
メールフォーム壊れてました。enokidake13@hotmail.com